ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信)

第95号(2022年11月26日発行)

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☆      □■□ ビジネス・アーカイブズ通信 □■□

☆       No.95 (2022年11月26日発行)

☆    発行:公益財団法人 渋沢栄一記念財団 情報資源センター

☆                        〔ISSN:1884-2666〕
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この通信では海外(主として英語圏)のビジネス・アーカイブズ(BA)に関する情報をお届けします。

海外BAに関わる国内関連情報も適宜掲載しております。

今号は行事情報3件です。

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◆ 目次 ◆

[掲載事項の凡例とご注意]

■行事情報:企業史料協議会
◎企業史料協議会「第27回 ビジネスアーキビスト研修講座」応用コース開講中
     2022年9月~12月

■行事情報:ゴードレージ・アーカイブズ主催国際アーカイブズの日(6月9日)記念マスタークラス(オンライン)
◎「ベライゾン(米国)の卓越したヘリテージ・センターを作り上げる」
     2022年6月9日

■行事情報:文部科学省主催第3回ユネスコ「世界の記憶」グローバル・ポリシー・フォーラム
◎「危機に瀕する記録遺産のよりよい保存にかかる国際協力の強化」
     2022年11月22日

☆★ 編集部より:あとがき、次号予告 ★☆

訃報:レズリー・リッチモンド氏(元ICA/SBL部会長) 2022年9月26日

ほか


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[掲載事項の凡例]

・欧文の場合、日本語で読みやすいものになるように、タイトルははじめに日本語訳を、続いて原文を記します。
・人名や固有名詞の発音が不明の場合も日本語表記を添えました。便宜的なものですので、検索等を行う場合はかならず原文を用いてください。
・普通名詞として資料室や文書室、物理的な記録資料を表現する際は「アーカイブズ」を用います。固有名詞の場合はこの限りではありません。また物理的およびデジタル記録資料の蓄積や組織化に関しては「アーカイブ」「アーカイブ化」「アーカイビング」などの表現を用いることもあります。

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[ご注意]
・受信時にリンク先を示すURLが途中で改行されてしまう場合があります。通常のURLクリックで表示されない場合にはお手数ですがコピー&ペーストで一行にしたものをブラウザのアドレス・バーに挿入し、リンク先をご覧ください。


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■行事情報:企業史料協議会
◎企業史料協議会「第27回 ビジネスアーキビスト研修講座」応用コース開講中
     2022年9月~12月

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◎企業史料協議会「第27回 ビジネスアーキビスト研修講座」応用コース
https://www.baa.gr.jp/syousai.asp?id=705
https://www.baa.gr.jp/

毎年秋に開催されている企業史料協議会主催によるビジネスアーキビスト研修講座は今年第27回目を迎え、ハイブリッド形式で開催中です。

【日時】2022年9月~12月 全6回(希望日を選択し受講)13:30~16:45
【会場】東京大学経済学研究科学術交流棟・小島ホール
    第2セミナー室/第3セミナー室/コンファレンスルーム
   (東京都文京区本郷 7-3-1)
【オンライン】Zoomミーティング
【アクセス】
最寄駅:地下鉄「本郷三丁目」駅。東京大学本郷キャンパス赤門を入ってすぐ
【定員】各日:会場10名、オンライン30名
【料金】会員:各日6,000円 / 一般:各日8,000円
【申込】事務局までお問い合わせください。
【問合せ】事務局info@baa.gr.jp

【内容】ビジネスアーカイブズ(企業アーカイブズ)に必須の知識を各分野の専門家が講義する、日本で唯一の歴史ある講座です。経験者向けの「応用コース」はテーマを絞って深く学び、講師との意見交換も行います。今年は、東京大学本郷キャンパスの経済学研究科学術交流棟・小島ホールで3年ぶりの対面の講義を再開し、同時にオンラインでの参加オプションもあります。

12月の講座は下記の通りです。

■12月1日(木) ■ 2F 第3セミナー室 ★「会場」は定員に達し締切。「オンライン」は受付中。

(1) 13:30~15:00
「ビジネスアーキビストのための資料保存と管理」
講師 吉川 也志保 二松學舍大学 非常勤講師

(2) 15:15~16:45
「資料保存マネジメント」
講師 矢野 正隆 東京大学大学院経済学研究科 助教


■12月7日(水) ■ 2F 小島コンファレンスルーム

(1) 13:30~15:00
「企業ミュージアム概論」
講師 石川 貴敏 株式会社丹青研究所 文化空間情報部部長

(2) 15:15~16:45
「ヤマトグループの創業 100 周年記念事業」
講師 白鳥 美紀 ヤマトグループホールディングス株式会社 ヤマトグループ歴史館館長

■12月15日(木) ■ 2F 第3セミナー室 ★「会場」は定員に達し締切。「オンライン」は受付中。

(1) 13:30~15:00
「事例研究 株式会社ファンケルのアーカイブズ」
講師 馬見塚 陽子 株式会社ファンケル 企業文化コミュニケーション室 室長

(2) 15:15~16:45
「事例研究 キヤノン株式会社のアーカイブズ」
講師 田中 節子 キヤノン株式会社 渉外本部 広報センター 広報部 企業コミュニケーション推進課


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■行事情報:ゴードレージ・アーカイブズ主催国際アーカイブズの日(6月9日)記念マスタークラス(オンライン)
◎「ベライゾン(米国)の卓越したヘリテージ・センターを作り上げる」
     2022年6月9日

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◎「ベライゾン(米国)の卓越したヘリテージ・センターを作り上げる」
Creating Verizon's Heritage Center of Excellence

国際アーカイブズの日(6月9日)記念ゴードレージ・アーカイブズ主催マスタークラス(オンライン)
https://teams.microsoft.com/_#/l/meetup-join/19:meeting_YzA0YzZjZGItMzVhZC00OGFjLWJlMzItNDJjZDhiZGM4MGRj@thread.v2/0?context=%7B%22Tid%22:%22d44ff723-4fa7-405e-afc0-43c21e573043%22,%22Oid%22:%225d3049db-e39f-48d2-86d6-d6c48a9173a2%22,%22IsBroadcastMeeting%22:true%7D&btype=a&role=a&anon=true&deeplinkId=9dd06311-4b82-4079-a24a-7608a782877b(Teams)

国際アーカイブズ評議会(ICA)が1948年6月9日に設立されたことを記念し、アーカイブズの重要性に関する啓発と関心向上のため、2008年以来、6月9日を「国際アーカイブズの日」、この日の前後の1週間を「国際アーカイブズ週間」として、世界中のアーカイブズ、アーキビストが工夫を凝らしたイベントを毎年開催しています
https://www.archives.go.jp/english/news/pdf/100517_01.pdf(PDF)

本通信の読者にはおなじみのインドの企業アーカイブズ、ゴードレージ・アーカイブズでは、2022年の国際アーカイブズの日を記念して、米国企業ベライゾンのコーポレート・アーカイブズの立ち上げから運営を担っている、ヒストリー・ファクトリー(アーカイブズ管理を専門とする米国のコンサルティング企業)のシニア・ディレクターによるマスタークラス「ベライゾン(米国)の卓越したヘリテージ・センターを作り上げる」をオンライン(Teams利用)で開催しました。


■タイトル:「ベライゾン(米国)の卓越したヘリテージ・センターを作り上げる」
Creating Verizon's Heritage Center of Excellence

■プレゼンテーター:クリス・ユーハス(米国 ヒストリー・ファクトリー シニア・ディレクター)
Chris Juhasz, Senior Director, Archives, History Factory

動画の冒頭で、ゴードレージ・アーカイブズの主任アーキビストVrunda Pathare氏の開会の言葉(00:04:15-)に続き、ゴードレージ・アーカイブズ委員会(Archives Council)の議長Phiroza Godrej氏のショート・スピーチ(00:05:43-)、ゴードレージの人事総務部門のシニア・バイス・プレジデントであるHarpreet Kaur氏の挨拶(00:07:55-)があります。パターレ氏は「歴史は単なるノスタルジーではなく、学習ツールとしての役割、将来の発展やトレンドをマッピングしたり分析するための戦略的ツールとしての役割を持つことを探求するために、このマスタークラスは多くのヒントを提供するだろう」と語っています。これに続くパターレ氏の紹介によれば、講演者のクリス・ユーハス氏は2003年にヒストリー・ファクトリーにアーキビストとして入社、2005年に認定アーキビストの資格を取得しています。

プレゼンテーション(00:12:50-)では、前身企業の設立が19世紀末にさかのぼる、2000年創業の大手電気通信事業者ベライゾン社のアーカイブズ構築のきっかけ、プロセス、方法、考え方などについて分かりやすい説明がなされています。(ヒストリー・ファクトリー社の知財保護のため)詳しくは直接プレゼンテーションをご視聴ください。

★☆★...編集部より...★☆★

ベライゾン・ヘリテージ・センター立ち上げと運営という具体的な事例を通じて、デジタルデータの長期保存、アーカイブズと記録管理(レコード・マネジメント)の連携、長期的な情報管理ガイドラインやアーカイブズのミッションステートメント確立、評価・選別のプロであるアーキビストの存在など、基本の大切さをあらためて確認しました。ぜひ視聴をお勧めします。

[関連ページ]
ベライゾン
https://www.verizon.com/

ベライゾン 歴史とタイムライン
https://www.verizon.com/about/our-company/history-and-timeline

ベライゾン ベライゾンのものがたり(ストーリー)
https://www.verizon.com/story

ベライゾン デジタル展示
https://www.verizon.com/story/introduction/menu

ヒストリー・ファクトリー(米国)
https://www.historyfactory.com/

BA通信過去記事におけるヒストリー・ファクトリー
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20170208.html
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20180302.html
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20190831.html
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20200222.html
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20211019.html#06 (あとがき)
国際アーカイブズの日のためのGodrej Archives からのメッセージ
https://www.youtube.com/watch?v=fa2HX37SwQc


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■行事情報:文部科学省主催第3回ユネスコ「世界の記憶」グローバル・ポリシー・フォーラム
◎「危機に瀕する記録遺産のよりよい保存にかかる国際協力の強化」
     2022年11月22日 京王プラザホテル(東京)オンライン同時配信

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◎第3回ユネスコ「世界の記憶」グローバル・ポリシー・フォーラム
「危機に瀕する記録遺産のよりよい保存にかかる国際協力の強化」
https://hopin.com/events/the-third-memory-of-the-world-global-policy-forum/registration

2022年は、ユネスコ「世界の記憶」事業(Memory of the World(MoW)Programme)の 設立30周年の節目の年です。この事業に関わり、ユネスコでは2018年にパリで「世界の記憶」グローバル・ポリシー・フォーラムを初めて開催し、3回目の今年は、11月22日(火)東京で開催されました。テーマは、災害に直面する記録遺産(Documentary Heritage)の保護です

https://www.mext.go.jp/content/20221017-mxt_koktou01-000023941-1.pdf(PDF)
https://www.mext.go.jp/unesco/015/1342621_00008.htm

【プログラム概要】
https://www.mext.go.jp/content/20221017-mxt_koktou01-000023941-1.pdf(PDF)
2022年11月22日(火)

09:00-09:30 開会セッション

9:40-10:00 特別講演:
「記憶を未来へ-歴史文化関係者と市民の協働による地域歴史資料防災に関する日本の30年間の取り組み」
奥村弘氏 (神戸大学教授、副学長)

10:00-12:00 セッション1:
「自然災害―災害リスク軽減と国際協力を通じて、危機に瀕する記録遺産をよりよい形で保護するための政策立案と能力開発における成果を統合する」

●パネリスト
・Ana Ribeiro氏:ウルグアイ教育・文化省副大臣、ウルグアイ・ユネスコ国内委員会会長、「世界の記憶」ラテンアメリカ・カリブ海地域委員会委員
・Emilie Leumas Gagnet氏:国際公文書館会議 [国際アーカイブズ評議会](ICA)危機管理・防災に関する専門家グループ議長
・Estelle de Bruyn氏:王立文化遺産研究所保存サービス 持続可能性ユニット長
・北本朝展 氏:情報・システム研究機構 データサイエンス共同利用基盤施設 人文学オープンデータ共同利用センター長
・Kwibae Kim氏:「世界の記憶」アジア太平洋地域委員会議長

13:30-15:30 セッション2:
「人為的災害-戦争や紛争の際に危険にさらされる記録遺産をよりよい形で保全するための国際協力の強化への足がかり」

●パネリスト
・Josée Kirps氏:国際公文書館会議 [国際アーカイブズ評議会](ICA)会長(オンライン発表)
・Barbara Lison氏:国際図書館連盟(IFLA)会長
・Leslie Weir 氏:カナダ国立図書館公文書館長
・Banzoumana Traoré氏:ユネスコ・バマコ(マリ)事務所コミュニケーション・スペシャリスト
・Trudy Huskamp Peterson氏:アーキビスト、危機にある記録資料の安全な避難所にかかる諮問委員会専門家

16:00-17:00 閉会セッション
「まとめと提言」
・Jussi Nuorteva氏:ユネスコ「世界の記憶」国際諮問委員会 副議長

「コミットメントについての声明」
・Cristina Díaz Martínez 氏:スペイン文化スポーツ省 国立公文書館 副館長(ビデオメッセージ)
・Zeynep Gül Ünal 氏:国際記念物遺跡会議(ICOMOS)文化遺産防災国際学術委員会(ICORP)副会長
・Ana Lomtadze 氏:ユネスコ・ジャカルタ事務所プログラム・スペシャリスト

「閉会の辞」
・鎌田薫氏:国立公文書館長、「世界の記憶」国内案件に関する審査委員会委員

★☆★...編集部より...★☆★

セッション2「人為的災害-戦争や紛争の際に危険にさらされる記録遺産をよりよい形で保全するための国際協力の強化への足がかり」には、情報資源センターの前身・実業史研究情報センターが事務局を担った「日米アーカイブセミナー」(2007年5月)公開フォーラムの基調講演者で、元米国国立公文書館記録管理庁長官代理、元米国アーキビスト協会会長 [1990-1991]を務めたTrudy Huskamp Peterson氏が登壇しました。現在Huskamp Peterson氏は「危機にある記録資料(アーカイブズ)の安全な避難所にかかるイニシアティブ諮問委員会」Advisory Committee, Safe Havens for Archives at Risk Initiativeの一員です。

このイニシアティブの事務局はスイス・バーゼルの非政府組織swisspeaceに置かれています。スイス連邦外務省の委託を受け、swisspeaceが諮問委員会と指針の策定を調整する役割を担い、2019年に「危機にある記録資料の安全な避難所のための指針」がまとめられました。

諮問委員会を構成するのは、国際機関では国際アーカイブズ評議会(ICA)、国際赤十字委員会(ICRC)、ユネスコ(UNESCO)、政府機関ではフィンランド国立公文書館、グアテマラ国家警察歴史資料館、コロンビア歴史記憶センター、スコットランド国立公文書館、スイス連邦公文書館、スイス連邦外務省、非政府機関では国際社会史研究所(オランダ)、UMAMドキュメンテーション&リサーチ(レバノン)、レディング大学(英国)、テキサス大学オースティン校(米国)、専門家であるTrudy Huskamp Peterson氏、David Sutton氏です。

「危機にある記録資料の安全な避難所のための指針」は、これまで培われてきた幅広い国際的な経験に基づき、移動による原本や危機管理コピー(security copies)[注] の保護が「過去との対話」プロセスに貢献できる場合、あるいは自然災害からのアーカイブズ保護のために緊急行動が必要な場合、アーカイブズの送り出し機関と受け入れ機関の両方に対する指針を提供するものです。Huskamp Peterson氏のプレゼンテーションによると、この動きは2013年にスイスにおいて危機に瀕するアーカイブズを受け入れるための法律改正が行われたことにあるということでした。

アーカイブズの基本原則によれば、記録は記録が作成された現地において保存管理すべきですが、さまざま災害によって、現地保存が困難な場合、場合によっては国境を超える移動を選択することが最良とされる場合もあります。そのような状況において、倫理的に正しい対応を示すためにもこのような指針の策定が必要とされました。

このセッションではまた、ケーススタディとして、テロリズム、組織犯罪、政治不安から危機的状況に置かれた、トンボクトゥ(西アフリカ・マリ)の記録遺産の保全の事例の発表がありました。ユネスコ・バマコ(マリ)事務所コミュニケーション・スペシャリストBanzoumana Traore氏のプレゼンテーションでは、緊急措置として民家に移動させた後、首都バマコの保全環境が整った場所に再度移送し、物理的に保全を図るとともに、デジタル化事業を進めている状況が紹介されました。

Huskamp Peterson氏のプレゼンテーションに対しては、IFLA会長のBarbara Lison氏が、図書館界にもアーカイブズ資料の保存に関わる専門家がおり、アーカイブズ界との橋渡しをユネスコに期待する、とコメントしていました。

諮問委員会「危機にある記録資料の安全な避難所のための指針」はICAのウェブサイトでCC BY NC 4.0により公開されています。

なお、プログラムで予定されていたJosée Kirps国際公文書館会議 [国際アーカイブズ評議会](ICA)会長の発表はありませんでした。

[参考ページ]
協力事業「日米アーカイブセミナー」
https://www.shibusawa.or.jp/center/network/03_usjarch.html

危機にある記録資料の安全な避難所にかかるイニシアティブ
Safe Havens for Archives at Risk Initiative
https://www.safehavensforarchives.org/en/who-we-are/

ICAウェブサイト内危機にある記録資料の安全な避難所にかかるイニシアティブ「危機にある記録資料の安全な避難所のための指針」のページ
Guiding Principles for Safe Havens for Archives at Risk
https://www.ica.org/en/guiding-principles-for-safe-havens-for-archives-at-risk

「危機にある記録資料の安全な避難所のための指針」(英語版)CC BY NC 4.0
https://www.ica.org/sites/default/files/guiding_principles_for_safe_havens_for_archives_at_risk_copyright_creative_commons_cc_by_nc_4.0_ica.pdf(PDF)

危機にある記録資料の安全な避難所にかかるイニシアティブ
「危機にある記録資料の安全な避難所のための指針」のページ
https://www.safehavensforarchives.org/en/guiding-principles/

「危機にある記録資料の安全な避難所のための指針」解説書
Commentary to the Guiding Principles for Safe Havens Archives for Archives at Risk
https://www.safehavensforarchives.org/assets/Uploads/Safe-Havens-for-Archives-at-Risk/2020_G1.PDF(PDF)

武力紛争、災害または緊急事態の際の文化財保護に関するスイス連邦法
Federal Act on the Protection of Cultural Property in the Event of Armed Conflict, Disaster or Emergency Situations
https://en.unesco.org/sites/default/files/suisse_fedactprotcltprop_entof(PDF)

[注]
「危機管理コピー(security copy)」について

「危機にある記録資料の安全な避難所のための指針」とその解説書に複数回現れる「危機管理コピー(security copy)」とは、全国歴史資料保存利用機関連絡協議会監修『文書館用語集』(大阪大学出版会、1997年)によると、

「資料のコピーで、たとえオリジナルが失われたり、損害を受けたり、破壊されたりしてもそのなかに含む情報が保存できるように作られたものをいう」(同用語集23ページ)

とあります。アメリカ・アーキビスト協会のオンライン・アーカイブズ用語集 https://files.archivists.org/pubs/free/SAA-Glossary-2005.pdf (384ページ)では、

「原本が破損した場合に備えて、情報を保存するために作成・管理された記録の複製物。」
"A reproduction of a record created and managed to preserve the information in case the original is damaged."

「危機管理コピーは、通常、オフサイトで保管される。危機管理コピーは、通常、重要な(不可欠な)記録のみを含むという点で、バックアップと区別される。バックアップは、重要記録一式を検索できる方法で作成・保管されていれば、危機管理コピーとして使用することができる。」
"Security copies are typically stored off site. They are distinguished from backups in that security copies typically include only vital (essential) records. A backup may be used as a security copy if it is created and stored in a manner that allows retrieval of a complete set of vital records."

と、バックアップとの違いがNote欄で説明されています。(日本語は編集部による)

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[略称一覧]
ACA: Association of Canadian Archivists(カナダ・アーキビスト協会)
ARA: Archives and Records Association(アーカイブズとレコード協会)
ASA: Australian Society of Archivists(オーストラリア・アーキビスト協会)
BAC: Business Archives Council(ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BACS: Business Archives Council in Scotland(スコットランド・ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BAS: Business Archives Section(ビジネス・アーカイブズ部会:SAA内の部会)
CoSA: Council of State Archivists(米国・州文書館長評議会)
DCC: Digital Curation Center(英国デジタル・キュレーション・センター)
EDRMS: Electronic Document and Record Management System(電子文書記録管理システム)
ERM: Electronic Record Management(電子記録管理)
ICA: International Council on Archives(国際文書館評議会)
NAGARA: National Association of Government Archives and Records Administrators(米国・全国政府アーカイブズ記録管理者協会)
NARA: National Archives and Records Administration(米国 国立公文書館記録管理庁)
RIKAR: Research Institute of Korean Archives and Records(韓国国家記録研究院)
RMS: Record Management System(記録管理システム)
SAA: Society of American Archivists(アメリカ・アーキビスト協会)
SBA: Section for Business Archives(企業アーカイブズ部会、ICA内の部会)
TNA: The National Archives(英国国立公文書館)


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☆★ 編集部より:あとがき、次号予告 ★☆

本年2月に亡くなったフランスのサンゴバン社グループ・アーカイブズの元ディレクター ディディエ・ボンデュ氏に続き、ボンデュ氏の後を継いでICA/SBL部会長を務めたレズリー・リッチモンド(Lesley Richmond, 1956年11月5日-2022年9月26日)氏の訃報が英国のICA/SBA(旧SBL)運営委員を通じて、SBA運営委員会に伝えられたほか、リッチモンド氏が長年勤務したグラスゴー大学のツイッターアカウントでも報じられていました。

https://twitter.com/UofGlasgow/status/1575165293118095370

渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター(現・情報資源センター)は、2010年の同氏来日時に、「レスリー・リッチモンド氏(グラスゴー大学アーカイブズ・ディレクター)を囲むビジネス・アーキビストの集い」を開催いたしました。2月17日、東京都北区の渋沢栄一記念財団で開催したこの集いで、リッチモンド氏には「イギリスにおけるビジネス・アーカイブズ」のタイトルで講演と、20人以上の熱心な聴衆からの質問に、丁寧にお答えいただきました。同氏は前日、2月16日には京都大学で英国の大学アーカイブに関する講演も行っています。

実業史研究情報センターからもグラスゴー大学アーカイブズ部門を訪問するなど、リッチモンド氏は、日英ビジネス・アーカイブズの相互交流に大きな足跡を残しています。
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20100201.html
https://www.shibusawa.or.jp/center/newsletter/734.html

リッチモンド氏はエジンバラ大学でスコットランド史を学び(1974-1978)、その後グラスゴー大学の研究アシスタント(1978-1979)、スコットランド・ビジネス・アーカイブズ・カウンシル(グラスゴー)の調査官(1979)、ビジネス・アーカイブズ・カウンシル(ロンドン)の調査官兼企業記録助言サービスの事務局長代理(1979-1980)、ビジネス・アーカイブズ・カウンシル(ロンドン)の企業アーカイブズ調査プロジェクトマネージャー(1980-1984)、ラカル・チャブ・グループの初代アーカイブズ専門職(1984-1986)、グラスゴー大学大学アーカイブズ副アーキビスト(1987-2001)、同大学大学アーカイブズ・アーキビスト(2001-2016、2009年まではアーカイブズのディレクター、2010年以降は同副ディレクター)を歴任しました。

1988年から2016年の引退までの期間、アーキビスト協会の会員であったほか、ビジネス・アーカイブズ・カウンシル(ロンドン)理事(1984-2001)、ICA企業アーカイブズ委員会英国代表(1987-1990)、ICA/SBL運営委員(1990-2016、1996-2004事務局長、2014-16部会長)、イングランド、ウェールズ、スコットランドにおけるビジネス・アーカイブズ・ストラテジー運営委員(2008-2015)、スコットランド・ビジネス・アーカイブズ・カウンシル理事(2013-2016議長)といった専門職団体の運営に関わっています。

アメリカ・アーキビスト協会年次大会で2回の発表(1995年ワシントンDC大会、2003年ロサンゼルス大会)、ICA関係の国際会議での発表(1996年北京大会、2000年セビリヤ大会、2004年ウィーン大会ほか)をはじめ数多くの国内外のアーカイブズに関わる会議でプレゼンテーションを行なっています。

そして、アーカイブズ管理あるいはアーカイブズの調査に関わる実務家であるとともに、アーカイブズ、とくにビジネス・アーカイブズに関わる著作者、あるいは編集者としての出版への貢献が顕著でした。なかでも、以下の5冊はイギリスにおける企業アーカイブズの全体像を把握するための調査に基づいた、パイオニア的な刊行物です。

Lesley Richmond & Bridget Stockford, Company Archives, The Survey of the Records of 1000 of the First Registered Companies in England and Wales(『企業アーカイブズ:イングランドとウェールズで最初に登記された会社1000社の記録の調査』), Gower, 1986, 593pp.

L M Richmond & A Turton, Directory of Corporate Archives(『企業アーカイブズ・ディレクトリ』), 2nd edition(第2版), Business Archives Council, 1987,75pp.

L M Richmond & A Turton, Directory of Corporate Archives(『企業アーカイブズ・ディレクトリ』), 3rd edition(第3版), Business Archives Council, 1992,91pp.

Lesley Richmond, Overview of Business Archives in Western Europe(『西ヨーロッパのビジネス・アーカイブズ概観』), Glasgow University Archives & Business Record Centre, 1996, 58pp., IBSN 978-0852615607

L M Richmond & A Turton, Directory of Corporate Archives(『企業アーカイブズ・ディレクトリ』), 4th edition(第4版), Business Archives Council, 1997, 114pp.

このほか、雑誌記事も多数執筆しています。そのなかでは、ビジネス・アーカイブズ・カウンシルの会誌70号(2000年)に収録されている次の論文が、組織アーカイブズとしてのビジネス・アーカイブズに関わる倫理問題を取り上げた重要な著作です。この中でリッチモンド氏は、利用者がもっぱら組織内のメンバーである企業アーカイブズの特性を考察し、ビジネス・アーキビストがすべきことと、すべきでないことを明確に述べています。

Lesley Richmond, 'Balancing rights and interests: the ethics of business archives'(「権利と利益のバランスをとる:ビジネス・アーカイブズに関する倫理」), Business Archives Principles and Practice,' No 79, 2000, pp. 29-41
https://www.businessarchivesjournals.org.uk/Filename.ashx?tableName=ta_businessarchives&columnName=filename&recordId=56#page=35(PDF)

なお、この記事の中での経歴に関わる情報は、故人より2021年7月に本編集部に提供されたCVに基づいています。

[参考ページ]
ビジネス・アーカイブズ・カウンシル会誌『ビジネス・アーカイブズ』
https://www.businessarchivesjournals.org.uk/default.aspx
同 各巻ごとの閲覧
https://www.businessarchivesjournals.org.uk/Authenticated/Browse.aspx?BrowseID=64&tableName=ta_businessarchives
同 記事ごとの書誌情報
https://www.businessarchivesjournals.org.uk/Authenticated/Browse.aspx?BrowseID=64&tableName=ta_businessarchives&View=volume
同 高度な検索ページ
https://www.businessarchivesjournals.org.uk/Authenticated/Browse.aspx?BrowseID=64&tableName=ta_businessarchives&View=panel
同 シンプルな検索ページ
https://www.businessarchivesjournals.org.uk/Authenticated/Search.aspx
同 タイムライン検索のページ
https://www.businessarchivesjournals.org.uk/Authenticated/TimelineSearch.aspx

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経営史学会関東部会大会「経営史と歴史的組織研究の『世界線』:史的研究の広がりと境界」をオンラインで視聴しました。
https://bhsj.smoosy.atlas.jp/ja/kantou_bukai

自組織の過去に関するストーリー・語りを組織経営のためのツールとして用いることが、近年あらたな観点から経営史学者、経営・組織論研究者の関心を惹いているようです。そのような研究動向のなかで、歴史叙述・歴史ものがたりの典拠となる、ビジネス・アーカイブズも独自の研究対象として取り上げられる事例が出てきています。今後の発展に注目しています。

[関連文献]
「「企業の歴史」の何を語るかで、競争力は変化する」
『ハーバード・ビジネス・レビュー・オンライン』2022年8月8日
https://dhbr.diamond.jp/articles/-/8745
https://dhbr.diamond.jp/articles/-/8745?page=2
https://dhbr.diamond.jp/articles/-/8745?page=3

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次号は2023年1月発行の予定です。どうぞお楽しみに。

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ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信) No.95
2022年11月26日発行 (不定期発行)
【創刊日】2008年2月15日
【発行者】公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センター
【編集者】公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センター
      「ビジネス・アーカイブズ通信」編集部/
      株式会社アーカイブズ工房
【発行地】日本/東京都/北区
【ISSN】1884-2666
【E-Mail】
【サイト】https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/index.html

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