ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信)

第104号(2025年3月22日発行)

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☆      □■□ ビジネス・アーカイブズ通信 □■□

☆      No.104(2025年3月22日発行)

☆    発行:公益財団法人 渋沢栄一記念財団 情報資源センター

☆                        〔ISSN:1884-2666〕
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この通信では海外(主として英語圏)のビジネス・アーカイブズ(BA)に関する情報をお届けします。

海外BAに関わる国内関連情報も適宜掲載しております。

今号は文献情報4件、行事情報1件です。

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◆ 目次 ◆

[掲載事項の凡例とご注意]

■文献情報:「渋沢栄一と東京海上・各務鎌吉の接点」

■文献情報:「信用調査業(興信業)と渋沢栄一」

■行事情報:ICA/SBA、フォード・モーター・カンパニー
ビジネス・アーカイブズ国際シンポジウム
◎テーマ:「持続可能な現代化:企業のイメージを現代化するためにアーカイブズをどのように活用できるか?」
     (2025年10月20-21日、米国ミシガン州・ディアボーン)

■文献情報:情報資源センター「協力事業 ICA/SBA」

■文献情報:「渋沢栄一の遺志をビジネス・アーカイブズ支援に生かす」

☆★ 編集部より:あとがき、お知らせ ★☆
ドイツ・ビジネス アーキビスト協会「ビジョンとミッション」
ムゼインプレーザ
LinkedIn ICA/SBA アカウント


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[掲載事項の凡例]

・欧文の場合、日本語で読みやすいものになるように、タイトルははじめに日本語訳を、続いて原文を記します。
・人名や固有名詞の発音が不明の場合も日本語表記を添えました。便宜的なものですので、検索等を行う場合はかならず原文を用いてください。
・普通名詞として資料室や文書室、物理的な記録資料を表現する際は「アーカイブズ」を用います。固有名詞の場合はこの限りではありません。また物理的およびデジタル記録資料の蓄積や組織化に関しては「アーカイブ」「アーカイブ化」「アーカイビング」などの表現を用いることもあります。

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[ご注意]
・受信時にリンク先を示すURLが途中で改行されてしまう場合があります。通常のURLクリックで表示されない場合にはお手数ですがコピー&ペーストで一行にしたものをブラウザのアドレス・バーに挿入し、リンク先をご覧ください。


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■文献情報:「渋沢栄一と東京海上・各務鎌吉の接点」

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◎櫻井由佳(東京海上日動火災保険株式会社図書史料室)「渋沢栄一と東京海上・各務鎌吉の接点」
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc024_tmnf.html
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/pdf/doc024_tmnf.pdf(PDF)

東京海上日動火災保険株式会社図書史料室は社内向けサービスを担う、企業の一部門です。一方で企業が社会的な存在であることを意識し、唯一無二の資料、企業が自ら創り出している記録などについて「限定公開」を試行しています。渋沢栄一記念財団の機関誌『青淵』第905号(2024.08)に掲載された文章に若干の加筆修正を加えた本稿では、探し難く人目につかない資料や記録を含め用いて、渋沢栄一と東京海上および長らく「東京海上の各務か、各務の東京海上か」と評された各務鎌吉の接点にある、極めて素朴な三つの問いを探っています。

<目次>
1. 企業アーカイブズの存在と役割

2. 東京海上にとって渋沢栄一とは何者か?

3. 各務鎌吉は伊香保で何をしていたか?

4. 二人の接点を示す記録は「ない」?

★☆★...編集部より...★☆★

十数年前、さる高名な経営史研究の大家から「会社の記録は公文書と同じく公共財である。CSRの観点からして当然。会社の記録と政府の記録はまったく同じ」というお話をうかがったことがあります。企業記録へのアクセス・利用の観点からは、あまりに乱暴な御説ではないかと思ったものの、会合の趣旨は議論することではなくインタビューであったため、ノートにその旨記載して、会合を終えました。これと前後してインタビューを行った別の大家からは、アーカイブズにおける「時の経過」の考えを会社の記録にも適用することが適切であろう、というお話をうかがいました。例えば、作成後50年経った文書は公開する、というやり方です。

現在の法の下では、企業の文書は、第一義的には企業の私的財産であり、その扱いに関しては当該企業の管理下にある、ということが、外部からの利用に関わる議論のスタート地点と考えられます。

アーカイブズとしてより多くの方々に文書を利用してもらうには、然るべき期間が経過した後になります。然るべき期間がどのくらいの期間なのか、ということを常に意識していくことが、企業のアーカイブズ資料を未来に継承するために大切なことでしょう。そして、そのためには、著者が本稿冒頭で語っている「企業史料は社外秘だから、と言われるが全てがそうとは限らない。現状としては、社内外問わず用があって尋ねられ対応可能であれば条件を提示して公開する。何かしらの理由があって公開が難しいようであれば理由を述べて謝絶する」といった実務を一つの模範とし、継続していくことは優れた方法と考えられます。

ある時点で何が公開できて、何が公開できないのかを判断する作業のためには、どのような文書があり、それがどのような経緯で作成されたものであり、どのような内容であるのかがあらかじめ整然と把握されている(目録が作成されている、データベース化されているなどの)必要があります(*)。本稿は、東京海上日動に関連する社内外の資料を包括的に収集し、体系的なデータベースを構築し、レファレンスに対応してきた同社図書史料室のこれまでの蓄積がもたらした成果の一つです。

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一方、過日、民間組織の資料の整理に関わるある会合で、「写真はみれば内容がわかりますから」というお話をうかがいました。ジョブ・ローテーションにより異動でやってきた部署で、他に助っ人もいないなか、担当者は悪戦苦闘・試行錯誤しつつ、資料の整理と利用に向けての準備に真摯に取り組まれていることが伝わってくる会合でした。しかし、この一言には、アーカイブズを継承し真に活かす(活かしたいと希求する)立場からは、少々疑問を持ちました。

本稿の「図」(写真)には、渋沢栄一と東京海上・各務鎌吉が共に収まっています。しかし、この写真を見ても、なぜ二人が一緒にそこに収まっているのか、どのような事情でこの場所に二人がいるのか、どのような話をしたのか、写真は何も語ってくれません。

最近の資料、写真ならば、それらが作成された経緯、撮影された状況を、本人から、あるいは関係の方々に直接尋ねれば解決することもあるでしょう。しかし、100年前のその場に立ち会った人はもう誰も生きておらず、この出来事に関する経緯や状況を語ってくれる人もいまや存在しません。今分かっている経緯や状況を、資料、写真のメタデータ(データに関するデータ)として記録しておくことは、50年後、100年後の人々が現在のわたしたちの事業・活動を理解する大きな助けとなります。コストとの兼ね合い、AI技術の将来の可能性など他に重視すべき要素を考慮しつつも、現時点でメタデータを付与しないでおくことには心配がつきまといます。

本稿は、必ずしも専門的なバックグラウンドを持たないが、社内異動で史料室での資料整理に関わるようになったといった方々に、アーカイブズ、記録資料におけるメタデータの役割、社内の記録と外部の記録の補完性への理解を深めていただくために、ぜひ読んでいただきたい一文です。

[関連ページ]
東京海上日動火災保険株式会社
https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/

東京海上日動火災保険株式会社・「東京海上日動の歴史」
https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/company/rashisa/story/history/

三菱史料館
https://www.meri.or.jp/siryo-kan/

損害保険A|渋沢栄一関連会社名・団体名変遷図(公益財団法人渋沢栄一記念財団)
https://eiichi.shibusawa.or.jp/namechangecharts/histories/view/93


(*)参考として:
「アーキビストによる資料整理(目録作成等)と資料研究なしには、利用希望者に文書を提供することは不可能である。どのような文書が含まれているのか判然としないファイルは、社外はもちろんのこと、社外においてすら活用することは困難である。リスクとなりうる情報や個人情報の有無といったものを事前に把握しておく必要があるからである」(「世界のビジネス・アーカイブズ概観」『デジタルアーカイブ・ベーシックス5 新しい産業創造へ』、勉誠出版、2021年、41頁)。

「公文書等の管理に関する法律」(公文書管理法)施行(2011年4月1日)と関連し、国立公文書館が公にしている以下の文書は、企業アーカイブズ関係者も内容を把握しておく必要があるでしょう。

「国立公文書館における『時の経過』の運用について」(2012年8月9日)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gijiroku/sagyou1/1siryou9.pdf(PDF)
とくに3頁目の「独立行政法人国立公文書館における公文書管理法に基づく利用請求に対する処分に係る審査基準(平成23[2012]年4月1日館長決定)(抄)」


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■文献情報:「信用調査業(興信業)と渋沢栄一」

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◎ 福田美波(帝国データバンク史料館 主任学芸員)「信用調査業(興信業)と渋沢栄一」
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc023_tdb_muse.html
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/pdf/doc023_tdb_muse.pdf(PDF)

「世界/日本のビジネス・アーカイブズ」に、帝国データバンク史料館主任学芸員、福田美波氏による「信用調査業(興信業)と渋沢栄一」を掲載しました(2024.10.01)。
2024年5月21日~12月27日の期間、帝国データバンク史料館では常設展示室テーマ展示コーナーにおいて企画展「渋沢栄一と信用調査業」を開催。展示では、渋沢栄一の信用調査業に対する尽力と功績を振り返り、帝国データバンクの前身となる帝国興信所と渋沢との関係やゆかりのエピソードを紹介しました。本稿は『青淵』第902号(2024.05)に掲載した記事を改稿したもので、本展示内容を改めて文章に興し、企業史料の活用事例として紹介したものです。

<目次>
1. はじめに

  (1) 帝国データバンク史料館について

  (2) 日本における信用調査業
2. 興信所の設立

3. 後藤武夫と渋沢栄一

4. 『日本魂』にみる寄稿記事

5. 信の威力

6. 「道徳経済合一説」と「実業道徳の興隆」

【注】

★☆★...編集部より...★☆★

「渋沢栄一の偉業及び徳風を追慕顕彰し、渋沢栄一が終始唱道実践した道徳経済合一主義に基づき、経済道義を昂揚する」(当財団定款第3条)ためには渋沢栄一に関わる記録の収集と整理、研究が欠かせません。『渋沢栄一伝記資料』全68冊はそのための基本資料であり、新たな資料、必要な資料の発掘や収集が行われ続けています。

本稿は帝国データバンクが自らのために保管してきた資料から、渋沢栄一に関する新たな知見を引き出しています。それは「5. 信の威力」の部分にある、帝国興信所に向けた渋沢栄一の言葉が、『論語と算盤』の中で、より普遍的な文章として展開されていくという部分です。

人間の活動、企業の活動は、外部とのさまざまなやりとりの中で展開していることから、ある人、ある企業、ある組織のこれまでの歩みを明らかにするのは、外部のアーカイブズ機関との連携、協力、アーカイブズ資料の利用が欠かせません。

本稿もまた、資料整理に携わる人々に、大きな示唆を与えてくれています。


[関連ページ]
株式会社帝国データバンク
https://www.tdb.co.jp/

株式会社帝国データバンク「帝国データバンクの歴史」
https://www.tdb.co.jp/about/history/

帝国データバンク史料館
https://www.tdb-muse.jp/

帝国データバンク史料館 創業125周年記念 企画展「創業者 後藤武夫」(2025年8月22日まで)
https://www.tdb-muse.jp/news/2905/

興信所B|渋沢栄一関連会社名・団体名変遷図(公益財団法人渋沢栄一記念財団)
https://eiichi.shibusawa.or.jp/namechangecharts/histories/view/127


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■行事情報:ICA/SBA、フォード・モーター・カンパニー
ビジネス・アーカイブズ国際シンポジウム
◎テーマ:「持続可能な現代化:企業のイメージを現代化するためにアーカイブズをどのように活用できるか?」
     (2025年10月20-21日、米国ミシガン州・ディアボーン)

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◎ICA/SBA、フォード・モーター・カンパニー
ビジネス・アーカイブズ国際シンポジウム
「持続可能な現代化:企業のイメージを現代化するためにアーカイブズをどのように活用できるか?」
https://www.wirtschaftsarchive.de/aktuelles/veranstaltungen/ica-sba-conference-2025/

2025年度のICA/SBA国際シンポジウムは10月20、21日の2日間の予定で米国ミシガン州ディアボーンのフォード・モーター・カンパニーで開催されます。会場は同社のエドセル・B・フォード II・エクスペリエンス・センターです。

シンポジウムのテーマは「持続可能な現代化:企業のイメージを現代化するためにアーカイブズをどのように活用できるか?」 "Sustainable Modernization - how can archives be used to modernize the image of companies?" です。

【開催趣旨】
アーカイブズは、企業のイメージを刷新する上で重要な役割を果たすことができます。企業の歴史や遺産を説明することによって、過度な再編過程で、企業文化における成功要素がうっかり排除されてしまうのを防ぐことができます。さらに、アーカイブズは、ストーリーテリングの手法を創造・適応させることで、必要な変革をステークホルダーに伝える上でも不可欠です。過去について分析することを支援することによって、経路依存性を特定し、企業のストーリーテリングをより持続可能な方向へ導き、将来的な事業の継続性を確保する助けとなります。これらの機能の根源にあるのはアーカイブズそのものであり、その所蔵資料を通じて、権威ある信頼性の高い知識を確立することが可能となるのです。

シンポジウムでは、企業の相互作用やコミュニケーションの特定の側面を表す、以下の4つのテーマに焦点を当てます。

・アーカイブズにおける人工知能(AI)の活用
・ソーシャルメディアにおけるビデオ・ストーリーテリング
・新しい世代に企業文化を具体的に伝える方法
・アーカイブズを活用した建物の近代化と再設計

参加登録方法等は追って発表の予定です。

[関連ページ]
ICA/SBA
https://www.ica.org/ica-network/professional-sections/sba/

エドセル・B・フォード II・エクスペリエンス・センター(Edsel B. Ford II Experience Center)に関する記事
https://www.ghafari.com/projects/ford-experience-center
(同センターの設計・改装を担当したGhafari Associates社のページ)

フォード・ヘリテージ・ボールト Ford Heritage Vault
https://fordheritagevault.com/
*フォード・モーターのデジタルアーカイブ

ベンソン・フォード・リサーチ・センター Benson Ford Research Center
https://www.thehenryford.org/

同センター所蔵アーカイブズ資料コレクション目録
https://www.thehenryford.org/collections-and-research/digital-collections/archival-collections/


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■文献情報:情報資源センター 「協力事業 ICA/SBA」

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◎情報資源センター 「協力事業 ICA/SBA(国際アーカイブズ評議会 ビジネス・アーカイブズ部会)」

2007年5月に開催された日米・アーカイブセミナーをきっかけとして、情報資源センター(当時は実業史研究情報センター)は企業(ビジネス)アーカイブズの国際的ネットワークに積極的に関わってきました。この活動の軸は、アーカイブズとアーキビストに関わる国際的な専門団体国際アーカイブズ評議会(ICA)の企業アーカイブズ部会(SBA、2014年までは企業労働アーカイブズ部会:SBL)への協力事業であり、情報資源センターでは、2008年10月から2024年9月までSBA(SBL)の運営委員を務めました。

情報資源センターの協力事業ページにある、ICA/SBA(SBL)に関するページを更新し、この16年間の歩みを簡単に振り返りました。今回の更新では主として英語ページの内容のアップデートをおこなっています。

【英語ページ】
https://www.shibusawa.or.jp/english/center/network/01_icasbl.html

【日本語ページ】
https://www.shibusawa.or.jp/center/network/01_icasbl.html


★☆★...編集部より...★☆★

■ICA憲章■

今回の更新では、ICAの目的に関して、最新のICA憲章を引用しています。同憲章の2021年改訂版2.1の部分です(本通信編集部による仮訳)。

「ICAの目的は、あらゆる形式の記録、アーカイブズ、データの効率的かつ効果的な管理と利用を促進し、それらを人類の文化的および証拠的遺産として保存することを確実にすることです。これは、国際的な協力、専門的な経験の共有、研究、およびアーカイブズ機関の管理・運営に関するアイデアの交換を通じて達成されます。」
https://www.ica.org/app/uploads/2024/01/ICA_Constitution_2021_ENG.pdf(PDF)

一つ前のバージョン(2012年)の憲章では、目的に関わる第2条は以下のような文言でした(同仮訳)。

「ICAの目的は、国際協力を通じて、記録とアーカイブズの効率的かつ効果的な管理と活用を促進し、人類のアーカイブズ遺産を保存することです。そのために、アーカイブズ(資料)とアーカイブズ機関の管理や運営に関する専門的な経験、研究、アイデアを共有します。」
https://web.archive.org/web/20190605120424/https://www.ica.org/sites/default/files/constitution_2012_en_final_2016_visual_identity.pdf(PDF)

最新版では、旧版における「記録とアーカイブズ」が「あらゆる形式の記録、アーカイブズ、データ」に、同「人類のアーカイブズ遺産」が「人類の文化的および証拠的遺産」に、同「保存すること」が「保存することを確実にすること」に変わった部分でしょう。

アーカイブズとアーキビストが担うミッションは確実に広がり、複雑化していることがこの比較からも読み取れます。ますますの国際協力が必要とされる所以です。


■ICA/SBA-SBLにみるビジネス・アーカイブズの国際動向■

ICAにおける企業史料、ビジネス・アーカイブズに関わる事業を、さらに長いスパンで振り返ってみたいと思います。基本文献は、本通信44号(2013年2月15日発行)で紹介した文献『企業とその記憶:モーリス・アモンを称えるエッセイ集』収録のペリンヌ・カナヴァッジョ「企業アーカイブズ委員会から労働企業アーカイブズ部会へ:国際アーカイブズ評議会におけるアーカイブズの国際協力の例」とオットフリート・ダッシャー「国際アーカイブズ評議会の企業アーカイブズ委員会(1974-)1976-1988年」です。
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20130215.html

・ペリンヌ・カナヴァッジョ氏について(本通信44号より)
歴史遺産名誉保存修復家。内務省内の国立公文書館部部長 (1973-1980)、フランス共和国大統領のためのアーカイブズ・サービス部長 (1974-1994)、国立公文書館内公証人記録中央保存所責任者(1994-1995)、フランス政府文部省のアーカイブズ局副局長(1995-1996)を歴任したほか、法学者Guy Braibantによる「フランスにおけるアーカイブズ」報告書(1996)の作成にも関わった。2001年から2009年までICAの副事務局長、2000年から2008年までICAの円卓会議(CITRA)事務局長。2003年から2008年までICAのヒューマンライツ・ワーキンググループの長を務めた。

・オットフリート・ダッシャー氏について(同)
1936年生まれ。ベルリン大学とマールブルク大学で歴史学、ドイツ文学、政治学、経済学を研究 (1957-1962)。1965年に博士論文を完成させ、同年から1967年までマールブルク・アーカイブズ学校に学び、アーキビスト・古文書学者になった。ヴェストファリア地方経済アーカイブズ財団ディレクター (1967-1970/1973)、デュッセルドルフにあるノルトライン・ヴェストファーレン州公文書館の主任保存修復家(1992-2001)。1980年にボーフム大学教授。経済史関係の著書多数。


この二つの論文によると、ICAにおける企業史料、企業アーカイブズに関わる活動は次のように発展してきました。

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ビジネス・アーカイブズの価値が最初に認識されたのは、20世紀前半、ヨーロッパや北米においてでした。1948年に創設された国際アーカイブズ評議会(ICA)では、1950年代に入り、ビジネス・アーカイブズの必要性が議論され始めました。それに伴い、各国では、1934年設立のBAC(Business Archives Council)をモデルにビジネス・アーキビストの協会が誕生しています。

1974年の英国ロンドンでのICA大会ではBACの主導で、国際的なビジネス・アーカイブズ委員会の設立が決定され、1976年の米国ワシントン大会で正式に発足、フランス、ドイツ、ベルギー、英国、スイスの専門家が執行委員となりました。1977年には西ドイツ(当時)のドルトムントで第1回委員会が開催され、1978年までに10人の主要メンバーと18人の通信員がネットワークを構築し、このネットワークはその後も拡大して、1988年には27名が参加、中国や日本も加わったということです。

委員会は1977年から1990年まで毎年異なる国で会議を開催しています。初代会長オットフリート・ダッシャー(ドイツ)を中心に、ベルギーのヒルダ・コッペヤンス=デスメット(1984年に会長就任)、スウェーデンのアンナ・クリスティーナ・ウルフスパーレらが活動を支えました。1978年から1988年まで毎年会報bulletinを発行し、1983年にはビジネス・アーカイブズの国際的実践をまとめた入門書 Business Archives Studies on International Practice (Committee on Business Archives of ICA, New York: Saur, USA, 1983, 167 p.) を発表、1988年には『ビジネス・レコードの管理』 The Management of Business Records (Anna Christiana Ulfsparre, ICA Handbooks Series vol.8, Munich:Saur, Germany, 1988, 72 p.) がICAのハンドブック・シリーズに加えられました。

1986年、ICA執行委員会は委員会を部会(セクション)に変更する提案を行い、1988年にこれが正式に決定されました。SBL(企業労働アーカイブズ部会)は1990年8月23日、ブリュッセルで開催された第10回国際経済史会議・第7回国際産業考古学会議の期間中に設立されました。47名の参加者が部会規約を採択し、初代会長にウルフスパーレが選出されました。SBLは、経済・社会アーカイブズの保存促進や、産業・銀行・商業・労働組合アーカイブズの管理、経済・社会文書の保存ガイドラインの策定、企業経営者やアーキビストの交流の場となることを目標として出発しました。

以後、1992年ノルウェーで第1回国際シンポジウムを開催し、石油産業の記録管理を議論し、1994年には民間部門のアーカイブズの課題、1995年にはロシアの民営化企業向けのアーカイブズ管理講座を開講したほか、1996年には欧州のビジネス・アーカイブズの概況をまとめた書籍 Overview of Business Archives in Western Europe(Lesley Richmond, Glasgow University Archives & Business Record Centre, 1996, 52 p.) を出版しています。1998年には英文ニュースレターが創刊され、ウェブサイトとディスカッションリストも立ち上げられました。

4年に一度開催(当時)の大会(コングレス)でSBLは定期的にセッションを開催し、1996年中国北京大会ではビジネス・アーカイブズの振興と労働史にかかわる資料について議論し、2000年のスペイン・セビリア大会では、ビジネス・アーカイブズの収集・評価・M&Aに関する4つのセッションを持ちました。2004年のオーストリア・ウィーン大会では、ビジネス・アーカイブズの国際比較 Business Archives in International Comparison のプレゼンテーションが行われました。(編集部注:2021年にはSBAが国際比較第3版を発行しています)

2010年にはSBLとSAA(米国アーキビスト協会)の協力により、2004年のSBLによるビジネス・アーカイブズ国際比較調査と2006年の北米調査を比較した研究 ICA Global Business Archives Benchmarking Analysis を発表しました。SBLはCITRA(ICAの円卓会議)でもビジネス・アーカイブズに関する特別セッションを開催し、2001年のアイスランド・レイキャビクCITRAではビジネス・アーカイブズの保存課題を、2005年UAEアブダビCITRAでは、グローバル化時代におけるアーカイブズの重要性が議論されました。

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カナヴァッジョ氏とダッシャー氏の論文、さらに本通信のバックナンバーのデータからSBA-SBLのリーダーシップと会合テーマの変遷を見てみましょう。

◆SBA-SBLの歴代リーダー◆

【委員長/部会長】
1976-1984
オットフリート・ダッシャー(Ottfried Dascher)
西ドイツ・ウェストファリア経済アーカイブズ

1984-1988
ヒルダ・コッペヤンス・ドスメット(Hilda Coppejans-Desmedt)
ベルギー国立公文書館

1988-1996(事務局長兼務)
アンナ・クリスティーナ・ウルフスパーレ(Anna Christina Ulfsparre)
スウェーデン国立公文書館ルンド分館

1996-2000
ヤープ・クローステルマン(Jaap Kloosterman)
国際社会史研究所(オランダ・アムステルダム)

2000-2002
ヘンリク・フォデ(Henrik Fode)
デンマーク国立ビジネス・アーカイブズ

2002-2010
ハンス・エイビンド・ネス(Hans Eyvind Naess)
ノルウェー国立公文書館スタバンガー館

2010-2012
ディディエ・ボンデュ(Didier Bondue)
サンゴバン・グループ・アーカイブズ(フランス・ブロワ)

2012-2016
レズリー・リッチモンド(Lesley Richmond)
グラスゴー大学アーカイブズ(イギリス・グラスゴー)

2016-現在
アレグザンダー・L・ビエリ(Alexander L. Bieri)
ロッシュ社ロッシュ歴史コレクション&アーカイブ (スイス・バーゼル)


【事務局長】

1976-1984
ヒルダ・コッペヤンス・ドスメット(Hilda Coppeyans-Dsmedt)
ベルギー国立公文書館

1984-1988
アンナ・クリスティーナ・ウルフスパーレ(Anna Christina Ulfsparre)
スウェーデン国立公文書館ルンド分館

1988-1996(委員長・部会長兼務)
アンナ・クリスティーナ・ウルフスパーレ(Anna Christina Ulfsparre)
スウェーデン国立公文書館ルンド分館

1996-2004
レズリー・リッチモンド(Lesley Richmond)
グラスゴー大学アーカイブズ(イギリス・グラスゴー)

2004-2012
ベッキー・ハグランド・タウジー(Becky Hugland Tousey)
クラフトフーズ・アーカイブズ、モンデリーズ・インターナショナル・アーカイブズ(アメリカ・シカゴ)"

2012-現在
ヴルンダ・パターレ(Vrunda Pathare)
ゴードレージ・アーカイブズ(インド・ムンバイ)


◆委員会/部会の年次会合(シンポジウム、セミナー)テーマ一覧◆

1992 「石油産業と記録管理の挑戦」(シンポジウム)/スタバンガー(ノルウェー)

1996 「ビジネス・アーカイブズの振興と労働史資料」(ICA大会セッション)/北京(中国)

2000 「ビジネス・アーカイブズへのアクセス」「収集と評価選別」「ビジネス・アーカイブズ振興」「M&A」(ICA大会セッション)/セビリア(スペイン)

2004 「ビジネス・アーカイブズ国際比較」(ICA大会で報告)/ウィーン(オーストリア)

2008 「企業内リテンション(保管)の方針と実践:リテンション(保管)の指針、透明性、そして標準化への可能性」(公開ワークショップ)/スタバンガー(ノルウェー)

2009 「変化の中のビジネス・アーカイブズ」(セミナー)/ヘルシンキ(フィンランド)
   「ビジネス・アーカイブズ:実務の現況と課題」(セミナー)/プネー(インド)

2010 「会社の記憶、経営に奉仕するツール」(シンポジウム)/ブロワ(フランス)

2011 「ビジネス・アーカイブズの価値:企業史料活用の新たな潮流」(シンポジウム)/東京(日本)

2012 「絶えず心を配る...:21世紀のビジネス・アーキビスト」(シンポジウム)/コペンハーゲン(デンマーク)
   「ビジネス・アーカイブズ:持続可能性、信頼、アイデンティティ」(ICA大会セッション)/ブリスベン(オーストラリア)

2013 「危機、信頼性、そして会社史」(シンポジウム)/バーゼル(スイス)

2014 「工場からフェイスブックへ:ビジネス・アーカイブズをアピールする新たな方法」(シンポジウム)/ロンドン(イギリス)

2015 「最良のビジネス・アーカイブズを作り上げる:投資に見合った利益を得る」(シンポジウム)/ミラノ(イタリア)

2016 「サステナビリティ(持続可能性)」(シンポジウム)/アトランタ(アメリカ)

2017 「ビジネス・アーカイブズの未来の役割」(シンポジウム)/ストックホルム(スウェーデン)
   「ゴーイング・バック・トゥー・ザ・フューチャー:ブランド・アイデンティティと企業文化の再形成におけるビジネス・アーカイブズの役割」(シンポジウム)/ムンバイ(インド)

2018 「あなた、それ信じられる? ビジネス・アーカイブズと信頼」(シンポジウム)/ロンドン(イギリス)

2019 「ビジネス・アーカイブズと次のゴールドラッシュ」(シンポジウム)/サンフランシスコ(アメリカ)

2020-2022 新型コロナウイルスの世界的大流行により中止

2023 「アーキビスト会議2023:オーディエンスとの関わり方」(シンポジウム)/エジンバラ(スコットランド)

2024 「ビジネス・アーカイブズとレジリエンス(回復力)」(シンポジウム)/ワルシャワ(ポーランド)

2025 「持続可能な現代化:企業のイメージを現代化するためにアーカイブズをどのように活用できるか?」(シンポジウム)/ディアボーン(米国ミシガン州)(予定)

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SBA-SBLの部会運営のリーダーは、2010年までは収集アーカイブズとして企業史料を所蔵する公文書館関係者(とくに北欧諸国)が、それ以降は企業のマネージャークラスのアーキビスト・専門家が主として部会長(委員長)を務めてきました。事務局長も同様で、2004年以降は民間企業のアーキビストが担当しています。

このような部会長(委員長)、事務局長の所属の変化は、年次報告のテーマの変遷にもあらわれているのが分かります。21世紀初頭(00年代)までは、「収集」「リテンション(保管)」「記録管理」といったトピックがテーマの中にあらわれていますが、2010年代以降は、活用に焦点を当てた会合テーマへと変化しています。

振り返ってみると、2009年のフィンランドとインドにおける二つの会合と2010年のフランスでの会議がこの変化の分岐点でした。

・「国際文書館評議会(ICA)企業労働アーカイブズ部会(SBL)」(本通信15号)
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20090319.html

・「ICASBL、インド準備銀行農業銀行大学、インド国立公文書館共催国際セミナー」(本通信25号)
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20091225.html

・「ICA/SBL運営会議、ビジネス・アーカイブズ・シンポジウム:会社の記憶、経営に奉仕するツール」(本通信30号、31号)
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20100628.html
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20100716.html

1970年代から2000年代初頭までのビジネス・アーカイブズへの取り組みは、公文書館などの収集アーカイブズを中心とし、収集・保存への関心が高かったものが、次第に企業アーカイブズ(企業内のアーカイブズを担当する部署)による活用へと関心が移行してきた、とまとめることができます。

前世紀後半以降、デジタル・フォーマットの出現によって、さまざまな活用が可能になりました。企業のアーキビストはこのような変化を、アーカイブズとアーキビストの価値の可視化、事業への貢献の機会として見逃さず、積極的に活用への提案を行ってきたのです。その活用事例がSBA(SBL)の会合で披露され、情報やアイデアが共有され、アーカイブズ(資料)の現場における新たな取り組みへとつながる、そのような循環が存在してきたと思います。

経済のグローバル化という1990年代以降コロナ期までの国際的な環境は、以上のようなSBA(SBL)の国境を超えた活動にとって好ましいものでした。コロナ以降の国際情勢の変化、とくに最近の変化がビジネス・アーカイブズにもたらす変化の方向性はまだ明確には見えていませんが、アーカイブズ資料活用への注目が低下することはないと思われます。しかし、資料を活用して何を語るのか(ストーリー)、どの資料を選ぶのか(キュレーション)は、コロナ以前とは異なってくる可能性があります。

また、昨年2024年のポーランド・ワルシャワでの会合で注目されたのは、地域再生における企業のヘリテージ、アーカイブズへの着目という視点です。産業衰退後の地域の荒廃を防ぎ、地域文化の再生・創造に企業のアーカイブズは欠かせないという事例が共有されました。1970年代から2000年代にかけてICA内でビジネス・アーカイブズ委員会・部会をリードしてきた公的な収集アーカイブズ機関が再びSBAで新たな役割を担いつつあることが2024年のワルシャワでの会合で感じられました。現代日本の少子高齢社会における、地域での企業アーカイブズ資料の保存・活用、企業アーカイブズと地域との連携も今後の課題です。

そして何を残す(移管・収集する)のかの判断は史料室が責任を負うべき核心業務です。また、デジタル記録資料の保存の問題はますます重要なものになるでしょう。企業は互いに競い合う存在ですが、とくに、デジタル記録資料の保存に関する知見に関しては、自社だけで万全を期すことは非常に困難です。ビジネス・アーカイブズ、企業アーキビストの横のつながり、国際的な連携が今後ますます密接なものとなることを期待します。

[関連ページ]
国際アーカイブズ評議会(ICA)
https://www.ica.org/

ICAの使命と目的
https://www.ica.org/discover-ica/our-mission-our-objectives/

ICA憲章
https://www.ica.org/app/uploads/2024/01/ICA_Constitution_2021_ENG.pdf(PDF)


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■文献情報:「渋沢栄一の遺志をビジネス・アーカイブズ支援に生かす」

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◎情報資源センターだより「渋沢栄一の遺志をビジネス・アーカイブズ支援に生かす」
https://www.shibusawa.or.jp/center/newsletter/911.html

この記事は、本通信編集部による情報資源センター(旧実業史研究情報センター)企業史料プロジェクトのこれまでを振り返り、これからの企業アーカイブズに関わる取り組みを展望するものです。2004年に始まった同プロジェクトは、道徳経済合一説を唱えて、生涯に約500の会社に関わった渋沢栄一の偉業・徳風を跡づける鍵の一つが企業の活動の記録、すなわちアーカイブズである、と認識したところから出発しました。

近年では、国内の大学でも記録管理やアーカイブズ教育が進み、本プロジェクトの成果の一つである「企業史料ディレクトリ」を教材として活用する事例も生まれています。

プロジェクト誕生から20年を経た現在、生成AIによるアーカイブズ資料の目録作成や要約などが期待される時代を迎えています。このような時代にあって、企業が新たな価値を生み出し、公益に寄与し、持続的に発展していくためには、国際標準の理解やAIをはじめとする新たなテクノロジーの動向に注意を払いつつ、変化し続ける企業活動の記録を確実に取得、整理、保護、利用提供する実務担当者の育成・登用、また関係者をつなぐネットワークづくりが肝要です。

渋沢栄一が財界活動によって多くの企業の成長に貢献したように、渋沢の遺志を引き継ぐ人々には、企業アーカイブズ・企業アーキビストと関係者のつながりを支援し、牽引するような働きが期待されています。

詳しくは以下のページをご覧ください。
https://www.shibusawa.or.jp/center/newsletter/911.html


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[略称一覧]
ACA: Association of Canadian Archivists(カナダ・アーキビスト協会)
ARA: Archives and Records Association(アーカイブズとレコード協会)
ASA: Australian Society of Archivists(オーストラリア・アーキビスト協会)
BAC: Business Archives Council(ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BACS: Business Archives Council in Scotland(スコットランド・ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BAS: Business Archives Section(ビジネス・アーカイブズ部会:SAA内の部会)
CoSA: Council of State Archivists(米国・州文書館長評議会)
DCC: Digital Curation Center(英国デジタル・キュレーション・センター)
EDRMS: Electronic Document and Record Management System(電子文書記録管理システム)
ERM: Electronic Record Management(電子記録管理)
ICA: International Council on Archives(国際文書館評議会)
NAGARA: National Association of Government Archives and Records Administrators(米国・全国政府アーカイブズ記録管理者協会)
NARA: National Archives and Records Administration(米国 国立公文書館記録管理庁)
RIKAR: Research Institute of Korean Archives and Records(韓国国家記録研究院)
RMS: Record Management System(記録管理システム)
SAA: Society of American Archivists(アメリカ・アーキビスト協会)
SBA: Section for Business Archives(企業アーカイブズ部会、ICA内の部会)
TNA: The National Archives(英国国立公文書館)


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☆★ 編集部より:あとがき、お知らせ ★☆

本号では情報資源センターの企業史料プロジェクトのこれまでを振り返ってみました。そして、企業アーカイブズ(機関と資料)の持続性、発展、振興にとって、連携・横のつながりの大切さを改めて認識させられました。そのようなことを考えつつ、最近訪問した海外のビジネス・アーカイブズ/アーキビスト協会関連サイト・ページから、注目のコンテンツをご紹介します。

一つ目はドイツ・ビジネス アーキビスト協会(VdW)「ビジョンとミッション」です。
https://www.wirtschaftsarchive.de/aktuelles/mitteilungen/vision-mission/
https://www.wirtschaftsarchive.de/site/assets/files/26092/vdw_vision_und_mission-1.pdf(PDF)

ドイツ・ビジネス アーキビスト協会は昨年2024年末にウェブサイトで同協会の「ビジョンとミッション」を発表しました。同協会のウェブサイトによると、この「ビジョンとミッション」は同協会の活動の基盤となり、その成功への道筋を示すものであり、目標を明確にし、アーカイブズという文化遺産のために、共に尽力していく決意を表すもの、とあります。

「ビジョン」では経済アーカイブ専門家のネットワークを強化し、企業や経済機関の記録を保存・活用し、文化遺産としての価値を高めることを目的とすることを、「ミッション」では、会員間の交流促進、専門知識の共有、教育・研修の提供を通じて、持続可能なアーカイブ運営を支援すること、年次大会や専門誌『Archiv und Wirtschaft』を活用し、情報発信や優れた実践の表彰を行い、経済アーカイブの発展に貢献するといったことを宣言しています。

[関連ページ]
VdW ビジョンとミッション
https://www.wirtschaftsarchive.de/site/assets/files/26092/vdw_vision_und_mission-1.pdf(PDF)

VdWの歴史
https://www.wirtschaftsarchive.de/ueber-uns/vision-und-mission/geschichte-der-vdw/

VdW 定款
https://www.wirtschaftsarchive.de/site/assets/files/26098/satzung_der_vdw-1.pdf(PDF)

VdW関係記事が掲載されている本通信バックナンバー
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20120718.html
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20150414.html
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20220701.html

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二つ目はイタリアの企業アーカイブズと企業ミュージアムの協会ムゼインプレーザがYouTubeで公開している短い動画です。
https://www.youtube.com/watch?v=MiVET0u0kig
会のクリスマスパーティで「ムゼインプレーザを一言で表すと?」という質問を参加者に投げかけ、これへの回答をつなぎ合わせた1分37秒の動画です。回答は....

「協力」collaborazione
「分かち合い」condivisione
「一年で一番素晴らしい仕事の機会」l'appuntament di lavoro più bello dell'anno
「とても楽しいこと」molto divertimento
「連帯感」unione
「楽しみ」divertimento
「連帯感」unione
「分かち合い」condivisione
「ネットワーキング」networkingr
「つながり」relazione
「美しさ」bellezza
「遺産」heritage
「つながり」relazioni
「プラットフォーム」piattaforma
「美しさ」bellezza
「ネットワーク」network
「興味深いもの」interessante
「記憶」memoria
「コミュニティ」comunità
「結束」aggregazione
「一つの家族」una familia

さて、日本におけるビジネス・アーカイブズ、企業アーキビストの集いを一言で言い表すならば、どんな言葉になるでしょうか?

[関連ページ]
ムゼインプレーザ
https://museimpresa.com/
(トップページ中ほどに「伝統とは火を守ることであって、灰を崇めることではない」というグスタフ・マーラーの言葉が引用されていますね。)

ムゼインプレーザ関係記事が掲載されている本通信バックナンバー
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20210319.html

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海外のビジネス・アーカイブズの動向を知るためには、ビジネスに特化したソーシャル・ネットワーク・サービスLinkedInも有用です。ICA/SBAのグループアカウント
https://www.linkedin.com/groups/9547421/
ではSBAのメンバー企業・機関のアーキビストや国際シンポジウム参加者がビジネス・アーカイブズに関わる情報をシェアしています。最近では

冨岡製糸場に関わる投稿
https://www.linkedin.com/feed/update/urn:li:activity:7259827058283851776/

フランス国立労働文書館(ANMT)/ルーベ(フランス)の展覧会「Trans-fer:国境を越えて」
https://archives-nationales-travail.culture.gouv.fr/en/Decouvrir/Expositions/In-situ/Trans-fer-depasser-les-frontieres

など、興味深い資料、イベントに関する情報がシェアされています。グローバルなビジネス・アーカイブズの動向をチェックするために、フォローをお勧めします。

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本通信は今号をもって休刊いたします。長い間ご愛読ありがとうございました。

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◆◇◆バックナンバーもご活用ください◆◇◆

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ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信) No.104
2025年3月22日発行 (不定期発行)
【創刊日】2008年2月15日
【発行者】公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センター
【編集者】公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センター
      「ビジネス・アーカイブズ通信」編集部/
      株式会社アーカイブズ工房
【発行地】日本/東京都/北区
【ISSN】1884-2666
【E-Mail】
【サイト】https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/index.html

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