ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信)

第72号(2017年8月17日発行)

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☆      □■□ ビジネス・アーカイブズ通信 □■□

☆       No.72 (2017年8月17日発行)

☆    発行:公益財団法人 渋沢栄一記念財団 情報資源センター

☆                        〔ISSN:1884-2666〕
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この通信では海外(主として英語圏)のビジネス・アーカイブズ(BA)に関する情報をお届けします。

海外BAに関わる国内関連情報も適宜掲載しております。

今号は文献情報1件です。

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◆ 目次 ◆

[掲載事項の凡例とご注意]

■文献情報:「過去は忘却すべきか?それとも歴史は重要か? 組織の過去の戦略価値について、学術的観点を検討する」

☆★ 編集部より:あとがき、次号予告 ★☆

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[掲載事項の凡例]

・欧文の場合、日本語で読みやすいものになるように、タイトルははじめに日本語訳を、続いて原文を記します。
・人名や固有名詞の発音が不明の場合も日本語表記を添えました。便宜的なものですので、検索等を行う場合は必ず原文を用いてください。
・普通名詞として資料室や文書室、物理的な記録資料を表現する際は「アーカイブズ」を用います。固有名詞の場合はこの限りではありません。また物理的およびデジタル記録資料の蓄積や組織化に関しては「アーカイブ」「アーカイブ化」「アーカイビング」などの表現を用いることもあります。

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[ご注意]
・受信時にリンク先を示すURLが途中で改行されてしまう場合があります。通常のURLクリックで表示されない場合にはお手数ですがコピー&ペーストで一行にしたものをブラウザのアドレス・バーに挿入し、リンク先をご覧ください。


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■文献情報:「過去は忘却すべきか?それとも歴史は重要か? 組織の過去の戦略価値について、学術的観点を検討する」

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◎ポール・ラーサウィッツ「過去は忘却すべきか?それとも歴史は重要か? 組織の過去の戦略価値について、学術的観点を検討する」
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc013_lasewicz.html

当情報資源センターでは、世界有数の経営コンサルティング会社の一つであるマッキンゼー・アンド・カンパニーのアーキビスト、ポール・ラーサウィッツによる「過去は忘却すべきか?それとも歴史は重要か? 組織の過去の戦略価値について、学術的観点を検討する」の日本語訳を、「世界/日本のビジネス・アーカイブズ」のページに掲載しました(2017年7月25日)。原著はアメリカ・アーキビスト協会会誌 The American Archivist 第78巻第1号(2015年春夏号)に掲載されたものです。
http://dx.doi.org/10.17723/0360-9081.78.1.59

原著の元になったのは、2013年4月14~16日にスイス・バーゼルのロシュ社アーカイブズで開催された国際アーカイブズ評議会(ICA)企業労働アーカイブズ部会(SBL)〔現在は組織と名称変更があり企業アーカイブズ部会(SBA)〕国際シンポジウム「危機、信頼性、会社史」Crises, credibility and corporate history におけるプレゼンテーション「象牙の塔からの眺め:企業の歴史と遺産に関する戦略上の価値についての学術的見方」 The View from the Ivory Tower: the academic perspective on the strategic value of corporate history and heritage です。このプレゼンテーションはその後、同シンポジウムの会議録に収められ、リバプール大学出版からICAスタディシリーズの第1巻として2014年に出版されました。The American Archivist に掲載された本稿は、リバプール大学出版より刊行された会議録収録論文の内容に、さらに多数の事例を加え議論を深めたものと言えます。
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20141031.html#03
https://www.ica.org/en/ica-publications-launch-new-special-series

本稿は最近の米国大手企業のアーキビストの問題意識、その問題意識を基にした企業アーカイブズの親企業における利用方法を知る手がかりになるでしょう。長文の論稿です。時間のない方は「解題」「著者について」「経営のための言葉を探し求めて」「遺産と組織改革」「遺産とコーポレート・アイデンティティ・ミックス」のご一読をお勧めします。


[目次]

・【許諾について】
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc013_lasewicz.html#01

・【解題】
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc013_lasewicz.html#02

・【凡例】
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc013_lasewicz.html#03

・【著者について】
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc013_lasewicz.html#04

・【要約】
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc013_lasewicz.html#05

・【キーワード】
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc013_lasewicz.html#06

・【本文】
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc013_lasewicz.html#07

・経営のための言葉を探し求めて
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc013_lasewicz.html#08

・歴史は重要か?経路依存
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc013_lasewicz.html#09

・歴史的転換:批判者たち
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc013_lasewicz.html#10

・歴史/遺産の二項対立
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc013_lasewicz.html#11

・遺産と組織改革
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc013_lasewicz.html#12

・遺産とコーポレート・アイデンティティ・ミックス
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc013_lasewicz.html#13

・企業アーカイブズのための教訓とさらにその先
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc013_lasewicz.html#14

・[注]
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc013_lasewicz.html#15

・【訳者注】
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc013_lasewicz.html#16

・【原論文引用のための書誌情報】
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc013_lasewicz.html#17

PDF版へのリンク
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/pdf/doc013_lasewicz.pdf


★☆★...編集部より...★☆★


□■□解題の解題□■□

「解題」では次の四つの点から本稿が日本の企業アーカイブズ関係者に参考になるだろうと述べています。

(1)日本ではながらく社史編纂の原資料として考えられてきたアーカイブズが、実際には多様な価値を持つのであり、これについて考えるヒントを本稿は与えてくれる。

(2)日本においてもスチュワードシップ・コードの導入(2014年)やコーポレート・ガバナンス・コードの導入(2015年)など、証券市場のグローバルな標準化は進んでおり、その点からは証券市場(株主)を意識することが多くなっている。グローバルに事業活動を行っている企業においては、米国企業のアーカイブズ担当者の目からみた企業経営と過去の利用という点で参考になる。

(3)本稿著者の同僚、あるいは本稿の第一の読者は、フォーチュン誌が選ぶ企業ランキングの上位にリストされている企業のアーキビストである。

(4)デジタル時代における企業経営に対するアーカイブズの貢献の可能性は、組織の過去の歴史・アーカイブズの価値をまったく評価しなかったジャック・ウェルチ(GE元CEO)の時代に比べて大きい。


以下で補足的な説明をいたします。


◆日米の経営のあり方の違いから◆

日本では、アーカイブズ管理・活用を担当する恒常的な部署(あるいは担当者)が企業に置かれるようになったのは、ごく近年のことであり、年史編纂の時期だけに限定して、編纂委員会事務局のような機能が企業の中に置かれることが長らく続いていました(現在も大手企業を除くとこの方式が一般的かと思われます)。この場合、次の年史編纂までの10年あるいは15年の間に記録資料が散逸してしまうことがしばしば起こります。しかし社史を編纂する中で、創業の理念や来し方を振り返るということを繰り返してきたことは特筆に値することかもしれません。また米国とは企業経営のあり方もだいぶ異なっており、日本企業の経営では、ステークホルダーとしては株主のみならず、従業員や取引先、地域社会も重視されており、長期的に安定した経営を目指すという特色を持っていると理解されることが多いと思います。

一方、ステークホルダーとしての株主の力が強く、MBAを持つようなプロフェッショナルな経営者が短期的な利益志向で企業経営にたずさわる傾向が強いアメリカでは、利益に直接結びつかない(企業経営にとって戦略的でない)とみなされた部門は、企業業績悪化の局面で、いち早く閉鎖され担当者がレイオフされることが珍しくありません。優れたプログラムとして知られる企業アーカイブズが閉鎖されたり、規模縮小の対象となった事例には事欠きません。本文ではテキサス・インスツルメンツ、ユナイテッド・テクノロジーズ、コントロール・データ、ユニシス、スポーツニュース、J.C.ペニー、エトナ、IBM、ターゲットといった企業への言及がなされています。

ポールは現代のアメリカ企業の中で、アーカイブズがrelevantな(ふさわしい、適切な)存在であるためには、経営者の言葉と思考に適合する、戦略的な存在でなくてはいけない、という論を立てています。そして経営に関する学術的文献に見出される、戦略的に成功した事例の中で、企業の過去(これはアーカイブズによって証明され、利用が可能となる)が貢献している事例を、ある程度のまとまりとして見出すことができる、といいます。それが、経路依存学派への批判者たちの論稿中にみられる、企業の「組織改革」と「コーポレート・アイデンティティ・ミックス」に関わる過去の利用です。ここで取り上げられている過去の活用方法は、過去がきちんとアーカイブされている限り、どのような組織であっても参考となるでしょう。


◆企業でのアーカイブズ担当者の違い◆

企業でアーカイブズを担当する人の違いの問題もあります。米国の企業アーキビスト(大学院で歴史学や図書館情報学アーカイブズ専攻の修士課程を修了したことが、求人の際の条件になることがほとんど。もちろん例外も有り)とは異なり、日本ではもっぱら社内異動でアーカイブズ部門に配属されたスタッフが、さまざまな研修機会を利用しながら、アーカイブズに関わる業務に携わっています。日本企業におけるアーカイブズ担当者は、ポールの論考に登場する米国の企業アーキビストの状況とはかなり異なった環境にあるといえます。

しかし、財やサービスの市場においては、企業の国籍などは関係なく、どの企業も消費者に向けて自分たちの生産物やサービスを届ける存在です。米国の企業アーキビストたちが、組織内での自分たちの生き残りを懸けて、アーカイブズの価値を社内(そして社外)に向けて、さまざまなやり方で発信していく、その迫力に日本の企業アーカイブズ関係者は大きな刺激を受けるのではないでしょうか。

マーケティングやブランディング、コーポレート・コミュニケーションといったさまざまな部門でアーカイブズ資料を活用することをリードしてきたのは、コカ・コーラ社をはじめとする米国企業のアーキビストたちでした。社内における戦略的な位置づけを求めて、アーカイブズの価値を高めるための創意工夫に取り組む米国のアーキビストの動向は、日本企業におけるアーカイブズ担当者にとって、自分たちの業務に関する新たな気づきやインスピレーションの源であり続けていると思います。


◆アーカイブズと企業の社会貢献、公益への貢献◆

日本における企業史料に関する取り組みの構えは、社史として出版することによって記録を公にし後世に残したり、ミュージアムにおいて一般に対する展示に利用するなど、伝統的に社会貢献的な観点を含むものでした。この観点・姿勢は、企業の持続可能な発展(サステナビリティ)にとって引き続き必要不可欠でしょう。

社史としての出版やミュージアムでの展示以外にも企業アーカイブズは社会的な価値を発揮することがあります。昨年公開され現在も話題になっているアニメーション映画『この世界の片隅に』をご覧になった方も多いと思います。映画の冒頭部分では、当時の町の様子を表現するにあたって、森永製菓のお菓子の商品パッケージ等が用いられていました。企業が生産する商品やサービスは、わたしたちの日々の生活の一部としてなくてはならないものです。企業のアーカイブズはそのような意味で、わたしたちの生活を記録化しようとする時、あるいは後に再現しようとする時する(例えば映画やアニメのコンテンツとして)、必要不可欠なものです。
(関連ページ)
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc005_angel.html


◆デジタル時代の日々の業務のアーカイブ作業について◆

現在企業アーカイブズの管理や活用に取り組んでいる方々には、かつての時代とは違った、まさに今この時代に特有の課題があると言えます。それはデジタル化への対応です。デジタルで作成された企業資料は、記録資料の誕生時点から大切にケアしていかないと容易に失われてしまう存在です。古いアナログな記録資料の扱いと大きく異なるのがこの部分です。現在企業アーカイブズに関わっている関係者は、昔の紙の記録資料とともに、デジタルな記録資料も移管・収集の対象として(可能ならば、できるだけ作成に近い時点から関わりを持って)、アーカイブズの構築を行っていくことが必要です(ハイブリッドな企業アーカイブズ構築という課題)。

本通信では、1998年以降米国で開催されている「コーポレート・アーカイブズ・フォーラム」(CAF)について紹介したことがあります。この集まりは、米国の大手企業のアーキビストたちが年に1回集まって、デジタル化とグローバル化という状況に、どのように対応すべきかを議論する場です。現在も継続中のものですが、記録がインターネット上で公開されているのは2010年までの回です。技術のレベルやSNSの広がりと言った点で、現在の日本の企業アーカイブズ関係者にとって、直接役に立つ情報はあまりないかもしれません。しかし、世界に広がる企業活動をデジタルな環境でどのようにアーカイブしていくのか、この問題に初めて向き合った米国の企業アーカイブズ関係者の試行錯誤から、得るものは少なくないでしょう。
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20140715.html
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20140802.html

未来の地点から今を眺め、今の業務の中で何が大切かを考えて、どの文書、どのデータ、どのビジュアル・・・を残したら、今の会社の姿を未来において再現できるのか、それを考えるのが、今アーカイブズ業務を行っている人の大切な仕事です。経営者は事業の拡大や成功を目標に、5年先、10年先を考えて、今何をなすべきかを考えているでしょう。しかしどの記録を残すべきかという問題は経営者の中で大きく意識されていることはないでしょう。それは別のだれかの仕事なのです。企業のなかでこのことを考えるのにもっともふさわしい部署は、(記録管理専門部署が存在しない日本の場合)アーカイブズ部門でしょう。あるいは、そこしかない、とも言えます。

日々作成されているさまざまな文書やコンテンツを着実に整理・蓄積していくことが、明日のアーカイブズにつながっています。大手企業の場合、どこでどんな業務が現在行われているかを把握すること自体ほとんど不可能、という状況かもしれません。しかし、ここに至るまでの間に、年史の1冊や2冊は必ずや発行しているはずです。それを手がかりに取りかかってみたらどうでしょうか。


□■□米国のさまざまな組織アーカイブズ□■□

本文中では、政府・大学・歴史協会のアーカイブズに関する言及もありました。

「政府、大学、歴史協会のアーカイブズの使命は、各々の組織が持つさらに大きな使命の本質的部分をなす。しかしこれとは異なり、企業アーカイブズへの投資は任意のものであり、アーカイブズの存在を保障する制度上の義務は存在しない。」

(原文)
"Unlike archives in governments, universities, or historical societies, where an archives' mission is an intrinsic part of the larger organizational mission, corporate archives are discretionary investments--they have no institutional mandate guaranteeing their existence."

日本では過去数か月間、公的記録の不存在や処分が毎日のようにメディアで取り上げられてきました。どうみても政府の文書管理、記録管理は褒められる状況にないのは明白です。翻訳の途中、ポールの論考でハッとさせられた部分がいくつかありますが、その1つが上の文章です。これを読めば、米国では政府、大学、歴史協会(historical society。多くは民間の非営利団体で、地域の歴史的資料の収集・保存管理・公開を行う機関)のアーカイブズは、それぞれの組織の使命にとって、なくてはならないものと認識されているのが明らかです。米国の企業経営は株主利益を重視するあまり、短期的なスパンでしか経営を考えない、そのためすべての利益は株主への配当に、という圧力が強く、短期的に収益に結びつかないように見えるアーカイブズも軽視されがちです。しかし、アメリカ社会を全体としてみると、政府や大学など社会の背骨ともいえる重要機関のアーカイブズは確固とした基盤を築いているように見えます。このことによって、各機関は自らの活動の責任を自覚し、あるいは個人や団体の権利を守っていることと思います。このような点は、虚心坦懐に学んでいきたいと思います。


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□■□リーバイ・ストラウス社のLBO:企業経営を長期的視野で考える一例□■□

ポールの論考は、四半期ごとの業績によってシビアに評価される、米国の企業経営のあり方を前提とした企業アーカイブズ論です。一方、これとは違った思想に基づいたやり方で経営を行っている米国企業もあります。

米国カリフォルニア州サンフランシスコに本社のあるリーバイ・ストラウス社は、近年ビジネス・アーカイブズに関するさまざまな取り組みで注目を集めています。同社ヒストリアン(という肩書き)のトレイシー・パネックは、2015年6月にイタリア・ミラノで開催されたICASBAシンポジウムで「リーバイ・ストラウス社アーカイブズでのデジタル・イニシアティブ 最近の試み」というプレゼンテーションを行ってくれました。このほか、昨年の4月の米国アトランタでのICASBA、今年の米国オレゴン州ポートランドでのSAA大会ビジネス・アーカイブズ部会関連企画では2つのプレゼンテーションをこなすなど、ビジネス・アーカイブズ界に大きく貢献しています。
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20150414.html
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20160525.html#02
https://www2.archivists.org/sites/all/files/Speaker%208%20Tracy%20Panek_0.pdf

ジーンズ・メーカーとして著名な同社は1853年に創業した、150年以上の歴史を持つ企業です。同社は1985年にそれまで公開していた株式をLBO(レバレッジド・バイアウト。M&Aの一手法)によって、非公開化しました。
http://archive.fortune.com/magazines/fortune/fortune_archive/1990/05/07/73489/index.htm

同社はグローバルに事業を行うアパレル・メーカーとしては非常に早い時期にあたる1991年に、terms of engagementを制定し、取引先にもこれを求めています。この決まりは労働、環境、健康、安全といった項目において、適切な行動規範を定めたものです。
http://levistrauss.com/unzipped-blog/2014/11/ifc-gtsf-sustainability-incentive-program/

フォーチュン誌のアーカイブ記事は、リーバイス社はLBOによる株式非公開会社への移行によって、経営を長期的に考えることが可能になったと指摘しています。長期的なスパンで企業経営を行うことが難しい米国の場合、LBOといった手段を用いることによって、経営方法を変えるという一例です。
http://archive.fortune.com/magazines/fortune/fortune_archive/1990/05/07/73489/index.htm

同社のアーカイブズは、近年積極的にSNSで(トレーシーのTwitterやLinkedInアカウントから)その活動内容や所蔵する記録資料について紹介しています。日本の会社であるユナイテッドアローズからのビジターがアーカイブズ見学に訪れたつぶやきもありました。
https://twitter.com/TraceyPanek/status/851797098664050690


□■□当財団「合本主義」研究プロジェクト紹介□■□

企業経営のあり方との関連で、当財団が2011年4月から取り組んできた「合本主義」研究プロジェクトについても簡単にご紹介いたします。これは、渋沢栄一が事業経営の最適な方法と述べている「合本法」、「合本組織」についての考え方を研究する取り組みです。栄一自身はこの考え方について詳しく書き記していないのですが、さまざまな資料からは、「合本主義」とは、「公益を追求するという使命や目的を達成するのに最も適した人材と資本を集め、事業を推進させるという考え方」を意味するものであると考えられるものです。

(関連ページ)
https://www.shibusawa.or.jp/research/newsletter/759.html
https://www.shibusawa.or.jp/research/newsletter/762.html
https://www.shibusawa.or.jp/research/newsletter/765.html
https://www.shibusawa.or.jp/research/newsletter/771.html
https://www.shibusawa.or.jp/research/newsletter/774.html
https://www.shibusawa.or.jp/research/newsletter/780.html
https://www.shibusawa.or.jp/research/newsletter/783.html
https://www.shibusawa.or.jp/research/newsletter/792.html
https://www.shibusawa.or.jp/research/newsletter/798.html
https://www.shibusawa.or.jp/research/newsletter/819.html

この合本主義研究プロジェクトのベースには、「シェアホルダー(株主)の利益を最優先に考える経営のあり方は2007年のリーマンショックによって限界が明らかになっており、それに代わるよりよい経営思想が必要である」という考えがあります。同プロジェクトでは、そのひとつのオルタナティブな考えとして、渋沢栄一の唱えた「合本」の現代的意義を探っています。

当センターではこの合本主義研究プロジェクトの成果も参照しながら、グローバル資本主義において、ビジネス・アーカイブズが果たす役割に関し、参考になると思われる情報をこれからも引き続き発信していきたいと考えております。


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[略称一覧]
ACA: Association of Canadian Archivists(カナダ・アーキビスト協会)
ARA: Archives and Records Association(アーカイブズとレコード協会)
ASA: Australian Society of Archivists(オーストラリア・アーキビスト協会)
BAC: Business Archives Council(ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BACS: Business Archives Council in Scotland
(スコットランド・ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BAS: Business Archives Section
(ビジネス・アーカイブズ部会:SAA内の部会)
CoSA:Council of State Archivists(米国・州文書館長評議会)
DCC: Digital Curation Center(英国デジタル・キュレーション・センター)
EDRMS:Electronic Document and Record Management System
(電子文書記録管理システム)
ERM:Electronic Record Management(電子記録管理)
ICA: International Council on Archives(国際文書館評議会)
NAGARA: National Association of Government Archives and Records
Administrators
(米国・全国政府アーカイブズ記録管理者協会)
NARA: National Archives and Records Administration
(米国 国立公文書館記録管理庁)
RIKAR: Research Institute of Korean Archives and Records
(韓国国家記録研究院)
RMS:Record Management System(記録管理システム)
SAA: Society of American Archivists(米国アーキビスト協会)
SBA: Section for Business Archives
(企業アーカイブズ部会、ICA内の部会)
TNA: The National Archives(英国国立公文書館)

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☆★ 編集部より:あとがき、次号予告 ★☆

渋沢史料館ではただいま「絵で見る 渋沢栄一のヨーロッパ旅行 in 1867」を開催中です。

本企画展は150年前、渋沢栄一が初めて海外を旅行した様子を、イラストレーターのミノティカさんに描いていただいた可愛らしいイラストとともに、展示するものです。お子さまから大人のみなさままで、渋沢史料館で150年前のヨーロッパ旅行をお楽しみください。

なお本展示は、企画展「渋沢栄一渡仏150年 渋沢栄一、パリ万国博覧会へ行く」の関連事業です。

会期:2017年07月22日(土)~2017年08月27日(日)
後援:松戸市教育委員会、公益財団法人日仏会館、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本、日本仏学史学会、明治維新史学会

詳しくは下記をご覧ください。
https://www.shibusawa.or.jp/museum/special/2017/kikaku2017_02.html

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本通信編集部は「海外のアーカイブ、デジタルアーカイブ、ビジネスアーカイブ」のテーマで8月21日に岐阜女子大学にて講演予定です。企業アーカイブズを中心に、デジタル時代における国内外のアーカイブズ機関の動向についてお話いたします。
http://digitalarchivejapan.org/wp/bukai/reikai/teirei-02/

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次号は2017年9月下旬発行予定です。今号でお伝えできなかったICASBAストックホルム会合の個別報告の一部とSAAポートランド大会ビジネス・アーカイブズ関連セッションの模様他を報告予定です。

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◆◇◆バックナンバーもご活用ください◆◇◆

https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/index.html

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ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信) No.72
2017年8月17日発行 (不定期発行)
【創刊日】2008年2月15日
【発行者】公益財団法人渋沢栄一記念財団事業部情報資源センター
【編集者】公益財団法人渋沢栄一記念財団事業部情報資源センター
      「ビジネス・アーカイブズ通信」編集部/
      株式会社アーカイブズ工房
【発行地】日本/東京都/北区
【ISSN】1884-2666
【E-Mail】
【サイト】https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/index.html

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