実業史研究情報センターの誕生

 「情報資源センター」(Information Resources Center)は、2003年11月に「実業史研究情報センター」(Resource Center for the History of Entrepreneurship)として発足。2015年4月に行われた公益財団法人渋沢栄一記念財団の改組により改称されました。

目次:
 1. 実業史研究情報センター設立趣意書(2003)
 2. 渋沢敬三「一つの提案」による日本実業史博物館構想(1937)
 3. 渋沢敬三による日本実業史博物館構想の経緯
 4. 小出いずみ「ウェブサイトは閲覧室 : 渋沢栄一記念財団実業史研究情報センターのサービス拠点」(2010)


1. 実業史研究情報センター設立趣意書(2003)

 渋沢史料館は、渋沢敬三の提案による、渋沢栄一記念日本実業史博物館の構想を、現在の情報技術を用いて実現します。

 実業史研究情報センターの設置は、現在の渋沢史料館が、資料とならんで情報提供を事業の柱に組み込んだ新たな文化機関として生まれ変わるための鍵となります。「情報資源化」は、さまざまな資料を索引化し、あるいは絵引きを作成した渋沢敬三の先見的な方法論であり、文化機関が「啓蒙」から「参加」の時代を迎えた今日において、最もふさわしいものです。

 渋沢敬三の構想した実業史博物館は、近代化・産業化・企業化という大変化の時代における人々の経済的社会的な軌跡を表そうというもので、モノつくりの伝統を重視しつつ、19世紀以降の文化接触と文化変容、またその反動に注目しています。さらにその大変化を担い、次の時代を創っていった人々の活動に注目しています。いま、60年以上も前の実業史博物館構想を再び取り上げるのは、「実業史」が将来に対してもつメッセージが現代にとっていっそう重要であるからです。現在は、経済の拡大・成長志向から、地球的規模で持続可能な生産と交易体系の構築が人類の生存にとって急務である、という、文明の大転換期を迎えています。この時期に、経済発展とモノつくりを見直し、人間の身の丈の視点から「実業」とは何かをもう一度考える材料を豊富に提供することが、未来を切り開くメッセージになる、と期待します。

 第一に、所蔵資料に関するデータベース、ならびに当館には属さない関係資料の情報案内データベースを、実業史関係の一大情報資源として開発・整備します。データベースには、資料に関する情報、資料の所在情報、研究情報などを組織して収蔵し、実業史に関する研究・教育・自学自習に資することを目指します。

 第二に、渋沢栄一の時代背景となる、近世から近代への経済社会の変遷を示す実業史関係の資料を拡充します。新たに収集する史資料には、さまざまな形態の資料、すなわち文字資料、画像資料、音声資料、映像資料、モノ資料等(原資料および二次資料)を網羅します。

 以上によって充実したコレクションを館内および館外で展示・上映し、開発した情報資源をもとに館内およびインターネットなどを通じて情報サービスを行います。さらに、研究活動支援や出版、教育普及用キットの作成などの活動を活発に行います。

 実業史研究情報センターの設置によって、渋沢史料館は、資料収集範囲を広げ、展示をリニューアルし、博物館・文書館・図書館情報サービス機能を統合した、文化機関の新たなモデルとなります。

開発予定の情報資源:社史データベース/実業史錦絵データベース/実業人データベース/博覧会データベース/渋沢関係データベース/実業史総合データベースなど●Graph/情報資源化/実業史関係/資料の拡充/アウトリーチ

2003年10月27日

 

2. 渋沢敬三「一つの提案」による日本実業史博物館構想(1937)

目的

[前略] この曖依村莊の一遇に近世經濟史博物館を建設したいのであります。凡そ博物館は一國一民族の教養を示す度合ともなるもので [中略]
 この内經濟に關する部門を引き離した、殊に幕末から明治へかけての我々國民にとつて最も異常なる劃期的な變化を如實に示すべき博物館は未だ何處にも企劃されてゐないのであります。近世以前の經濟史に就きましては他の基礎文化と分化し難いのでありますからこれは他の機關に委ねる事とし、叉挽近の科學を應用した最近代産業は他日建設する機會もあらうと思はれる工業博物館にまかす事とし、此處には青淵翁の一生に因んで丁度その誕生少し前より明治末期に至る我國民の經濟發展を示す所の近世經濟史博物館の建設を提案したのであります。

規模と内容

青淵翁記念室(100坪)

 翁遺愛ノ品、写真、著作物(筆跡、著書等)、模型、ジオラマ、図表等ヲ出来得ル限リ効果的ニ応用シテ、翁ノ伝記ヲ可及的如実ニ且簡明ニ展示シ、一目翁一代ノ変化性、多角性、一貫性ヲ見ルヲ得セシムルコト。此室ニ関スル限リ翁一生ノ序次ニナラヒ、経済以外ノ事項即チ教育、国際親善、労働問題、社会事業等総テヲ網羅スルコト

近世經濟史展觀室(450坪)

 文化文政ヨリ明治末葉迄ノ我国経済史ノ各部門ニ亘リ変遷並ニ発展道程、ソノ程度及方向、接触文化ニヨル変移ノ度合又ハソノ反動等ニ付テ基礎的ナリト考ヘラルルモノ並ニ特ニ商業史的ニ重要性アルモノ及ビ興味深キモノニシテ展観技術上効果的ナルモノヲ選ビ、実業教育及ビ社会教育ノ資料トナスコト。依テ軍事、外交、政治、学術、芸術、宗教、貴族文化、常民基礎文化ノ大部分ハ原則トシテ展観セズ必要ノ場合ニ限リ展示スルコト。又図書、文書ノ類ハ之ヲ青淵文庫ニ譲ルコト

肖像室(50坪)

 凡ソ功績ノ大小、貴賎貧富ヲ問ハズコノ時代ニ活躍シタル極メテ広義ノ経済人即チ近世ニ於ケル経済文化ニ貢献セル実業家、企業家、産業家、工業家、農業家、鉱業家、漁業家、学者、評論家、発明家、篤農家、其他ノ肖像ヲ出来得ル限リ蒐集シ一定ノ額縁ニ納メ、一々氏名並ニ略伝ヲ付シ、各部門ニ分類シテ之ヲ掲ゲ以テ祖先ニ対スル感謝景仰ノ念ヲ厚ウスルニ資シ又以テ経済招魂室トシテ社会教育ニ裨補シタキコト

 

3. 日本実業史博物館構想の経緯

  • 渋沢敬三、「一つの提案」起草(1937)
  • 竜門社による渋沢青淵翁記念実業博物館計画案正式決定(1937)
  • 実業史関係資料収集本格開始
  • 曖依村莊内地鎮祭(1939.5.13)
  • 戦争のため工事延期
  • 準備室と収蔵品を小石川の阪谷邸へ移動
  • 占領による阪谷邸の接収
  • 文部省史料館へ収蔵品を寄託、寄贈(1962)
  • 国文学研究資料館による 実業史博物館準備室旧蔵品のデジタル化(2002-2004)

・参考文献 : 大谷明史著『渋沢敬三と竜門社』(勉誠出版, 2015.03)


日本実業史博物館、当初の完成予想図写真


4. ウェブサイトは閲覧室