ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信)

第65号(2016年5月25日発行)

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
☆      □■□ ビジネス・アーカイブズ通信 □■□

☆       No.65 (2016年5月25日発行)

☆    発行:公益財団法人 渋沢栄一記念財団 情報資源センター

☆                        〔ISSN:1884-2666〕
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


この通信では海外(主として英語圏)のビジネス・アーカイブズ(BA)に関する情報をお届けします。

海外BAに関わる国内関連情報も適宜掲載しております。

今号は文献情報3件です。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――
◆ 目次 ◆

[掲載事項の凡例とご注意]

文献情報:「資生堂のアーカイブズ:サステナビリティとトップ・マネジメント・チェンジ」(日本語版/英語版)

文献情報:ICA/SBA主催 ビジネス・アーカイブズ国際シンポジウム
「サステナビリティ」プレゼンテーション・スライド公開

文献情報:「ジャーナル・オブ・デジタル・メディア・マネジメント」第4巻第1号

☆★ 編集部より:次号予告 ★☆

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

[掲載事項の凡例]

・欧文の場合、日本語で読みやすいものになるように、タイトルははじめに日本語訳を、続いて原文を記します。
・人名や固有名詞の発音が不明の場合も日本語表記を添えました。便宜的なものですので、検索等を行う場合はかならず原文を用いてください。
・普通名詞として資料室や文書室、記録資料を表現する際は「アーカイブズ」を用います。固有名詞の場合はこの限りではありません。また物理的およびデジタル記録資料の蓄積や組織化に関しては「アーカイブ化」「アーカイブズ化」などの表現を用いることもあります。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

[ご注意]
・受信時にリンク先を示すURLが途中で改行されてしまう場合があります。通常のURLクリックで表示されない場合にはお手数ですがコピー&ペーストで一行にしたものをブラウザのアドレス・バーに挿入し、リンク先をご覧ください。

===================================

■文献情報:資生堂のアーカイブズ:サステナビリティとトップ・マネジメント・チェンジ(日本語版/英語版)

===================================
◎資生堂のアーカイブズ:サステナビリティとトップ・マネジメント・チェンジ
The Shiseido Archives: Sustainability and Top Management Change

国際アーカイブズ評議会企業アーカイブズ部会(ICA/SBA)の年次会合が、去る4月3日(日)~5日(火)の3日間にわたり米国ジョージア州アトランタのコカ・コーラ社本社で開催されました。1日目はSBA運営委員会会議、2~3日目の二日間は「サステナビリティ」をテーマにした企業アーカイブズに関するシンポジウムが開催されました。本通信編集部は「資生堂のアーカイブズ:サステナビリティとトップ・マネジメント・チェンジ」のタイトルで発表を行っています。

この発表では株式会社資生堂の企業文化部と資生堂企業資料館を取り上げ、新しい経営トップが会社のサステナビリティを支えるためのツールとして、同社のアーカイブズとミュージアムを積極的に評価した要因について考察しています。経営トップの交代は企業内に大きな変化をもたらします。新しい経営体制の下でアーカイブズが果たす役割への理解が得られないことがしばしばあります。米国の企業アーカイブズに関する文献集や事例報告集では必ずといってよいほど取り上げられる論点の一つであるこの問題に関し、経営に貢献するツールと評価された資生堂企業資料館の経験を紹介させていただきました。

(日本語版)
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc009_shiseido.html
(英語版)
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc010_shiseido_en.html


[日本語版目次]

・はじめに
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc009_shiseido.html#01
・資生堂
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc009_shiseido.html#02
・創業120周年記念
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc009_shiseido.html#03
・資生堂のアーカイブズの活用方法
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc009_shiseido.html#04
・新しい経営者と資生堂企業資料館
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc009_shiseido.html#05
・おわりに
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc009_shiseido.html#06
・[注]
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc009_shiseido.html#07


[英語版目次]

・Introduction
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc010_shiseido_en.html#01
・Shiseido
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc010_shiseido_en.html#02
・120th Anniversary
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc010_shiseido_en.html#03
・Uses of the Shiseido Archives
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc010_shiseido_en.html#04
・New Management and the Shiseido Corporate Museum
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc010_shiseido_en.html#05
・Final remarks
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc010_shiseido_en.html#06
・[Note]
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc010_shiseido_en.html#07


[スライド]
プレゼンテーション当日のスライドを一部編集(個人のプロフィール写真等を削除)したものを、アメリカ・アーキビスト協会(SAA)企業アーカイブズ部会(BAS)ウェブページ「ICAプレゼンテーション」で公開しています。今後ICASBAサイトでも公開予定です。なおこれ以外のプレゼンテーション・スライドに関しては次の記事で紹介します。

★シンポジウムに関するページ
ICAプレゼンテーション ICA Presentations
http://www2.archivists.org/groups/business-archives-section/ica-presentations#.Vz8kOCHg9HO


★「資生堂のアーカイブズ:サステナビリティとトップ・マネジメント・チェンジ」スライド(PDF)
http://www2.archivists.org/sites/all/files/PP%20The%20Shiseido%20Archives%20-%20Sustainability%20and%20Top%20Management%20Change.pdf

★「資生堂のアーカイブズ:サステナビリティとトップ・マネジメント・チェンジ」」プレゼンテーション原稿(PDF)
http://www2.archivists.org/sites/all/files/The%20Shiseido%20Archives%20-%20Sustainability%20and%20Top%20Management%20Change.pdf

===================================

■文献情報:ICA/SBA主催 ビジネス・アーカイブズ国際シンポジウム
「サステナビリティ」プレゼンテーション・スライド公開

===================================
◎「サステナビリティ」
Sustainability

前の記事で述べたように、11のプレゼンテーション・スライドが公開されています。
ICAプレゼンテーション ICA Presentations
http://www2.archivists.org/groups/business-archives-section/ica-presentations#.Vz8kOCHg9HO

[1]
発表者:基調講演者:ウルスラ・ウェインホーヴェン、国連グローバル・コンパクト顧問
発表者名原文:Ursula Wynhoven, General Counsel, UN Global Compact
(Keynote Speaker)
タイトル:グローバルな目標をローカルなビジネスにする:どのようにしてよりよき世界のアーキテクトとエンジニアになるか
タイトル原文:Making global goals local business : how to be an architect and engineer of a better world
http://www2.archivists.org/sites/all/files/UAW%20PPT%20Archives%20event_0.pdf


[2]
発表者:シェリル・ブラウン、バラスト財団
発表者名原文:Cheryl Brown, Ballast Trust
タイトル:サステナビリティを企業アーカイブズ・プログラム開始のための議論として導入する:成功と失敗
タイトル原文:Introducing sustainability as an argument for initiating a corporate archives program: successes and failures
http://www2.archivists.org/sites/all/files/Sustainability%20Cheryl%20Brown.pdf


[3]
発表者:ヘニング・モーゲン、A.P.モーラー=マースク
発表者名原文:Henning Morgen, A.P. Moeller-Maersk
タイトル:会社、アーキビスト、そして人権
タイトル原文:The company, the archivist and human rights
http://www2.archivists.org/sites/all/files/SBA2016%20HumanRights%20HenningMorgen_0.pdf


[4]
発表者:トレーシー・パネック、リーバイ・ストラウス社
発表者名原文:Tracey Panek, Levi Strauss & Co.
タイトル:洗いは少なく、水も少なく、ブルー・ジーンズのリサイクルはもっと:ストーリー・テリングを通じてサステナビリティを奨励する
タイトル原文:Wash less, water less & recycle more: stimulating sustainability through storytelling
http://www2.archivists.org/sites/all/files/Speaker%208%20Tracy%20Panek_0.pdf


[5]
発表者:ニコラ・コパン、ソルベー
発表者名原文:Nicolas Coupain, Solvay
タイトル:持続可能な化学産業のためのアーカイブズ:企業に所属する歴史家の観点からのアイデアと実践的アプローチ
タイトル原文:Archives for a sustainable chemistry : reflections and practical approach from a corporate historian's view
http://www2.archivists.org/sites/all/files/2016-04-05%20Ncoupain%20-%20Archives%20for%20a%20Sustainable%20Chemistry_0.pdf


[6]
発表者:エリケ・オケ、ランベール・ダンス・カンパニー
発表者名原文:Arike Oke, Rambert
タイトル:箱から取り出す:ダンス・アーカイブのサステナビリティへのステップ
タイトル原文:Unboxing: a dance archive's steps to sustainability
http://www2.archivists.org/sites/all/files/SBA%20ICA%202016%20Arike%20Oke%20link%20instead%20of%20embed_0.pdf


[7]
発表者:松崎裕子、渋沢栄一記念財団
発表者名原文:Yuko Matsuzaki, Shibusawa Eiichi Memorial Foundation
タイトル:資生堂のアーカイブズ:サステナビリティとトップ・マネジメント・チェンジ
タイトル原文:The Shiseido Archives: sustainability and top management change
(スライド)
http://www2.archivists.org/sites/all/files/PP%20The%20Shiseido%20Archives%20-%20Sustainability%20and%20Top%20Management%20Change.pdf
(原稿)
http://www2.archivists.org/sites/all/files/The%20Shiseido%20Archives%20-%20Sustainability%20and%20Top%20Management%20Change.pdf

[8]
発表者:アメイダ・ノーブル、ロイズ銀行グループ
発表者名原文:Amanda Noble, Lloyds Banking Group
タイトル:英国の金融危機を生き延びる
タイトル原文:Surviving the UK Financial Crisis
http://www2.archivists.org/sites/all/files/ICA%20Lloyds.pdf


[9]
発表者:アレクザンダー・ビエリ、F・ホフマン=ラロシュ社
発表者名原文:Alexander Bieri, F. Hoffman-LaRoche Ltd.
タイトル:企業文化構築にアーキビストのコア・コンピテンシー(業績達成能力)を用いる
タイトル原文:Using archivist's core competencies in building a company culture
http://www2.archivists.org/sites/all/files/Atlanta_Presentation_BIERI_0.pdf


[10]
発表者:レイチェル・イーガン、グラスゴー大学
発表者名原文:Rachel Egan, University of Glasgow
タイトル:団体の業務・アセットとしての大学におけるヘリテージ・コレクション:サステナビリティのサイクル
タイトル原文:University heritage collections as a corporate business asset: a sustainability cycle
http://www2.archivists.org/sites/all/files/Rachael-Egan-ICA-SBA-April-2016_0.pdf


[11]
発表者:ビル・ジャクソン、ハーレー・ダビッドソン社
発表者名原文:Bill Jackson, Harley-Davidson Company
タイトル:商品開発をアーカイブズに統合する
タイトル原文:Integrating product development into archives
http://www2.archivists.org/sites/all/files/ICA_2016_Harley.pdf


★事前公表プログラム
http://www.cvent.com/events/international-council-of-archives-apr-2016/agenda-0d85bb7d62624561b656b26ba7bc02fc.aspx

★本通信64号もご参考にどうぞ
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20160223.html


★☆★...編集部より...★☆★

4月3日(日)にコカ・コーラ・アーカイブズにて開催されたSBA運営会議では今年後半から来年にかけてのSBA活動の予定を確認しました。

(1)まず9月初旬に韓国ソウルで開催されるICAコングレス(4年に1度開催される大規模な会議)での発表に関してICA事務局と大会組織委員会に提案した内容が確認されました。4月3日時点ではプロポーザルの採否は不明でしたが、その後のアナウンスメントでSBAによるセッション開催が確認されました。

SBAによるセッションのテーマは次の通りです。

「SBAとデジタルでグローバルな環境におけるビジネス・アーカイブズの持続性:グローバルかつローカルにアーカイブズ・サービスが普及するよう働きかける」
The SBA and Sustainability of Business Archives in Digital and Global Environments: Encouraging "Glocal" Engagement in Archives Services
http://www.ica.org/en/ica-2016-congress-list-accepted-papers-panels-and-posters


(2)来年2017度のICA/SBAの会合は4月にスウェーデン・ストックホルム、12月にインド・ムンバイで開催予定です。会議のホストは以下の団体です。

【ストックホルム】
Centrum for Naringslivshistoria/Center for Business History
(経営史のためのセンター)
http://naringslivshistoria.se/en/

【ムンバイ】
Godrej Archives ゴードレージ・アーカイブズ
http://archives.godrej.com/


(3)2018年度以降は未定ですが、中国・北京が候補に上がっています。

===================================

■文献情報:「ジャーナル・オブ・デジタル・メディア・マネジメント」第4巻第1号

===================================
◎「ジャーナル・オブ・デジタル・メディア・マネジメント」第4巻第1号 紹介
Journal of Digital Media Management (JDMM)
Volume 4, Number 1, 2015 ISSN 2047-1300
http://www.henrystewartpublications.com/jdmm/v4

この雑誌に関してはこれまで2回取り上げたことがあります。これまでの記事は下記の「ビジネス・アーカイブズ通信」に掲載されています。

▼第40号(2012年8月10日発行)
文献情報:「ジャーナル・オブ・デジタル・メディア・マネジメント」創刊
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20120810.html

▼第61号(2015年12月2日発行)
文献情報:「ジャーナル・オブ・デジタル・メディア・マネジメント」第3・4巻目次
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20151202.html

この度、本通信ではもう少し詳しい情報を提供することになりました。


■□...「ジャーナル・オブ・デジタル・メディア・マネジメント」...□■

JDMM第4巻第1号巻頭の「目的と範囲」Aims and Scope のページには次のようにあります。

"Journal of Digital Media Management is the major peer-reviewed, professional journal for all those involved in the capture, storage, and effective application of digital media asset."

「ジャーナル・オブ・デジタル・メディア・マネジメントは、デジタルなメディア・アセットのシステムへの取り込み、保管、効果的な利用に関わるすべての人々のための有用な査読付き専門ジャーナルです」

同誌は紙媒体とオンラインで提供されています(いずれも有償)。執筆者の所属機関は放送、エンターテインメント、メディア、一般消費財ブランド、ビジネス・ブランド、ソーシャル・メディア、文化機関、教育、非営利、政府など広範囲にわたります。

標題紙(タイトル・ページ)には、JDMMは「出版の機会に関するケイベル・ディレクトリ」(定期刊行物リストの一種)に採録されている、とあります。

Cabell's Directory of Publishing Opportunities
https://ssl2.cabells.com/about-us


■□...DAMとアーカイブズの関係は...□■

デジタル・アセット・マネジメント(DAM)は、文字通りデジタルなメディア・アセットの管理をさすもので、組織が作成・収受した記録のうち、長期保存価値を持つものを永続的に管理・提供するアーカイブズ管理とは異なります。しかし、アーカイブズが保有する記録資料のうちデジタルであるものは、紙媒体とは異なった管理・提供に関わる諸問題を抱えており、それらへの対処を必要とします。この定期刊行物はデジタル媒体を対象とした専門ジャーナルとして、「ボーンデジタル資料」と「アナログ資料からデジタル化された資料」という2種類のデジタル媒体(メディア)を扱うアーカイブズ関係者に、有用な知見を提供してくれるでしょう。


※訳語について・・・Digital Asset Managementは「デジタル資産管理」とも訳せますが、本通信では「デジタル・アセット・マネジメント」と表記します。

※国立国会図書館、国内公共図書館、大学図書館では所蔵が確認できませんでした。
国立国会図書館サーチ http://iss.ndl.go.jp/
国立国会図書館蔵書検索(OPAC) https://ndlopac.ndl.go.jp/
Cinii Books http://ci.nii.ac.jp/books/
カーリル https://calil.jp/


[論説]

◆日本語タイトル:ヤム!レストラン・インターナショナルでDAMベンダーを選択する:完璧なベンダー発見という旅には終わりがない
原題:Selecting a DAM vendor at Yum! Restaurants International: finding that perfect vendor is an imperfect journey
著者名:ライアナ・カルデナス・ケイブ
著者名原文:Liana Cardenas Cave
所属等:デジタル・アセット副部長、KFCグローバル&ピザハット・インターナショナル、ヤム!レストラン・インターナショナル社
所属等原文:Associate Manager Digital Assets. KFC Global & Pizza Hut International. Yum! Restaurants International, Inc.
ページ:4-6
【本通信編者による概要】
著者はKFCグローバル社とピザハット・インターナショナル社の両社に所属する。著者の業務内容は30以上の事業単位から四半期ごとにマーケティング関連のデジタル・アセットを収集することである。新しいDAMシステムを導入するにあたっては、各ベンダーの提供するDAMシステムをとにかくリサーチした。成功のカギはリサーチに尽きる、と著者は言う。システム選定のプロセスは、DAM関連のカンファレンスに参加する、「フォレスター・レポート」Forrester Reportsなどの調査報告書を精査する、社内で関心を持つ技術に精通した(tech-savvy)社員と情報交換する、ネット上の情報をチェックする、ベンダーにデモしてもらう、ソーシャル・メディア上のDAM関連のコミュニティに参加する、DAMコミュニティが提供するウェビナーを視聴する、であった。その次のステップはDAM導入に関わる社内のステークホールダー(選定に関わる者とユーザーとなる者)を特定することであった。その次に来るのはITチームと仕様(SaaS=にするかオンプレミス[自社運用]にするかなど)を検討することである。その後RFP(提案依頼書)作成プロセスに入る。著者は少なくとも3社選定することを勧めている。秘密保持契約を結び、RFPを配付後質疑応答を経て、各社にプレゼンテーション(各社に2時間ずつ割り当てる)を行ってもらう。この部分が一番重要である。著者はベンダー選定までのプロセスを終えて、現在は実装段階であるというところで記事が結ばれている。

★「フォレスター・レポート」Forrester Reports
https://www.forrester.com/home/


[コメント]

◆日本語タイトル:マイクロソフトはどのようにして社内的なDAM目的を達成したか
原題:How Microsoft met its own internal DAM objectives
著者名:ペイヤル・グプタ・ティワナ
著者名原文:Payal Gupta Tiwana
著者紹介:マイクロソフト社に入社後6年間、技術プログラム・マネジャーとしてコンテンツ出版プラットフォームを構築するMicrosoft.comチームで働く。その後マーケティングのためのビジネス・インテリジェンス・プラットフォーム製作のためのグローバル・マーケティング・オペレーションズで5年勤務の後、(このコメント執筆の約1年前から)全社規模のデジタル・アセット・マネジメント・サービスの立ち上げに関わる。
キーワード:マイクロソフト Microsoft、クラウドDAM CloudDAM、販売 sales、マーケティング marketing、生産性 productivity、アジュール Azure
ページ:7-9
論文受理日:2015年8月3日
【編者による概要】
著者が全社規模のデジタル・アセット・マネジメント・サービスの立ち上げに関わる以前には、マイクロソフトの社内にはデジタル・アセットが散在していた。マーケティング担当者は必要なデジタル・アセットをすぐに見つけることができず、再利用ではなく新たに作り直すことになりがちで、生産性の問題を抱えていた。新キャンペーンや新製品に関わるアセットがしばしば漏えいする事態も生じていた。著者はあまり気が進まなかったが、この状況の打破に挑戦することにした。まず最初に行ったことは、DAMに関するカンファレンスに参加することであった。これを通じてStylelabs社のMarketing Content Hub製品が自分たちが求めるものであると分かった。それはクラウドベースのサービスとしてのDAMである。そしてマイクロソフトはアジュールという世界最大のクラウド・インフラを持っていることから、このプロジェクトは当初よりアジュールを利用することが明確であった。さらにマーケティング担当者のニーズに見合う必要もあった。2014年11月に13のグローバル地域本社の現地マーケティング担当者に向けてクラウドDAMが公開された。リリースまでの準備に6カ月、費用は50万ドル以下であった。以前なら本社で作成されたアセットしか検索できなかったが、クラウドDAMの導入で他の地域本社作成のものも検索できるようになった。システムのモニターのためにライブラリアンを配置した。しかしながら、まだ全社社員がクラウドDAMを利用するには至っていない。さらに社内での利用を促進する必要がある。

★Stylelabs社
http://stylelabs.com/


[論文]

◆日本語タイトル:「つねにオン(放送中/進行中)」の世界でビデオ・コンテンツを管理する
原題:Managing video content in an 'always on' world
著者名:マイク・ベレル
著者名原文:Mike Verrell
著者紹介:著者はリッチ・メディアとデジタル・アセット・マネジメントの世界で15年のキャリアを持つ。アルコール飲料、小売、製造、出版、メディア、広告、銀行、製薬会社の(リッチ・メディア、DAM)関連部門の問題解決に関わり、著名ブランドを抱える企業ならびにITのグループと協働してきた。
キーワード:デジタル・アセット・マネジメント digital asset management、コンテンツ・マネジメント・システム content management system、ビデオ video、権利管理 rights management
ページ:10-14
論文受理日:2015年7月17日
【編者による概要】
ビデオ・コンテンツの爆発的増大は、新たなオーディエンスの獲得という機会を企業に提供する半面、作成・アップロード・共有されるコンテンツの量とスピードに対処せねばならないという、諸刃の刃でもある。デジタルの専門家とマーケティングの専門家は、組織の中で誰がどこで何をしているのかを正確に把握しているとともに、業界のルールを遵守したり、権利保護を確実に行わねばならないという、非常に大きなプレシャーの下にある(著者はトロントのオフィスに必要な情報を含むコンテンツがあるのに、ロンドンでまた一から似たようなものを作成するムダ、作成したビデオが他者の知的財産権を侵害しているといった例を上げている)。つまりコンテンツ管理が必要であり、そのためにはデジタル・アセット・マネジメントが重要な役割を果たす。著者は世界的に著名なデジタル教材の開発と提供を行うディスカバリー・エデュケーションでの具体的取り組みを紹介している。ディスカバリー・エデュケーションでは700あまりのベンダーの中から4社を選び、最終的にはNorth PlainsのUnifyを選択した。

「非構造化データであるビデオはテキストベースのコンテンツのような検索やファイリングでは対応できないが、アセットとしての管理の局面、そしてさらには作成の局面でしっかりとタグ付けするといったことによって格段に管理が容易になる」、「メタデータ管理、ディストリビューション、アーカイブズとしての管理といった一連の過程を通じて、視認性(認知度)を向上させることが重要」、「再利用のためには、関連する諸権利と知的財産権が明確であるものを簡単に見つけることができなくてはいけない」と著者は指摘している。ちなみにシステム実装段階でのタグ付けには18カ月かかったとのことである。

★ディスカバリー・エデュケーション
http://www.discoveryeducation.com/
★North Plains
http://www.northplains.com/


◆日本語タイトル:シェアポイントを正しく理解する:「ビッグ・ピクチャー(全体像)」について考える
原題:Getting SharePoint right: thinking about the 'big picture'
著者名:マーク・スティーブンソン
著者名原文:Marc Stephenson
著者紹介:著者はシェアポイントのコンサルタントならびに情報アーキテクトとして12年のキャリアを持つ。イントラネット、ポータル、EDRMS(電子文書記録管理システム)実装に関わり、多くのシェアポイント・システムの設計、実装、設定に携わってきた。
キーワード:シェアポイント SharePoint、情報アーキテクチャ information architecture、棚卸 inventory、ガバナンス governance、戦略 strategy
ページ:15-20
論文受理日:2015年7月30日
【編者による概要】
この論文はシェアポイントを正しく実装するためのステップを提示している。もっとも大切なのは「ビッグ・ピクチャー(全体像)」、あるいはシェアポイント・システムを取り巻くコンテクストをどのように考えるかである。シェアポイントを成功裏に導入するために重要と考えられる活動は、情報の棚卸(information inventory)、情報戦略、シェアポイント戦略、情報アーキテクチャ、ガバナンス戦略、マイグレーション戦略であると著者は指摘している。結論部分が雄弁にこの論文のメッセージを伝えているので引用したい。(20ページ)

"Remember that SharePoint is not an application that can be trivially deployed. It should be viewed as a system that requires significant groundwork to be done if it is to be a success....(中略)... SharePoint is very easy to implement badly and not easy to implement right. Finally, and most importantly, remember it is all about the information. Think about what changes the least in the organization: not technology, not process, not people and not organisational structure. It is the information. By putting information at the heart of the implementation, everyone is giving themselves the best chance of having a successful SharePoint system." (p.20)

(シェアポイントは簡単に利用できるアプリケーションではないのです。もしシェアポイントを上手に導入したいのなら、大きな基礎工事を必要とするシステムなのです。シェアポイント実装で失敗するのはいとも簡単で、成功するのは容易なことではありません。最後に、そして最も重要なことですが、それは情報がすべてなのです。組織の中でもっとも変化しないものは何であるか考えてみてください。技術ではありません。プロセスでもありません。人間でも組織構造でもありません。それは情報なのです。実装にあたって情報を中心に考えるならば、シェアポイント・システムの導入に成功する可能性が一番高いのです。)


◆日本語タイトル:権利表現言語とともにデジタル権利を管理する
原題:Managing digital rights with rights expression languages
著者名:デミアン・ヘス
著者名原文:Demian Hess
著者紹介:著者はAvalon Consulting, LLCの米国ワシントンDC事務所のデジタル・アセット・マネジメント部門のディレクター。オンライン出版分野で10年の経験を持つ。
キーワード:権利表現言語 rights expression languages、デジタル・ライツ・マネジメント digital rights management、ODRL、MPEG-21/5、ccREL、PLUS
ページ:21-35
論文受理日:2015年7月23日
【編者による概要】
デジタル・アセット・マネジメントはデジタル・アセットに付随する権利を追跡し、それに対して何らかの対処を行わねばならない。権利を表現する言語(RELs:Rights expression languages)は、情報システム間でやりとりできる機械可読フォーマットにおいて、取り込み条件に従って権利管理をサポートする。本論文では権利表現言語の基底にある概念を議論し、4つの権利表現言語が実際にはどのように利用されてきたのかを検討している。4つの権利表現言語とは、クリエィティブ・コモンズ 権利表現言語(ccREL: Creative Commons Rights Expression Language)、ピクチャー・ライセンシング・ユニバーサル・システム(PLUS: Picture Licensing Universal System)、モーション・ピクチャー・エキスパート・グループ、スタンダード21、パート5(MPEG-21/5: Motion Picture Expert Group, Standard 21, Part 5)、オープン・デジタル・ライツ・ランゲージ(ODRL: Open Digital Rights Language)。


◆日本語タイトル:窃盗とたたかうためのコンテンツ・セキュリティに関する一つの見方
原題:A perspective of content security to combat theft
著者名:マシュー・ジリアット=スミス
著者名原文:Mathew Gilliat-Smith
著者紹介:著者はメディアとエンターテインメント分野で26年間の経験を持つ。もともとは紙ならびにマルチメディア出版から始まってデジタル技術とコンテンツ・セキュリティに進んだ。Fortium TechnologiesのCEOとして、NBC、ユニバーサル、ディズニー、ソニー、パラマウント・ピクチャーといった企業との関係を通じて同社をデジタル・セキュリティに関するリーディング・カンパニーに成長させた。
キーワード:静止ファイル暗号化 file encryption at-rest、公開前の著作権侵害 pre-release piracy
ページ:36-39
論文受理日:2015年7月24日
【編者による概要】
本稿は、公開前の著作権侵害への対抗手段、すなわち収入減少回避手段として、撮影後の編集における静止ファイルの暗号化のワークフローを紹介している。


◆日本語タイトル:・アセット権利取扱許可(アセット・ライツ・クリアランス):DAMライフサイクルにおける次の重要なステップ
原題:Asset rights clearance: critical next steps in the DAM life cycle
著者名1:グレッグ・ゲスト
著者名原文1:Gregg Guest
著者紹介1:FADEL社の知的財産権・ロイヤリティ・クリアランス部門の商品戦略責任者。
著者名2:タレク・フェイデル
著者名原文2:Tarek Fadel
著者紹介2:FADEL社CEO。
キーワード:デジタル・アセット・ライツ digital asset rights、アセット・ライツ取扱許可(アセット・ライツ・クリアランス) asset rights clearance、アセット・ライツ・マネジメント asset rights management、IP権利 IP rights、権利取扱許可(ライツ・クリアランス) rights clearance
ページ:40-47
論文受理日:2015年8月8日
【編者による概要】
DAMシステムでのデジタル・アセットの作成・流通管理の後にくるのがデジタルな知的財産権(ビデオ、音楽その他)の保護、デジタル・アセット利用に関する視認性(認知度)向上、さらにそれらの商業的利用である。本稿では、アセット・ライツ・クリアランスに関わる諸問題を議論している。


◆日本語タイトル:ロイターのアーカイブのための戦略を開発する:事例研究
原題:Developing a strategy for Reuter's archive: a case study
著者名:アシュレイ・バイフォード=ベイツ
著者名原文:Ashley Byford-Bates
著者紹介:トムソン・ロイター社のエンタブライズ・リスク・マネジメント部門のグローバル部長を経て、現在はロイターの写真・アーカイブ・プロダクトのグローバル部長。過去18年にわたって変化の激しいこの業界で働いてきた。
キーワード:デジタル digital、アーカイブ archive、戦略 strategy、メタデータ metadata、ロイター Reuters
ページ:48-54
論文受理日:2015年6月26日
【編者による概要】
ロイター・アーカイブのグローバル部長は写真とアーカイブ製品の管理のほか歴史アーカイブズの利用にも責任を負っている。顧客へのサービスと市場開拓が重要な役割である。この論文はアーカイブズ整理、管理、商業利用における課題と可能性、考慮すべき点を議論している。

ロイターはトムソン・ロイターのニュース部門である。トムソン・ロイターは全世界で約50,000人を雇用し、世界の約200カ所に2,500人のジャーナリストを置き、16カ国語でニュースを配信している。トムソン・ロイターズ・トラスト・プリンシプルのコア・バリューである「独立性、完全性、偏見からの自由」を理念としている。220万本以上の独自ニュース、100万ニュース速報、580,000画像、100,000ビデオ・ストーリー、4,500論説記事、100調査報道記事を毎年生み出している。多くの顧客はコンテンツ出版やコンテンツ管理、デジタル・アセット・マネジメントのために自動化されたシステムを用いているため、効率的なワークフローのためにはメタデータが決定的に重要である。そのため計画、スケジューリング、データ処理といった上流における効率化に高い優先順位を与えるとともに、二次利用のために後から追加的キーワードや権利情報を付け加える。今日のビッグ・データ時代においては、上流での最適化と自動化は当然のことであるが、過去の紙媒体時代のアーカイブズ関しては遡及的に行わなければならない。

1896年から現代までの33,000時間以上分のコンテンツを保有するビデオ・アーカイブ、1840年にさかのぼるテキスト・アーカイブ、過去30年間分の写真アーカイブのデジタル化に関しても紹介している。

★ロイター「トラスト・プリンシプル」The Trust Principles
http://thomsonreuters.com/en/about-us/trust-principles.html


◆日本語タイトル:助成金に関する実践的助言:探すこと、計画すること、書類を書くこと、獲得すること、報告すること、評価すること
原題:Practical tips on grants: finding, planning, writing, acquiring, reporting, assessing
著者名:パトリシア・ヒューイット
著者名原文:Patricia Hewitt
著者紹介:著者は米国ニューメキシコ州サンタフェ市ニューメキシコ歴史博物館の一部門であるFray Angelico Chavez History Libraryの上級カタロガー。過去30年間にわたってボストンとニューメキシコの専門図書館と大学図書館で目録作成とレファレンス業務に従事してきた。図書館学修士号のほか、2011年には認定アーキビストの資格も取得している。
キーワード:財政的支援 funding、助成(金) grants、計画 planning、報告 reporting、評価 assessment
ページ:55-67
論文受理日:2015年9月22日
【編者による概要】
本稿はFray Angelico Chavez History Libraryが所蔵する歴史地図コレクション(スペイン植民地時代から現代まで)の目録作成のために2011年にCLIP(Council on Library and Information Resources 図書館情報資源振興財団)から3年間のプロジェクトとして179,600米ドル(約2,000万円)の助成を獲得した事例を基に、あらゆる図書館もしくはアーカイブズ・プロジェクトの助成金獲得に有用と思われる実践的助言を紹介するものである。


◆日本語タイトル:ビデオ:メタデータ標準におけるニュー・フロンティア(新たな開拓地)
原題:Video: the new frontier in metadata standards
著者名:トマス・シュルー
著者名原文:Thomas Schleu
著者紹介:著者はCanto社(1990年創業)の共同設立者。同社のデジタル・アセット・マネジメント製品開発において主要な役割を果たしてきた。1990年から2008年まで同社の主任技術者を務め、その後最高技術責任者(CTO)。ベルリン工科大学出身。
キーワード:ビデオ video、メタデータ metadata、デジタル・アセット・マネジメント digital asset management、DAM
ページ:68-75
論文受理日:2015年10月9日
【編者による概要】
ビデオは現在とても人気であるが、ビデオ出版においてはユニバーサルな規格が存在しないなど、作成するにも視聴するにもさまざまな課題がある。本稿ではビデオ・メタデータの現在を探る。

まずビデオ・メタデータは2種類に大別される。自動的に収集されるもの(例えばEXIF)と手作業で付与するものである。これとは別に次のような種類のメタデータがある。テクニカル・メタデータ(「ファイル名、データサイズ、作成、修正」「作成ソフト、ベンダー、バージョン、プラットフォーム」「取り込み日、エンコード日、タグ付け日」「ビデオに特有なメタデータ(時間など)」)、記述メタデータ(タイトル、記述、キーワード)、ワークフロー・メタデータ、出版に関わるメタデータ(ライセンシング情報、視聴情報)。本稿によるとビデオ・メタデータの保存は大きな課題である。これに対してDAMやメディア・アセット・マネジメントが役立つ。DAMシステムにメタデータを格納するに当たって重要な機能は表示、編集、検索、利用、エクスポートである。ビデオのためのメタデータ標準にはEXIF、IPTC、ダブリンコア、XMPなどがあるが、特定のビデオ・ファイルにこれらを埋め込むことは大きな課題である。


◆日本語タイトル:メディア向け不安なしのクラウド・セキュリテイ:なぜ人々はパブリックなサービス・モデルに信頼を寄せることができるのか
原題:Fearless cloud security for media: why people can trust in the public service model
著者名:イアン・ハミルトン
著者名原文:Ian Hamilton
著者紹介:著者は20年以上にわたりインターネットのインフラならびにアプリケーション分野でイノベーター、起業家として働いてきた。Signiant社の共同設立者。メディア、エンターテインメント産業界でインターネットならびにイントラネットに迅速に安定したコンテンツを配信するためのソフトウェア開発をリードしてきた。
キーワード:クラウド・サービス cloud service、クラウド・ソリューション cloud solutions、パブリックなクラウド技術 public cloud technologies、クラウド利用モデル cloud deployment models
ページ:76-81
論文受理日:2015年10月12日
【編者による概要】
メディア界ではファイル・ベースのワークフローが標準的であったが、近年クラウド技術を用いたネットワーク型のワークフローの導入が加速化している。クラウド・サービスとクラウド利用モデルには、IaaS(infrastructure as a service)、PaaS(platform as a service)、SaaS(software as a service)の3種類がある。これらはパブリックなモデルとして、あるいはプライベートなモデルとして、あるいはパブリックとプライベートのハイブリッドなモデルとして利用可能である。このうちパブリックなモデルに対するセキュリティ上の懸念が最も大きい。しかし著者は、適切な信頼モデルを構築し、安全なデザイン原理に従うならパブリックなモデルに信頼を寄せることは可能であると論じている。


◆日本語タイトル:持っているべきか捨てるべきか:オーストラリア国立公文書館において評価選別を自動化する
原題:To keep or not to keep: automating appraisal and selection at the National Archives of Australia
著者名:タティアナ・エントスーポーバ
著者名原文:Tatiana Antsoupova
著者紹介:著者はオーストラリア国立公文書館の政府情報保障・政策部門デジタル戦略・ソリューション担当アシスタント・ディレクター(an Assistant Director, Digital Strategy and Solutions, in the Government Information Assurance and Policy Branch of the National Archives of Australia)
キーワード:アーカイブズの評価選別 archival appraisal and selection、自動化 automation、デジタル・アーカイブズ digital archives、情報システム information systems、自動化された評価選別 automated appraisal、ISO 16175
ページ:82-91
論文受理日:2015年10月7日
【編者による概要】
本稿はオーストラリア国立公文書館が試行の後、実装に踏み切った評価選別作業(伝統的なアーカイブズ業務の一部)自動化へのアプローチを紹介する。同公文書館ではレコード(記録)作成者および利用者が全く関与せずに(関与するとしても限定的な関与の下で)、業務情報システムがレコードのリテンションと処分を実行することがいかに可能であるか調査している。そして2014年に政府システム全体で自動化アプローチが導入された。このシステムは、ISO 16175(電子オフィス環境における記録のための原則及び機能的要求事項 Principles and Functional Requirements for Records in Electronic Office Environments)に完全に準拠したものであり、移管のための永久保存レコードと廃棄のための一時的レコードの選別を自動的に決定する。

★関連文献
バーバラ・バース(オーストラリア国立公文書館政策戦略計画部長)
「レコードマネジメントと「開かれた政府」改革:オーストラリアの事例」(PDF)
国立公文書館『アーカイブズ』46号(2012年2月)
http://www.archives.go.jp/publication/archives/wp-content/uploads/2015/03/acv_46_p07.pdf
http://www.archives.go.jp/publication/archives/category/no046


[書評]

[1]
タイトル:デジタル・アセット・マネジメント:2015ベストプラクティス・ガイド
原題:Digital Asset Management: 2015 Best Practices Guide
その他書誌情報:
http://www2.extesis.com/acton/form/1813/00a1:d-0004/1/index.htm
(リンク切れ。以下のページからアクセスできます。本文ダウンロードのためには登録が必要となります。)
http://www.extensis.com/company/press-releases/extensis-releases-new-digital-asset-management-best-practices-guide/
http://digital-asset-management.extensis.com/digital-asset-management-best-practices-guide
評者:スティーブン・マッキロップ
評者名原文:Stephen McKillop
評者所属等:ディアジェオ社マーケティング制作部長
評者所属等原文:Marketing Production Manager, Diageo plc
ページ:92-94
【編者より】
批評対象は米国オレゴン州ポートランドに本拠を置くエクステンシス社が2015年1月21日にリリースしたデジタル・アセット・マネジメントに関するベストプラクティスに関するガイド(オンライン出版物)。エクステンシス社はフォント管理とデジタル・アセット・マネジメント・ソフトウェアの開発・提供、コンサルティングを行う会社で、同社のソフトウェアは「エクステンシス」ブランドとして日本市場にも進出している。


[2]
著者:エイドリアン・ブラウン
著者名原文:Adrian Brown
タイトル:実践的デジタル保存:あらゆるサイズの組織のためのハウツー・ガイド
原題:Practical Digital Preservation: A How-to Guide for Organizations of any Size
その他書誌情報:Facet Publishing, London, 2013; 352pp; paperback; £49.95;
ISBN: 978-1-85604-755-5
評者:アンドリュー・ウェイドナー
評者名原文:Andrew Weidner
評者所属等:ヒューストン大学図書館 メタデータ・サービス・コーディネーター
評者所属等原文:Metadata Services Coordinator, University of Houston Libraries
ページ:95-96
Ciniiブックス:http://ci.nii.ac.jp/ncid/BB12839372
版元サイト内紹介ページ:
http://www.facetpublishing.co.uk/title.php?id=047555#.V0UKSjWLTcs
【編者より】
評者によると前半が理論、後半が実務に関する章。評者はこの入門書から得られる最も重要な部分は、デジタル・オブジェクトのマネジメント・ライフ・サイクルのあらゆる段階でデジタル保存に関する決定の機会が存在することである、と述べている。


[3]
著者:マーティン・ドュ・ソレス
著者名原文:Martin de Saulles
タイトル:情報2.0:情報の生産・流通・消費の新たなモデル 第2版
原題:Information 2.0 - New Models of Information Production, Distribution and Consumption. Second edtion.
その他書誌情報:Facet Publishing, London, 2015; 163pp; paperback; £49.95;
ISBN: 978-1-78330-009-9
評者:マイケル・ドーン
評者名原文:Michael Doane
評者所属等:ワシントン大学情報学大学院
評者所属等原文:Information School, University of Washington
ページ:97-98
NDLサーチ:http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I025038520-00
Ciniiブックス:http://ci.nii.ac.jp/ncid/BB12825006
版元サイト内紹介ページ:
http://www.facetpublishing.co.uk/title.php?id=300099#.V0ULsjWLTcs
【編者より】
評者は、私たちがデジタル情報を消費したり世界と共有するためにどのようなフォーマット、デバイス、場所、あるいは継続期間を選ぼうとも、デジタル情報という新しい世界を突き動かすものは「信頼」trust、「所有権」ownership、「コスト」costs、そして「アクセス」accessであることを、ドュ・ソレスは本書ですべて説明してくれている、という。


★☆★...編集部より...★☆★

[1]デジタル記録の真正性に関わる問題とインターパレス

アーカイブズ資料は記録としてある事象の「証拠」であるとともに、それに関する「情報」を提供してくれます。デジタルな媒体(メディア)でのアーカイブズ資料は、情報として再利用することが紙の時代に比べてずっと容易です。

一方、JDMMの主要な関心事ではありませんが、「証拠」という観点から見る時、デジタルなアーカイブズ資料には一つの大きな問題が潜みます。それは「真正性」に関わる問題です。アーカイブズ学の専門家たちは、この問題に対して「インターパレス」という国際的な共同研究を進めてきました。

詳しくは下記のサイトをご覧ください。
http://www.interpares.org/


[2]Facet Publishing について

書評で取り上げられている2冊の文献は英国の出版社Facet Publishingから刊行されています。この出版社はthe Chartered Institute of Library and Information Professionals (CILIP、英国図書館・情報専門家協会)という団体の出版部門に当たります。CILIPは日本で言うと、日本図書館協会に相当する団体で、大学における図書館情報学教育プログラムの認証評価・適格性認定(accreditation)を行うとともに、児童文学を対象としたカーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞の授与を行っています。出版部門では、狭い意味での図書館関係文献のみならず、博物館やアーカイブズに関わる文献も多数刊行しています。

★ファセット出版
Facet Publishing
http://www.facetpublishing.co.uk/

★英国図書館・情報専門家協会
Chartered Institute of Library and Information Professionals (CILIP)
http://www.cilip.org.uk/


[関連ページ]
※以下の項目は日本語版ウィキペディア「デジタル・アセット・マネジメント」の「外部リンク」から抜粋しました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E8%B3%87%E7%94%A3%E7%AE%A1%E7%90%86 (2016年5月25日アクセス)

公益社団法人日本印刷技術協会「広がるデジタル・アセッツ・マネージメント」
(2000年4月3日)
http://www.jagat.or.jp/past_archives/story/1511.html

バリー・ロック「あなたはどうやって自分のデジタル・アセットを守るのか」
(2006年4月25日)
Barrie Locke, How do you protect your digital assets
http://enterpriseinnovator.com/index.php?articleID=6532&sectionID=5

ジュディス・ラモント「DAM:アジャイル(迅速)かつ効果的」
(2006年10月27日)
Judith Lamont,DAM: agile and effective
http://www.kmworld.com/Articles/ReadArticle.aspx?ArticleID=18528

テリー・ロス「デジタル・アセット・マネジメント:アーカイビングのアート」(PDF)(1999年9月)
Teri Ross, Digital Asset Management: The Art of Archiving
http://www.techexchange.com/library/Digital%20Asset%20Management.pdf

マイクロソフト「SharePoint Server 2013 でのデジタル アセットの管理の概要」
https://technet.microsoft.com/ja-jp/library/ee414276.aspx


*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

[略称一覧]
ACA: Association of Canadian Archivists(カナダ・アーキビスト協会)
ARA: Archives and Records Association(アーカイブズとレコード協会)
ARC: ARC magazine: archives - records management - conservation
(SoAが発行する月刊ニュースレター)
ASA: Australian Society of Archivists(オーストラリア・アーキビスト協会)
BAC: Business Archives Council(ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BACS: Business Archives Council in Scotland
(スコットランド・ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BAS: Business Archives Section
(ビジネス・アーカイブズ部会:SAA内の部会)
CITRA: International Conference of the Round Table on Archives
(アーカイブズに関する国際円卓会議:ICAの年次会議)
CoSA:Council of State Archivists(米国・州文書館長評議会)
DCC: Digital Curation Center(英国デジタル・キュレーション・センター)
EDRMS:Electronic Document and Record Management System
(電子文書記録管理システム)
ERM:Electronic Record Management(電子記録管理)
ICA: International Council on Archives(国際文書館評議会)
LSE: London School of Economics and Political Science
(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)
MLA: Museums, Libraries and Archives Council
(英国 博物館、図書館、アーカイブズ評議会)
NAGARA: National Association of Government Archives and Records
Administrators
(米国・全国政府アーカイブズ記録管理者協会)
NARA: National Archives and Records Administration
(米国 国立公文書館記録管理庁)
RIKAR: Research Institute of Korean Archives and Records
(韓国国家記録研究院)
RMS:Record Management System(記録管理システム)
SAA: Society of American Archivists(米国アーキビスト協会)
SBA: Section for Business Archives
(企業アーカイブズ部会、ICA内の部会)
SoA: Society of Archivists(イギリス・アーキビスト協会)
TNA: The National Archives(英国国立公文書館)

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

☆★ 編集部より:あとがき、次号予告 ★☆

編集部では去る5月12日、神奈川県立公文書館2階大会議室で開催された「平成28年度 神奈川県歴史資料取扱機関連絡協議会第1回講演会"ビジネスアーカイブズの現状と課題"」を聴講してまいりました。講師は公益財団法人三井文庫上席研究員の吉川容氏です。講演は2部に分かれ、第1部は日本における企業史料の保存体制に関する考察、第2部は三井文庫の沿革・現況・所蔵史料に関する紹介でした。第1部では「企業史料の保存がなぜ進まないか」という項で、「企業経営にとってのメリットが見えない」「コストがかかる」という指摘がありました。メリットがはっきりするならば、たとえコストがかかっても経営者は投資を行うでしょうから、何よりも大切なのは一にも二にも「メリット」を目に見えるように示すことであるのを再確認しました。

第1部ではさらに「文書がボーンデジタル記録として作成されるようになると、きちんとデジタル管理がなされているならばすでに目録が存在する状態と言えるから、あらためてメタデータを付与するなどのコストなしに企業史料保存が可能となる可能性が存在する。一方、戦後の高度成長時代から21世紀初頭にかけての紙の資料が失われてしまう可能性も高い」という指摘がありました。紙文書とデジタル・ドキュメントが混在する現在、急いで対策を考える必要があると切実に感じます。

第2部で特に興味深かった点は、50年にわたる三井文庫の活動(戦前の三井文庫は第二次世界大戦後の財閥解体によって活動停止。1965年に公益機関として再発足)によって、三井研究のみならず商業史・経済史の実証的な研究が進展し、さらに他機関での史料公開の促進といった波及効果があったのでは、という指摘です。1996年には三菱史料館が開設され、1918年に家史編纂室として出発した住友史料館は2014年に史料公開を始めています。
(以上、当日配布資料「ビジネス・アーカイブズの現状と課題─三井文庫の事例より─」も参照しました。)

今回の催しは公文書館を会場として、ビジネス・アーカイブズに関する講演を聞くという催しでした。参加者も公的部門のアーカイブズ関係者が多かったのではないかと思います。異分野(非ビジネス組織)から参加の方々の感想をおうかがいしたいと思いました。

☆~~~☆~~~☆~~~☆~~~☆~~~☆~~~☆

本文でご紹介したICAコングレス・ソウル大会では日本の加藤丈夫国立公文書館館長が以下のタイトルでご講演されます。

「日本のアーカイブズの伝統をグローバル時代の新たな需要と調和させる:日本のビジネス・アーカイブズに焦点をあてて」(仮訳)
Reconciling Japanese Archival Traditions with the New Demands of the Global Age: Focusing on Business Archives in Japan

どのようなプレゼンテーションになるのか今から楽しみです。

ICAソウル大会の登録サイトもオープンしました。詳しくは次号お知らせいたします。
http://www.ica.org/en/ica-congress-registration-now-opened


☆~~~☆~~~☆~~~☆~~~☆~~~☆~~~☆

次号は2016年6月中旬発行予定です。どうぞお楽しみに。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――
◆◇◆バックナンバーもご活用ください◆◇◆

https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/index.html

―――――――――――――――――――――――――――――――――――
★公益財団法人渋沢栄一記念財団 実業史研究情報センターは2015年4月1日より組織改編に伴い、公益財団法人渋沢栄一記念財団 事業部情報資源センターに名称変更いたしました★

***********************************

ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信) No.65
2016年5月25日発行 (不定期発行)
【創刊日】2008年2月15日
【発行者】公益財団法人渋沢栄一記念財団事業部情報資源センター
【編集者】公益財団法人渋沢栄一記念財団事業部情報資源センター
「ビジネス・アーカイブズ通信」編集部
【発行地】日本/東京都/北区
【ISSN】1884-2666
【E-Mail】
【サイト】https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/index.html

***********************************

一覧へ戻る