ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信)

第13号(2009年1月26日発行)

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☆      □■□ ビジネス・アーカイブズ通信 □■□

☆      No.13 (2009年1月26日発行)

☆   発行:財団法人渋沢栄一記念財団 実業史研究情報センター

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この通信では海外(主として英語圏)のビジネス・アーカイブズに関する情報をお届けします。

今号は開催予定の行事情報1件と文献情報5件です。

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◆ 目次 ◆

[掲載事項の凡例]

■文献情報:アーカイブズとウェブ 1
  □ホワイトハウスのウェブ・アーカイビング

■文献情報:アーカイブズと法律 2
  □「2009年大統領記録法修正条項」米国議会下院通過 2009年1月

■文献情報:アーカイブズ政策 1
  □英国「企業史料のための国家戦略(イングランド&ウェールズ)(案)」 2009年1月

■行事情報:米国アーキビスト協会(SAA)ワークショップ 2009年3月
  □「ビジネス・アーカイブズ アーカイブズの設立と運営」

■文献情報:英国デジタル・キュレーション・センター(DCC)
  □設立趣意書と行動指針に関する声明 2009年1月

■文献情報:『ビジネス・アーカイブズ 原資料と歴史』96号 2008年11月

[略称一覧]

☆★ 編集部より:次号予告 ★☆
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[掲載事項の凡例]
・文献情報「企業史料のための国家戦略(イングランド&ウェールズ)(案)」では草案の目次情報を掲載します。最初に日本語訳、続いて原文を掲載します。
・文献情報『ビジネス・アーカイブズ 原資料と歴史』には、最初に文献の「タイトル・著者等の書誌事項」を掲載し、[論説]に関してはタイトル、著者名、所属等、ページを掲載します。また編集部による一行解説を付します。[書評]には、著者名、タイトル、評者名、評者所属等を掲載します。また編集部による一行解説を付します。
・タイトル、編著者名、所蔵等には、編集部による日本語訳を付します。
・日本語で読みやすいものになるように、はじめに日本語訳を、続いて原文を記します。
・著者名の発音が不明の場合も日本語表記を添えました。便宜的なものですので、検索等を行う場合はかならず原文を用いてください。

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■文献情報:アーカイブズとウェブ 1

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□ホワイトハウスのウェブ・アーカイビング

1月20日、第44代アメリカ合衆国大統領にバラク・オバマ連邦上院議員が就任しました。これに伴い、ホワイトハウスのウェブページも一新されました。ジョージ・W・ブッシュ前大統領時代のホワイトハウスのウェブページは何処で保存されているのでしょうか?

答えは大統領図書館(Presidential Libraries)です。米国国立公文書館(NARA)の一部を構成する大統領図書館、ブッシュ大統領の場合はブッシュ大統領図書館(The George W. Bush Presidential Library)が過去の大統領時代のホワイトハウスのウェブページを保存しています。現在ウェブ上で見ることのできるものは2009年1月現在のサイトです。
http://www.georgewbushlibrary.gov/white-house/

その前のクリントン大統領の場合、クリントン大統領図書館・博物館(Clinton Presidential Library and Museum)が同様に元大統領時代のホワイトハウスのウェブページを保存しています。こちらは、バージョン1から5まで5つの時期のサイトを見ることができます。バージョン1は1995年1月、2は1999年8月、3は2000年7月、4は2000年7月から12月にかけて(音声は7月から12月、動画が8月から11月、文書は8月)のウェブサイトのページです。バージョン5はクリントン政権時代最後のサイトです。
http://www.clintonlibrary.gov/archivesearch.html
(アーカイブされたウェブページの簡単検索)
http://www.clintonlibrary.gov/archivesearch-advanced.html 
(アーカイブされたウェブページの高度な検索)

日本の場合も歴代首相官邸のウェブページのアーカイブズがあります。最大の違いは検索専用ページの有無です。官邸サイトではトップページに検索窓がありサイト内を検索できます。一方大統領図書館のほうは、検索専用のページが作成されています。資料へのアクセスをより容易にするツールのひとつでしょう。クリントン大統領図書館・博物館の場合は、簡単検索と高度な検索という2種類の検索メニューを持っています。さらに、公文書管理制度の違いに由来しますが、大統領図書館が管理する過去のホワイトハウス・ウェブページはすべて国立公文書館(NARA)のサイトの一部です。

[関連ページ]

ホワイトハウス・ホームページ
http://www.whitehouse.gov/

ジョージ・W・ブッシュ大統領図書館
(テキサス州ダラスのサザン・メソディスト大学キャンパス内)
http://www.georgewbushlibrary.gov/

ウィリアム(ビル)・J・クリントン大統領図書館・博物館
http://www.clintonlibrary.gov/index.html

米国国立公文書館(NARA)大統領図書館ウェブページ
http://www.archives.gov/presidential-libraries/index.html

政権移行プロジェクト・ホームページ
http://whitehousetransitionproject.org/

首相官邸ホームページ
http://www.kantei.go.jp/

歴代内閣ホームページ情報
http://www.kantei.go.jp/jp/rekidaisouri-index.html

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■文献情報:アーカイブズと法律 2

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□「2009年大統領記録法修正条項」米国議会下院通過 2009年1月
"Presidential Records Act Amendments of 2009"

http://historycoalition.org/2009/01/07/presidential-records-reform-act-is-first-bill-passed-by-the-new-house/

大統領記録へのアクセスを制限することを定めたブッシュ大統領令13233号(2001年11月)を修正する条項が米国下院において359対58で可決されました。この修正条項の正式名称は、H.R. 35, the "Presidential Records Act Amendments of 2009"です。これは米下院で今年に入って最初に可決された法案です。オバマ大統領も大統領令13233号を破棄することをすでに態度表明しています。

2007年3月にも同様の修正条項案が上程されましたが、この時は大統領拒否権の行使の表明によって法案は成立しませんでした。

「2009年大統領記録法修正条項」は次のことを要求しています。

・ブッシュ大統領令13233号は、レーガン大統領による行政命令を否定して、現職もしくは過去の大統領及び副大統領に大統領記録の公開を一定期間もしくは無期限差し止める権利を与えました。今回の修正条項はこれを無効として、適時公開することを保障するものです。(これはレーガン大統領命令に戻すことを意味します。)

・ブッシュ大統領令13233号は、国立公文書館長は大統領記録の公開にあたって、現職もしくは過去の大統領が無期限で当該記録をレビューするあいだ、公開を待たねばなりません。修正条項では、このレビュー期間は40日に限定されます。

・ブッシュ大統領令13233号は、過去の大統領に無期限で記録公開を差し止める行政特権を実質上与えています。修正条項では、過去の大統領によるこの行政特権を拒否する決定権を現職大統領に与えるものです。(これもレーガン大統領による行政命令に戻すことを意味します。)

・ブッシュ大統領令13233号では、行政特権による主張は過去の大統領が指名した者によってもなしうるとされました。修正条項はこれを否定し、行政特権を主張できる権利は現職ないし過去の大統領本人に限られるとしています。

・ブッシュ大統領令13233号では、副大統領記録に対する過去の副大統領の行政特権を認めました。修正条項はこれを否定し、大統領記録に対する行政特権は大統領にのみ与えられるとしています。

[関連ページ]

ブッシュ大統領の行政命令13233号(2001年11月)Bush Executive Order 13233
http://frwebgate.access.gpo.gov/cgi-bin/getdoc.cgi?dbname=2001_register&docid=f:05noe0.pdf

「2009年大統領記録法修正条項」(2009年1月)
http://frwebgate.access.gpo.gov/cgi-bin/getdoc.cgi?dbname=111_cong_bills&docid=f:h35ih.txt.pdf

大統領記録に対するオバマ新大統領の考え
http://change.gov/agenda/ethics_agenda/
「大統領記録公開:オバマとバイデンは大統領記録の時宜にかなった公開をより困難にする試み[訳注:大統領命令13233号のこと]を無効にする。」
Release Presidential Records: Obama and Biden will nullify attempts to make the timely release of presidential records more difficult.

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■文献情報:アーカイブズ政策 1

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□英国「企業史料のための国家戦略(イングランド&ウェールズ)(案)2009年1月」
  National Strategy for Business Archives (England & Wales) Draft January 2009

今月初旬「企業史料のための国家戦略(イングランド&ウェールズ)(案)」が発表されました。これは英国国立公文書館(TNA)、英国アーキビスト協会(SoA)、ビジネス・アーカイブズ・カウンシル(BAC)、博物館・図書館・アーカイブズ評議会(MLA)、ウェールズ議会政府、英国経済史学会、英国経営史家協会が出資者になりパートナーシップを形成して策定を進めている「企業史料のための国家戦略(イングランド&ウェールズ)」の草案です。

この草案に関する簡単な説明がSoAのサイトに掲載されています。この戦略が目指すのは、産業界・学会における企業史料の価値認識を高め、これまで一部産業に偏りがちであった企業史料の保存を産業全体に広げ、企業における業務の観点から価値あるものであることを認識してもらい、さらにより良い保存と将来の活用が保障されるといったことです。

草案をまとめたのは国立公文書館がとりまとめを委託したケイティ・ローガン Katey Logan(ビジネス・アーカイブズ・コンサルタント)です。彼女はバーマー・キャストロル社(Burmah Castrol)とブーツ社(Boots The Chemists)でアーカイブズ、博物館、記録管理を立ち上げた経歴をもっているほか、ビジネス・アーカイブズ・カウンシル(BAC)の理事も務めたことがあります。BACのニューズレター2008年夏号2ページに、この国家戦略案とケイティ・ローガンに関する記事があります。これによると、最終的な文書は今年の4月に公表される予定です。
http://www.businessarchivescouncil.org.uk/materials/draftbusinessstrategy.pdf

草案の最後にCrown copyright(国家著作権)とありますので、この文書のステータスは英国政府によって作成された著作物にあたります。(国家著作権を設定された著作物は、原則として自由に複製することができますが、内容を改変することはできません。)

草案の目次情報をお伝えしましょう。

[目次]

1. 要旨 Executive summary /1
  企業史料と社会 Business archives and society
  企業史料とはなにか? What are business archives?
  なぜ企業は自分たちのアーカイブズを管理するのか?
   Why do companies manage their archives?
  どのように企業は自分たちのアーカイブズを利用するか?
   How do companies exploit their archives?
  国家戦略 National Strategy

2. 範囲 Scope /5
  定義 Definitions

3. 戦略目標 Strategic goals /6

4. 戦略状況と背景 Strategy context and background /7
  i. 企業状況 Business context
  ii. 文化的およびプロフェショナルな状況 Cultural and professional context

5. 現状評価 Current status review /10
5.1. 企業アーカイブズ部門 Corporate archives sector /10
5.2. 国立公文書館 The National Archives /10
5.3. 地方自治体アーカイブズ Local authority archives /10
5.4. 大学アーカイブズ University archives /11
5.5. 国立、地方、独立博物館 National, local and independent museums /11
5.6. 「テーマ別」ならびにコミュニティ・アーカイブズ
  "Subject" and community archives /11
5.7. 専門的な養成 Professional training /11

6. 戦略上のリスク Strategic risk / 13
6.1 企業史料の脆弱性 Vulnerability of business archives /13
  i. 専門家チームがまれなこと Rarity of professional teams
  ii. 経営状態が芳しくない企業 Failing business
  iii. 法令上の限界 Statutory limitations
  iv. 21世紀の企業のための対策 Provision for 21st century companies
  v. 電子記録 Electronic records

6.2 企業アーカイブズ部門の持続性
  Corporate archives sector sustainability /13
  i. 景気後退 Economic recession
  ii. グローバリゼーション、合併、買収、非公開株式会社買収、組織改編、移転
   Globalisation, mergers, acquisitions, private equity buy-outs, organisational change and relocation
 iii. 企業史料の価値に関する企業の認識の低さ
   Low awareness of the value of business archives to companies
  iv. 企業部門の代表性 Business sector representation
  [訳注:現存の企業アーカイブズが金融部門、伝統企業に偏っていること]
  v. 継続性 Contituity

6.3 公共部門アーカイブズにおけるコレクション管理の課題
  Collection management issues in public sector archives /14
  i. 目録作成 Cataloguing
  ii. 利用 Usage
  iii. 保管 Storage
  iv. アクセス Access
  v. 寄託条件 Terms of deposit

7. 戦略的行動 Strategic actions /15
7.1 史料を保持する価値に対する認識を企業の中で高める
  Increasing awareness among businesses of the value of keeping archives /15
7.2 企業史料を認識して評価する
  Recognising and evaluating business archives /15
7.3 ネットワークと協力をより強める
  Developing stronger networks and partnerships /16
7.4 リーダーシップ、教育、専門的な訓練
  Leadership, education and professional training /16

8. 実行 Implementation /17
8.1 史料を保持する価値に関する認識を企業の中で高める
  Increasing awareness among businesses of the value of keeping archives /17
8.2 企業史料を認識して評価する
  Recognising and evaluating business archives /18
8.3 ネットワークと協力をより強める
  Developing stronger networks and partnerships /19
8.4 リーダーシップ、教育、専門的な訓練
  Leadership, education and professional training /20

9. 資金調達戦略の実行 Funding strategy implementation /21

10. 付録 Appendices /22
10.1 企業データ Business data /22
10.2 アーカイブズへの宝くじ文化基金からの資金拠出
  Heritage Lottery funding for archives /22
10.3 大学アーカイブズからの資金調達の機会と活動
  University archives funding opportunities and activities /23
10.4 歴史的文脈−企業の記録を管理する
  Historical context-managing business records /24
10.5 企業史料SWOT分析 Corporate archives SWOT analysis /24
  [訳注:SWOTとは「長所」(Strength)、「弱点」(Weakness)、「機会」(Opportunities)、「脅威」(Threats)]

要旨冒頭の「企業史料と社会」の部分には次のように記されています。

「英国は産業革命の生誕地であり、英国企業の歴史的記録は、イギリスのみならず世界中の多くの国々の経済的、政治的、社会的発展に関して、極めて重要な記録を提供するものである。

企業の成功と失敗に関する教訓は、現在の企業リーダーたちの思考に知識を与え、新しいグローバル経済における競争上の優位性を促進しうる。社会的にも文化的にも、企業はすべてを含んだものである。すなわち、企業は国民経済ならびに地方経済に資金を供給して活気づけ、従業員であれ消費者であれすべての英国市民の生活に関わるのである。企業の成功と失敗はまた、コミュニティを経済的にも物理的にも規定し、その結果コミュニティの人々をも規定するのである。社会の団結と文化的アイデンティティにとって、企業の遺産が忘れられたり、うつろいやすい人間の記憶の中だけにとどめられることは危機的なことである。

生き残った企業史料コレクションは英国産業史の記録のわずかにすぎない。それらは広範な商業ならびに産業の全分野をカバーしていない。そしてしばしば、複雑で、目録がなく、それらを所有する私企業にあるためにアクセスすることができない。多くの企業は自分たちのアーカイブズの価値に無自覚で定期的に史料を破棄している。」

上にあげた草稿冒頭の部分は、日本にも共通する点が多々あるように思います。

この草稿に対して、SoAは協会としての意見を出すために、今月末を締め切りに会員に対してコメントを求めています。またこの草案へのパブリック・コメントも2月6日締め切りで募集中です。今後、寄せられた意見をもとに最終版が策定される予定です。

なお、「4.戦略状況と背景」の中に次のような一節がありました。それは、2004年1月に出された博物館に関連するニコラス・グディソン卿(Sir Nicholas Goodison)による報告書が、企業史料の保存、保護、アクセスにかかる費用を会社税算定前にコストとして含めることができるよう、内国歳入庁に勧告し、現在この勧告は、政府の歳入と課税に関する指針に含まれているということです。私文書に分類される企業史料の保存促進には、税制上の優遇政策は数少ない有効な手段のひとつであるように思われます。

[関連ページ]

英国国立公文書館(TNA)
http://www2.nationalarchives.gov.uk/default.htm

ビジネス・アーカイブズ・カウンシル(BAC)
http://www.businessarchivescouncil.org.uk/

博物館・図書館・アーカイブズ評議会(MLA)
http://www.mla.gov.uk/

ウェールズ議会政府
http://wales.gov.uk/?lang=en

英国経済史学会
http://www.ehs.org.uk/

英国経営史家協会
http://www.busman.qmul.ac.uk/abh/

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■行事情報:米国アーキビスト協会(SAA)ワークショップ
   ハーバード・ビジネス・スクール/ベーカー図書館歴史コレクション 共催

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□「ビジネス・アーカイブズ...アーカイブズの設立と運営」ワークショップ
   2009年3月25-27日 ハーバード・ビジネス・スクール

http://saa.archivists.org/Scripts/4Disapi.dll/4DCGI/events/130.html?Action=Conference_Detail&ConfID_W=130&Time=-2073571516&SessionID=3667092rm1ub9p1iliekt7pzi29qd2gb4m33t66c0fxe08k7711nt2wbpa9u2a64

SAAはアーキビストの専門職団体として、アーカイブズに関わるさまざまな継続教育プログラムを開発・運営しています。今回ご紹介するのはビジネス・アーカイブズで働く人を対象としたワークショップです。

SAAの案内によると、この3日間のプログラムにはハーバード・ビジネス・スクール・アーカイブズ、ボストン交響楽団アーカイブズ、ボストン連邦準備銀行アーカイブズの見学ツアーが組み込まれているほか、アーカイブズ、企業内ライブラリー、記録管理、そして情報センターといった他部署との連携についても取り上げられるということです。

ワークショップの効果として次の8点があげられています。
・アーカイブズ理論の基本原理と企業内におけるそれらの実際の運用を理解する。
・アーカイブズをどうやって上手に社内に売り込み、アーカイブズ・プログラムへの強力な支援体制を構築するか学ぶ。
・今日のビジネス・アーキビストが直面する法律問題を検討する。
・適切なコレクション戦略と実践的な業務計画を開発する。
・所属組織が所蔵する記録のための保存戦略をどのように開発するか知る。
・電子記録、変化する技術、そして多様なファイル形式を扱う現代のビジネス・アーキビストが直面している重大問題に関する全体像を知る。
・現場のビジネス・アーキビストと語ることによって、彼らがコレクション管理にどう対処しているのかを知る。
・新しい見方と測定可能なアーカイブズに関する標準規格を携えて自分の職場に戻ること。

[日程]
3月25日-27日、午前9時から午後5時

[講師]
エリザベス・W・アドキンス Elizabeth W. Adkins, CA
フィリップ・ムーニー Philip Mooney

[受講料(2月27日以前申し込み/それ以降申し込み)]
SAA個人会員:499ドル/549ドル
SAA機関会員従業員:534ドル/584ドル
非会員:569ドル/619ドル

[定員]
25名

[関連ページ]

ハーバード・ビジネス・スクール
http://www.hbs.edu/

ベイカー図書館歴史コレクション
http://www.library.hbs.edu/hc/

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■文献情報:英国デジタル・キュレーション・センター(DCC)
  「設立趣意書と行動指針に関する声明」 2009年1月

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□英国DCC「設立趣意書と行動指針に関する声明」公開ならびに意見募集
DCC Charter & Statement of Principles

DCCは英国の学術機関で、共同情報システム委員会(Joint Information System Committee: JISC)、eサイエンス中核プログラム(e-Science Core Programme)の二つの学術機関が出資する団体です。学術機関あるいは研究者が生成するデジタル・データの保存と管理、利用を促進するための活動を行っています。最近新たな「設立趣意書と行動指針に関する声明」が公表されて、これに対する意見募集中です。
http://www.dcc.ac.uk/charter/

この設立趣意書案によると「デジタル・キュレーションとは現在および将来のために、信頼されるひとまとまりのデジタル情報を保持し、価値を付与すること。デジタル・キュレーションは情報のライフサイクルを通じてデータの積極的な管理を網羅する。」とあります。

この趣意書案にはその他「なぜキュレートなのか?」「データとは何か?」「いつキュレートするのか?」「誰が責任を担うべきなのか?」「どうやってキュレーションがなされるのか?」といった項目が含まれます。curation(名詞)、curate(動詞)、どちらも日本語に訳しずらい言葉ですね。

行動指針に関する声明案の方では、DCCの活動が10項目あげられています。

[関連ページ]

DCCホーム
http://www.dcc.ac.uk/

調査
http://www.dcc.ac.uk/adding/public_survey/

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■文献情報:『ビジネス・アーカイブズ 原資料と歴史』96号 2008年11月

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□『ビジネス・アーカイブズ 原資料と歴史』96号 2008年11月

ロンドンに本部があるビジネス・アーカイブズ・カウンシルが発行する定期刊行物『ビジネス・アーカイブズ』の最近号の目次情報をお届けします。『ビジネス・アーカイブズ』は年2回、5月と11月に発行されます。毎年5月に発行される号には『ビジネス・アーカイブズ 理念と実践』(原題:Business Archives Principles and Practice)、11月に発行される号には『ビジネス・アーカイブズ 原資料と歴史』(原題:Business Archives Sources and History)というタイトルが付けられています。『理念と実践』のほうはビジネス・アーカイブズ資料の管理や活用といった側面を、『原資料と歴史』のほうはビジネス・アーカイブズを資料として利用した歴史研究、あるいは資料紹介に関する論説が掲載されています。今回ご紹介する96号(2008年11月)は『原資料と歴史』号です。

『ビジネス・アーカイブズ 原資料と歴史』96号 2008年11月
Busienss Archives Sources and History
Number 95
November 2008
ISSN 0007-6538

編集者:マイク・アンソン Mike Anson
書評編集者:ロイ・エドワーズ Roy Edwards
発行者:ビジネス・アーカイブズ・カウンシル Business Archives Council
慈善団体登録番号:CHARITY NO. 313336

[論説]

◆日本語タイトル:「このうえなく退屈で整った議事録」:鉄道清算所の記録 1923‐63
原題:'Minutes most innoucous and neat': the records of the Railway Clearing House, 1923-63
著者名:ロイ・エドワーズ
著者名原文:Roy Edwards
所属等:サウザンプトン大学
所属等原文:University of Southampton
ページ:1-13
一行解説:英国の鉄道清算所(Railway Clearing House: RCT)は1842年に設立された。その本来の業務は旅客運賃と貨物収入を分配することであった。後には運賃設定など幅広い機能を果たすようになった。ピーク時には約3000名を雇用していた。しかし1947年の鉄道国有化に伴って、その使命を終え、最終的には1963年に完全に廃止された。RCTの記録は国有化とともに、英国運輸委員会(British Transport Commission: BCT)に移管され、現在は国立公文書館(TNA)に収蔵されている。TNAのRAIL1080、RAIL1081シリーズ、BTC委員会シリーズ中のAN97の1947年から55年にかけての部分にも関連する多数の資料が含まれる。本稿はRCTの組織の概略を示し、TNA所蔵資料に含まれる情報の種類を例示するものである。タイトルにある「このうえなく退屈で整った議事録」とは、1955年3月18日に「鉄道新聞(Railway Gazette)」に掲載された詩に含まれる一節。

◆日本語タイトル:大西洋横断旅客運賃の源泉としてのキュナード線航海摘要 
1883‐1914
原題:The voyage abstracts of the Cunard Line as a source of transatlantic passenger fares, 1883-1914
著者名:ドュリュー・キーリング
著者名原文:Drew Keeling
所属等:チューリッヒ大学歴史学部
所属等原文:Department of History, University of Zurich
ページ:15-36
一行解説:リバプール大学シドニー・ジョーンズ(Sydney Jones)図書館の特殊コレクション・アーカイブズ部門の一部であるキュナード汽船会社(Cunard Steamship line)アーカイブズは大西洋航路船舶輸送と旅客運輸に関する経営史研究において最も重要な資料を含む。書架延長700フィート(約210メートル)相当の資料は1971年〜72年にキュナード社から移管された。1987年に詳細な正式目録が印刷され、その後定期的に改訂・増補された。現在も目録情報の訂正、更新、合理化とともに、詳細な内容記述の付加といったプロジェクトが進行中である。

◆日本語タイトル:アーカイブズから飛び出してくる:BBCにおける女性 1922‐39
原題:Bursting out of the archives: women in the BBC 1922-1939
著者名:ケイト・マーフィー
著者名原文:Kate Murphy
所属等:BBC
所属等原文:BBC
ページ:37-52
一行解説:著者はBBCの番組「女性の時間(Woman's Hour)」の上級プロデューサー。ゴールドスミス・カレッジ(Goldsmiths College)において「BBCにおける初期の女性」のテーマでの3年間のパート・タイムの博士課程を修了した。BBCが設立されたのは1922年10月。他の組織とは異なり、同社には女性の昇進の機会が当初から存在した。本稿ではBBCの文書アーカイブズ(Written Archives)、音声アーカイブズ(Sound Archives)、写真アーカイブズ(Photographic Archives)資料を用いながら、第二次世界大戦前に活躍した3人の女性Janet Quigley、Olga Collett、Elise Sprottを紹介する。

◆日本語タイトル:スコットランドの海外事業会社の跡をたどる:スコットランド国立公文書館所蔵の解散会社ファイル・シリーズの利用
原題:Tracing Scottish free-standing companies: the use of the dissolved companies files series in the National Archives of Scotland
著者名:ケビン・テネント
著者名原文:Kevin Tennent
所属等:ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス
所属等原文:London School of Economics
ページ:53-67
一行解説:本稿はスコットランド国立公文書館(National Archives of Scotland: NAS)所蔵のBT2コレクションに対する経営史研究者の注意を喚起することを目的とする。このコレクションにはスコットランドの海外事業会社(Free-standing companies: FSCs)に関する資料が含まれる。FSCsとは特定の国で会社登記するが、事業自体は完全に国外で行うという会社のことである。

◆日本語タイトル:ブライトン大学のデザイン・アーカイブズ:経営史学者のための資源
原題:The Design Archives at the University of Brighton: a resource for business historians
著者名:レズリー・ウィットワース
著者名原文:Lesley Whitworth
所属等:ブライトン大学
所属等原文:University of Brighton
ページ:69-82
一行解説:第二次大戦後、イギリスの産業デザインの振興のために設立された「産業デザイン評議会(Council of Industrial Design)」は1990年代半ばに厳しいリストラを経験した。その際、これまでの記録を外部に移管することが迫られた。ゲッティ財団(Getty Foundation)の支援も受けて、同評議会の記録はブライトン大学のデザイン・アーカイブズに移管され整理されることになった。分量は書架延長1000フィート(約300メートル)。ブライトン市内中心部に位置し、ロンドンからのアクセスも大変よい。しかし利用者の大部分は文化史、メディア研究、美術史の専門家であり、経営史研究者は少ない。本稿はデザイン評議会資料に焦点を当てて、デザイン・アーカイブズ資料が経営史研究者にも価値ある資料であることを示す。

[書誌ならびに企業資料リスト]

日本語タイトル:産業史文献リスト2007年版
原題:Bibliography in business history 2007
編者:リチャード・A・ホーキンス
編者原文:Richard A. Hawkins
ページ:83-98

日本語タイトル:2007年に寄託された企業記録リスト
原題:Business records deposited in 2007
編者:マイク・アンソン
編者原文:Mike Anson
ページ:99-139

[書評]

[1]
著者1:アリステア・ブラック
著者名原文1:Alistair Black
著者2:デイブ・マディマン
著者名原文2:Dave Muddiman
著者3:ヘレン・プラント
著者名原文3:Helen Plant
タイトル:初期情報社会:コンピュータ以前のイギリスにおける情報マネジメント
原題:The early information society: information management in Britain before the computer
その他書誌情報:Ashgate, 2007, pp. xiii+288, ISBN: 978-0-7546-4279-4, £55.00
評者:ヴァレリー・ジョンソン
評者名原文:Valerie Johnson
評者所属等:英国国立公文書館
評者所属等原文:The Nattional Archives
ページ:141-143
一行解説:評者によると本書の基調は、情報管理というものは目新しいものではなく、情報を価値あるものと見る見方は1900年から1960年の間にすでに存在していた、そして情報革命というのは、統計、パスポート、出生届、死亡届等々といった監視と支配に関する幅広い関心に反映されているように、現代よりはむしろビクトリア時代に生じたものである、といった点にある。全体として、図書館、とくに専門図書館的な観点に関心が限定され、アーカイブズへの言及が見られず繰り返しが多いという。別々に書かれた独立した論文をとりあえず集めて一冊の本にしたのではないか、という疑念を評者は抱いている。評者が唯一評価しているのがアリステア・ブラック執筆の第3部「初期情報経済における情報管理」である。ここではイングランド銀行、プリュデンシャル、BP、ICIといった企業アーカイブズを利用して論述が進められている。ただしこの部分でも、情報としてのアーカイブズという関心は欠落しており、図書館にある印刷された情報とアーカイブズ情報は根本的に異なっている、ということをほとんど意図的に否定していると評者は述べている。

[2]
編者1:ジェフリー・ジョーンズ
編者名原文1:Geoffrey Jones
編者2:ジョナサン・ゼイトリン
編者名原文2:Jonathan Zeitlin
タイトル:経営史に関するオックスフォード・ハンドブック
原題:The Oxford handbook of business history
その他書誌情報:Oxford, 2008, pp.717, ISBN: 978-0-19-926368-4, £85.00
評者:テリー・グルヴィッシュ
評者名原文:Terry Gourvish
評者所属等:ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス
評者所属等原文:London School of Economics
ページ:144
一行解説:オックスフォード・ハンドブック・シリーズは定評あるシリーズで、経営分野ではすでに14巻が刊行されている。この巻は「研究方法と議論(approaches and debates)」、「企業組織の形態(forms of business organization)」、「会社の諸機能(functions of enterprise)」、そして「会社と社会(enterprise and society)」の4つの部分から成る。執筆者はアメリカならびにヨーロッパの専門家であるが、評者によると全体としてはアングロ・サクソン的であるという。また編者たちは経営における女性の問題と発展途上国における経営史が欠落していることを自覚している。しかし、完全ではないにしても、経営史の世界への入門書としてすこぶる有益であるし、アーキビストにとって自分が管理するコレクションが研究上どのような位置づけなのか知る上で大いに役立つだろうと評者は賛辞を送っている。

[参考ページ]
英国国立公文書館
http://www2.nationalarchives.gov.uk/default.htm

リバプール大学シドニー・ジョーンズ図書館
http://www.liv.ac.uk/library/

BBC文書アーカイブズ・センター
http://www.bbc.co.uk/heritage/more/wac.shtml

スコットランド国立公文書館
http://www.nas.gov.uk/

ブライトン大学デザイン・アーカイブズ
http://www.brighton.ac.uk/designarchives/

ザ・ゲッティ(ゲッティ財団を含む)
http://www.getty.edu/

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[略称一覧]
ACA: Association of Canadian Archivists(カナダ・アーキビスト協会)
ASA: Australian Society of Archivists(オーストラリア・アーキビスト協会)
BAC: Business Archives Council(ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BACS: Business Archives Council in Scotland
DCC: Digital Curation Center(英国デジタル・キュレーション・センター)
(スコットランド・ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
ICA: International Council on Archives(国際文書館評議会)
LSE: London School of Economics and Political Science
(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)
MLA: Museums, Libraries and Archives Council
(英国博物館、図書館、アーカイブズ評議会)
NARA: National Archives and Records Administration
(米国国立公文書館記録管理庁)
RIKAR: Research Institute of Korean Archives and Records
(韓国国家記録研究院)
SAA: Society of American Archivists(米国アーキビスト協会)
SBL: Section for Business and Labour Archives
(企業労働アーカイブズ部会、ICA内の部会)
SoA: Society of Archivists(イギリス・アーキビスト協会)
TNA: The National Archives(英国国立公文書館)

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☆★ 編集部より:あとがき、次号予告 ★☆

SAAのウェブページによると、SAA会員数は2008年末現在5,507名・機関で過去最高を記録したということです。このうちおよそ1,200名(個人会員全体の24.9%)は学生会員で、前年度比25%の増加だそうです。ちなみにアメリカ図書館協会(ALA)の会員数は64,729(2007年8月現在)です。どちらの数字を見ても、文化資源(博物館、図書館、アーカイブズ等)セクターの層の厚みを感じます。アーカイブズにどうやって資金を呼び込むのか、たいへん興味深い問題です。「企業史料のための国家戦略案」も、資金調達戦略に1章を割いています。日本では指定管理者制度などが議論・導入されていますが、投入する資金を拡大する方策、あるいは資金獲得回路の開拓や多様化といった議論が盛んになってほしいと思います。

次号ではビジネス・アーカイブズ関連文献情報(『ビジネス・アーカイブズ 省察と思索(Business Archives Reflections and Speculations)』97号、2008年11月)ほかを予定しております。2009年2月中旬配信予定です。どうぞお楽しみに。

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□「企業史料ディレクトリ」:企業アーカイブズと企業史料の所在・概要ガイド

7月22日公開いたしました。日本を代表する企業を中心とした企業アーカイブズと史料保存・学術研究機関合わせて30企業・団体・機関の概要、所蔵資料に関する情報を掲載しております。ぜひご覧ください。
http://www.shibusawa.or.jp/center/dir/index.html

□実業史研究情報センター・ブログ「情報の扉の、そのまた向こう」

「今日の栄一」「栄一情報」「栄一関連文献」「センターニュース」「今日の社史年表」「社史紹介(速報版)」「アーカイブズニュース」「図書館ニュース」をお届けしております。
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「アーカイブズニュース」では政府の「公文書管理の在り方等に関する有識者
会議」の動向やアーカイブズのデジタル化、資料の発見・公開に関わるニュー
スを随時ご紹介しております。

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渋沢栄一がどのような会社に関わったか、それが今にどうつながっているのか、一目でわかるように業種別にまとめて変遷図にしました。先日「海運」を追加し、現在39図を掲載しています。社名索引もありますので、どうぞご覧ください。
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ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信) No.13
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