ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信)

第35号(2011年6月10日発行)

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☆      □■□ ビジネス・アーカイブズ通信 □■□

☆       No.35 (2011年6月10日発行)

☆ 発行:公益財団法人 渋沢栄一記念財団 実業史研究情報センター

☆                        〔ISSN:1884-2666〕
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この通信では海外(主として英語圏)のビジネス・アーカイブズに関する情報をお届けします。

今号は行事情報2件、文献情報1件です。

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◆ 目次 ◆

[掲載事項の凡例とご注意]

■行事情報:渋沢栄一記念財団主催、
       ICASBL、企業史料協議会共催国際シンポジウム
       2011年5月11日 国際文化会館(東京)
  ◎テーマ「ビジネス・アーカイブズの価値:企業史料活用の新たな潮流」

■行事情報:米国アーキビスト協会(SAA)ビジネス・アーカイブズ部会(BAS)
       コロキアム 2011年8月24日 シカゴ
  ◎テーマ「ビジネス・アーカイブズとウェブ2.0アプリケーション」

■文献情報:『ビジネス・アーカイブズ 理念と実践』 100号 2010年5月

☆★ 編集部より:次号予告 ★☆

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[掲載事項の凡例]

・欧文の場合、日本語で読みやすいものになるように、タイトルははじめに日本語訳を、続いて原文を記します。
・人名や固有名詞の発音が不明の場合も日本語表記を添えました。便宜的なものですので、検索等を行う場合はかならず原文を用いてください。

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[ご注意]
・受信時にリンク先を示すURLが途中で改行されてしまう場合があります。通常のURLクリックで表示されない場合にはお手数ですがコピー&ペーストで一行にしたものをブラウザのアドレス・バーに挿入し、リンク先をご覧ください。

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■行事情報:渋沢栄一記念財団主催、国際アーカイブズ評議会(ICA)
       企業労働アーカイブズ部会(SBL)、企業史料協議会 共催

      国際シンポジウム
       「ビジネス・アーカイブズの価値:企業史料活用の新たな潮流」
       2011年5月11日 国際文化会館(東京)

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◎国際シンポジウム「ビジネス・アーカイブズの価値:企業史料活用の新たな潮流」
International symposium: the value of business archives: their use by Japanese companies and new global trends

2007年東京で開催された「日米アーカイブ・セミナー」が機縁となって、渋沢栄一記念財団がICAに加入したのは2008年でした。財団は専門部会の一つであるSBLに所属し、SBLの会合にも参加して、部会運営に積極的にかかわって来ました。2009年6月のフィンランド(ミッケリ市で運営会議、ヘルシンキでセミナー)、同年12月のインド・プネーでの運営委員会とセミナー、2010年5月のフランス・ブロワでの運営委員会とシンポジウムを経て、今年は運営委員会会議を東京に招致しました。

5月10日(水)に東京北区の当財団で運営会議を開催したのに続き、翌日5月11日(水)にはシンポジウム「ビジネス・アーカイブズの価値:企業史料活用の新たな潮流」を国際文化会館講堂で開催、当日の参加者は韓国からの一般来場者を含め、110名を超えました。当財団とSBLに加えて、今年創立30周年を迎える企業史料協議会も共催団体として運営に参加してくれました。

このたびのシンポジウムは、企業関係者、アーカイブズ関係者のみなさんにビジネス・アーカイブズの利用に関する新しい動向を紹介するとともに、ビジネス・アーカイブズの持つ多様な価値を、さまざまな事例を通して検証し議論する機会とすることを目指したものです。

プログラムはシンポジウム予定日のちょうど2ヵ月前に起こった東日本大震災の影響のため、当初の予定を大きく変更し、最終的には下記の内容となりました。

[当日プログラム]

■第1セッション:歴史マーケティングの力 1
Session 1: The power of history marketing 1

(報告1)
タイトル:より広い見方:今日のコミュニケーションを歴史的事実で支える
原題:A broader perspective: supporting today's communication with historical facts
報告者:ヘニング・モーゲン
報告者原文:Henning Morgen
所属:A.P.モラー・マースク社(デンマーク)
所属原文:A.P. Moller Maersk, Denmark

(報告2)
タイトル:会社の記憶:経営のツール、サンゴバン社の例
原題:Company memory: a management tool, the Saint-Gobain case
報告者:ディディエ・ボンデュ
報告者原文:Didier Bondue
所属:サンゴバン社(フランス)
所属原文:Saint-Gobain Group, France

■第2セッション:歴史マーケティングの力 2
Session 2: The power of history marketing 2

(報告1)
タイトル:日本の伝統産業とアーカイブズ:虎屋を中心に
原題:Japanese traditional industries and archives: the case of Toraya Confectionery
報告者:青木直己
報告者英文:Naomi Aoki
所属:株式会社虎屋(日本)
所属英文:Toraya Confectionery, Japan

(報告2)
タイトル:アンサルド財団:アーカイブズ、トレーニング、そして文化
原題:The Ansaldo Foundation: archives, training and culture
報告者:クラウディア・オーランド
報告者原文:Claudia Orlando
所属:アンサルド財団(イタリア)
所属原文:Ansaldo Foundation, Italy
〔代読:松崎裕子/ Read by Yuko Matsuzaki〕

■第3セッション:企業史料とナショナル・ストラテジー
Session 3: National strategies and business archives

(報告1)
タイトル:資産概念の導入と中国における企業記録管理へのその効果
原題:The introduction of the "assets" concept and its effect on business records management in China
報告者:王嵐
報告者英文:Lan Wang
所属:中華人民共和国国家档案局(中国)
所属英文:The State Archives Administration of China, China

(報告2)
タイトル:ビジネス・アーカイブズのためのナショナル・ストラテジー:イングランドとウェールズ
原題:The national business archives strategy: England and Wales
報告者:アレックス・リッチー
報告者原文:Alex Ritchie
所属:英国国立公文書館(英国)
所属原文:The National Archives, UK

■第4セッション:アーカイブズを武器に変化に立ち向かう
Session 4: Archives: a tool for change

(報告1)
タイトル:誇り:買収・統合後における歴史物語の重要性
原題:Proud heritage: the importance of legacy stories in post-acquisition integration
報告者:ベッキー・ハグランド・タウジー
報告者原文:Becky Haglund Tousey
所属:クラフト・フーズ社(米国)
所属原文:Kraft Foods, USA

(報告2)
タイトル:企業という設定のなかで歴史を形づくる:ゴドレージ社のシナリオ
原題:The shaping of history in a corporate setting: the Godrej scenario
報告者:ヴルンダ・パターレ
報告者原文:Vrunda Pathare
所属:ゴドレージ社(インド)
所属原文:Godrej & Boyce, India

(報告3)
タイトル:合併の波の後で:変化への対応とインテサ・サンパウロ グループ・アーカイブズの設立
原題:After the mergers wave: change management and the building of Intesa Sanpaolo Group Archives
報告者:フランチェスカ・ピノ
報告者原文:Francesca Pino
所属:インテサ・サンパウロ銀行(イタリア)
所属原文:Intesa Sanpaolo, Italy
〔代読:ベッキー・ハグランド・タウジー/ Read by Becky Haglund Tousey〕

■第5セッション:パネルディスカッション
Session 5: Panel discussion

司会:松崎裕子(渋沢栄一記念財団、ICA/SBL)
Moderator: Yuko Matsuzaki (Shibusawa Eiichi Memorial Foundation; SBL)

最終セッションでは報告者全員を壇上に迎え、会場の聴衆からあらかじめ提出された下記の論点を中心にパネルディスカッション方式で議論を行いました。

・企業の歴史情報へのアクセス問題
・企業の負の遺産は活用しうるのか
・企業博物館との連携
・パブリック・セクターとの連携
・組織の中でいかにアーカイブズの価値を周囲に認識させるか、ほか

[新たな試み]
主催3団体にとっても初めての試みが2つほどありました。

(その1)
ひとつは企業史料協議会による会場入り口(懇親会時は懇親会場に移動)における日本の老舗企業に関するパネル展示です。海外のSBL委員からは今回のシンポジウムにあたって、日本のビジネス・アーカイブズを学びたいという希望も強く寄せられていました。日英バイリンガルによる展示は、この希望にも叶うものであったと思います。

(その2)
二つ目はUstreamによるライブ映像の配信です。来場できない方々にもシンポジウム参加の機会を提供できるようにとの趣旨で、アカデミック・リソース・ガイド株式会社の技術的サポートを得て行いました。後日視聴のための動画公開に関しては、発表者との合意によってアーカイブされた映像の公開期限を個々に設定しました。

[出版プロジェクトの開始]
今回シンポジウムで発表された報告に加え、これまでICASBLその他のビジネス・アーカイブズに関わる専門的な会議や機関誌で発表されてきた、ビジネス・アーカイブズのベストプラクティスに関する発表や報告を日本語に翻訳出版するプロジェクトもすでに開始されています。

シンポジウムと運営委員会に関する情報を下記のページで閲覧することができます。

[渋沢財団サイト]

国際シンポジウム「ビジネス・アーカイブズの価値:企業史料活用の新たな潮流」(日本語)
http://www.shibusawa.or.jp/center/network/01_icasbl/Tokyo/index.html

International symposium: the value of business archives: their use by Japanese companies and new global trends (英語)
http://www.shibusawa.or.jp/english/center/network/01_icasbl/Tokyo/index.html

[Ustream関係]

トップページ
http://www.ustream.tv/channel/icasbl2011tokyo

中華人民共和国国家档案局王嵐氏と英国国立公文書館アレックス・リッチー氏発表
http://www.ustream.tv/recorded/14622732

[ICASBLサイト]

SBLニュース・東京でのシンポジウムに関する記事
http://www.ica.org/7618/news-events/symposium-the-value-of-business-archives-their-use-by-japanese-companies-and-new-global-trends-tokyo-japan-11-may-2011.html

シンポジウム配布資料 当日プログラム(PDF)
http://www.ica.org/download.php?id=1410

シンポジウム配布資料 ブックレット(PDF)
http://www.ica.org/download.php?id=1411

シンポジウム写真(その他SBL主催の過去のセミナー、シンポジウム写真)
http://www.ica.org/2741/photos-galleries/sbl-general-conferences-and-seminars.html

ICASBL運営委員会関係写真
http://www.ica.org/5843/photos-galleries/sbl-bureau-meetings.html

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■行事情報:米国アーキビスト協会(SAA)ビジネス・アーカイブズ部会(BAS)
       コロキアム 2011年8月24日 シカゴ

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◎テーマ「ビジネス・アーカイブズとウェブ2.0アプリケーション」
Business archives & web 2.0 applications

今年のSAA年次大会はSAA事務局オフィスがあるシカゴでの開催です。協会設立75周年にあたり、これを記念する各種イベントも予定されています。大会日程は8月22日(月)から27日(土)までの6日間、有料ワークショップなどのプレカンファレンス・プログラムは21日(日)から始まります。

大会期間中、SAAのビジネス・アーカイブズ部会(Business Archives Section; BAS)関連の会合は2つです。24日(水)13時〜17時のビジネス・アーカイブズ部会コロキアム BAS Colloquium と25日(木)15時30分〜17時30分のビジネス・アーカイブズ部会会議です。現在BASメンバー間でそれぞれの会合のプログラムを調整中です。

水曜日のコロキアムのテーマは「ビジネス・アーカイブズとウェブ2.0アプリケーション」に決定しています。現在の部会長ジェフ・ピートル Jeff Pirtle は、BASのメーリングリストへの投稿で、次のように説明しています。

「ウェブ2.0とは何か?それはフェイスブックやツイッター、ブログなどの新しいソーシャル・メディア全てを指すだけでなく、それは新しいクラウド型の知識共有アプリケーションでもある」

そこから次のようなトピックスによる報告を募集しています。

・メンバーの所属アーカイブズではウェブ2.0から何か収集しているか?

・メンバーの所属アーカイブズではウェブ2.0を利用しているか?
(アウトリーチあるいは教育目的などで)

・メンバーの所属アーカイブズは親組織が推進するなんらかのウェブ2.0の取り組みを支援しているか?

・メンバーの所属する企業でウェブ2.0を利用する社員はどのようにしているか?

・ウェブ2.0はメンバーにとって、またメンバーが所属する企業にとって何を意味するか?

なおPirtle氏はメディア・エンタテインメント・グループ NBCユニバーサルのアーカイブズ&コレクション部門ディレクターです。

[関連ページ]

米国アーキビスト協会(SAA)2011年度大会ページ
http://www2.archivists.org/conference/2011/chicago

SAA ビジネス・アーカイブズ部会ページ
http://bit.ly/lwMNgz

SAA メーリングリストについてのページ
http://www2.archivists.org/listservs

NBCユニバーサル社
http://www.nbcuni.com/

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■文献情報:『ビジネス・アーカイブズ 理念と実践』 100号 2010年5月

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ロンドンに本部があるビジネス・アーカイブズ・カウンシルが発行する定期刊行物『ビジネス・アーカイブズ』の最新号目次情報をお届けします。『ビジネス・アーカイブズ』は年2回、5月と11月に発行されます。毎年5月に発行される号には『ビジネス・アーカイブズ 理念と実践』(原題:Business Archives Principles and Practice)、11月に発行される号には『ビジネス・アーカイブズ 原資料と歴史』(原題:Business Archives Sources and History)というタイトルが付けられています。『理念と実践』のほうはビジネス・アーカイブズ資料の管理や活用といった側面を、『原資料と歴史』のほうはビジネス・アーカイブズを資料として利用した歴史研究、あるいは資料紹介に関する論説が掲載されています。今回ご紹介する100号(2010年5月)は『理念と実践』号です。

□『ビジネス・アーカイブズ 理念と実践』100号 2010年5月
Business Archives Principles and Practice
Number 100
May 2010
ISSN 0007-6538

編集者:マリアム・ヤミン Mariam Yamin
書評編集者:モイラ・ラブグローブ Moira Lovegrove
発行者:ビジネス・アーカイブズ・カウンシル Business Archives Council
慈善団体登録番号:CHARITY NO. 313336

[序文]
タイトル:『ビジネス・アーカイブズ』第100号
原題:100 Issues of business archives
著者名1:マイク・アンソン
著者名原文1:Mike Anson
肩書等1:「原資料と歴史」編集者
肩書等原文1:Editor, Sources and History
著者名2:マリアム・ヤミン
著者名原文2:Mariam Yamin
肩書等2:「理念と実践」編集者
肩書等原文2:Editor, Principles and Practice

[論説]

◆日本語タイトル:「企業の文書の中の歴史」:ビジネス・アーカイブズ・カウンシルの75年
原題:"History in firms' documents" : 75 years of the Business Archives Council
著者名:マイク・アンソン
著者名原文:Mike Anson
所属等:イングランド銀行アーカイブ
所属等原文:Bank of England Archive
ページ:1-11
一行解説:BACの75年をたどった記事。1934年の設立前後の状況、1968年の改革、2000年前後における組織財政の危機とそれへの対応を経て、近年の「ビジネス・アーカイブズのためのナショナル・ストラテジー」策定までの歩みを振り返っている。

◆日本語タイトル:年金アーカイブ信託とロンドン・メトロポリタン・アーカイブズ
原題:The Pensions Archive Trust and London Metropolitan Archives
著者名:スーザン・ジェントルズ
著者名原文:Susan Gentles
所属等:年金アーカイブ信託
所属等原文:The Pensions Archive Trust
ページ:12-26
一行解説:年金アーカイブ信託はイギリス最古の公益信託である。その設立の目的はイギリスにおける企業年金の歴史を保存することにある。年金アーカイブ信託におけるアーカイブズ業務の実務を紹介する。とりわけ2007年以来提携関係にあるロンドン・メトロポリタン・アーカイブズとの協力の側面に注目する。

◆日本語タイトル:私たちのルーツに遡る:マークス・アンド・スペンサー社アーカイブズとリーズ大学の連携
原題:Going back to our roots: the partnership between the Marks and Spencer Company Archive and the University of Leeds
著者名1:ライザ・ジャイフェン
著者名原文1:Liza Giffen
所属等1:リーズ大学
所属等原文1:University of Leeds
著者名2:カースティ・シールズ
著者名原文2:Kirsty Shields
所属等2:Marks and Spencer plc
所属等原文2:マークス・アンド・スペンサー社
ページ:27-40
一行解説:リーズ市を創業の地とする英国の小売業最大手のマークス・アンド・スペンサーのアーカイブズが、創業125周年を記念するにあたって、地元の大学であるリーズ大学と連携して、展示をはじめとするさまざまな取り組みを行ってきたことを紹介する。

◆日本語タイトル:アーカイブ展覧会の商業的効果
原題:Commercial impact of an archive exhibition
著者名1:ケイティー・ローガン
著者名原文1:Katey Logan
所属等1:イギリス・ブーツ社
所属等原文1:Boots UK
著者名2:シャーロット・マッカーシー
著者名原文2:Charlotte McCarthy
所属等2:イギリス・ブーツ社
所属等原文2:Boots UK
ページ:41-52
一行解説:2009年に創業160周年を迎えた英国の薬局チェーン最大手のブーツ社のアーカイブズの活用のうち、ノッティンガム大学の手稿史料・特殊コレクション部との協力による展覧会の取り組みを紹介する。またこの取り組みが、企業に多様な利益をもたらした点を分析している。

◆日本語タイトル:ビジネス・アーカイブズのためのナショナル・ストラテジーを前に進める
原題:Taking forward the National Strategy for Business Archives
著者名:アレックス・リッチー
著者名原文:Alex Ritchie
所属等:英国国立公文書館
所属等原文:The National Archives
ページ:53-58
一行解説:著者は英国国立公文書館のビジネス・アーカイブズ・アドバイス・マネジャー。2009年に発表された「ビジネス・アーカイブズのためのナショナル・ストラテジー」がもつ意味、具体的な取り組みを紹介する。またビジネス・アーカイブズ振興の観点から、アーカイブズ情報のデータベースの問題にも言及している。著者によれば、ナショナル・ストラテジーの取り組みをはじめとする近年の動きのなかで、イギリスのアーカイブズ遺産・歴史遺産において、ビジネス・アーカイブズは周辺的なものという位置付けから、核心的なものへと変化してきたと評価される。

[書評]

[1]
編者1:J・A・バスチアン
編者名原文1:J.A. Bastian
編者2:B・アレクサンダー
編者名原文2:B. Alexander
タイトル:コミュニティ・アーカイブズ:記憶を形づくる
原題:Community archives: the shaping of memory
その他書誌情報:Facet Publishing, 2009, pp286. ISBN 978-1-85604-639-8
評者:ジュディ・ファラデイ
評者名原文:Judy Faraday
評者所属等:ジョン・ルイス・パートナーシップ
評者所属等原文:John Lewis Partnership
ページ:59-62
一行解説:評者によると、本書は伝統的なレコードキーピングの考え方にあっては、これまで重きを置かれていなかったコミュニティ・アーカイブズの価値を明らかにしているという。本通信27号(2010年3月15日発行)http://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20100315.htmlでも紹介している。
WorldCatレコード:http://www.worldcat.org/oclc/517405882
版元サイト内紹介ページ:
http://www.facetpublishing.co.uk/title.php?id=639-8

[2]
著者:ウィリアム・サファディ
著者名原文:William Saffady
タイトル:電子記録を管理する 第4版
原題:Managing electronic records 4th edition
その他書誌情報:ARMA International ($75) & Facet Publishing (£52.95), 2009, pp246. ISBN 978-1-85604-699-2
評者:スー・ガーランド
評者名原文:Sue Garland
評者所属等:ディアジェオ社
評者所属等原文:Diageo plc
ページ:63-64
一行解説:評者によると、本書は電子記録管理分野における非常に著名な米国の教科書の最新版であるが、今日のウェブ2.0やクラウド・コンピューティングといった議論を十分に取り込んでいないという点で、有用性に限界がある。
WorldCatレコード:http://www.worldcat.org/oclc/405571342
版元サイト内紹介ページ:
http://www.facetpublishing.co.uk/title.php?id=699-2

[3]
編者1:ミシェル・F・パシフィコ
編者名原文1:Michele F. Pacifico
編者2:トマス・P・ウィルステッド
編者名原文2:Thomas P. Wilsted
タイトル:アーカイブズと特殊コレクションの設備:アーキビスト、ライブラリアン、建築家と技術者のためのガイドライン
原題:Archival and special collections facilities: guidelines for archivists, librarians, architects, and engineers
その他書誌情報:Society of American Archivists, 2009, pp191, $37.
ISBN 1-931666-31-8
評者:ノーマン・ジェイムス
評者名原文:Norman James
評者所属等:(表記無し)
評者所属等原文:(表記無し)
ページ:65-66
一行解説:評者はイギリスにおける同種のガイドライン「BS 5454:アーカイブズ文書の収蔵と展示に対する提言」(BS5454: Recommendations for the storage and exhibition of archival documents、1977年)ならびに「BS 5454 解釈へのガイド」(Guide to the interpretation of BS 5454、2001年)等と比較しながら、米国におけるアーカイブズ施設に関する本書を紹介している。この分野では文化の違いもアーカイブズ施設のあり方の違いとしてあらわれるので、一概にはどれが最も適切であるとは言えない、というのが評者の考え方である。本書評で編集者の興味を引いたのは、米国では「ギフト・ショップ」の関してもその要件が示されているが、英国にはそのような考え方は希薄であるという点であった(ボードレアン図書館など若干の例外はあるという)。また、災害その他からアーカイブズを守るための施設を考えるためのひとつの参考文献になるのではないかと思われる。
WorldCatレコード:http://www.worldcat.org/oclc/431959795

[4]
著者:リース・ロワーン
著者名原文:Ries Roowaan
タイトル:企業史のためのひとつの事業例:企業はどうしたら自分たちの過去から利益を享受できるのか
原題:A business case for business history: how companies can profit from their past
その他書誌情報:Boom Onderwijs, 2009, pp90. ISBN 978-9085068204
評者:ケイティー・ローガン
評者名原文:Katey Logan
評者所属等:ローガン・マッケイブ・ビジネス・アーカイブズ・コンサルタンシー
評者所属等原文:Logan McCabe business archives consultancy
ページ:67-68
一行解説:評者によると、本書は装丁やレイアウトなど外見的な部分ではターゲットをビジネスマンに特定して作られたたいへんスタイリッシュな書籍であるという。全体は7章から成り、アーカイブズ管理の3つのステップ(「過去を保存し」「過去を公開し」「過去を利用する」)を説明している。著者は公開に関する部分で、過去の会社の負の歴史(例えば奴隷制への関与、ファシズム、環境汚染、人権侵害等)に関する記録もきちんと保存し公開することが会社の名声を高めることを近年のドイツの事例を基に説明している。また会社の種々の部門におけるアーカイブズ活用の事例を豊富に収録している。評者は、記録管理的な部分に対する目配りの欠如を指摘しているが、それにもまして、企業アーキビストは本書を手に入れて、社内のライン管理者や秘書たちに配布すべきであると本書を高く評価している。なお、本書は英文翻訳版である。(編集者注:版元がオランダの出版社であることから翻訳の底本はオランダ語であると推定される。WorldCatレコードでもオランダ語版が確認される。http://www.worldcat.org/oclc/428007980
WorldCatレコード:http://www.worldcat.org/oclc/453793956

[5]
編者:ランドール・C・ジマーソン
編者名原文:Randall C. Jimerson
タイトル:アーカイブズの力:記憶、アカウンタビリティ、そして社会正義
原題:Archives power: memory, accountability, and social justice
その他書誌情報:Society of American Archivists, 2009, pp442, $56. ISBN 1-931666-30-X
評者:キャロライン・ウィリアムズ
評者名原文:Caroline Williams
評者所属等:独立アーカイブズ・コンサルタント&リバプール大学
評者所属等原文:Independent Archival Consultant & University of Liverpool
ページ:69-71
一行解説:著者は2004-2005年度のSAA会長。評者によると本書の中心テーマは社会におけるアーキビストの役割、アーカイブズの力と価値、そして専門職倫理と社会的責任の関係であり、著者はアーキビストに関するジェンキンソン流の価値中立的、受身的な考え方を否定し、アーキビストの積極的な社会への関与を主張する。この書評からは、本書中の「アーカイブズ倫理再考」Rethinking archival ethicsの章が民間に所在する資料や企業アーカイブズに多く言及しているがわかる。マイノリティ・グループのアーカイブズ、コミュニティ・アーカイブズの意義とその課題等にも多くのページを割いている。評者は本書には繰り返しの部分が少なからず、全体の分量も膨大であるが、とりわけアーカイブズを学ぶ学生には有用であると評価している。
WorldCatレコード:http://www.worldcat.org/oclc/435767627

[2008年1月-12月新規発行参考書目録](72-86ページ)省略
Select bibliography of new publications Jan-Dec 2009

編纂・編集担当:エマ・スタッグ
Compilied and edited by Emma Stagg

この新刊書誌紹介のページは下記の分類体系に基づいて分類されています。

分類体系 The Classification Scheme
(American Archivist誌の書誌分類体系による)

A 総記および書誌 General Works and Bibliographies
B アーカイブズの機能 Archival Functions
   アクセス Access
   評価と収集 Appraisal and acquisition
   編成と記述 Arrangement and description
   保存とセキュリティ Preservation and security
   広報とアウトリーチ Public relations and outreach
   アーカイブズの利用 Uses of archives
C 記録形式 Records Formats
   視聴覚資料 Audio-visual material
   電子記録 Electronic records
   マイクロ写真と光学式保管 Micrographics and optical storage
   紙ベースのテキスト記録 Paper-based textual records
   音声記録 Sound recordings
   視覚資料 Visual material
D 保存機関の類型 Types of Repositories
   ビジネス・アーカイブズ Business archives
   公文書館 Governments archives
   専門保存機関 Specialist repositories
E 管理に関する諸問題 Administrative Concerns
   建物と設備 Buildings and equipment
   災害コントロール Disaster control
   倫理 Ethics
   情報技術 Information technology
   法律ならびに法的問題 Laws and legal issues
   経営問題 Management issues
F アーカイブズ専門職 Archival Profession
   現状と問題点 Current condition and issues
   教育と専門的能力開発 Education and professional development
   歴史的発展 Historical development
   専門職団体 Professional organizations
G 関連専門職 Related Professions
   コンサベイター Conservators
   司書 Librarians
   博物館 Museums
   レコード・マネジャー Records managers
   研究者 Researchers
H 所蔵資料の記述 Descriptions of Holdings
   イギリス UK
   国際 International
I 記録管理 Records Management
   総論 General
   電子記録管理 Electric records management
   リテンション・スケジュール Retention scheduling
J 情報管理 Information Management

[関連ページ]

ビジネス・アーカイブズ・カウンシル
http://www.businessarchivescouncil.org.uk/

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[略称一覧]
ACA: Association of Canadian Archivists(カナダ・アーキビスト協会)
ARA: Archives and Records Association(アーカイブズとレコード協会)
ARC: ARC magazine: archives - records management - conservation
(SoAが発行する月刊ニュースレター)
ASA: Australian Society of Archivists(オーストラリア・アーキビスト協会)
BAC: Business Archives Council(ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BACS: Business Archives Council in Scotland
(スコットランド・ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BAS: Business Archives Section
(ビジネス・アーカイブズ部会:SAA内の部会)
CITRA: International Conference of the Round Table on Archives
(アーカイブズに関する国際円卓会議:ICAの年次会議)
CoSA:Council of State Archivists(米国・州文書館長評議会)
DCC: Digital Curation Center(英国デジタル・キュレーション・センター)
EDRMS:Electronic Document and Record Management System
(電子文書記録管理システム)
ERM:Electronic Record Management(電子記録管理)
ICA: International Council on Archives(国際文書館評議会)
LSE: London School of Economics and Political Science
(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)
MLA: Museums, Libraries and Archives Council
(英国 博物館、図書館、アーカイブズ評議会)
NAGARA: National Association of Government Archives and Records Administrators
(米国・全国政府アーカイブズ記録管理者協会)
NARA: National Archives and Records Administration
(米国 国立公文書館記録管理庁)
RIKAR: Research Institute of Korean Archives and Records
(韓国国家記録研究院)
RMS:Record Management System(記録管理システム)
SAA: Society of American Archivists(米国アーキビスト協会)
SBL: Section for Business and Labour Archives
(企業労働アーカイブズ部会、ICA内の部会)
SoA: Society of Archivists(イギリス・アーキビスト協会)
TNA: The National Archives(英国国立公文書館)

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☆★ 編集部より:あとがき、次号予告 ★☆

たいへん長らくお待たせいたしました。「ビジネス・アーカイブズ通信」35号をお届けします。34号http://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20101022.htmlを発行したのが、2010年10月22日でしたので、ほぼ8か月ぶりの発行となります。

昨年10月にソウルの韓国外国語大学校大学院情報記録管理学科創立10周年記念国際会議として開催された「企業ならびに地域共同体と文化機関の間の互恵的関係育成のためのアーカイブズの活用」会議参加報告をお届けして以降は、当編集部は今号で取り上げたシンポジウム準備に突入しました。

当初はスムーズに進んでいたと思われる準備でした。しかし3月11日の東日本大震災発生以降は、海外からの参加予定者に対して、震災後の東京とその周辺の状況の詳細な説明を度々行ったり、発表予定者のキャンセルが出るたびにプログラムとロジスティック(宿泊等手配)に変更を加えたり、という思わぬ展開となりました。

プログラムは当初の予定からは大きく変わりました。しかしご来場の方々からは「参加してよかった」という感想を数多く頂戴しました。関わってくださった方々全てに心より感謝申し上げます。

このイベントを一過性のものに終わらせず、日本におけるビジネス・アーカイブズの振興、企業文化の繁栄と企業の社会的責任に対する意識の向上と実務に役立てるために、シンポジウム終了とともに、出版プロジェクトがスタートしています。今回シンポジウムで発表された報告に加え、これまでICASBLその他のビジネス・アーカイブズに関わる専門的な会議や機関誌で発表されてきた、世界のビジネス・アーカイブズのベストプラクティスに関する本を作るプロジェクトです。ご期待ください。

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今年から来年にかけてアーカイブズに関わる大きな行事がこのほかにもいくつか予定されています。

企業史料協議会では11月中旬に創立30周年記念事業を予定しているとうかがっています。同協議会はこれにあわせて、13年ぶりに会誌『企業と史料』第7号を刊行しました。
http://www.baa.gr.jp/kankobutu.asp?NoteAID=31

国立公文書館は今年設立40周年です。同館ではICAの東アジア地域支部EASTICA総会を東京に招致、11月15日〜18日に各種プログラムが予定されています。
http://www.ica.org/7599/about-ica-secretariat/ica-agenda-at-a-glance.html

ICA関係ではSBLが来年4月16日〜17日(予定)にコペンハーゲンで2日間のビジネス・アーカイブズ・セミナーを、ICA本体は8月20日〜25日にオーストラリア・ブリスベンで4年に1度の大会(Congress)を開催します。

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次号は2011年7月上旬配信予定となります。どうぞお楽しみに。

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◆◇◆〈渋沢栄一記念財団からのお知らせ〉◆◇◆

□「企業史料ディレクトリ」:企業アーカイブズと企業史料の所在・概要ガイド

2008年7月22日公開いたしました。日本を代表する企業を中心とした企業アーカイブズと史料保存・学術研究機関合わせて30企業・団体・機関の概要、所蔵資料に関する情報を掲載しております。ぜひご覧ください。
http://www.shibusawa.or.jp/center/dir/index.html

□実業史研究情報センター・ブログ「情報の扉の、そのまた向こう」

「今日の栄一」「渡米実業団」「栄一情報」「栄一関連文献」「センターニュース」「今日の社史年表」「社史紹介(速報版)」「ビジネス・アーカイブズ通信(速報版)」「アーカイブズニュース」「図書館ニュース」をお届けしております。
http://d.hatena.ne.jp/tobira/

「アーカイブズニュース」では公文書等の管理に関する法律に関する動向やアーカイブズのデジタル化、資料の発見・公開に関わるニュースを随時ご紹介しております。

ブログ画面右側の「カテゴリー」にある「アーカイブズニュース」をクリックしてください。「アーカイブズニュース」として掲載した記事をまとめて一覧することができます。

・カテゴリーの紹介
http://d.hatena.ne.jp/tobira/20080203

□「社史に見る災害と復興」

この度の東日本大震災に際し実業史研究情報センターでは、センター・ブログに「社史に見る災害と復興」というカテゴリーを新設しました。そこでは現在構築中の「社史索引データベースプロジェクト」の蓄積データを検索し、「災害と復興」に関する記事を含む社史について紹介しています。
http://goo.gl/WUE3b

実業史研究情報センター・ブログ「情報の扉の、そのまた向こう」はほぼ毎日更新しております。どうぞご利用ください。

□「渋沢栄一関連会社社名変遷図」

渋沢栄一がどのような会社に関わったか、それが今にどうつながっているのか、一目でわかるように業種別にまとめて変遷図にしました。現在122図掲載中です。社名索引もありますので、どうぞご覧ください。
http://www.shibusawa.or.jp/eiichi/companyname/index.html

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★渋沢栄一記念財団は2010年9月1日に「公益財団法人」になりました★

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ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信) No.35
2011年6月10日発行 (不定期発行)
【創刊日】2008年2月15日
【発行者】公益財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター
【編集者】公益財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター
      「ビジネス・アーカイブズ通信」編集部
【発行地】日本/東京都/北区
【ISSN】1884-2666
【E-Mail】
【サイト】http://www.shibusawa.or.jp/center/ba/index.html

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