ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信)

第59号(2015年9月19日発行)

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☆      □■□ ビジネス・アーカイブズ通信 □■□

☆       No.59 (2015年9月19日発行)

☆    発行:公益財団法人 渋沢栄一記念財団 情報資源センター

☆                        〔ISSN:1884-2666〕
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この通信では海外(主として英語圏)のビジネス・アーカイブズ(BA)に関する情報をお届けします。

海外BAに関わる国内関連情報も適宜掲載しております。

今号は文献情報3件、企業団体情報1件です。

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◆ 目次 ◆

[掲載事項の凡例とご注意]

文献情報:りゅうごと天使:連携によるアーカイブズ展示(日本語版/英語版)

企業団体情報:ビジネス・アーカイブズ・カウンシル
 ◎会誌『ビジネス・アーカイブズ』 終刊

文献情報:「ファッション企業が秘密兵器を発見した:(それは)アーカイブズ」
 ◎『グローブ・アンド・メール』(本社:カナダ・トロント、2015年9月10日)

文献情報:「会社 無限のもの」
 ◎『チャイナ・デーリー・アジア』(本社:中国・香港、2015年9月15日)

☆★ 編集部より:次号予告 ★☆

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[掲載事項の凡例]

・欧文の場合、日本語で読みやすいものになるように、タイトルははじめに日本語訳を、続いて原文を記します。
・人名や固有名詞の発音が不明の場合も日本語表記を添えました。便宜的なものですので、検索等を行う場合はかならず原文を用いてください。

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[ご注意]
・受信時にリンク先を示すURLが途中で改行されてしまう場合があります。通常のURLクリックで表示されない場合にはお手数ですがコピー&ペーストで一行にしたものをブラウザのアドレス・バーに挿入し、リンク先をご覧ください。

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■文献情報:りゅうごと天使:連携によるアーカイブズ展示(日本語版/英語版)

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◎りゅうごと天使:連携によるアーカイブズ展示(日本語版/英語版)
Ryugo and the angel: Cross-industrial and cross-sector collaboration on business archives exhibitions in Japan
https://www.shibusawa.or.jp/center/news/info/post2015_08_22_71147.html

2015年6月にミラノで開催されたICA/SBA(国際アーカイブズ評議会 ビジネス・アーカイブズ部会)主催ビジネス・アーカイブズ国際シンポジウム「最良のビジネス・アーカイブズを作り上げる:投資に対し望ましい利益を得る」での本通信編集部による発表原稿を、当センター・ウェブページ「世界のビジネス・アーカイブズ、日本のビジネス・アーカイブズ」の「世界と日本の優良事例集」に掲載しました。

近年、社史編纂以外の方法による企業史料の活用への注目が高まっています。その一つが実業の歴史に関する展示です。本稿では、社史編纂が終わった後、目録作成・デジタル化といったアーカイブズ構築に取り組んだ担当者が、展示施設を持たないなかで創意工夫をこらし他機関との連携によって展示を行った事例、展示によってそれまでほとんど存在していなかった自社の歴史遺産を用いた地域社会との交流を活発化させた事例をご紹介しています。

【全体を通じてのタイトル】
タイトル:りゅうごと天使:連携によるアーカイブズ展示
タイトル原文:Ryugo and the angel: Cross-industrial and cross-sector collaboration on business archives exhibitions in Japan


【前編】森永製菓株式会社とたばこと塩の博物館
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc005_angel.html (HTML)
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/pdf/doc005_006_ryugo-and-angel.pdf (PDF)

[前編目次]
はじめに
1.特別展『森永のお菓子箱 エンゼルからの贈り物』(2011年11月3日~2012年1月9日、於・たばこと塩の博物館)
・たばこと塩の博物館
・森永製菓株式会社
・連携への道:目録整備・デジタル化を経て展覧会提案活動へ
・連携の実現:特別展『森永のお菓子箱 エンゼルからの贈り物』(2011年11月3日~2012年1月9日)
・連携の成果
・さらなる連携へ:北へ(盛岡へ)、南へ(佐賀・伊万里へ)
・[注]


【後編】澁澤倉庫株式会社と渋沢史料館
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc006_ryugo.html (HTML)
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/pdf/doc005_006_ryugo-and-angel.pdf (PDF)

[後編目次]
2.企画展「澁澤倉庫株式会社と渋沢栄一?信ヲ万事ノ本ト為ス?」(2012年3月17日~2012年5月27日、於・渋沢史料館)
・澁澤倉庫株式会社
・渋沢史料館
・連携のはじまり
・展示の内容とハイライト
・展示の成果とその後の発展
(1)会社が立地する江東区深川と澁澤倉庫とのつながりの再発見
(2)営利企業と文化施設の協力
(3)近隣小学校との交流の進展
(4)さらなる連携へ:「企業の原点を探る」シリーズ
おわりに
・[注]

日本語版の基になったのが下の英語版です。

▼英語版:Ryugo and the Angel: Cross-industrial and Cross-sector Collaboration on Business Archives Exhibitions in Japan
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc007_ryugo-and-angel_en.html (HTML)
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/pdf/doc007_ryugo-and-angel_en.pdf (PDF)

[英語版目次]
Introduction
1) Special Exhibition: Morinaga candy box: A gift from the angel, November 11, 2011 - January 9, 2012, at the Tobacco & Salt Museum
 The Tobacco & Salt Museum
 Morinaga & Co., Ltd.
 Forging connections: Morinaga candy box: A gift from the angel special exhibition
 Achievements of the exhibition
 Further collaboration: To the north (Morioka) and the south (Saga and Imari)
2) Special Exhibition: Shibusawa Warehouse Co., Ltd. and Shibusawa Eiichi: Trust as the Foundation of All Things, March 17 - May 27, 2012, at the Shibusawa Memorial Museum
 Shibusawa Warehouse Co., Ltd.
 The Shibusawa Memorial Museum
 Reconnecting: Shibusawa Warehouse Co., Ltd. and Shibusawa Eiichi:
 Trust as the foundation of all things special exhibition
 Achievements of the exhibition
Conclusion
[Notes]


★☆★ 編集部より ★☆★

シンポジウム時の発表スライドはICAのサイトで公開されています。
http://www.ica.org/download.php?id=3804 (PDF)
(その他の公開スライドについては次号で紹介する予定です。)


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■企業団体情報:BAC会誌『ビジネス・アーカイブズ』 終刊

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◎BAC会誌『ビジネス・アーカイブズ』の終刊
Discontinuation of Business Archives, the Journal of Business Archives Council
http://www.businessarchivescouncil.org.uk/materials/nlspring2015.pdfx/ (PDF) (4~5頁目のFUTURE OF THE JOURNAL記事)

昨年結成80周年を迎えたビジネス・アーカイブズ・カウンシル(BAC、本拠地ロンドン)のニューズレター2015年春号によると、BACは会誌Business Archivesの発行を終了するということです。最終号は2014年11月発行の109号。年に2回冊子として発行(紙で発行後PDFファイルでウェブサイト上で公開)してきたものです。

終刊の理由が四つ上げられています。一つは雑誌の質を維持するのが困難になってきたことです。同誌は年2回発行のうち、5月刊行号ではアーキビスト等実務者による資料に関する記事を、11月刊行号では歴史資料を用いた歴史家による記事を掲載してきました。しかし、歴史研究者は近年査読付きジャーナル以外への投稿に消極的になってきており、査読がない同誌への投稿を集めることが、とくに11月刊行号について困難になってきた、とあります。

二つ目の理由は編集者を探すことが困難になってきたこと。

三つ目は、近年各種会合における発表にパワーポイントが用いられることが多くなり、かつてのように完全に文章化された原稿が準備されないことが多く、これも会誌への原稿を集めるのを困難にしているということです。

四つ目は冊子印刷と郵送料の高騰です。

今後は、ウェブサイト、ニューズレター(紙とPDF)、ソーシャルメディアを通じて出版・情報発信活動を継続するとともに、他団体との連携によってビジネス・アーカイブズに関する記事を普及していくということです。この点に関連して、ニューズレター2015年春号最初の記事の中で、BAC議長のマイク・アンソン氏は英国国立公文書館の新館長のジェフ・ジェイムズ氏と会合を持ったこと、今後定期的に会合を持つことで合意したと述べている点が最も重要である、とアンソン氏本人が記しています。

最後に、紙の会誌発行停止に当たってのアンソン議長のコメントもそのまま引用しておきたいと思います。

「この知らせにがっかりする会員がいることは十分に承知している。しかし、何が達成可能なのかという点について、現実的でなくてはいけない。BACはその歴史を通じて、難しい選択を幾度か行い、新たな状況に適応できることを証明してきた。われわれは同じように再び、新たなワクワクするような方法で、ビジネス・アーカイブズの保存と活用を推進しつづけて行くであろうと私は確信している」

'I appreciate that this news will disappoint some members, but we have to be realistic about what is achievable. Throughout its history the BAC has proved itself capable of making tough choices and adapting to new situations. I am confident that we will do the same again and continue to promote the preservation and use of business archives innew and exciting ways.'


[関連ページ]

◎『ビジネス・アーカイブズ』バックナンバーのページ(1965年発行の22号から最終号109号までの全記事がPDFで掲載されており、検索、本文閲覧が可能です。)
http://www.businessarchivesjournals.org.uk/


◎ピーター・マサイアス
(オックスフォード大学オール・ソールズ・カレッジ 経済史教授)
「最初の半世紀:経営史、ビジネス・アーカイブズ、そしてビジネス・アーカイブズ・カウンシル」『ビジネス・アーカイブズ』第50号、1984年
Peter Mathias (Chichele Professor of Economic History, All Souls College, Oxford), The first half century: business history, business archives and the Business Archives Council, Business Archives, No.50, 1984.
http://public.bacs.daisy.websds.net/PDFFiles/Articles/50001.pdf (PDF)


◎BACの沿革...本通信に掲載した、日本語による沿革に関する記事です。
「行事情報:ビジネス・アーカイブズ・カウンシル(BAC)創立80周年記念大会」
[「ビジネス・アーカイブズ通信」54号(2014年10月31日発行)]
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20141031.html


◎『ビジネス・アーカイブズ』バックナンバー日本語目次

本通信で扱ったものは下記の通りです。ご参考にどうぞ。

・『ビジネス・アーカイブズ 理念と実践』 93号 2007年5月
[本通信テスト版第1号(2007年7月15日発行)]
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20070715.html

・『ビジネス・アーカイブズ 原資料と歴史』 94号 2007年11月
[本通信第3号(2008年4月18日発行)]
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20080418.html

・『ビジネス・アーカイブズ 理念と実践』 95号 2008年5月
[本通信第8号(2008年8月11日発行)]
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20080811.html

・『ビジネス・アーカイブズ 原資料と歴史』96号 2008年11月
[本通信第13号(2009年1月26日発行)]
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20090126.html

・『ビジネス・アーカイブズ 省察と思索』97号 2008年11月
[本通信第14号(2009年2月23日発行)]
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20090223.html

・『ビジネス・アーカイブズ 理念と実践』 98号 2009年5月
[本通信第22号(2009年10月2日発行)]
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20091002.html

・『ビジネス・アーカイブズ 原資料と歴史』99号 2009年11月
[本通信第25号(2009年12月25日発行)]
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20091225.html

・『ビジネス・アーカイブズ 理念と実践』 100号 2010年5月
[本通信第35号(2011年6月10日発行)]
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20110610.html

・『ビジネス・アーカイブズ』 108号 2014年5月
[本通信第52号(2014年7月15日発行)]
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20140715.html


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■文献情報:「ファッション企業が秘密兵器を発見した:(それは)アーカイブズ」
◎『グローブ・アンド・メール』(本社:カナダ・トロント、2015年9月10日)

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◎ナタリー・アトキンソン「ファッション企業が秘密兵器を発見した:(それは)アーカイブズ」
Nathalie Atkinson, Fashion companies have discovered their secret weapon: archives The Globe and Mail
Published Thursday, Sep. 10, 2015
http://www.theglobeandmail.com/life/fashion-and-beauty/fashion/fashion-companies-have-discovered-their-secret-weapon-archives/article26223189/

カナダ・トロントを本拠とする『グローブ・アンド・メール』紙オンライン版に、ファッション企業ではアーカイブズが戦略的価値を発揮している、という記事が掲載されています。記事の概要をご紹介します。
http://www.theglobeandmail.com/life/fashion-and-beauty/fashion/fashion-companies-have-discovered-their-secret-weapon-archives/article26223189/

これは9月10日付の記事で、タイトルは「ファッション企業が秘密兵器を発見した:(それは)アーカイブズ」。記事ではニューヨークの高級革製品メーカー・ブランドのコーチCoachなどアーカイブズに戦略的価値を見出している企業と、ファッション関係の企業やデザイナーを顧客とするフリーランスの専門アーキビストの例を取り上げています。


【コーチ、スキャパレッリ、ディオール】

コーチは1941年に創業し、まもなく創業75周年を迎えます。高級品市場で注目されることを目指す多くのファッション企業は、信頼性 authenticity にどんどんこだわるようになるといいます。コーチも例外ではなく、自分たちの豊かな歴史(そして社内アーカイブズ)こそが秘密兵器であると認識している、と記事は指摘しています。

上級アーキビストであるジェド・ウィノクールは7年前にコーチのアーキビストとなり、国際的な標準に従った保存条件で資料を整理・保管してきたということです。

イギリス出身のデザイナー、スチュアート・ヴィヴァースが2013年にコーチのエグゼクティブ・クリエイティブ・デザイナーに就任して最初に訪れたところのひとつがこのアーカイブズでした。最初は故意にアーカイブからは目をそむけようとしていたにもかかわらず、1962年から1970年代にかけて(当時は米国のスポーツウェアのデザイナー、ボニー・キャシンがコーチで活躍していたころ)のデザインから最大のインスピレーションを得たということです。

今春インスタグラムで熱狂的に(消費者によって)共有されたピンクとミント・グリーンのフェイクファー・コートは、キャシンのウィットに富んだスピリットを引用しているということです。商品の中にはかつてのデザインをそのまま反復したものもあります。ヴィヴァースの好みは、破壊や転覆のスタート地点としてクラシックを利用する、ということです。今秋のアクセサリーは1970年代のコーチのバッグからインスピレーションを得たものであるといいます。

上手に目録化されたブランド・ストーリーに戦略的な価値を認めるのはコーチに限りません。近年のパリにおけるエルザ・スキャパレッリ(イタリアの女性ファッション・デザイナー、1890-1973)のリバイバルは、商標とともに彼女のアーカイブズを買収したディエゴ・デッラ・ヴァッレ(イタリアの富豪、企業家)によるものでした。クリスチャン・ディオールのクリエィティブ・ディレクター、ラフ・シモンズの場合、ドキュメンタリー映画『ディオールと私』をみると分かるのですが、ディオールのオートクチュール・コレクションに初めてデビューする前にしたことのひとつは、1947年のディオールのコレクションのスケッチや材料見本をより分けていくことであったといいます。


【フリーランスの専門アーキビスト】

もともとはファッション・ジャーナリストであったジュリー・アン・オルシーニは、いったん2006年に大学院に戻ってコスチュームと博物館学の修士課程で学んだ後に、ファッション・デザイナーであるトム・フォード事務所のアーキビストの職を得ました。2011年には自分の会社を立ち上げ、ジェイソン・ウーやプロエンザ・スクーラーといったデザイナーや個人を顧客にアーキビストとして働いています。

保存用機材や収蔵施設の価格のため、アーカイブズを運営するのは高く付きます。しかし、オルシーニによると、過去の遺産であるヘリテージを目録化すること(記事は専門家向けではないので、整理ぐらいの意味です)は、クリエイティブな資本を増大させるだけでなく、ビジネス自体にとって有益です。ファッション企業の場合、アーカイブズはセレブリティたちが華やかな舞台に立つときの衣装のためのコラボレーション、小売り業者とのコラボレーション、店舗の装飾、出版物、展示・・・用途は限りがない、といいます。アーカイブズがないことは、チャンスを逃すことでもある、というオルシーニの言葉で記事は結ばれています。


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■文献情報:「会社 無限のもの」
◎『チャイナ・デーリー・アジア』(本社:中国・香港、2015年9月15日)

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◎チットレイレカ・バース「会社 無限のもの」
Chitralekha Basu, Company un-limited China Daily Asia
Published Tuesday, Sep. 15, 2015
http://www.chinadailyasia.com/focus/2015-09/15/content_15316347.html
http://www.chinadailyasia.com/focus/2015-09/15/content_15316347_2.html
http://www.chinadailyasia.com/focus/2015-09/15/content_15316347_3.html

香港を拠点とする『チャイナ・デーリー・アジア』オンライン版に掲載された香港のビジネス・アーカイブズに関する記事をご紹介します。掲載は2015年9月15日。

1865年に香港で開業したHSBCは今年3月3日創業150周年を迎えました。香港のHSBCアーカイブズでは1880年代後半から1950年代までの会議録、帳簿、アニュアル・レポート類が保存されています。最古の資料は1864年の会議録です。清朝時代の銀製インゴットなど文書資料以外にも貴重なモノ資料も所蔵しています。

主任アーキビストのヘレン・スウィナートンは2004年から同アーカイブズの管理を担当しています。香港のHSBCアーカイブズ自体は1970年代の半ばに設置され、歴代の頭取は外部の利用者にアーカイブズの門を開いてきました。この点をスウィナートンは非常に強調しています。HSBC職員の子孫からの問い合わせなども多いようで、外部からの問い合わせに答え、従業員の子孫たちのバラバラの歴史をひとつにまとめ上げるのに手を貸すことはたいへんやりがいがある、と述べています。


★☆★...編集部より...★☆★

この記事ではその他に香港社会発展回顧項目(Our Home, Our History: The Hong Kong Heritage Project, HKHP)も大きく取り上げられています。HSBCアーカイブズやHKHPの取り組みを通じて、香港ではアーカイブズが重要な情報資源として注目されつつあると感じられます。

なお、記事からも分かるように、香港のHSBCアーカイブズは所蔵資料が1950年代までのものに限られています。このことは歴史アーカイブズとして銀行外部からの利用を奨励する大きな要因であると考えられます。


[関連ページ]

・「企業団体情報:HSBCグローバル・アーカイブズ ロンドン(イギリス)」
[本通信第49号(2014年2月20日発行)]
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20140220.html#04

・「アジアアーカイブズ共同研究会主催セミナー『銀行アーカイブズの現状と課題』」
(ブログ「アーカイブズ工房」2013年12月8日)
https://archiveskoubou.wordpress.com/2013/12/08/banking-archives/

・香港社会発展回顧項目(Our Home, Our History: The Hong Kong Heritage Project, HKHP)
https://www.hongkongheritage.org/Pages/home.aspx

・「企業団体情報:香港档案学会『香港ビジネスアーカイブズグループ』香港商業歴史档案小組」
[本通信第40号(2012年8月10日発行)]
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20120810.html


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[略称一覧]
ACA: Association of Canadian Archivists(カナダ・アーキビスト協会)
ARA: Archives and Records Association(アーカイブズとレコード協会)
ARC: ARC magazine: archives - records management - conservation
(SoAが発行する月刊ニュースレター)
ASA: Australian Society of Archivists(オーストラリア・アーキビスト協会)
BAC: Business Archives Council(ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BACS: Business Archives Council in Scotland
(スコットランド・ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BAS: Business Archives Section
(ビジネス・アーカイブズ部会:SAA内の部会)
CITRA: International Conference of the Round Table on Archives
(アーカイブズに関する国際円卓会議:ICAの年次会議)
CoSA:Council of State Archivists(米国・州文書館長評議会)
DCC: Digital Curation Center(英国デジタル・キュレーション・センター)
EDRMS:Electronic Document and Record Management System
(電子文書記録管理システム)
ERM:Electronic Record Management(電子記録管理)
ICA: International Council on Archives(国際文書館評議会)
LSE: London School of Economics and Political Science
(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)
MLA: Museums, Libraries and Archives Council
(英国 博物館、図書館、アーカイブズ評議会)
NAGARA: National Association of Government Archives and Records
Administrators
(米国・全国政府アーカイブズ記録管理者協会)
NARA: National Archives and Records Administration
(米国 国立公文書館記録管理庁)
RIKAR: Research Institute of Korean Archives and Records
(韓国国家記録研究院)
RMS:Record Management System(記録管理システム)
SAA: Society of American Archivists(米国アーキビスト協会)
SBL: Section for Business and Labour Archives
(企業労働アーカイブズ部会、ICA内の部会)
SoA: Society of Archivists(イギリス・アーキビスト協会)
TNA: The National Archives(英国国立公文書館)

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☆★ 編集部より:あとがき、次号予告 ★☆

最近立て続けに日系アメリカ人美術作家イサム・ノグチ(1904-1988)を記念するノグチ美術館関係の情報を目にする機会がありました。

ひとつは、アメリカ・アーキビスト協会(SAA)のメーリングリストです。イサム・ノグチの作品群を展示するノグチ美術館(正式名称はイサム・ノグチ財団および庭園美術館、所在は米国ニューヨーク州ロングアイランド市)がアーキビストとプロジェクト・アーキビストを求めているというお知らせでした。
http://forums.archivists.org/read/messages?id=156228
http://forums.archivists.org/read/archive?id=156228

「アーキビスト」とは何か、という質問に応えるのはなかなか難しいと思います。資格制度が発達している国ではある一定の技術や知識を持つことを認められた専門家のことを主として指すこともありますし、資格とは無関係に、過去の資料を整理・保存・提供するような仕事に携わっている人がそのように名乗る場合もあります。実態としてはかなり幅広い業務内容を含むものだと思います。求人広告における「アーキビスト」の職務記述はどのようになっているのかを確認することによって、その職務の多様性や共通部分を知ることができます。

[アーキビストに関する説明と募集]
http://www.noguchi.org/about/jobs/archivist
[プロジェクト・アーキビストに関する説明と募集]
http://www.noguchi.org/about/jobs/project-archivist

ノグチ美術館で求められているアーキビストの職務には、所蔵品の整理・収集、それらをデジタル化した資料データベースの管理、外部の研究者との協力、画像や複製に関わる権利処理、著作権申請の処理と著作権侵害への対応、展示用・高解像度による画像が必要な場合の写真撮影、インターンの管理(ファイリングや整理を指示するほか、日本語資料の翻訳にあたらせるなど)、アーカイブズ的な図書資料の再整理、組織アーカイブズのためのレコード・マネジメント、ノグチ作品の完全な目録化のためのノグチ作品の画像収集、学芸部門との協力、広報部門との協力、出版物編集作業、所蔵資料のデジタル化・・・等が上げられています。

また2015年春からヘンリー・ルース財団より助成金を得て3年間の予定で進められる、博物館のデジタル・アーカイブズ・リソース・センターのための取り組みでのリーダーシップも求められています。これは大規模なデジタル化プロジェクトで、撮影、目録作成、EADによる検索手段の作成、出版事業などが含まれています。

さて、上の求人案内が公開される少し前の9月10日には「ウォール・ストリート・ジャーナル」サイトに、フレッド・バーンスタインによるノグチ美術館に関する記事が掲載されました。タイトルは「イサム・ノグチによる作品群の不確かな将来」です。記者は米国のノグチ美術館と日本の香川県牟礼町にあるイサム・ノグチ庭園美術館のこれまでと、これからについて、二つの美術館の関係者に取材しています。本通信編集部が興味深く読んだのは、〈一人の個人をテーマ・対象とした二つの美術館〉を運営していくことの困難さの一例として上げられていた、文化の相違の問題(culture clash)です。展示物の石に日本では毎日水を掛けるのに対して、これを米国側はふさわしくないと考えているという一節がありました。またノグチ自身は日本人の血を引きながらも、あくまでアメリカ人であり、アメリカ人芸術家という基準で見てもらいたいと米国側は考えるのですが、日本側ではノグチの中にある日本的・東洋的な部分を大切にしたい、という思いがあり、必ずしもすべてが調和的に進んではいない、という趣旨でした。
http://www.wsj.com/article_email/the-uncertain-future-of-isamu-noguchis-works-1441892679-lMyQjAxMTA1ODE1MTAxODE4Wj

今後3年間のデジタル・アーカイブズ・リソース・センターの構築と併せて、日本における庭園美術館の今後も気になります。

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次号は2015年10月中旬発行予定です。どうぞお楽しみに。

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◆◇◆バックナンバーもご活用ください◆◇◆

https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/index.html

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★公益財団法人渋沢栄一記念財団 情報資源センターは2015年4月1日より組織改編に伴い、公益財団法人渋沢栄一記念財団 事業部 情報資源センターに名称変更いたしました★

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ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信) No.59
2015年9月19日発行 (不定期発行)
【創刊日】2008年2月15日
【発行者】公益財団法人渋沢栄一記念財団事業部情報資源センター
【編集者】公益財団法人渋沢栄一記念財団事業部情報資源センター
      「ビジネス・アーカイブズ通信」編集部
【発行地】日本/東京都/北区
【ISSN】1884-2666
【E-Mail】
【サイト】https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/index.html

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