ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信)

第93号(2022年3月8日発行)

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☆      □■□ ビジネス・アーカイブズ通信 □■□

☆       No.93 (2022年3月8日発行)

☆    発行:公益財団法人 渋沢栄一記念財団 情報資源センター

☆                        〔ISSN:1884-2666〕
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この通信では海外(主として英語圏)のビジネス・アーカイブズ(BA)に関する情報をお届けします。

海外BAに関わる国内関連情報も適宜掲載しております。

今号は行事情報1件、文献情報3件、企業団体情報1件です。

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◆ 目次 ◆

[掲載事項の凡例とご注意]

■文献情報:公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センター
◎「実業史リンク集」更新(日本語・英語)
     2022年2月10日

■行事情報: ICA/SBA運営委員会開催
     2022年2月8日 オンライン

■企業団体情報:SOS Archivi(イタリア)
     ICA年次会合 ローマ大会の主催団体

■文献情報:ビジネス・アーカイブズ論文集 9
◎アメリカ・アーキビスト協会『ビジネス・アーカイブズのマネジメント』
     2022年1月刊

■文献情報:公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)DXコンセプト立案委員会
◎「デジタル時代の文書情報管理業務に関する提言」目次
     2022年1月公開

☆★ 編集部より:あとがき、次号予告 ★☆

訃報:ディディエ・ボンデュ氏(元ICA/SBL部会長) 2022年2月5日


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[掲載事項の凡例]

・欧文の場合、日本語で読みやすいものになるように、タイトルははじめに日本語訳を、続いて原文を記します。
・人名や固有名詞の発音が不明の場合も日本語表記を添えました。便宜的なものですので、検索等を行う場合はかならず原文を用いてください。
・普通名詞として資料室や文書室、物理的な記録資料を表現する際は「アーカイブズ」を用います。固有名詞の場合はこの限りではありません。また物理的およびデジタル記録資料の蓄積や組織化に関しては「アーカイブ」「アーカイブ化」「アーカイビング」などの表現を用いることもあります。

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[ご注意]
・受信時にリンク先を示すURLが途中で改行されてしまう場合があります。通常のURLクリックで表示されない場合にはお手数ですがコピー&ペーストで一行にしたものをブラウザのアドレス・バーに挿入し、リンク先をご覧ください。


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■文献情報:公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センター
◎実業史リンク集更新(日本語・英語)
     2022年2月10日

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◎実業史リンク集更新
(日本語)https://www.shibusawa.or.jp/center/shashi/shashi05.html
(英語)https://www.shibusawa.or.jp/english/center/shashi/shashi03.html

情報資源センターが編纂・提供する「実業史リンク集」を更新しました。このページは実業史の研究、企業史料の保存と活用に役立つインターネット上のリソース(資源)サイトへのリンクを集めたもので、日本語ページと英語ページで提供しています。

それぞれがどのようなサイトかわかる解説付きです。また一部カテゴリーを改訂し、リンクの掲載順を変更しました。
(日本語)https://www.shibusawa.or.jp/center/shashi/shashi05.html
(英語)https://www.shibusawa.or.jp/english/center/shashi/shashi03.html

各ページは下のようなカテゴリー分けをしています。どうぞご活用ください。

■企業史料・アーカイブズ関係 Business Archives
・国内団体
 Japanese Association

・海外団体・機関・サービス
 International Associations, Groups and Web Services

・国内企業ヘリテージ:アーカイブズ、ミュージアム、ライブラリー、ウェブサイト
 Japanese Business Heritage: Archives, Museums, Libraries and Websites

■大学・学術機関/企業資料コレクション・データベース
Academic Institutions with Business Records Collections

■その他学術関連サイト(国内)
Other Societies and Institutions related to Business History and Archives

■出版された社史関連サイト
Shashi Publications related Websites

■その他
Others


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■行事情報:ICA/SBA運営委員会開催
     2022年2月8日 オンライン

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◎ICA/SBA運営委員会 2022年2月8日 オンライン

ICA/SBA運営委員会会議が2月8日にオンラインで開催されました。次のような会議内容でした。

【2022年の活動について】

・2022年はデンマーク・コペンハーゲンのマースク社アーカイブズが主催者となりビジネス・アーカイブズに関するイベントを行う。当初計画は9月。欧州はコロナウイルス対応の規制が緩和・撤廃されつつあるが、夏以降の状況は今の段階でははっきり見通せない。バーチャルオンリーでよいという意見、対面重視などさまざまな意見が出た。今後の成り行きをみながらもう少し検討期間を持つ。

・9月のICAローマ大会(ガバナンス会議が18〜20日、発表などのセッションは21〜23日)での発表に申し込んでいる委員がいるため、ローマ大会の日程と重ならないようにする配慮が必要。

・対面での開催可能な場合に備え、ICAローマ大会翌週の火曜日(9月27日)の会場を予約する。

・4月初旬に再度オンラインで運営委員会を行う。

・オンラインで出版した『ビジネス・アーカイブズ国際比較』第3版の紙での出版の可能性をさぐる。さらにこの国際比較プロジェクトの、定期的な(例えば10年ごと)実施の検討が提案された。

【ICAの動向とSBA】

・部会長と米国の専門職団体部会に米国SAAを代表してICAに関わっている委員より、ICA本体の状況の報告があった。

・事務総長のアンセア・セレス氏(カナダ)が3月に退任する。

・会長のデイビッド・フリッカー氏(オーストラリア国立公文書館館長)も所属の国立公文書館館長を退くためICA会長も退任する。

・会長、事務総長を選出するための委員会6名のメンバーである委員から、会長、事務総長は(とくに事務総長は)英語とフランス語に通じている必要がある。フランスの法律(ICAはフランスの法律に従って設立された)にも馴染みがあるほうがよい、これに該当する人物が候補者になるだろうという説明があった。

・SBAではBylaws(規約)の整備にとりかかろうとしてきたが、親組織のICAのBylaws自体が現在改訂中なので、それに伴い、進捗はゆるやかである。COVID-19のため、4年に1回開催されてきたコングレスを1回スキップした。暫定的に以前の体制で運営が続けられている状況である。しばらくは2016年以降のメンバーで運営を続ける。


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■企業団体情報:SOS Archivi(イタリア)
     ICA年次会合 ローマ大会の主催団体

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◎SOS Archivi
(英語)https://sosarchivi.it/en/sos-archivi-english/
(イタリア語)https://sosarchivi.it/

2022年度のICA年次会合は、イタリア・ローマでガバナンス関係の会合が9月18日から20日まで、発表等のセッション21日から23日までの日程で開催予定です。

ローマ大会のテーマは「アーカイブズ:ギャップを埋める」Archives: Bridging the Gap。現在、発表ペーパーを募集しています。3月21日までに下記URLからプロポーザルを提出できます。
https://ica2022roma.com/call-for-papers/

さて、今年度の会合を招致したのは、アーカイブズに関わる非営利の民間団体 SOS Archiviとイベント運営会社Symposia Srl、これにイタリア・アーカイブズ総局(Direzione Generale per gli Archivi、国の行政機関のひとつ)、イタリア・アーキビスト協会(ANAI: Associazione Nazionale Archivistica Italiana)、コンベンションビューローイタリア(会議業界の団体)他が協力する形です。今号では2022年度のICA年次会合招致の中心組織であるSOS Archiviについてご紹介します。

■沿革
SOS Archiviの前身にあたる組織 SOS Archivi e Biblioteche(SOSアーカイブズとライブラリー)は、2009年、イタリア中部のアブルッツォ州ラクイラでの大地震で被災したアーカイブズ(史資料)のレスキューに参加したいくつかの企業の協会として設立されました。アーカイブズやライブラリーの保全を目的としたものでした。

2014年11月に SOS Archivi(SOS アーカイブズ)にリブランド(名称変更)し、現行規約を定めています。翌2016年6月にICAに加盟、その後ANAIやムゼインプレーザ Museimpresa(企業アーカイブズとミュージアムの協会)など関係団体との連携関係を広げています。2020年に今回のローマ大会主催者候補として名乗りを上げ、招致決定となりました。
https://sosarchivi.it/en/our-history/

■ミッション
ウェブサイトの団体情報のページ(About us、Chi siamo)のページに次のようなミッションが掲げられています。

「SOS Archiviの使命は、文化遺産や活動の世界に関する、重要かつ野心的なプロジェクトを、国の戦略的インフラとの相互提携の可能性も含めて、革新的な方法でサポートすることです。」
(英語)https://sosarchivi.it/en/association/
(イタリア語)https://sosarchivi.it/associazione/


■規約
第3条(目的)によると、SOS Archiviは次の目的を持ちます。

・アーカイブズや図書館、官公庁や民間企業において、特に災害に際して、共通の防災方法やツールを採用することによって、リスクに対する意識を高める。
・環境リスク(地震、洪水、火災、攻撃、構造劣化)に対処し、記録文書と書籍といった遺産をレスキューする。
・公的機関や民間企業の積極的な参加を得て、科学技術委員会やワーキンググループを組織し、アーカイブズや図書館におけるリスク防止文化の正しい普及に関連するテーマや側面を深く研究する。
・新しい提案の策定と現在の提案の実施、主な支援組織(文化財・文化活動省、消防関係、市民保護関係、ユネスコなど)との連携による、緊急事態の適切な管理を目的とした特別予防措置のための調整。
・セミナー、イベント、会議、ワークショップ等において、情報通信活動全般の促進、発展を図る。
・目的達成のための資金集め、寄付、クラウドファンディング、第三者からの寄付や寄贈を受けることを目的とした取り組みを推進・実施する。

第6条によると、会員は個人、法人、民間及び公的機関で、3つのカテゴリー(創立会員、会費を納入する一般会員、会費免除の名誉会員)があります。名誉会員は科学技術委員会と協力して、科学的研究や技術的課題の研究に関する活動やイニシアティブに参加し、推進する人々で、次の条件の1つに該当すれば入会可能とあります。

・アーカイブズやライブラリーの管理者や従業員
・企業や組織のセキュリティ担当者や責任者
・文書管理、図書館管理、またはその関連分野の研究者
・ICT分野、特に文書や図書館の管理、アーカイブズ、保存分野で専門的に活動している人
・アーカイブズやライブラリーのデジタル化と強化、修復、ロジスティックの分野で専門的に活動している人

https://sosarchivi.it/en/sos-archivi-statute/
https://sosarchivi.it/wp-content/uploads/2020/12/statuto.pdf

■倫理規定
協会の価値観と倫理規定の採択、人的資源、環境・景観、コミュニケーションとトレーニング、情報提供の義務、倫理規定の遵守といった項目を立てて、SOS Archiviに関わる人々が遵守すべき倫理規定を定めています。

https://sosarchivi.it/en/code-of-ethics/
https://sosarchivi.it/wp-content/uploads/2020/12/codice-etico.pdf

■賛助会員
ファイリング、ストレージ、デジタル化、物流関係等の企業がサポートしています。
https://sosarchivi.it/en/supporting-members/


■スタッフ、関係者
2022年2月現在、会長(president)には賛助会員企業 Bucap spa(物理的アーカイブズ、画像文書管理サポート業)、役員にはedam soluzioni ambientali(産業再生、事故後の修復、環境緊急事態対応業)と3M(ソリューション事業)といった民間企業の方々が就いています。科学技術委員会委員長はアーカイブズ学の研究者/アーキビストとしても著名なマリア・グエルチョ氏(現在はローマ大学教授、ANAI科学技術委員会委員長)、アドバイザーとしてムゼインプレーザの会長などが含まれます。
https://sosarchivi.it/en/association/

賛助会員 https://sosarchivi.it/en/supporting-members/
技術パートナー https://sosarchivi.it/partner-tecnici/
プロモーター https://sosarchivi.it/en/promoters/ (ムゼインプレーザもこのカテゴリー)


■ICA2022を待つ:2021年10月26日~2022年6月21日
Waiting For ICA 2022: October 26 2021 - June 21 2022

SOS Archiviは2022年9月のICA年次会合に向けて、昨年10月から「デジタルトークス Digital Talks」というオンライン・イベントを2週間に1回開催しています。
https://sosarchivi.it/en/waiting-for-ica-eng/

アーカイブ動画のページ
https://www.youtube.com/channel/UCZv4SKnlDtmsPoHKrg1k7Rw

2月15日の「デジタルトークス」のテーマは「アーカイブの概念や原則がAIの開発に活かされるとき、AIはどのようなものになるのか?」
"What does AI look like when archival concepts and principles inform its development?"
https://www.youtube.com/watch?v=Hup_d0uJyV8

アーカイブズをサポートする可能性が高いAIの種類を説明し、前近代記録の識別(同定)、現用記録の分類、プライバシー情報の検出のためのAIツールの設計に関する研究、アーカイブズの評価選別、編成記述、保存、アクセスをサポートするためのAIの使用と開発に焦点を当てた研究などが紹介される、たいへん興味深い回でした(この回は英語)。

■ICAローマ大会特設サイト
https://ica2022roma.com/


★☆★...編集部より...★☆★

今年度のICA大会のホストである民間の協会、SOS Archiviについてご紹介しました。同協会は防災、リスク管理、環境対応等を軸に、文書管理、媒体変換、倉庫・保管、物流、環境対応などの分野の事業者を主体とし、研究者、アーキビスト協会、政府、企業アーカイブズやミュージアムとの幅広いネットワークを形成しています。今後もフォローを続け、さらに詳しく活動内容や組織運営についてご紹介したいと考えています。


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■文献情報:ビジネス・アーカイブズ論文集 9
アメリカ・アーキビスト協会(SAA)発行『ビジネス・アーカイブズのマネジメント』
     2022年刊

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◎『ビジネス・アーカイブズのマネジメント』
Managing Business Archives
https://mysaa.archivists.org/productdetails?id=a1B5a00000kG8UIEA0

北米の企業アーキビストたちによるビジネス・アーカイブズ(BA)のためのハンドブックがアメリカ・アーキビスト協会から刊行されました。紙、EPUB、PDF、Kindleの4種類の形式で発行されます。

米国の企業アーキビストを中心とした執筆者による同種の本の刊行は25年ぶりとなります。前回SAAが発行した『アメリカ企業の記録』(1997年)は、本通信11号(https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20081112.html)での同書紹介記事にあるように、400頁を超える大著でした。これに比べると25年ぶりに刊行された『ビジネス・アーカイブズの管理』は182頁とずっとスリムになっています。

今号では書誌ならびに目次をご紹介いたします。
https://mysaa.archivists.org/productdetails?id=a1B5a00000kG8UIEA0

【書誌情報】
編者:サラ・ポーライアー
/Edited by Sarah Polirer
発行(年):米国アーキビスト協会(2022年)
/Publisher: Society of American Archivists (2022)
紙書籍ページ数:182ページ
/Paperback: 182 pages
ISBN: 978-1-945246-61-6

【目次】

■序文 Preface
サラ・A・ポーライアー Sarah A. Polirer

本書の構成 Book arrangement
謝辞 Thank You


■はじめに Introduction
サラ・A・ポーライアー Sarah A. Polirer

ビジネス・アーカイブズの定義 Defining a business archives
企業記録 Business records
ビジネス・アーキビストの役割とスキルセット A business archivist's role and skill set


■第1章 選別・評価・入手:記録の価値を理解する
Selection, appraisal, and acquisition: understanding records' value
ライアン・ドナルドソン Ryan Donaldson

選別者としての企業アーキビスト:価値を見極める
Corporate archivist as selector: determining value

アーキビストが社内にしっかり根付くこと
Embedding the archivist within the company

評価の枠組みを確立する
Establishing an appraisal framework

再評価と所蔵資料からの除籍
Reappraisal and deaccessioning

おわりに
Conclusion

付録:選別・評価・入手に関するアンケートとその結果
Appendix: selection, appraisal, and acquisitions survey and results


■第2章 編成と記述(一般的な日本語では「整理、目録作成」にあたる):用途に応じた編成と記述のバランス
Arrangement and description: balancing use-based arrangement and description
ポール・ラーサウィッツ Paul Lasewicz

企業での活用が意味すること
The implications of corporate use

用途に応じた編成と記述
Use-driven arrangement and description (UDAD)

アーカイバル・コンティニュームス:決定事項
Archival continuums: decision points

UDADサブコンティニュームス
UDAD Subcontinuums

UDADの適用
Applying UDAD

おわりに
Conclusion


■第3章 レファレンス・サービスとアクセス:コレクションをビジネスニーズに相応しいものとする
Reference services and access: making collections relevant to business needs
マリー・フォース Marie Force

レファレンス・サービス、アクセス、インハウス・アーカイブス
Reference services, access, and in-house archives

利用者の情報ニーズを把握する
Defining the informational needs of users

利用者サービスのための方針と手順の策定
Developing policies and procedures to serve users

アーカイブズ収蔵品(わたしたちアーキビストにとっての商品)に関する情報やそれらから引き出される情報の提供
Providing information about and from archival holdings (our products)

自己評価と計画の実施
Conducting self-evaluation and planning

おわりに
Conclusion

付録:インタビューの質問項目
Appendix: interview questions


■第4章 保存と保護:家の中を整理整頓する
Preservation and protection: keeping your house in order
スコット・D・グリムウッド Scott D. Grimwood

企業アーカイブズと伝統的なアーカイブズの違い
Business and traditional archives differences

施設の基礎知識
Facility basics

コレクションの保管スペース
Collection storage space

コレクションの保護
Collection protection

おわりに
Conclusion

付録:アーカイブズ施設の事例
Appendix: archival facility case studies

事例1: アーカイブズとライブラリーの共有施設
Case 1: Shared archival and library facility

事例2: アーカイブズ施設の更新と拡張
Case 2: Updated and expanded archival facility

事例3:複数組織の小規模アーカイブズ
Case 3: Small multi-organization archives


■第5章 アウトリーチ、理解増進、プロモーション:アーカイブズをマーケティングする
Outreach, advocacy, and promotion: marketing the archives
リンダ・エッジャーリー、サム・マーカム Linda Edgerly and Sam Markham

マインドセット
Mindset

理解増進と文化
Advocacy and culture

監査と計画
Assessment and planning

アウトリーチ、理解増進、プロモーションのツールと事例
Tools and examples of outreach, advocacy, and promotion

集合知:現場からの観察
Collective wisdom: observations from the field

おわりに
Conclusion

付録:ビジネスシーンにおけるアーカイブズ擁護のためのアンケート調査
Appendix: advocacy for archives in business settings survey


■第6章 専門的、倫理的、法的責任:職業倫理、著作権、アクセスとプライバシー、説明責任への対応
Professional, ethical, and legal responsibilities: dealing with professional ethics,copyright, access and privacy, and accountability
メンツィ・L・ベアント-クロット Menzi L. Behrnd-Klodt

倫理とプロフェッショナリズム
Ethics and professionalism

著作権について
Copyright

アーカイブズにおけるアクセスおよびプライバシーの問題
Access and privacy issues in archives

リスクアセスメント、リスクマネジメント、賠償責任
Risk assessment, risk management, and liability

おわりに
Conclusion


■第7章 アーカイブズ・プログラムの管理:大変化の中で自分の仕事を進める
Managing archival programs: steering your craft within a sea of change
ジェイミー・マーティン Jamie Martin

理解増進と関係の構築
Advocacy and developing relationships

コレクション構築
Collection development

研究者としてのアーキビスト
Archivist as researcher

歴史家としてのアーキビスト
Archivist as historian

優先順位付け
Prioritization

アーカイブズ・スタッフの管理
Managing archives staff

おわりに:変革としての変化
Conclusion: change as transformation

付録:変化の管理:事例
Appendix: managing change: case study


■書誌情報 Bibliography

■寄稿者について About the contributors

■索引 Index


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■文献情報:公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)DXコンセプト立案委員会
◎「デジタル時代の文書情報管理業務に関する提言」目次
     2022年1月公開

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◎「デジタル時代の文書情報管理業務に関する提言」(PDF)
https://www.jiima.or.jp/wp-content/uploads/pdf/%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%AE%E6%96%87%E6%9B%B8%E6%83%85%E5%A0%B1%E7%AE%A1%E7%90%86%E6%A5%AD%E5%8B%99%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%8F%90%E8%A8%80_%E7%AC%AC1.1%E7%89%88.pdf

https://www.jiima.or.jp/committee/chousa/#dx


公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)DXコンセプト立案委員会(石井昭紀委員長)が1月19日に「デジタル時代の文書情報管理業務に関する提言」(以下、「提言」)を公開しています。

■JIIMAとは
JIIMAは1958(昭33)年に設立された日本マイクロ写真協会(略称:JMA)を起源とする団体で、1962(昭37)年に社団法人として認可を受け、1995(平7)年に協会名称を社団法人日本画像情報マネジメント協会(略称:JIIMA)に変更、さらに2013(平25)年に公益社団法人として認定を受けて、協会の名称を現在の名称に変更しています。
https://www.jiima.or.jp/about/enkaku/

現在の同協会定款第3条(目的)によれば、

「本会は、我が国において文書情報マネジメント(マイクロフィルム・光ディスク・ハードディスク、その他電子記録媒体に文書・図面・写真等の文書・画像情報を記録し、ネットワークも利用しつつ、機能的・効率的に運用かつ管理することをいう。以下同じ)の普及啓発に関する事業を行い、文書情報の利用者に貢献するとともに関連産業の振興を図り、もって高度情報化社会の発展に寄与することを通じて、より良い社会の形成の推進を図ること」を目的とする団体です。
https://www.jiima.or.jp/about/kitei/


■「提言」(全33ページ)

目次をご紹介します。(「提言」3ページ目)
https://www.jiima.or.jp/wp-content/uploads/pdf/%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%AE%E6%96%87%E6%9B%B8%E6%83%85%E5%A0%B1%E7%AE%A1%E7%90%86%E6%A5%AD%E5%8B%99%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%8F%90%E8%A8%80_%E7%AC%AC1.1%E7%89%88.pdf

【目次】(JIIMA DXコンセプト立案委員会作成)

1. 本文書の目的
2. デジタル時代の文書情報
3. 文書情報管理の目的
4. これまでの文書情報管理の問題
5. 新しい文書情報管理の考え方
6. 新しい文書情報管理へのアプローチ
 6.1 ライフサイクルの定義について
 6.2 各管理単位の特徴とその遷移(昇格)について
  各管理単位の特徴
 6.3 個人管理からチーム管理へ
 6.4 チーム管理から組織管理へ
7. 文書情報管理制度の構成要素
 7.1 規則・ルール
 7.2 システム・ICTツール
8. 文書情報管理制度の構築手順
 8.1 対象範囲の決定
 8.2 対象業務の分布
 8.3 ICTツール・ICT環境の理解
 8.4 ルールの策定
  (1)格納場所の決定
   (ア)最終成果物たるコンテンツ
   (イ)コミュニケーションログ
   (ウ)中間生成物等
  (2)格納手続の決定
   (ア)確定条件/タイミング
   (イ)管理情報
   (ウ)証明の「強さ」の決定
   (エ)アクセス権限、ほか
  (3)詳細規則
 8.5 導入準備
9. デジタル時代の重点テーマ
 ●AIと機械可読
 ●プライバシー保護
 ●バイモーダル
 ●インフォメーションガバナンス
 ●(オープン)イノベーション
 ●ニューノーマル
 ●BCP/BCM事業継続
10. 知的生産性の向上を目指して


★☆★...編集部より...★☆★

■「提言」の概要と注目点

「提言」は、現代における文書情報管理の目的、GDPR等の外部環境の変化に対応できないこれまでの文書情報管理の在り方(一言で言うと"部分最適"管理)と、新しい考え方、すなわちデジタルのアドバンテージを最大化し、デジタル環境における働き方にふさわしい"全体最適"を目指す統一的管理、新しい制度の在り方、その構築手順(ルールの策定ほか)、デジタル時代にとりわけ重要なテーマ(AIと機械可読性、プライバシー保護ほか)を提示しています。

新しい文書情報管理の考え方で「提言」が主張する重要なポイントは以下の3点です。

1) 「文書の作成段階」から文書情報管理は始まること
2) 作成段階と完成した文書の管理を相互補完的なものと考えること
3) 管理段階を「個人」「チーム」「組織」の3段階で考えること

この考え方は、2016年に刊行された日本語での初の体系的な記録管理ハンドブック『レコード・マネジメント・ハンドブック:記録管理・アーカイブズ管理のための』(日外アソシエーツ)における、「個人ドメイン」「作業グループドメイン」「組織ドメイン」の考え方(同書166~168ページ)とも共通性を持ち、記録管理のスタンダードな考え方と重なるものと考えます。
https://www.nichigai.co.jp/cgi-bin/nga_search.cgi?KIND=BOOK1&ID=A2611
https://www.nichigai.co.jp/PDF/2611-2.pdf

なお、日本の組織における文書事務では基本的にはrecord(記録)とdocument(文書)を明確に区別する視点はなく、もっぱら「文書」という言葉を用いることが多いようです。しかし品質管理の世界では両者は明確に区別されます。品質マネジメントシステムISO9000: 2015(JIS Q9000:2015)では「記録(record)」とは「達成した結果を記述した、又は実施した活動の証拠を提供する文書」、「文書」とは「情報及びそれが含まれている媒体」と定義されています。以下では「文書」のなかに「記録」を含むものとします。

これまでの日本の民間組織における文書管理では、非現用となった文書の中に含まれる「長期的保存価値を持つ文書のアーカイブズへの移管と保存・利活用」は強く意識されておらず、10年、20年に一度の社史編纂時に収集して一時的に活用(社史編纂)することがもっぱらでした。ちなみにJIIMAサイトにおける「文書管理達成度評価」の「文書管理が実現されている状態とは」の説明にもドキュメント・ライフ・サイクルに「廃棄」はあっても「アーカイブ(ズへの移管)」は見当たりません。
https://www.jiima.or.jp/basic/doc_mng/

しかし、この「提言」においては、各管理段階における文書情報のマネジメントサイクルの中に「廃棄/アーカイブ」の選択を組み入れています。次節で詳述しますが、これまでの日本におけるマイクロ写真・画像情報管理の流れにおいては、文書本体のコンテンツ情報(文書情報)の管理に主眼があったのに対して、デジタル時代に対応するには「経緯・文脈情報」(10ページ)も管理範囲に含める必要がある点を強調しています。

さらに、「提言」は文書情報管理の目的を文書情報が「証拠」と「資産」の2つの視点で説明しています。これは、記録管理の国際標準ISO 15489-1:2016(JIS X 0902-1:2019)が明確にした「記録」(record)の持つ2つの意味に対応するものであり、グローバルな情報流通が求められる今日、この「提言」がグローバル・スタンダードを十分に意識したものであることを示しています。

加えて、この「提言」は、上述の『レコード・マネジメント・ハンドブック:記録管理・アーカイブズ管理のための』の原著出版当時(2003年)にはまだ存在していなかった(それゆえ、同書では取り扱われていない)、チャットツールなどの新しいコミュニケーションツール内でやり取りされる文書情報の管理に対する考え方を示しており、大いに注目されます。

もう一つ編集部が注目する点には、「資産」としての観点から、利用可能な情報が増加するという視点での「文書」の共有を推奨している点があります。データに関する重要な視点です。

■記録管理・アーカイブズ管理とコンテンツ管理:両者の間の垣根は低くなりつつある

上に述べたように、本提言をまとめたDXコンセプト立案委員会の親組織、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)は、日本マイクロ写真協会として1958年に発足、1995年に社団法人日本画像情報マネジメント協会、2013年に公益社団法人日本文書情報マネジメント協会へと発展してきました。

JIIMAは設立当初より、米国に本部を置く、AIIM(Association for Intelligent Information Management、インテリジェント情報管理協会)と友好関係にあり、2002年からパートナーシップを結んでいます。
(柿崎康男「JIIMAの活動とAIIM白書『コンテンツ管理』『可用性と保存』」『レコード・マネジメント』47巻、2002年)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rmsj/47/0/47_KJ00003907011/_article/-char/ja/

AIIMは、1953年にNational Microfilm Association(全国マイクロフィルム協会)として設立され、後にNational Micrographics Association(全国マイクロ写真協会)、Association for Information and Image Management(情報画像管理協会)を経て、現在はAIIMという名称で活動を続けています。
https://www.aiim.org/

【AIIMの歴史に関する参考ページ】
「全国マイクロフィルム協会(AIIM)の初期の歴史」
Early History of the National Microfilm Association (AIIM)
https://community.aiim.org/blogs/marko-sillanpaa/2016/05/15/early-history-of-the-national-microfilm-association-aiim
「情報専門家がどこから来たのかについての短い歴史」
A Short History of Where Information Professionals Came From
https://info.aiim.org/aiim-blog/a-short-history-of-information-professionals-cip
「ペーパーレス化について知っておくべき8つのこと」8 Things You Need to Know about Going Paperless
https://info.aiim.org/aiim-blog/8-things-you-need-to-know-about-going-paperless
「情報画像管理協会」Association for Information and Image Management(アメリカ・アーキビスト協会のページ)
https://dictionary.archivists.org/entry/association-for-information-and-image.html


海外(特に英米)のアーカイブズやアーキビストが現用文書管理(記録管理)のパートナーとして、主として対話・連携してきたのは、1955年にAssociation of Records Managers and Administrators(レコードマネージャー・アドミニストレーター協会)として米国で設立されたARMA International(アーマ・インターナショナル)や、1983年にRecords Management Society(記録管理協会)として英国で設立されたInformation and Records Management Society(IRMS)などでした。

「AIIM」と「ARMA、IRMS」には団体として大きな違いがあります。成り立ちをみるとよくわかりますが、前者は画像(すなわちコンテンツ)の管理をサポートする事業者の集まりとして出発する一方、後者はレコード・マネージャーやアーキビストなどの専門職が個人として参加することを基本とした団体です。そのため、ARMAは当初よりレコード・マネージャーなどの記録管理、情報管理の人材育成を重視し、1973年人材育成基金制度を開始し、1996年にはこれをARMA International Educational Foundation として法人格の取得を行っています。
http://armaedfoundation.org/about_vmsg/history/

アーカイブズは、社史編纂に欠かせないことからも分かるように、その利活用のためには、文脈(コンテクスト:だれが、いつ、どこで・・・といった属性)情報が不可欠です。したがって、文脈(コンテクスト)情報を欠いた画像・文書・情報・データ・・・では利活用が制限されます。

JIIMA DXコンセプト立案委員会による今回の「提言」は、コンテンツ(文書)情報管理のみならず、コンテクスト(文脈・経緯)情報の管理を必須の課題として提示しており、コンテクストを重視するアーカイブズ管理や記録管理の側からみると、「提言」には共通の認識が示されていると言えます。これまでは基本的には別々の担い手によって発展してきたアーカイブズ管理・記録管理とコンテンツ管理において、両者の間の垣根が取り払われつつあると感じます。

ただ一方で、DXに必要とされる統一的な文書管理体制を、継続的・効果的に機能させていくための、専門職人材の配置やその養成に関する明確な記述はありません。文書情報の統一的管理のための提言として「専門部署の設置」「各部門へ文書情報管理者を配置」と述べるにとどまっています(18ページ)。「文書情報管理者」を単なるポジションではなく、ふさわしい知識と技能、判断力・権限を持つ専門職として位置づける必要があるのではないでしょうか。

【関連文献】
柿崎康男、小谷允志訳『記録・情報管理:コア・コンピテンシー : 日本語版』ARMA東京支部(2009年)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010557789-00
ARMA International, Records and Information Management Core Competencies (2 ed.), 2017. (「記録・情報管理:コア・コンピテンシー」第2版、2017)英文
https://www.idahorecords.com/sites/default/files/imce/ts/Records%20and%20Information%20Management%20Core%20Competencies.pdf


■企業アーカイブズにとっての「提言」

アーカイブズ資料(史資料)の整理・保存・利活用を担当するアーカイブズ(史料室)を、社内で作成される文書情報/記録の流れの"川下"だとすると、この「提言」は主として"川上"における新しい管理の仕方についての提案です。手入れの行き届いた良質なアーカイブズのためには、水源からの行き届いたケアが必要でしょう。さらに言うと、デジタルの特性を考えた場合、川上・川下の二分論自体が紙文書時代のモデルとも言え、歴史アーカイブズ(史資料)に責任を持つ部署は、組織全体の文書情報管理(記録情報管理)機能の中に位置づけ直される可能性もあります。そのような観点から、アーカイブズ関係者にもこの「提言」の一読をお勧めします。

また、すでにみたように、今年度のICA年次会合のホストであるSOS Archiviは、文書管理やアーカイブズ管理、文化財保存に関わるサポートを提供する事業者を主体とする協会として、幅広いネットワークづくりに重要な位置を占めています。この「提言」は、DX推進のための企業アーカイブズや文書管理関係者、専門家や研究者、企業や公的機関とのネットワーキング・連携におけるファシリテーション・ツールとしても役立つのではないかと期待しています。


[その他参考ページ]

ARMAインターナショナル
https://www.arma.org/

ARMAインターナショナルに関するアメリカ・アーキビスト協会のページ
https://www2.archivists.org/node/10265

IRMS
https://irms.org.uk/

IRMSの沿革
https://irms.org.uk/page/OurHistory

AIIMに関するJIIMAのページ
https://www.jiima.or.jp/glossary/%EF%BD%81%EF%BD%89%EF%BD%89%EF%BD%8D/

JIIMA DXコンセプト立案委員会石井委員長によるAIIM会合参加レポート一覧
https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/search?lang=ja_JP&keyword=%E7%9F%B3%E4%BA%95%20%E6%98%AD%E7%B4%80%E3%80%80%E6%9C%88%E5%88%8AIM&page=1&sort_issued=desc&maintain=true&searchCode=SORT

JIIMA機関誌『月刊IM』
https://www.jiima.or.jp/im/

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[略称一覧]
ACA: Association of Canadian Archivists(カナダ・アーキビスト協会)
ARA: Archives and Records Association(アーカイブズとレコード協会)
ASA: Australian Society of Archivists(オーストラリア・アーキビスト協会)
BAC: Business Archives Council(ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BACS: Business Archives Council in Scotland(スコットランド・ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BAS: Business Archives Section(ビジネス・アーカイブズ部会:SAA内の部会)
CoSA: Council of State Archivists(米国・州文書館長評議会)
DCC: Digital Curation Center(英国デジタル・キュレーション・センター)
EDRMS: Electronic Document and Record Management System(電子文書記録管理システム)
ERM: Electronic Record Management(電子記録管理)
ICA: International Council on Archives(国際文書館評議会)
NAGARA: National Association of Government Archives and Records Administrators(米国・全国政府アーカイブズ記録管理者協会)
NARA: National Archives and Records Administration(米国 国立公文書館記録管理庁)
RIKAR: Research Institute of Korean Archives and Records(韓国国家記録研究院)
RMS: Record Management System(記録管理システム)
SAA: Society of American Archivists(アメリカ・アーキビスト協会)
SBA: Section for Business Archives(企業アーカイブズ部会、ICA内の部会)
TNA: The National Archives(英国国立公文書館)


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☆★ 編集部より:あとがき、次号予告 ★☆

渋沢栄一記念財団情報資源センター(旧実業史研究情報センター)企業史料プロジェクトは、2004年のスタート以来、たくさんの国内外の企業アーキビスト、企業アーカイブズ関係者の方々に協力していただいてまいりました。フランスを本拠とするガラス・建材メーカー サンゴバン社アーカイブズの元ディレクターで、2010年から2012年までICA/SBL(SBLはICAの企業アーカイブズ部会であるSBAの前身、企業労働アーカイブズ部会。2015年にSBAに名称変更)の部会長を務めたディディエ・ボンデュ(Didier Bondue)氏はそのような協力者のひとりです。編集部は2月半ば、ボンデュ氏が急逝した(2022年2月5日)という知らせを受け取りました。

https://listes.archivistes.org/sympa/arc/archives-fr/2022-02/msg00006.html
(フランス・アーキビスト協会サイトに、サンゴバン・アーカイブズのアーキビストが投稿した訃報)

以下でご紹介するボンデュ氏の経歴は、編集部が故人の生前に行ったメールでの質問への回答と下記の文献によります。

ボンデュ氏は大学で歴史学を学んだ後、サンゴバン社に入社、主として経営、販売・マーケティング部門での業務に従事、1990年代末には、同社の重要部門である建材流通部門における文書・記録管理プロセスの展開に取り組みました。2001年11月にサンゴバン・アーカイブズのディレクターに就任、同アーカイブズが社内外に提供するアーカイブ・サービスが広く知られるきっかけとなった、サンゴバンの歴史に関するオルセー美術館における展覧会開催(2006年)を実現させています。

2004年から2006年までフランス・アーキビスト協会 (AAF)経済企業アーカイブズ部会会長、2010年から2012年まではICA/SBA部会長、2012年から2013年までICA本体のファイナンス担当副会長を務めました。2010年5月にフランス・ブロワ市のサンゴバン・アーカイブズで開催されたビジネス・アーカイブズ国際シンポジウム「会社の記憶、経営に奉仕するツール 」は、1990年以降のICA/SBL-SBAの活動の中でも記念碑的な意義を持つものでした。訃報に接したSBA運営委員会の現メンバーの多くは、このシンポジウムによってビジネス・アーキビストのネットワークが大きく広がった点から、今に続く2010年代のSBL-SBA活動の基礎となったと指摘しています。

日本との関わりでは、東日本大震災直後の2011年5月に、日本で初めてのビジネス・アーカイブズ国際シンポジウム「ビジネス・アーカイブズの価値:企業史料活用の新たな潮流」実現に大きな役割を果たしてくれました。SBL部会長としてのボンデュ氏のこの会議に対する強い支持と協力が、会議開催には必要不可欠でした。この時の成果は、前年のサンゴバン・アーカイブズでのシンポジウム「会社の記憶、経営に奉仕するツール 」での複数の登壇者による論考と併せて、『世界のビジネス・アーカイブズ:企業価値の源泉』として、2012年に刊行されました。このふたつの事業(シンポジウムと出版)は、本通信編集部にとっては、グローバル化とデジタル化時代の日本におけるビジネス・アーカイブズ振興の推進力の源泉として、今日までさまざまな着想の種を与え続けてくれています。

ビジネス・アーカイブズ国際シンポジウム「ビジネス・アーカイブズの価値:企業史料活用の新たな潮流」
https://www.shibusawa.or.jp/center/network/01_icasbl_Tokyo.html
論文集『世界のビジネス・アーカイブズ』 (2012年3月16日発売)
https://tobira.hatenadiary.jp/entry/20120215/1329283710
Leveraging Corporate Assets: New Global Directions for Business Archives
『世界のビジネス・アーカイブズ : 企業価値の源泉』から12編の論文を英語で掲載し、新たに序章と索引を加えた電子書籍(PDF)。
https://www.shibusawa.or.jp/english/center/network/01_icasbl/Tokyo/leveraging.html

ボンデュ氏の足跡は本通信にも残されています。

ビジネス・アーカイブズ国際シンポジウム「会社の記憶、経営に奉仕するツール 」関連号
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20100517.html
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20100628.html
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20100716.html

ディディエ・ボンデュ編『企業とその記憶:モーリス・アモンを称えるエッセイ集』関連号
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20130215.html

編集部ではボンデュ氏を偲びつつ、ビジネス・アーカイブズの発展を支える情報資源としてこれらの文献がさらに利用、活用されることを期待しています。

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次号は2022年5月発行の予定です。どうぞお楽しみに。

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ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信) No.93
2022年3月8日発行 (不定期発行)
【創刊日】2008年2月15日
【発行者】公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センター
【編集者】公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センター
      「ビジネス・アーカイブズ通信」編集部/
      株式会社アーカイブズ工房
【発行地】日本/東京都/北区
【ISSN】1884-2666
【E-Mail】
【サイト】https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/index.html

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