ビジネス・アーカイブズ(BA)機能の構築、企業記録の保存・管理、活用に積極的に取り組む優良事例、およびビジネス・アーカイブズに関連する海外文献をご紹介します。
企業はモノの生産やサービスの提供などの事業により価値を創造し、社会の中で重要な役割を担っています。そして、事業を継続し価値を創造し続けることを通じて社会に貢献していく「公益」の追求こそが企業の使命といえます。
ビジネス・アーカイブズとは、このような使命を持つ企業において、創業から今日に至る会社と事業の歩みを示す長期保管記録です。アーカイブズは説明義務への対応(アカウンタビリティ)、企業アイデンティティの確立、継続性の担保に欠かせない貴重な経営資源です。
本ページにおいて優れた活用事例としてご紹介する各社の取り組みは、アーカイブズの活用が企業の社会的・公益的な活動に貢献している点を示すものです。
2024年5月21日~12月27日の期間、帝国データバンク史料館では常設展示室テーマ展示コーナーにおいて企画展「渋沢栄一と信用調査業」を開催。展示では、渋沢栄一の信用調査業に対する尽力と功績を振り返り、帝国興信所との関係とゆかりのエピソードを紹介しました。本稿は、本展示内容を改めて文章に興し、企業史料の活用事例として紹介したものです。(2024年10月1日発行)
政府のDX推進政策が進めば、今後10年のあいだに全国レベルで官民ともに業務プロセスのデジタル化が加速し、想像の域をはるかに超える量のボーンデジタル記録やデータが生成・蓄積されることが予測され、情報ガバナンスの必要性はさらに高まるでしょう。本稿では、DXと情報ガバナンスの関係性に注目し、英国ブレア政権が1999年に掲げたデジタル化政策のもと、記録の適正な管理と長期保存という課題に直面したイギリス国立公文書館の当時の取り組みに触れ、DX時代における記録管理の必要性について一考します。(2024年2月22日発行)
本稿は公益財団法人渋沢栄一記念財団の機関誌『青淵』第892号(2023.07)に掲載した記事を加筆修正したものです。極力専門的な用語や説明を省き、わかりやすい内容になるよう努めましたが、より詳しい情報原を紹介するため参考文献や注を充実させました。組織におけるデジタル記録の長期保存を考える上で、お役に立てれば幸いです。(2023年8月10日発行)
本稿は専門図書館協議会機関誌『専門図書館』2022年度特別号(2022年11月25日発行)に掲載された「“活用”を通して組織アーカイブズの価値を探る 総論2:組織アーカイブズとその“活用”:企業を中心に」の増補改訂版です。専門図書館員、とくに組織(企業)内図書館の司書、スタッフへのメッセージという性格を持っており、「組織アーカイブズとは何か」「収集アーカイブズとの違い」などについてわかりやすく解説しています。(2023年3月15日発行)
The content of this article was first delivered with the title of “Striking the Right Chord with Evidence: ‘Way, Trust, and Corporate Archives in Japan’ on November 15, 2018 at the joint conference of the BAC and the ICA SBA under the title of "Can you believe it...? Business Archives and trust" at The National Archives in London, the United Kingdom.
本稿では経営理念の継承のための企業アーカイブズとして草分けであり、日本の企業アーカイブズのモデル、ベンチマークであり続けてきたパナソニックの企業アーカイブズを取り上げて、企業アーカイブズと信頼の関係について掘り下げます。後半では特に、2018年の創業100周年を記念した100年史の編纂、歴史資産アーカイブズシステムの構築、パナソニックミュージアムエリア全体の活用を紹介しながら、アーカイブズのデジタル化と情報資産としての活用の意義についても考察します。(2019年2月26日発行)
本稿は、イギリス国立公文書館(TNA)が2017年3月に発行した「デジタル戦略 2017年3月」への解題です。TNAと英国政府のデジタルへの取り組みを展望し、ポジションペーパー「イギリス国立公文書館におけるデジタル目録作成実務」の概要についても紹介しています。「デジタル戦略」の日本語訳とともにお読み下さい。(2018年10月24日発行)
現在急速な勢いで進む社会全体のデジタル化に対応して、仕事・業務の進め方、それに伴う文書・記録の作成・管理に関する考え方・実務も劇的に変化しつつあります。本稿では、日本の研究者と実務家に大きな影響を与えてきたイギリス国立公文書館(TNA)の「デジタル戦略」を日本語に翻訳しました。ここでは「デジタル記録に関わる挑戦は、文書館が大きく変わる必要があることを意味している」と述べられています。(2018年10月24日発行)
本稿では日本における社史づくりの長期的動向を紹介しています。本稿の基となったのは、2013年4月にスイス・バーゼルで開催された国際アーカイブズ評議会企業労働アーカイブズ部会(ICA/SBL、現・国際アーカイブズ評議会企業アーカイブズ部会:ICA/SBA)国際セミナーでの発表 "75 Years of TOYOTA: Toyota Motor Corporation's latest shashi and trends in the writing of Japanese corporate history" (「トヨタの75年:トヨタ自動車の最新『社史』と日本における会社史づくりの動向」)の一部です。今後の社史づくり、企業アーカイブズの整備の方向性を考えるひとつの材料を提供してくれるでしょう。(2018年3月7日発行)
本稿は、過去10年近くにわたって取り組んできたHSBCの企業アーカイブズのデジタル化経験を、ARA会員とシェアすることを目的として行われた講演の記録です。急激に進む経済社会のデジタル化は企業アーカイブズとアーカイブズ専門職にどのような影響をもたらしているのか、デジタルによって可能となった相互につながる大量のデータ(ビッグデータ)はアーカイブズに関わる専門職(アーキビストやレコード・マネージャー)にとって敵なのか味方なのか。このような問いに対して、アーカイブズ専門職は今後どのような存在になることが求められるのか、を明らかにしています。(2018年1月20日発行)
企業アーカイブズが企業の競争優位性の創出に貢献する、すなわち企業経営にとって戦略的であることをどのように示すことができるか?著者によれば、経営者と同じ言葉を話す経営学者の学術論文の中に、この問いへの答えの手掛かりを見出すことができます。本稿は、「経路依存(path dependence)派」とその批判者たちの研究を検討し、企業の過去は遺産(ヘリテージ)として、「組織改革」や「コーポレート・アイデンティティ・ミックス」といった利用において、企業経営の戦略的イニシアティブの基盤になるべきであることを示しています。(2017年7月25日発行)
This article was presented in the panel session, ‘Communicating the Value of Business Archives to Our Stakeholders’, at the 2017 ICA SBA conference “The Future Roles of Business Archives”, held at the Eric Ericsson Hall, Stockholm, Sweden, 5-6 April, 2017. (Published on April 28, 2017)
本稿は2017年2月11日に岐阜市内で開催された「デジタルアーカイブin岐阜」(主催:NPO法人日本デジタル・アーキビスト資格認定機構、共催:岐阜女子大学)でのパワーポイント講演資料の内容をもとに論旨はそのまま新たに書き起こしたものです。(2017年3月14日発行)
This paper was presented at the International Council on Archives/ Business Archives Section 2016 Symposium in Atlanta, GA,the United States held on April 4 through 5. The theme of the conference was“Sustainability”. This article will focus on how in-house corporate archives can contribute to the sustainability of company beyond the top management change based on the case of Shiseido Co.,Ltd. and its corporate archives and museum. (Published on May 14, 2016)
経営トップの交代は企業内に大きな変化をもたらします。新しい経営体制の下でアーカイブズが果たす役割への理解が得られないこともあれば、経営に貢献するツールと評価されることもあります。両者を分けるものは一体何でしょうか。本稿では資生堂の企業文化部と資生堂企業資料館を取り上げます。同社のアーカイブズとミュージアムは、新しい経営トップによって会社のサステナビリティを支えるためのツールとしての積極的な評価を得ています。本稿ではそれが可能となった要因について考察します。(2016年5月14日発行)
企業におけるアイデンティティー・コンセプトの確立と、従業員をはじめとする利害関係者(ステークホルダー)間でのそのアイデンティティーの共有にアーカイブズは欠かせません。企業アーカイブズが企業アイデンティティーの形成と共有に貢献している事例として花王株式会社のアーカイブズを取り上げて見てゆきます。
なお、本稿は2012年8月にオーストラリア・ブリスベンで開催された国際アーカイブズ評議会(ICA)大会で、Neither Merger, Nor Acquisition, Nor Diversity, Nor Generational Change Can Stay Them: The Indispensible Role of Corporate Archives in the Identifying, Shaping, and Propagating of Corporate Identity と題して発表した後、ICA会誌 Comma 2013/1号 に掲載した記事 Archives and corporate identity in a changing business environment: The Case of the Kao Corporation の日本語版です。(2015年11月18日発行)
This paper was presented at the International Council on Archives/ Business Archives Section 2015 Symposium in Milan held on 15 through 16. The theme of the conference was“Creating the best business archive” . This article will focus on cross-industrial and cross-sector collaboration on business history exhibitions as a way of maximizing the effect and impact of business archives in advocacy with senior managers and for community involvement. Two examples have been chosen for this paper; those of the collaboration between food manufacturer Morinaga & Co., Ltd. and the Tobacco & Salt Museum, a non-profit affiliate of Japan Tobacco Inc.; and between Shibusawa Warehouse Co., Ltd. and the Shibusawa Memorial Museum, run by the Shibusawa Eiichi Memorial Foundation. (Published on August 22, 2015)
前編に続き、後編では澁澤倉庫株式会社と公益財団法人である渋沢栄一記念財団渋沢史料館の連携を取り上げます。前編・後編いずれのケースとも、営利企業と非営利団体間、相違する産業間の連携という、これまでにない試みとしてさまざまな成果を生み出しました。本稿では連携による展示を実現するに至った道筋を明らかにします。そして展示スペースを持たない企業とそのアーカイブズに対して、外部の博物館との間で相互に利益をもたらす協力を可能とする方法への洞察を提供します。(2015年8月22日発行)
近年、社史編纂以外の方法によって企業史料を活用することへの関心が高まってきています。そのひとつの方法が実業の歴史に関する展示です。本稿では、企業史料の持つインパクトと効果を最大化する方法として、実業に関わる歴史展示―産業間・セクター間の連携による─に取り組んだ事例に焦点をあてます。前編では森永製菓株式会社と公益財団法人たばこ総合研究センターが運営するたばこと塩の博物館の連携を取り上げます。(2015年8月22日発行)
The Bank of England was established in 1694 as the central bank of the United Kingdom. Although it had a section for archives and managed its records as far back as the 1930s, it was not until 1972 that professional archivists were employed to pursue a mission of preservation, collecting and cataloguing, and provision to the general public. This article gives a brief overview of the Bank and its Archive as well as looking at the relationship between the Archive and the BOE Museum and between records management and archives systems, archives provision policies and related rules and regulations, digitization and active information disclosure, and digital provision of information and records. (Published on July 25, 2015)