ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信)

第25号(2009年12月25日発行)

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☆      □■□ ビジネス・アーカイブズ通信 □■□

☆       No.25 (2009年12月25日発行)

☆   発行:財団法人渋沢栄一記念財団 実業史研究情報センター

☆                         〔ISSN:1884-2666〕
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この通信では海外(主として英語圏)のビジネス・アーカイブズに関する情報をお届けします。

今号は行事情報1件、文献情報1件です。

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◆ 目次 ◆

[掲載事項の凡例とお願い]

■行事情報:ICASBL、インド準備銀行農業銀行大学、インド国立公文書館共催国際セミナー
        2009年12月7-8日 プネー(インド)
  ◎テーマ:「ビジネス・アーカイブズ:実務の現況と課題」

■文献情報:『ビジネス・アーカイブズ 原資料と歴史』99号 2009年11月

☆★ 編集部より:次号予告 ★☆

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[掲載事項の凡例]

・日本語で読みやすいものになるように、タイトルははじめに日本語訳を、続いて原文を記します。
・人名や固有名詞の発音が不明の場合も日本語表記を添えました。便宜的なものですので、検索等を行う場合はかならず原文を用いてください。

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[ご注意]
・受信時にリンク先を示すURLが途中で改行されてしまう場合があります。お手数ですがコピー&ペーストで一行にしたものをブラウザのアドレス・バーに挿入し、リンク先をご覧ください。

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■行事情報:
  ICASBL、インド準備銀行農業銀行大学、インド国立公文書館共催国際セミナー
        2009年12月7-8日 プネー(インド)

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◎テーマ:「ビジネス・アーカイブズ:実務の現況と課題」
International Seminar on "Business Archives: Current Practices and Problems"
http://www.cab.org.in/Lists/Events%20and%20Programs/DispForm.aspx?id=268
http://www.cab.org.in/Lists/Events%20and%20Programs/Attachments/268/Announcement%20Lettter.pdf

2009年12月7、8日の両日、インド・プネーにあるインド準備銀行農業銀行大学において、同大学とインド国立公文書館の共催で国際セミナー「ビジネス・アーカイブズ:実務の現況と課題」が開催されました。これは2009年12月5日に開催された国際文書館評議会企業労働アーカイブズ部会(ICASBL)運営会議に合わせて開催されたもので、各国ならびにインド全国から約60名の参加者がありました。

[会場]
インド準備銀行アーカイブズ
Reserve Bank of India Archives
College of Agricultural Banking Campus
University Road, Pune - 411 016,
Maharashtra, INDIA
Tel : (020) 25537086
Fax : (91- 020) 25539098
E-mail :

[日時]
2009年12月7-8日

[プログラム]
◆日本語タイトル:ビジネス・アーカイブズ:何のためにあなた方には必要なのか?
原題:Business archives: what do you need it for?
発表者:ハンス・アイビンド・ナス
発表者原文:Hans Eyvind Naess
発表者所属:ノルウェー国立公文書館上級顧問、ICASBL運営委員会議長、ICA副会長
発表者所属原文:Senior Advisor for the Archivist of Norway, Chair ICA/SBL (Section for Business and Labour Archives, ICA/Vice-President(Sections))

◆日本語タイトル:ビジネス・アーカイブズ:実務の現況と課題:渋沢栄一記念財団の事例:専門収集機関
原題:Business archives: the case of the Shibusawa Ei'ichi Memorial Foundation: a special collecting repository
発表者:松崎裕子
発表者原文:Yuko Matsuzaki
発表者所属:財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター企業史料プロジェクト担当、ICASBL運営委員
発表者所属原文:Business Archives Specialist, Resource Center for the History of Entrepreneurship, Shibusawa Ei'ichi Memorial Foundation, Member of Steering Committee of ICASBL

◆日本語タイトル:ヨーロッパにおける銀行業と金融アーカイブズ:EABH(ヨーロッパ銀行史協会)による実務と優先順位に関する調査
原題:European banking and financial archives: the EABH (European Association for Banking and Financial History) survey of practices and priorities
発表者:フランチェスカ・ピノ
発表者原文:Francesca Pino
発表者所属:イタリア インテサ・サンパウロ銀行グループ・アーカイブズ・ディレクター、ICASBL運営委員
発表者所属原文:Head of Intesa Sanpaolo Group Archives, Member of Steering Committee of ICASBL

◆日本語タイトル:サンゴバン社アーカイブズ
原題:Saint Gobain Archives
発表者:ディディエ・ボンデュ
発表者原文:Didier Bondue
発表者所属:フランス サンゴバン社アーカイブズ・ディレクター、ICASBL運営委員・次期議長
発表者所属原文:Director of Saint Gobain Archives、Member of Steering Committee of ICASBL、ICASBL chair-erect

◆日本語タイトル:タタ・セントラル・アーカイブズの起源
原題:The genesis of Tata Central Archives
発表者:ラジェンドラ・プラサド・ナルラ
発表者原文:Rajendra Prasad Narla
発表者所属:タタ・セントラル・アーカイブズ・アシスタント・アーキビスト(プネー)
発表者所属原文:Assistant Archivist, Tata Central Archives, Pune

◆日本語タイトル:ゴドレージ・アーカイブズ:会社の記憶を形作る
原題:Godrej Archives: making corporate memory
発表者:ブルンダ・パターレ
発表者原文:Vrunda Pathare
発表者所属:ゴドレージ・アーカイブズ・アーキビスト(ムンバイ)
発表者所属原文:Archivist, Godrej Archives, Mumbai

◆日本語タイトル:レコード・マネジメント:ひとつの研究
原題:Record management: a study
発表者:サミュエル・チェリアン
発表者原文:Samuel Chrian
発表者所属:ヒンデュスタン航空社アディショナル・ジェネラル・マネージャー(ベンガルール)
発表者所属原文:Additional General Manager, Hindustan Aeronautics Limited, Bengaluru

◆日本語タイトル:現在における卓越、将来のための保険:インド最大の商業銀行の遺産をアーカイビングする
原題:Excellence in the present, insurance for the future: archiving the heritage of India's largest commercial bank.
発表者:U・ラメシュ
発表者原文:U. Ramesh
発表者所属:インドステート銀行 インドステート銀行アーカイブズ&博物館上級アーキビスト兼学芸員(コルカタ)
発表者所属原文:Senior Archivist-cum-Curator, State Bank Archives and Museum, State Bank of India, Kolkata

◆日本語タイトル:ビジネス・アーカイブズ:実務の現況と課題
原題:Business archives: current practices and problems
発表者:K・ラジャラム
発表者原文:K. Rajaram
発表者所属:アンドラ銀行職員大学アシスタント・マネージャー(ハイデラバード)
発表者所属原文:Assistant Manager, Andhra Bank Staff College, Hyderabad

◆日本語タイトル:電子記録をアーカイビングする:原則と実務
原題:Archiving electronic records: principles and practices
発表者:ラジブ・ロチャン・サフー
発表者原文:Rajib Lochan Sahoo
発表者所属:インド準備銀行アーカイブズ・アーキビスト(プネー)
発表者所属原文:Archivist, Reserve Bank of India Archives, Pune

◆日本語タイトル:原資料とリソース:評価を受けたビジネス・アーカイブズ
原題:Sources and resources: business archives evaluated
発表者:ミーナ・ガウタム
発表者原文:Meena Gautam
発表者所属:インド国立公文書館副館長(ニューデリー)
発表者所属原文:Deputy Director of Archives, National Archives of India, New Delhi

◆日本語タイトル:インド準備銀行アーカイブズ:回顧、将来の計画、そして挑戦
原題:Reserve Bank of India Archives: reflections, future plans and challenges
発表者:アショク・カプール
発表者原文:Ashok Kapoor
発表者所属:インド準備銀行アーカイブズ主任アーキビスト(プネー)、ICASBL運営委員
発表者所属原文:Chief Archivist, Reserve Bank of India Archives, Pune, Member of Steering Committee of ICASBL

☆★ その他のセミナー参加者 ★☆
セミナーではインド準備銀行農業銀行大学内の宿泊施設を利用し、インド各地からの参加者とSBLチームは2日間寝食を共にしました。宿泊施設の定員との関係からセミナーの参加者を60名に限定したということです。一般の参加者は次のような組織に所属する方々でした。ひとつの組織から複数参加しているところもありました。(カッコ内は所在地)

Aditya Birla Management Corporation(ムンバイ)
Airport Authority of India(プネー)
Andhra Bank(ハイデラバード)
Bank of Baroda(グジャラート)
Bank of India(ムンバイ)
Bank of Maharashtra(プネー)
Bharat Petroleum Corporation(ムンバイ)
Central Bank of India(ナビ・ムンバイ)
Central Chinmaya Mission Trust(ムンバイ)
Bosch(バンガロール)
Directorate of Archaeology, Archives & Museums(ボパール)
Export-Import Bank of India(ムンバイ)
FCI(ムンバイ&ニューデリー)
HAL(バンガロール)
Harvard Business School, India Centre(ムンバイ)
HDFC Bank(ムンバイ)
ICICI Bank(ムンバイ)
Indian Institute of Science(バンガロール)
Indian Oil Corporation(ウッタラプラデーシュ州Noida)
Indusind Bank(ムンバイ)
ITC Limited(コルカタ)
Manipur State Archives(マニプール州インパール)
National Housing Bank(ニューデリー)
National Institute of Science, Technology & DS(ニューデリー)
State Bank of Hyderabad(ハイデラバード)
Syndicate Institute of Bank Management(カルナータカ州マニパール)
United Bank of India(コルカタ)
Uttarkhand State Archives(ウッタルカンド州Dehradun)

セミナーの議論を研究者の視点からまとめてくださったのが、アーメダバード・インド経営研究所(Indian Institute of Management, Ahmedabad)のドゥウィジェンドラ・トゥリパティ(Dwijendra Tripathi)教授です。トゥリパティ教授は1980年代に1年間日本に滞在して、アジア経済研究所で在外研究に従事された経験があるそうです。この時は、企業史料協議会設立に尽力された東京大学の中川敬一郎教授とも親しく交流したことを懐かしく述べられておられました。

今回のセミナー主催者側の方々は口をそろえて、トゥリパティ教授がインドにおける経営史(business history)研究の第一人者であり、かつビジネス・アーカイブズの最大の理解者であると語っていました。主著はThe Oxford History of Indian Business (Oxford University Press, 2004)です。現在は退職されておりますが、ハイデラバード大学教授であった1960年代に、経営史専攻の大学院修士課程、博士課程開設に尽力されました。教授の退職後このプログラムが廃止され(1990年代)、今回のセミナー関係者はみなこの点を大変残念だと語っていました。本通信12号(2008年12月25日発行)でのゴドレージ・アーカイブズ紹介記事でもトゥリパティ教授の発表に言及しています。
http://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20081225.html

[関連ページ]

インド準備銀行 ウェブサイト
http://www.rbi.org.in/home.aspx

インド準備銀行農業銀行大学 ウェブサイト
http://www.cab.org.in/default.aspx

インド国立公文書館 ウェブサイト
http://nationalarchives.nic.in/

国際文書館評議会企業労働アーカイブズ部会 ウェブページ
http://www.ica.org/en/node/47

ノルウェー国立アーカイブズサービス ウェブサイト
http://www.arkivverket.no/english/about.html

インテサ・サンパウロ社 ウェブサイト
http://www.group.intesasanpaolo.com/scriptIsir0/isInvestor/eng/home/eng_index.jsp

サンゴバン社 ウェブサイト
http://www.saint-gobain.com/en

タタ社ウェブサイト内 タタ・セントラル・アーカイブズ ウェブページ
http://www.tata.com/aboutus/articles/inside.aspx?artid=hksv1kOK8g4=&sectidHXBnutgJEPM=

タタ・セントラル・アーカイブズ
http://www.tatacentralarchives.com/default.htm

ゴドレージ社アーカイブズ ウェブサイト
http://www.archives.godrej.com/

ヒンデュスタン航空社 ウェブサイト
http://www.hal-india.com/index.asp

インドステート銀行 ウェブサイト
http://www.statebankofindia.com/

アンドラ銀行職員大学 ウェブサイト
http://andhrabank.in/scripts/ABStaffTrainingCollege.aspx

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■文献情報:『ビジネス・アーカイブズ 原資料と歴史』99号 2009年11月

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◎『ビジネス・アーカイブズ 原資料と歴史』99号 2009年11月

ロンドンに本部があるビジネス・アーカイブズ・カウンシルが発行する定期刊行物『ビジネス・アーカイブズ』の最近号の目次情報をお届けします。『ビジネス・アーカイブズ』は年2回、5月と11月に発行されます。毎年5月に発行される号には『ビジネス・アーカイブズ 理念と実践』(原題:Business Archives Principles and Practice)、11月に発行される号には『ビジネス・アーカイブズ 原資料と歴史』(原題:Business Archives Sources and History)というタイトルが付けられています。『理念と実践』のほうはビジネス・アーカイブズ資料の管理や活用といった側面を、『原資料と歴史』のほうはビジネス・アーカイブズを資料として利用した歴史研究、あるいは資料紹介に関する論説が掲載されています。今回ご紹介する99号(2009年11月)は『原資料と歴史』号です。

『ビジネス・アーカイブズ 原資料と歴史』99号 2009年11月
Business Archives Sources and History
Number 99
November 2009
ISSN 0007-6538

編集者:マイク・アンソン Mike Anson
書評編集者:ロイ・エドワーズ Roy Edwards
発行者:ビジネス・アーカイブズ・カウンシル Business Archives Council
慈善団体登録番号:CHARITY NO. 313336

[論説]

◆日本語タイトル:企業史料の解釈
原題:The interpretation of business archives
著者名:デビッド・ブリックネル
著者名原文:David Bricknell
所属等:マンチェスター・メトロポリタン大学
所属等原文:Manchester Metropolitan University
ページ:1-8
一行解説:ポストモダニズムの影響もあるのだろうが、組織に関する研究を行うにあたって、アーカイブズの利用に消極的な潮流というものが存在する。文書は単なるPRである、というような感覚が存在するいっぽう、インタビューやアンケートを文書資料よりも優先しようという傾向も目につく。本稿では文書の解釈に関する方法論を再検討する。

◆日本語タイトル:電信―経済的な距離の縮小? 1870年代から1912年までを対象とした予備調査
原題:Telegraphs-shrinking economic distances? A preliminary enquiry, 1870s-1912
著者名:フェリペ・タメガ・フェルナンデス
著者名原文:Felipe Tamega Fernandes
所属等:ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス 経済史学部
所属等原文:Department of Economic History, London School of Economics
ページ:9-23
一行解説:これまで電信事業はもっぱら鉄道網の拡大との関連で分析され、電信が蒸気船航海の発達に果たした役割は無視されてきたきらいがある。本稿は、ビジネス・アーカイブズ・カウンシルから支給された研究奨励金を用い、主に新大陸で事業を行っていた業者に関するデータを収集し整理したものである。関連資料所蔵機関は、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのアーカイブズ、BTアーカイブズ、ギルドホール図書館、それにポースカーノ(Porthcurno)電信博物館である。

◆日本語タイトル:英国ポピュラー音楽産業、1950年-75年:アーカイブズにおける挑戦と解決
原題:The British popular music industry, 1950-75: archival challenges and solutions
著者名:テリー・グールビッシュ
著者名原文:Terry Gourvish
所属等:ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス 経営史ユニット
所属等原文:Business History Unit, London School of Economics
ページ:25-39
一行解説:イギリスのポピュラー音楽は第2次世界大戦以後英国の製造業、小売業、そして輸出に重要な貢献を果たした。ポピュラー音楽産業の音楽面や文化面に関する資料には事欠かない。しかし、EMIの2種類の社史やいくつかの研究が存在するとはいえ、経営史的側面が十分に研究されてきたとは言い難い。資料の状況は次の通りである。業界団体の図書館は公開されていないが、この団体が発行する年鑑類は利用可能である。企業アーカイブズにアクセスすることはできない。ギルドホール図書館所蔵資料も戦後期の部分は非公開が大部分であり利用価値が低い。国立公文書館の関連資料も貧弱である。結局たどり着いたのは業界誌である。著者は業界誌から得られたポピュラー音楽チャートを用いて、マーケット・シェアに関するデータベースを作成し、消費者の好みと音楽スタイルの変化とを結びつけて考察する。

◆日本語タイトル:大きいことは必ずしもよいことではない:1968年から1982年までの、英国政府、インバーゴードン、そしてスコットランドにおけるアルミニウム精錬の拡大
原題:Bigger isn't always better: the British Government, Invergordon and the expansion of alminium smelting in Scotland, 1968-82
著者名:ニール・G・マッケンジー
著者名原文:Niall G. MacKenzie
所属等:ケンブリッジ大学経営研究センター
所属等原文:Centre for Business Research, University of Cambridge
ページ:41-61
一行解説:本稿は、スコットランドのインバーゴードンにおける精錬プラントの建設と運営に関する、英国アルミニウム会社(BACo)と英国政府の間の議論に焦点を当てている。インバーゴードン・プラントはイギリスにおけるアルミニウム生産量の飛躍的増大に大きく寄与した。著者が用いた資料は主として、スコットランド国立公文書館と英国国立公文書館所蔵文書である。その理由は、このプラント建設を計画し主導したのが英国政府であったからである。
編集部注:「インバーゴードン」はスコットランド北部の都市。

◆日本語タイトル:一次資料としての業界誌:歴史の構築と知の脱構築
原題:Trade journals as primary sources: constructing histories and deconstructing knowledge
著者名:アーシーシュ・ベルカー
著者名原文:Aashish Velkar
所属等:ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス 経済史学部
所属等原文:Department of Economic History, London School of Economics
ページ:63-76
一行解説:本稿は経営史を再構築(あるいは脱構築)する上で、業界誌が資料として豊富な情報資源であることを示すことを目的としている。例として取り上げられているのは電線製造業(wire industry)における業界誌Ironmonger and Metal Trades Advertiserと製粉業における業界誌Millerである。

[書誌ならびに企業資料リスト]

日本語タイトル:産業史文献リスト2008年版
原題:Bibliography in business history 2008
編者:リチャード・A・ホーキンス
編者原文:Richard A. Hawkins
所属等:ウォルバーハンプトン大学
所属等原文:University of Wolverhampton
ページ:79-94

日本語タイトル:2008年に寄託された企業記録リスト
原題:Business records deposited in 2008
編者:マイク・アンソン
編者原文:Mike Anson
ページ:95-129
注記訳:国立公文書館(キュー)により提供された情報から編纂。
注記原文:Compiled from information supplied by the National Archives,Kew.

[書評]

[1]
著者:ブライアン・R・シェフェンズ
著者名原文:Brian R. Cheffens
タイトル:企業の所有と支配:変容した英国のビジネス
原題:Corporate ownership and control: British business transformed
その他書誌情報:Oxford University Press, 2008, 423pp. ISBN: 978-0-19-923697-8, £63.00
評者:ロビン・ピアソン
評者名原文:Robin Pearson
評者所属等:ハル大学
評者所属等原文:University of Hull
ページ:131-132
一行解説:「所有と経営の分離」は近代的企業に顕著な特徴である。本書はイギリスの大企業においてこの特質を導き出した歴史的要因を特定することを企図している。会社法、金融ジャーナリズム、株取引の増大、英国においては株式の価値の目安として一貫して配当を重視してきたこと、税制が株売買傾向に与える影響の変化、1995年から2007年にかけての私的な株式買収の増減、といった点が明解かつ説得力をもって提示されており本書の強みである、と評者は述べる。
版元ウェブサイト内紹介ページ: http://www.oup.com/us/catalog/general/subject/Law/ContractandGeneralCommercialLaw/ElectronicCommerce/?view=usa&ci=9780199236978

[2]
著者:ジョン・オールベル
著者名原文:John Orbell
タイトル:経営の歴史を跡付けるためのガイド
原題:A guide to tracing the history of a business
その他書誌情報:Chichester: Phillimore, 2009, 178pp. ISBN: 978-1-86077
-575-8, £19.99
評者:クリストファー・パウエル
評者名原文:Christopher Powell
評者所属等:カーディフ大学
評者所属等原文:Cardiff University
ページ:133-134
一行解説:本書は著者が20年前に同名で出版したガイドの更新版である。本書の目的は、あらゆる分野の歴史家が、ある特定の産業についての歴史情報を探し出すのを手助けをすることにある。さまざまな企業アーカイブズのコレクションや出版された歴史書へのルートマップを提供し、研究のために利用できる資料の主要なカテゴリーを説明してくれる。本書は4部から成る。最初の部分では、ある産業に関する幅広い見取り図が検討される。その産業に関するもっとも重要な情報とその探索の仕方に関してである。第2部では、その産業に関するアーカイブズ資料の探索の方法が取り上げられている。第3部では、しばしば歴史家が直面する問題、すなわち適切なアーカイブズ資料(1次資料)が残存していない場合に必要な2次的資料に関する部分である。この部分は本書の5分の4を占める。2次的資料としては、政府の記録や業界団体の記録、印刷物、個人の記録、様々な産業考古学やグラフィック画像、フィルム等々が取り上げられている。最後の部分は書誌、有用な連絡先、それに索引である。
版元ウェブサイト内紹介ページ: http://www.phillimore.co.uk/acatalog/info_NT9781860775758.html

[3]
著者:デイビッド・パーカー
著者名原文:David Parker
タイトル:民営化正史 第1巻:形成期 1970年―1987年
原題:The official history of privatisation. Volume I: the formative years 1970-1987
その他書誌情報:Routledge, 2009, 598pp. ISBN: 978-0-415-46916-6,£55.99
評者:テリー・グールビッシュ
評者名原文:Terry Gourvish
評者所属等:ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンス
評者所属等原文:London School of Economics & Political Science
ページ:135-136
一行解説:本書は英国政府の内閣官房室(Cabinet Office)が著者に委託して書かれた、英国の公的企業の民営化に関する正史第1巻。著者は内閣官房室から提供された、政府のアーカイブズ資料を利用して本書をまとめた。全2巻から成る。第1巻は1970年代から1987年6月の第2期サッチャー政権の終わりまでをカバーし、この時期を民営化「形成期」formative yearsと位置付けている。特に11章から15章までのブリティッシュ・ガスとブリティッシュ・テレコムに関する部分は本書の主要な部分である。600ページに迫る大書であり、すでに書かれたことのある部分があるほか、民営化に関する政治的論争が省略されていたり、このテーマに関する重要文献が書誌に見当たらないなどいくつかの難点があることをも評者は指摘している。
版元ウェブサイト内紹介ページ: http://www.routledge.com/books/The-Official-History-of-Privatisation-Vol-I-isbn9780415469166

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[略称一覧]
ACA: Association of Canadian Archivists(カナダ・アーキビスト協会)
ARC: ARC magazine: archives - records management - conservation
(SoAが発行する月刊ニュースレター)
ASA: Australian Society of Archivists(オーストラリア・アーキビスト協会)
BAC: Business Archives Council(ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BACS: Business Archives Council in Scotland
(スコットランド・ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
DCC: Digital Curation Center(英国デジタル・キュレーション・センター)
EDRMS:Electronic Document and Record Management System
(電子文書記録管理システム)
ERM:Electronic Record Management(電子記録管理)
ICA: International Council on Archives(国際文書館評議会)
LSE: London School of Economics and Political Science
(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)
MLA: Museums, Libraries and Archives Council
(英国博物館、図書館、アーカイブズ評議会)
NARA: National Archives and Records Administration
(米国国立公文書館記録管理庁)
RIKAR: Research Institute of Korean Archives and Records
(韓国国家記録研究院)
RMS:Record Management System(記録管理システム)
SAA: Society of American Archivists(米国アーキビスト協会)
SBL: Section for Business and Labour Archives
(企業労働アーカイブズ部会、ICA内の部会)
SoA: Society of Archivists(イギリス・アーキビスト協会)
TNA: The National Archives(英国国立公文書館)

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☆★ 編集部より:あとがき、次号予告 ★☆

インド準備銀行農業銀行大学学長Ms. Kamala Rajan、同大学プログラム・ディレクターMs. Kiran Sharma、国立公文書館副館長Dr. Meena Gautamといった方々からインド経済に関してごくごく簡単なお話をうかがいました。「貧困ライン以下の生活水準におかれているのが人口の27%(約2億7000万人)、人口の51%(約5億1000万人)は銀行制度へのアクセスを欠いている。私たちは大きな挑戦(enormous challenges)と向かい合っている...」。様々な課題解決に向けて挑戦を続ける専門家たちの責任感を感じました。

ビジネス・アーカイブズに関する国際セミナーでは、2005年に制定された「情報への権利法」Right to Information Act, 2005への言及が頻繁にありました。この法律は政府内の透明性transparencyと説明責任accountabilityを高めることを目的として制定されたものです。ビジネス・アーカイブズへの注目も、この法律の成立と結びつけられて発想されているようです。インド経済の発展と相まって、インドにおける企業アーカイブズも、いままさに成長しつつあるという印象を受けました。

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インドから帰ってきて堀田善衛氏の『インドで考えたこと』を読んでみました。20数年前に手にとって読み始めた記憶はありますが、内容のほうはまったく記憶にありません。たぶん最後まで読みとおせなかったのでは...。今回新たに近くの書店で購入したのは、2008年11月14日発行の第64版でした。岩波新書青版、初版は1957年発行です。

書かれた当時は東西冷戦の最中で、ハンガリー事件(1957年4月)や、サンフランシスコ講和条約(1951年9月署名、52年4月発効)におけるアメリカの対日平和条約案へのインド政府反対などが、ほぼ同時代の出来事として言及されています。(実は堀田氏自身、インド政府が沖縄も含めた日本の領土の全主権回復という立場から、サンフランシスコ条約を調印拒否したことを忘れてしまっていたエピソードが記されています。同書177-178ページ。)

「日本のイメージ」と題された章のなかに、農村へ向かうバスの車中での現地の人々との会話が出てきます。ある老人が日本では教育が普及しており、日本の農業技術は世界一だと述べると、英語のできる青年が「われわれは貧しい。しかし五十年後には──」と未来への展望を語るのでした(同書53ページ)。この青年の言葉に堀田氏が衝撃を受けるという場面です。堀田氏は次のように言います。

「五十年後の日本──私はそんなものを考えたこともないし、五十年後の日本について現在生きているわれわれに責任があるなどと、それほど痛切な思いで考えたこともない。...(中略)...一般に、長い未来についての理想をもたぬものは、それをもつものの未来像のなかに編入されて行くのが、ことの自然というものではなかろうか。何かギョッとさせられる。そこで私は中国のことを考えた。」(同書53-54ページ)

その50年後の日本にいるのがなんとなく不思議な感じです。さきほどの3人のホストたち(すべて女性でしたからホステスですね)の「チャレンジ」という言葉、そして彼の国の専門家たちの責任感が再び思い起こされました。堀田氏は50年後のちょっと内向きな日本をはるかに見通していたかのようです。

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次号では『アーカイブズにおける法律問題をナビゲートする』Navigating legal issues in archives 他をご紹介します。2010年1月下旬配信予定です。

どうぞお楽しみに。

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◆◇◆〈渋沢栄一記念財団からのお知らせ〉◆◇◆

□「企業史料ディレクトリ」:企業アーカイブズと企業史料の所在・概要ガイド

2008年7月22日公開いたしました。日本を代表する企業を中心とした企業アーカイブズと史料保存・学術研究機関合わせて30企業・団体・機関の概要、所蔵資料に関する情報を掲載しております。ぜひご覧ください。
http://www.shibusawa.or.jp/center/dir/index.html

□実業史研究情報センター・ブログ「情報の扉の、そのまた向こう」

「今日の栄一」「渡米実業団」「栄一情報」「栄一関連文献」「センターニュース」「今日の社史年表」「社史紹介(速報版)」「ビジネス・アーカイブズ通信(速報版)」「アーカイブズニュース」「図書館ニュース」をお届けしております。
http://d.hatena.ne.jp/tobira/

「アーカイブズニュース」では公文書等の管理に関する法律に関する動向やアーカイブズのデジタル化、資料の発見・公開に関わるニュースを随時ご紹介しております。

ブログ画面右側の「カテゴリー」にある「アーカイブズニュース」をクリックしてください。「アーカイブズニュース」として掲載した記事をまとめて一覧することができます。

・カテゴリーの紹介
http://d.hatena.ne.jp/tobira/20080203

実業史研究情報センター・ブログ「情報の扉の、そのまた向こう」はほぼ毎日更新しております。どうぞご利用ください。

□「渋沢栄一関連会社社名変遷図」

渋沢栄一がどのような会社に関わったか、それが今にどうつながっているのか、一目でわかるように業種別にまとめて変遷図にしました。現在78図掲載中です。社名索引もありますので、どうぞご覧ください。2010年1月20日更新予定です。
http://www.shibusawa.or.jp/eiichi/companyname/index.html

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ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信) No.25
2009年12月25日発行 (不定期発行)
【創刊日】2008年2月15日
【発行者】財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター
【編集者】財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター
      「ビジネス・アーカイブズ通信」編集部
【発行地】日本/東京都/北区
【ISSN】1884-2666
【E-Mail】
【サイト】http://www.shibusawa.or.jp/center/ba/index.html

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