ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信)

第96号(2023年1月27日発行)

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☆      □■□ ビジネス・アーカイブズ通信 □■□

☆       No.96 (2023年1月27日発行)

☆    発行:公益財団法人 渋沢栄一記念財団 情報資源センター

☆                        〔ISSN:1884-2666〕
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この通信では海外(主として英語圏)のビジネス・アーカイブズ(BA)に関する情報をお届けします。

海外BAに関わる国内関連情報も適宜掲載しております。

今号は行事情報3件、文献情報1件です。

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◆ 目次 ◆

[掲載事項の凡例とご注意]

■行事情報:国際アーカイブズ評議会(ICA)企業アーカイブズ部会(SBA)
◎国際シンポジウム「オーディエンスとの関わり合い(仮題)」発表者募集
     2023年3月24日締め切り/シンポジウム2023年9月25、26日 エジンバラ(英国)

■行事情報:企業史料協議会
◎「デジタル文書資料管理講座:企業アーカイブズとデジタルをつなぐ〈ハイブリッド開催〉」
     2023年1月~3月

■文献情報:アーカイブズ論文集11
◎ICA会誌"Comma" 2021/1号 目次
     2023年1月

■行事情報:米国アーキビスト協会(SAA)学生・新任アーカイブズ担当者部会
◎ウェビナー「ビジネス・アーカイブズ:異色のキャリアパスへの視点」
     2022年6月2日

☆★ 編集部より:あとがき、次号予告 ★☆

ヴァル=ド=マルヌ県公文書館(テレビドラマ「アストリッドとラファエル 文書係の事件録」)

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[掲載事項の凡例]

・欧文の場合、日本語で読みやすいものになるように、タイトルははじめに日本語訳を、続いて原文を記します。
・人名や固有名詞の発音が不明の場合も日本語表記を添えました。便宜的なものですので、検索等を行う場合はかならず原文を用いてください。
・普通名詞として資料室や文書室、物理的な記録資料を表現する際は「アーカイブズ」を用います。固有名詞の場合はこの限りではありません。また物理的およびデジタル記録資料の蓄積や組織化に関しては「アーカイブ」「アーカイブ化」「アーカイビング」などの表現を用いることもあります。

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[ご注意]
・受信時にリンク先を示すURLが途中で改行されてしまう場合があります。通常のURLクリックで表示されない場合にはお手数ですがコピー&ペーストで一行にしたものをブラウザのアドレス・バーに挿入し、リンク先をご覧ください。

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■行事情報:国際アーカイブズ評議会(ICA)企業アーカイブズ部会(SBA)
◎国際シンポジウム「オーディエンスとの関わり合い(仮題)」発表者募集
     2023年3月24日締め切り/シンポジウム2023年9月25、26日 エジンバラ(英国)

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◎国際シンポジウム「オーディエンスとの関わり合い(仮題)」発表者募集
Call for papers: 'Engaging with our audiences' (working title) for the conference held by the ICA/SBA in collaboration with the Diageo Archive, on September 25th & 26th in Edinburgh at Johnnie Walker Princes Street

ICA/SBAはディアジェオ・アーカイブ(Diageo Archive)と共同で、2023年9月25日~26日、イギリス・スコットランドのエジンバラにあるJohnnie Walker Princes Streetにて2023年の対面での会合を開催します。現在発表者を募集中です。

テーマは「オーディエンスとの関わり合い」(仮題)'Engaging with our audiences' (working title)です。

このテーマに関連した実践的な発表企画をお持ちのビジネス・アーキビストの方々のご参加をお待ちしています。ビジネス・アーカイブズが外部や内部のユーザー、ステークホルダーと関わるにあたって、どのような新しい方法を検討しているか、ソーシャルメディア、企業ビデオ、新入社員教育など、導入・活用しているツールやプラットフォームについての発表を特に歓迎します。この分野に戦略的に力を入れている方々、あるいは少し変わったことをされている方々、ぜひご参加ください。

プレゼンテーションの時間は20分です。単なる紹介ではなく、分析的な発表を求めています。会場には翻訳設備がありませんので、英語による発表のみ受け付けます。以下の内容を含む250-300語の簡単な概要をご提出ください。

- タイトル Presentation title
- 発表者の氏名(複数可) Name(s) of speaker(s)
- 発表者の氏名、役職、所属 Job title and institution
- 住所とEメールアドレス Postal address an d email address
- 略歴(150-200ワード) Short bio (150-200 words)

投稿の締め切りは2023年3月24日です。発表者には、応募が採択されたかどうかを2023年4月14日までに連絡いたします。旅費は自己負担となります。

エジンバラでお会いできるのを楽しみにしています。

ICA/SBAに関する詳細情報: https://www.ica.org/en/section-on-business-archives-sba
ディアジオ・アーカイブ: https://www.diageo.com/en/our-business/our-history/the-archive
ジョニーウォーカー・プリンセスストリート: https://www.johnniewalker.com/en-gb/visit-us-princes-street/

会議企画委員会を代表して
クリスティン・マカファティ Christine McCafferty
アーカイブズ長 Head of Archives
ディアジオ、ジョニーウォーカー・プリンセスストリート
Diageo and Johnnie Walker Princes Street
Tel 00 44 7803 856515
christine.j.mccafferty@diageo.com


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■行事情報:企業史料協議会
◎「デジタル文書資料管理講座:企業アーカイブズとデジタルをつなぐ〈ハイブリッド開催〉」
     2023年1月~3月

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◎企業史料協議会「デジタル文書資料管理講座: 企業アーカイブズとデジタルをつなぐ〈ハイブリッド開催〉」
https://www.baa.gr.jp/syousai.asp?id=714
https://www.baa.gr.jp/

新型コロナウイルスの感染拡大から3年が経ちました。この間、社会のあらゆる場において、デジタルとの関わりでの変化が進んでいます。企業史料協議会では、企業の社史・アーカイブズ部門の担当者向けに、日々作成・蓄積される膨大な量のデジタル・コンテンツの整理の考え方を学び、実務に役立てるためのデジタル文書資料管理講座を初めて開催します。主なテーマは目録の作成や標準化、メタデータ、さらに知的財産に関わる法律論、企業事例も含まれています。当財団のデジタル・キュレーター キム・ボヨンも第3回目の中級編講師を担当します。

開催は以下のとおりです。

「デジタル文書資料管理講座 - 企業アーカイブズとデジタルをつなぐ - 〈ハイブリッド開催〉」

開催日:2023年1月27日(金)、2月9日(木)、2月10日(金)、3月3日(金)、3月10日(金)(全5回)
時間:13:30~16:45
会場:東京大学本郷キャンパス学術交流棟(小島ホール) 東京都文京区本郷 7-3-1
オンライン:Zoomミーティング(受講者に招待メールをお送りします)
定員:会場20名 オンライン40名
費用:
【会員】 1回7,000円・5回通し30,000円
【一般】 1回9,000円・5回通し 40,000円
申し込み、問い合わせ先:企業史料協議会事務局 info@baa.gr.jp
申込締め切り:
【第1回・5回通し】2023年1月25日(水)まで
【第2回以降】 各回開催日10日前まで(各回とも定員に達し次第締め切り)
主催:企業史料協議会
後援:東京大学経済学部資料室

<カリキュラム(全5回)>

■第1回:入門篇 2023年1月27日(金)13:30~16:45
講師 小島浩之(東京大学大学院経済学研究科資料室講師)
「アナログからデジタルへ - 目録・階層構造・メタデータ -」

■第2回:初級篇 2023年2月9日(木)13:30~16:45
講師 矢野正隆(東京大学大学院経済学研究科資料室助教)
「デジタル環境下における資料管理:保存・利用のための基本的な考え方と進め方」

■第3回:中級篇 2023年2月10日(金)13:30~16:45
講師 キム・ボヨン(公益財団法人渋沢栄一記念財団 デジタル・キュレーター)
「デジタル文書を記録としてアーカイブする」

■第4回:法律篇 2023年3月3日(金)13:30~16:45
講師 石岡克俊(慶應義塾大学大学院法務研究科教授/同大学産業研究所所長)
「デジタル企業資料の管理・活用と知的財産法の考え方」

■第5回:企業事例紹介篇 2023年3月10日(金)13:30~16:45
講師 土岐育子(ライオン株式会社コーポレートコミュニケーションセンター アーカイブズ室)
「文書史料の代替としてのデジタル化 ~半世紀に一度、アーカイブズ全量引越しに伴うデジタル化対応~」
講師 山田弥生(キリンホールディングス株式会社コーポレートコミュニケーション部アーカイブ室)
「活用を目指すキリンホールディングスのデジタル化の取組み」
+ 小島浩之 矢野正隆 キム・ボヨン

詳しくは下記リンク先をご参照ください。
https://www.baa.gr.jp/syousai.asp?id=714
https://www.baa.gr.jp/


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■文献情報:アーカイブズ論文集11
◎ICA会誌"Comma" 2021/1号 目次
     2023年1月

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国際アーカイブズ評議会(International Council on Archives: ICA)の会誌"Comma"最新号が刊行されました。今号の特集は、「アフリカ・プログラム」です。以下で、タイトルの日本語訳、内容と筆者について簡単な紹介を行います。

ICAの会員はICAサイトでログインし、刊行物Commaのページ
https://www.ica.org/en/comma-2021-1
からリバプール大学出版へのリンクをたどると本文が利用できます。

【ジャーナル書誌情報】
ジャーナルタイトル:『コンマ』 "Comma"
巻号:2021-1号 volume 2021, Issue 1
ISSN (print): 1680-1865
ISSN (online): 2049-3355
https://www.liverpooluniversitypress.co.uk/toc/coma/2021/1

【目次、概要、著者について】


日本語タイトル:編集者による序文
原タイトル:Editors' introduction
著者:Bethany Anderson and Frans Smit
発行日、ページ数:Published Online:30/11/2022 pp.1-14
DOI:https://doi.org/10.3828/coma.2021.1
概要:今号はベサニー・アンダーソンとフランス・スミットがCommaの編集長として発行した最初の号。Commaは編集委員会とICAのボランティアに大きく依存しており、各記事の要約を7つの言語に翻訳している。今号では、故ジャスタス・ワムコヤ Justus Wamukoya 教授の訃報に関わる記事、ICA-PCOM (プログラム委員会)によるアフリカ・プログラムの成果、故シャルル・ケチケメティCharles Kecskeméti博士の生涯と業績に敬意を表する記事を掲載している。


日本語タイトル:国際危機に対するICAの発展しつつある立場、ロシアのウクライナ侵攻の例
原タイトル:The ICA evolutive position on international crisis, the example of the Russian invasion of Ukraine
著者:David Fricker
発行日、ページ数:Published Online:30/11/2022 pp.15-18
DOI:https://doi.org/10.3828/coma.2021.2
概要:1948年の設立以来、ICAは、会員のプライオリティ(優先順位)、多様性、意欲を取り込みつつ発展してきた。ICAの役割とは記録とアーカイブズ機関、自分達の職業とその会員を守るために責任を持って断固として行動することであり、このようなICAのあり方が2022年3月10日にICA理事会が採択したウクライナへの支援決議のベースとなっている。
著者:2014年から2022年までICA会長。元オーストラリア国立公文書館館長(2012-2021年)。国立公文書館勤務以前は、オーストラリア安全保障情報機構の副長官や、情報管理を専門とする自身のコンサルティング会社のマネージング・ディレクターなど、政府・企業の管理経営にかかわってきた。ユネスコ世界の記憶プログラム国際諮問委員会の副委員長。


日本語タイトル:ウクライナ支援決議
原タイトル:Resolution in Support of Ukraine
発行日、ページ数:Published Online:30/11/2022 pp.19-24
DOI:https://doi.org/10.3828/coma.2021.3
概要:
1. 国際公文書館評議会(ICA)は、その執行理事会メンバーの多数決によって、ICAに加盟しているロシアとベラルーシの4つの公文書館(ロシア連邦公文書館、ウドムルト共和国政府による公文書管理委員会、タタールスタン共和国国立公文書館委員会、ベラルーシ共和国司法省公文書管理局)との関係を停止することを決議する。(2、3 省略)
4. ICAはロシア連邦政府とベラルーシ共和国政府に対し、武力攻撃を停止するよう強く訴え、ウクライナの記憶の守護者であると同時に、その国民と正当に民主的に選ばれた政府のアイデンティティ、権利、責任を証明する記録や公文書を管理する情報、記録、文書管理に携わる、専門家や機関を尊重し保護するよう要請する。

(参考)全文はICAのウェブサイトでも公開されています。(PDF)
https://www.ica.org/sites/default/files/eng_resolution_in_support_of_ukraine_0.pdf


日本語タイトル:故ジャスタス・ワムコヤ教授に捧げる
原タイトル:Tribute to the late Professor Justus Wamukoya
著者:Nathan Mnjama
発行日、ページ数:Published Online:30/11/2022 pp.25-29
DOI:https://doi.org/10.3828/coma.2021.4
概要:西ケニア出身でケニア国立公文書館アーキビストを経てモイ大学(ケニア)、ボツワナ大学で記録管理、情報管理での専門教育に携わり、ケニア、ボツワナにとどまらず広くアフリカにおける記録管理、情報管理の発展に尽力した故ジャスタス・ワムコヤ教授との交流の記録。
著者:ボツワナ大学図書館・情報学部教授、専門はアーカイブズと記録管理。


日本語タイトル:記録管理概観:アフリカの経験
原タイトル:An overview of records management: the African experience
著者:Justus Wamukoya
発行日、ページ数:Published Online:30/11/2022 pp.31-47
DOI:https://doi.org/10.3828/coma.2021.5
概要:アフリカにおける記録・アーカイブズの第一人者であった故ジャスタス・ワムコヤ教授の未完の原稿を元にした論稿。アフリカにおける記録管理の発展、および記録管理の発展を阻害する課題と制約について考察、記録管理の改善を目的としたアフリカの諸政府におけるいくつかの事例も紹介している。
著者:1979年から1989年までケニア国立公文書館でアーキビストを務め、その後、モイ大学のティーチング・フェローに就任。1990年にユニバーシティ・カレッジ・ロンドンでアーカイブズ研究の修士号を、1996年に博士号を取得。2003年から2007年まで、ボツワナ大学の上級講師。2007年に上級講師としてモイ大学に戻り、2009年に准教授、2014年に情報学部長に就任。2021年逝去。

(参考)ICAのウェブサイトに掲載されている故ジャスタス・ワムコヤ教授訃報
https://www.ica.org/en/passing-of-prof-justus-wamukoya-1951-2021


日本語タイトル:南アフリカ共和国におけるコレクション公開とアーカイブズへのアクセス促進に関してアーキビストをガイドする歴史家の役割
原タイトル:The role of historians in guiding archivists to open up collections and promoting access to archives in South Africa
著者:Isabel Schellnack-Kelly and Nampombe Saurombe
発行日、ページ数:Published Online:30/11/2022 pp.49-61
DOI:https://doi.org/10.3828/coma.2021.6
概要:この論文は、アーカイブズをより身近なものとし、アーカイブズ機関がそのコレクションを共有し、アーカイブズ機関の持続可能性を確保するための事例と、モデル開発の必要性、その目的の達成のために歴史家が果たすべき役割について論じる。
著者:Isabel Schellnack-KellyとNampombe Saurombeは、南アフリカ大学情報学部准教授。Isabelは、教育ツールとしてのアーカイブズ資料、オーラル・ヒストリー・アーカイブズ、記録管理などに関心を持っている。Nampombeの関心分野は、アーカイブズへのアクセス、アーカイブズの脱植民地化など。


日本語タイトル:アーカイブズとパンアフリカニズムの統合
原タイトル:Les archives et la consolidation du panafricanisme
著者:Bob BOBUTAKA Bateko
発行日、ページ数:Published Online:30/11/2022 pp.63-74
DOI:https://doi.org/10.3828/coma.2021.7
概要:国際アーカイブズ評議会(ICA)は、アフリカ・プログラムによって、アフリカにおけるグッドガバナンスと記憶の正統な管理を保証するアーカイブズ強化のための支援策を考案し続けている。カメルーン・ヤウンデにおける2015年と2018年のICAの会合は、アフリカのアーキビストとアーカイブズ研究者を支援するICAの最も重要な成果である。
著者:情報コミュニケーション学博士。コンゴ・キンシャサ統計学院のアーカイブズ学教授、キンシャサ大学客員教授。世界銀行、UNDP、国連コンゴ民主共和国平和使節、国連人権高等弁務官事務所などの国際機関での勤務経験も持つ。


日本語タイトル:CODeL高等教育機関におけるデータ・キュレーターシップとマネジメント・モジュールの開発
原タイトル:Development of a Data Curatorship and Management module at a CODeL higher education institution
著者:Makutla Mojapelo, Lorette Jacobs, and Ngoako Marutha
発行日、ページ数:Published Online:30/11/ 2022pp.75-87
DOI:https://doi.org/10.3828/coma.2021.8
概要:アフリカでは、データ・キュレーションの原則・適用に関するアーキビストと記録管理者のトレーニングは注目されてこなかった。これを是正するために、国際アーカイブズ評議会(ICA)は、データ・キュレーションに焦点を当てたモジュールの一般的なカリキュラムを提案した。この記事では包括的オープン遠隔教育(CODeL)高等教育機関におけるデータ・キュレーションとマネジメントのモジュールの開発について取り上げる。
著者:Makutla Mojapeloは南アフリカ大学(UNISA)情報学部講師。研究テーマは、情報公開、デジタルデータ・キュレーション、アーカイブズ・アドボカシー、パブリック・プログラミング、オープンデータなど。
Lorette Jacobsは南アフリカ大学(UNISA)情報学部准教授。研究テーマは、アーカイブズ外交とデジタル記録法、研究方法論、ゲーミフィケーション、カリキュラム開発。InterPARES Trust AIプロジェクトに参加し、教育や学習に関連するUNISAの様々な委員会の委員を務めている。
Ngoako Maruthaは南アフリカ大学(UNISA)情報学部教授。UNISAを代表して国際アーカイブズ評議会および南アフリカ・アーキビスト協会に参加している。


日本語タイトル:最初の一歩が最も難しい:エスワティニ大学の情報学カリキュラムにおけるデジタル記録キュレーターシップの概念化
原タイトル:The first step is the hardest: conceptualization of digital records curatorship in the information science curriculum at the University of Eswatini
著者:Mpho Ngoepe、Vusi Tsabedze
発行日、ページ数:Published Online:30/11/2022 pp.89-98
DOI:https://doi.org/10.3828/coma.2021.9
概要:アフリカのアーカイブズ・カリキュラムにおけるデジタル記録キュレーターシップの概念化が勢いを増している。これはアフリカ戦略の教育の一環として、国際アーカイブズ評議会がデジタル・キュレーターシップに関するワークショップを展開したことにより加速された。この論文では、エスワティニ大学の情報学カリキュラムにデジタル・キュレーターシップのモジュールをカスタマイズするまでの道のりを報告する。
著者:Mpho Ngoepe 南アフリカ大学情報学部教授兼学科長。これまで国連児童基金、南アフリカ国立公文書館などに勤務。
Vusi Tsabedze エスワティニ大学コンピュータサイエンス学部講師。記録管理に関する書籍や学術誌に多数の記事を執筆しているほか、エスワティニとレソトで記録管理に関するコンサルティングを数多く行っている。


日本語タイトル:アフリカにおけるアーカイブズ教育訓練の刷新:ボツワナのハボローネで2019年8月5日から9日まで開催されたデジタル記録キュレーション・スタディスクールからの洞察
原タイトル:Revamping archival education training in Africa: insights from the Digital Records Curation Study School held in Gaborone, Botswana, 5-9 August 2019
著者:Juliet A. Erima and Tshepho L. Mosweu
発行日、ページ数:Published Online:30/11/2022 pp.99-103
DOI:https://doi.org/10.3828/coma.2021.10
概要:本稿は、アフリカ地域における記録管理とアーカイブズ管理のための能力開発に焦点を当てた国際アーカイブズ評議会(ICA)のプログラム委員会(PCOM)の取り組みについて述べる。特に、アフリカ大陸の様々な国からアーカイブズ教育者が集まり、ボツワナのハボローネで開催された2019年デジタル記録キュレーション・プログラム(DRCP)スタディスクールについて論じる。このスタディスクールは、トレーナーと参加者が知識を共有し、国際的な採用に向けて新たに開発されたデジタル記録キュレーション・カリキュラムの展開など、将来のデジタル・キュレーションのアジェンダを形成するためのフォーラムを提供した。
著者:Juliet Erima モイ大学情報学大学院図書館・記録管理・情報学科講師。記録管理・アーカイブズ管理(RAM)のディプロマ、学士号、修士号を取得。
Tshepho L. Mosweu ボツワナ大学図書館・情報学部上級講師。南アフリカ大学情報学部研究員。現在、InterPARES TrustのAIプロジェクトに参加している。


日本語タイトル:シャルル・ケチケメティ(1933-2021):永遠の対話者
原タイトル:Charles Kecskeméti (1933-2021) : L'homme du dialogue permanent
著者:Odile Welfelé
発行日、ページ数:Published Online:30/11/2022 pp.105-108
DOI:https://doi.org/10.3828/coma.2021.11
概要:ICAに多年にわたり貢献したKaroly Charles Kecskemeti 博士の生涯と功績の紹介。シャルル・ケチケメティ博士は1933年 8月ハンガリー生まれ。1956 年に政治亡命者としてフランスに。1957 年にジャン・ファヴィエ氏と共にフランス国立公文書館で働き始める。ICAには1962年に書記として初めて参加し、その後1969年から1988年まで事務局員、1988年から1999年まで事務局長・事務総長を歴任。2021年4月2日逝去。
著者:アーキビスト=パレオグラファー、遺産総合キュレーターとして、現代科学のアーカイブズの分野で活躍。フランス文化省建築遺産局の責任者を経て、2009年よりフランス国立公文書館で国際協力担当。

(参考)ICAウェブサイトに掲載されたシャルル・ケチケメティ氏訃報
https://www.ica.org/en/remembering-dr-charles-kecskemeti


日本語タイトル:アーカイブズ紛争:国際アーカイブズ評議会(1963年~1998年)の活動を振り返って
原タイトル:Les «contentieux archivistiques». Retour sur les travaux du Conseil International des Archives (1963-1998)
著者:Odile Welfelé
発行日、ページ数:Published Online:30/11/2022 pp.109-115
DOI:https://doi.org/10.3828/coma.2021.12
概要:国際アーカイブズ評議会と長らくICAの事務局長を務めたシャルル・ケチケメティ氏は、アーカイブズ紛争に大きな関心を寄せていた。1963年から2003年にかけての様々な取り組み、特に、1961年にポーランド・ワルシャワ、1977年にイタリア・サルデーニャ島カリャリで開催された「アーカイブズに関する国際円卓会議(International Conference of the Round Table on Archives: CITRA)」(※)で行われた作業について紹介する。国連国際法委員会の枠組みで行われ、1983年4月に公表された「国家の財産、アーカイブズ及び債務についての国家の承継に関するウィーン条約」の議論の結論は、十分な数の国家の批准につながらなかった。その後も話し合いは続いている。

(参考)国連国際法委員会「国家の財産、アーカイブズ及び債務についての国家の承継に関するウィーン条約」
https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/conventions/3_3_1983.pdf (本文。PDF)
https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=IND&mtdsg_no=III-12&chapter=3&clang=_en (署名国、批准国名掲載)

(※)archivesには「館」のほかに「記録資料」の意味もあるため本通信では「アーカイブズに関する国際円卓会議」としています。同様の理由でInternational Council on Archivesも「国際アーカイブズ評議会」としています。


日本語タイトル:2001年から2010年までのフランス国立公文書館および国際アーカイブズ評議会
原タイトル:La Direction des Archives de France et le Conseil International des Archives de 2001 à 2010
著者:Martine de Boisdeffre
発行日、ページ数:Published Online:30/11/2022 pp.117-121
DOI:https://doi.org/10.3828/coma.2021.13
概要:2002年のフランス・マルセイユでのアーカイブズに関する国際円卓会議(CITRA)、国際アーカイブズ評議会ヨーロッパ地域支部(ICA/EURABICA)の議長職、2008年のフランス国立公文書館設置200周年記念行事を中心に語る。
著者:セーヴル高等師範学校を卒業後、1983年に国立行政学院(ENA)を卒業し、国務院入局。1995年、国務院事務総長。2001年から2010年までフランス国立公文書館館長。その後ヴェルサイユ行政裁判所長官、2017年より国務院報告研究部会長を務める。


日本語タイトル:2003年、ケープタウンでのアーキビストのための人権問題への取り組み:個人的な記憶
原タイトル:Setting a human rights agenda for archivists in Cape Town, 2003: a personal reminiscence
著者:Graham Dominy
発行日、ページ数:Published Online:30/11/2022 pp.123-127
DOI:https://doi.org/10.3828/coma.2021.14
概要:2003年に南アフリカ・ケープタウンで開催された「アーカイブズと人権」をテーマとするアーカイブズに関する国際円卓会議(CITRA)は、ICAにとって転機となる出来事であった。なぜなら初めて、アーカイブズと人権の問題が、国際機関の議題として明確に取り上げられたからである。この問題を認識した先駆者の一人がシャルル・ケチケメティ。この記事は、この会議の準備のための個人的な回想である。南アフリカの視点から見ると、この会議の成功には2つの要因があった。一つはノーベル平和賞を受賞したデズモンド・ツツ名誉大主教の重要なオープニング・スピーチ、もう一つは南部・東部アフリカのアーカイブズ担当大臣が集まってアーカイブズに関する宣言が採択されたことである。
著者:2001年から2014年まで南アフリカ国立公文書館長を務めた。2003年にケープタウンでCITRA「アーカイブズと人権」を主催したほか、ICAのアーカイブズと人権部会のメンバーでもある。


日本語タイトル:困った時の友達:ICAとマルタ共和国国立公文書館との連携
原タイトル:A friend in need: ICA and the National Archives of Malta
著者:Charles J. Farrugia
発行日、ページ数:Published Online:30/11/2022 pp.129-135
DOI:https://doi.org/10.3828/coma.2021.15
概要: ICAの会員であることがマルタ国、マルタ国立公文書館、そしてアーキビストである著者個人にとって何を意味するかについての個人的な考察を通して、シャルル・ケチケメティ氏のグローバルなアーカイブズ界への貢献を語る。
著者:マルタの国立公文書館館長。マルタ大学にアーカイブズと記録管理学教育を導入し、2009年にマルタで開催されたCITRAではホスト役を務める。国際アーカイブズ評議会(ICA)ヨーロッパ地域支部(EURBICA)の議長も務める。


日本語タイトル:ICA:公益のための力
原タイトル:The ICA: a force for the public good
著者:David Fricker
発行日、ページ数:Published Online:30/11/2022 pp.137-143
DOI:https://doi.org/10.3828/coma.2021.16
概要:アーカイブズや記録管理分野で働く人にとって、ICAは特別な役割を担っている。この記事では、不平等、司法へのアクセス、表現の自由、開かれた民主主義、気候変動、脱植民地化など、世界のほとんどの人々に共通する基本的な問題に対するICAの重要な影響力を紹介する。
著者:「国際危機に対するICAの発展しつつある立場、ロシアのウクライナ侵攻の例」参照のこと。


日本語タイトル:国際アーカイブズ評議会の歴史のために
原タイトル:Pour une histoire du Conseil International des Archives
著者:Didier Grange
発行日、ページ数:Published Online:30/11/2022 pp.145-151
DOI:https://doi.org/10.3828/coma.2021.17
概要:1948年に設立された国際アーカイブズ評議会(ICA)は2023年に創立75周年を迎えるにもかかわらず、その歴史を記した年史が存在しない。ICAのアーカイブズはパリのフランス国立公文書館に保管されている。ICAのウェブサイトには、ICAの沿革だけでなく、年表、デジタル化された文書、バーチャル展示などを掲載することが望まれる。国際社会がシャルル・ケチケメティに捧げる最高の賛辞は、アーカイブズと歴史を結びつけるプロジェクトの立ち上げではないか。
著者:ディディエ・グランジュはスイス・ジュネーブ市のアーキビスト。2000年から2022年にかけて国際アーカイブズ評議会で様々な役職を歴任した。


日本語タイトル:パリのハンガリー人
原タイトル:Un Hongrois à Paris
著者:Lajos Körmendy
発行日、ページ数:Published Online:30/11/ 2022 pp.153-156
DOI:https://doi.org/10.3828/coma.2021.18
概要:本稿では、シャルル・ケチケメティのハンガリーでの生涯と経歴、そして1956年のハンガリー動乱への参加の経緯、パリに到着して数年後に始まる国際アーカイブズ評議会での主導的な役割、ICAをグローバルな組織へと発展させた功績を紹介する。とくに主要な足跡として、第三世界のアーカイブズの事例、記録管理について振り返る。1990年代のICAの新たな課題(東欧のアーカイブズの統合、IT化、新しい財務モデル)への対応とその成功、著者とシャルル・ケチケメティとの個人的な関係についても述べている。
著者:1950年、ハンガリー・ブダペスト生まれ。1975年から2012年まで、ハンガリー国立公文書館に勤務。専門分野は、複写、アーカイブズ理論、コンピュータサイエンス、国際関係、保存。1980年代から1990年代にかけてはICAで、2000年代にはヨーロッパのアーカイブズ組織で幅広く活動した。


日本語タイトル:フランス国立公文書館と国際アーカイブズ評議会:長い共通の歴史
原タイトル:Les archives de France et le Conseil International des Archives : une longue histoire commune
著者:Hervé Lemoin
発行日、ページ数:Published Online:30/11/2022 pp.157-162
DOI:https://doi.org/10.3828/coma.2021.19
概要:数世紀にわたるアーカイブズの長い伝統を持つフランス国立公文書館はフランス語圏のアーキビストに影響を与えることを常に目指してきた。フランス国立公文書館にとって、ICAは国際的なアーカイブズ活動において欠くことのできないパートナー。ICA誕生以来築いてきた関係を大切にしている。
著者:国防史編纂部で様々な役職を務めた後、フランス記念物博物館(建築・遺産保存部門)のディレクターに就任。上級公務員、総合遺産キュレーター。2010年から2018年まで、フランス国立公文書館館長。2018年、モビリエ・ナショナル(フランス国有動産管理局)ディレクター、2022年2月モビリエ・ナショナルのプレジデント。


日本語タイトル:国際アーカイブズ評議会へのわたしの歩み
原タイトル:Mon parcours vers le Conseil International des Archives
著者:Minh Huong Vu Thi 
発行日、ページ数:Published Online:30/11/2022 pp.163-171
DOI:https://doi.org/10.3828/coma.2021.20
概要:国際アーカイブズ評議会(ICA)元事務局長であるシャルル・ケチケメティ氏に敬意を表し、ベトナム国立公文書館前事務局長である筆者が自身の父親とケチケメティ氏との思い出を語る。
著者:元ベトナム内務省国家記録アーカイブズ局局長。ベトナム国立公文書館に30年以上(1981~2015年)、国家記録局には11年間(2004~2015年)勤務。2011年からベトナム・アーキビスト協会の副会長、2014年からユネスコ世界の記憶アジア太平洋地域委員会(MOWCAP)副会長、2020年からベトナム国家文化遺産委員会委員を務める。


日本語タイトル:ノーブルドリームの復活:カナダ国立図書館・文書館(LAC)の起源を振り返って
原タイトル:"A Noble Dream" renewed: reflections on the origins of Library and Archives Canada
著者:Ian E. Wilson
発行日、ページ数:Published Online:30/11/2022 pp.173-187
DOI:https://doi.org/10.3828/coma.2021.21
概要:2004年5月、カナダ政府は国立図書館(1953年設立)と国立公文書館(1872年設立)を合併し、カナダ国立図書館・文書館(LAC)を設立した。この根拠となった法律の前文には、図書館員、アーキビスト、そして現代の知識集約型機関に必要な多くの専門家の価値観と献身を呼び起こす、野心的な任務が記されている。
本稿は、カナダのアーカイブズ・サービスへのアプローチの起源と、新しい機関の歴史的背景を振り返る。カナダでは20世紀半ばまで国立図書館や博物館がなかったため、国立公文書館が、公的および民間のアーカイブを選択・保存するだけでなく、パンフレット、ポスター、新聞、記録美術、肖像画、さまざまな工芸品、ひいては映画といった形で歴史的証拠を取得・展示するという包括的な取り組みを行っていた。1953年に国立図書館が設立されたとき、その収集範囲はカナダ人による、あるいはカナダに関する出版物に限られた。これは公文書館の権限と重なる部分が多かった。
著者:サスカチュワン州、オンタリオ州の州公文書館長を経て、カナダ国立公文書館の第7代館長(1999-2004年)。その後、初代カナダ国立図書館・公文書館館長(2004~2009年)。2008年から2010年にかけて、国際アーカイブズ評議会の会長。カナダ勲章およびフランス共和国芸術文学勲章受章。


日本語タイトル:アレキサンドリア図書館のビッグデータとドキュメント
原タイトル:Big Data and records in the Bibliotheca Alexandrina
著者:Nermeen Ibrahim Ali Ibrahim Ellaban
発行日、ページ数:Published Online:30/11/2022 pp.189-206
DOI:https://doi.org/10.3828/coma.2021.22
概要:本稿は、エジプトのアレキサンドリア図書館のビッグデータ分野におけるプロジェクトを紹介している。
著者:Nermeen Ibrahim Ali Ibrahim Ellaban:エジプト、アレキサンドリア大学文学部図書館・情報科学科在籍。


日本語タイトル:要約
原タイトル:Abstracts
発行日、ページ数:Published Online:30/11/2022 pp.207-259
DOI:https://doi.org/10.3828/coma.2021.23


日本語タイトル:編集委員会
原タイトル:Comité de rédaction
発行日、ページ数:Published Online:30/11/2022 pp.261-262
DOI:https://doi.org/10.3828/coma.2021.24
概要:現在の編集委員の所属国はエジプト、フランス、スペイン、オーストラリア、アルゼンチン、ボツワナ、カナダ2、ドイツ2、中国2、英国、スウェーデン、ポルトガル。このうち、フランス、スペイン、カナダ、ドイツ2、エジプト、英国、中国の委員は翻訳も担当。


★☆★...編集部より...★☆★

■新編集長による最初の号■

Commaは、ICAが長年発行してきたArchivumとJanusの後継誌として2000年に創刊、ICAが半年ごとに発行する多言語アーカイブズ・ジャーナルです。13年間にわたり編集長を務めたマーガレット・プロクター氏に代わり、今号から編集長二人体制での発行となりました。新編集長の一人はオランダ情報遺産監査局の上級検査官であるフランス・スミット Frans Smit 氏、もう一人はイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(米国)准教授で自然・応用科学アーキビストのベサニー・アンダーソン Bethany Anderson 氏です。

アムステルダム自由大学で近代史とイタリア語の博士号を取得したスミット氏は、2014年からアムステルダム大学およびアムステルダム応用科学大学でアーカイブズ学と記録管理監査の講師、10年以上にわたってフランス・スミット情報コンサルティングの代表を務めており、オランダ語、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語の5カ国語に精通しています。

アンダーソン氏は、テキサス大学オースティン校でアーカイブ学と記録管理の修士号を、シカゴ大学で近東美術と考古学の修士号を取得。米国アーキビスト協会(SAA)の機関誌であるAmerican Archivistの書評編集者として2期目を終え、これまで、同誌の書評欄の改革を進めてきました。SAAのポッドキャスト、Archives In Contextの創設メンバーでもあります。2017年にはICAの大学研究機関アーカイブズ部会内に科学技術アーカイブズ委員会を共同設立しています。

なお、新編集長選考委員会のメンバーはロサナ・デ・アンドレス・ディアス氏(スペイン政府内務省)、テレサ・ブリナティ氏(アメリカ・アーキビスト協会)、イェルク・ルートヴィヒ氏(ドイツ・ザクセン州内務省)。前コンマ編集長のマーガレット・プロクター氏がアドバイザーとして参加とのことです。

https://www.ica.org/en/frans-smit-netherlands-and-bethany-anderson-usa-are-new-editors-in-chief-of-comma
https://www.ica.org/en/comma-2021-1-is-now-published

2011年に日本で開催したビジネス・アーカイブズ国際シンポジウムに登壇された中国国家档案局の王嵐氏は、Commaの前身Janusの編集メンバーでした。
https://www.shibusawa.or.jp/english/center/network/pdf/12_Wang.pdf (PDF)


■アフリカ・プログラムについて■

ICAにおけるアフリカ・プログラムは2012年に始まったものです。この年、ICA のプログラム委員会(PCOM)は、「アフリカにおける記録管理能力の開発」「アフリカのアーキビストと記録管理者のニーズ」「ICAの戦略的目標と優先事項」「アーカイブズ教育の提供」を支援する専門プログラムを優先事項とすることを決定しました。2014年から2015年を準備作業の期間とし、2015年から2020年までがフェーズ1、2021年から2023年までをフェーズ2とし、現在取り組まれているフェーズ2では「持続可能な知識交換イニシアチブの開発」と「トレーニングとトレーナーの能力の開発」を目的に掲げています。
https://www.ica.org/en/our-professional-programme/africa-programme

ICAを日本に紹介したパイオニア的な存在である国文学研究資料館・史料館名誉教授安澤秀一氏は「ブラック・アフリカ諸国における文書館とアーキヴィスト養成課程」という論考を1983年に発表しています。アフリカにおけるアーキビスト養成制度についての貴重な日本語文献です。
https://kokubunken.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=1189&item_no=1&page_id=13&block_id=21


新編集長の下でのComma最新号は、これまで取り上げられることの少なかったアフリカ関係記事を複数収録するとともに、シャルル・ケチケメティ氏追悼と併せてICAの歩みを振り返る特色ある号となっています。


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■行事情報:米国アーキビスト協会(SAA)学生・アーカイブズ新任担当者部会
◎ウェビナー「ビジネス・アーカイブズ:異色のキャリアパスへの視点」
     2022年6月2日

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◎米国アーキビスト協会(SAA)学生・アーカイブズ新任担当者部会
ウェビナー「ビジネス・アーカイブズ:異色のキャリアパスへの視点」
Students and New Professionals (SNAP) 2022 Webinar Series, SAA Business Archives Section (BAS)
Business Archives: Perspectives on An Uncommon Career Path
https://snaproundtable.wordpress.com/2022/07/11/business-archives-perspectives-on-an-uncommon-career-path-2/

米国アーキビスト協会の部会の一つに「学生・アーカイブズ新任担当者部会」があります。この部会が2022年6月2日に開催したウェビナーは、企業アーカイブズで働くアーキビストが、それぞれの職場での仕事を紹介するという内容の、たいへん興味深いプログラムでした。動画(音声とスライド)が一般に公開されています(1時間15分12秒)。

登場したのは、

・NBCユニバーサルのアーカイブ・オペレーション部門のマネージャー エリック・D・チン Eric D. Chin 氏
・ティファニー & Co.のアシスタント・アーキビスト サム・シタレッラ Sam Citarella 氏
・IBMのアシスタント・アーキビスト L.J.ストランプ L.J.Strumpf 氏

の3人です。

【動画目次】

0:00 導入
3:15 エリック・チン氏(NBCユニバーサル)
18:45 サム・シタレッラ氏(ティファニー & Co.)
34:00 L.J.ストランプ氏(IBM)
46:00 L.J.ストランプ氏からのキャリア・アドバイス
49:20 質疑応答

★☆★...編集部より...★☆★

NBCユニバーサルのエリック・チン氏のプレゼンテーションがとても参考になります。アーカイブズの沿革、社内での位置づけ、スタッフの人数・構成、所蔵資料の種類や規模、社内のさまざまな連携先、利用事例(法務部門をサポートするなども含まれる)をスライドとともに説明しています。

ティファニーのシタレッラ氏の前職はニューヨーク証券取引所のアーキビストでした。ティファニーではとくに製品のデザイン・設計関係文書管理の担当です。

最後の質疑応答部分(最後約20分間)では、企業アーカイブズへのアクセスが社内限定であることの意味、利用している資料管理システム情報などもシェアしてくれています。


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[略称一覧]
ACA: Association of Canadian Archivists(カナダ・アーキビスト協会)
ARA: Archives and Records Association(アーカイブズとレコード協会)
ASA: Australian Society of Archivists(オーストラリア・アーキビスト協会)
BAC: Business Archives Council(ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BACS: Business Archives Council in Scotland(スコットランド・ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BAS: Business Archives Section(ビジネス・アーカイブズ部会:SAA内の部会)
CoSA: Council of State Archivists(米国・州文書館長評議会)
DCC: Digital Curation Center(英国デジタル・キュレーション・センター)
EDRMS: Electronic Document and Record Management System(電子文書記録管理システム)
ERM: Electronic Record Management(電子記録管理)
ICA: International Council on Archives(国際文書館評議会)
NAGARA: National Association of Government Archives and Records Administrators(米国・全国政府アーカイブズ記録管理者協会)
NARA: National Archives and Records Administration(米国 国立公文書館記録管理庁)
RIKAR: Research Institute of Korean Archives and Records(韓国国家記録研究院)
RMS: Record Management System(記録管理システム)
SAA: Society of American Archivists(アメリカ・アーキビスト協会)
SBA: Section for Business Archives(企業アーカイブズ部会、ICA内の部会)
TNA: The National Archives(英国国立公文書館)


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☆★ 編集部より:あとがき、次号予告 ★☆

2022年7月から10月にかけて、NHK地上波で放映された海外ドラマ「アストリッドとラファエル 文書係の事件録」、ご覧になりましたか?フランス・ベルギー合作のこのドラマの主人公は、女性警官ラファエル・コスト警部と、パリ警察の犯罪捜査部文書係アストリッド・ニールセンのふたりです。アストリッドは自閉症であるという設定ですが、ドラマの中では並外れた能力を発揮して捜査にあたります。
https://www.nhk.jp/p/astridetraphaelle/ts/PG1M4JJQQV/

この番組に関して、国文学研究資料館で史料保存分野の研究と実務に長年携わってこられた同館准教授青木睦氏より、番組に何度か登場するアーカイブズ建築は、フランス・パリの南東部郊外に位置するヴァル=ド=マルヌ県公文書館であるとご教示いただきました。

ヴァル=ド=マルヌ県公文書館(ヴァル=ド=マルヌ県アーカイブズ部)
Archives départementales du Val-de-Marne
https://archives.valdemarne.fr/

同館外観
https://fr.wikipedia.org/wiki/Archives_d%C3%A9partementales_du_Val-de-Marne#/media/Fichier:Archives_D%C3%A9partementales_du_Val-de-Marne_%C3%A0_Cr%C3%A9teil.JPG

1975年に竣工した建物の3階以下の層はガラス窓を持ち、アーキビストや事務スタッフの仕事場、展示ホール、閲覧室などが配置されています。日差しを遮断し空調設備を完備した12層のタワー部分には、紙資料、絵画やモノ資料、羊皮紙からデジタルメディアまで、さまざまなメディアの公文書と私文書が保管されています。
同館リーフレット (PDF)
http://archives.valdemarne.fr/_depot_ad94/articles/54/l-histoire-du-batiment-des-archives_doc.pdf

2022年ヨーロッパ文化遺産の日の動画
(建物内部を見ることができます)
https://vimeo.com/752491717

同じく2022年ヨーロッパ文化遺産の日広報のためのツイート
https://twitter.com/Archives_94/status/1569700580586655748


ICAが作成した『文書館の建築と設備』Les batiments et les equipements d'archives/ Archives buildings and equipment というアーキビスト教育・養成のための教材(1993年、35mmスライド40枚、カセットテープ1点、テキスト8p)にこの建物のスライドが含まれており、青木氏は毎年の授業で使っているそうです。

この教材に関して、青木氏より下記の日本語文献もご紹介いただきました。
保坂裕興「ミシェル・デュシャン解説『文書館の建築と設備 ICA教育・養成部門教材シリーズ1』 」
全国歴史史料保存利用機関連絡協議会『記録と史料』第6号、1995年9月 (PDF)
http://www.jsai.jp/kanko/kaisi/06/+6(26)kirokuHosaka.pdf
http://www.jsai.jp/kanko/kaisi/06/index.html

改めて検索してみると、ヴァル=ド=マルヌ県公文書館(アーカイブズ部)の公式フェイスブック・アカウントで、「アストリッドとラファエル 文書係の事件録」Astrid et Raphaëlle に自館が登場することを広報している記事がありました。

https://www.facebook.com/archivesdepartementalesduvaldemarne/posts/pfbid02LYo1hC2pNqqUmhhniVTUbXWau6wYiWn7f5Ld7vzzTUN88zkd4UYL2VWrSEZQpjjVl
(2019年4月3日)

https://www.facebook.com/archivesdepartementalesduvaldemarne/posts/pfbid036yiUMLkvBhgU2VH7qW6g2NNUX4rjzAtrjH84B8e91jeqi1jqduKrn99mAfJgxoMtl
(2020年4月4日)

■ヴァル=ド=マルヌ県公文書館(ヴァル=ド=マルヌ県アーカイブズ部)■

ヴァル=ド=マルヌ県は1964 年にパリ地域の行政の再編によって、それまでのセーヌ県の一部と旧セーヌ=エ=オワーズ県の一部が合わさって誕生した県です。ウェブサイトによると、1968年に決定された大規模な分割作業によって、セーヌ県とセーヌ=エ=オワーズ県の両県の公文書館(アーカイブズ部)の所蔵文書のうち、新しく設置されたヴァル=ド=マルヌ県に関わるものが移管されて、ヴァル=ド=マルヌ県公文書館(ヴァル=ド=マルヌ県アーカイブズ部)が新たに業務を開始したものということです。
https://archives.valdemarne.fr/r/97/les-archives-departementales/

ヴァル=ド=マルヌ県公文書館(ヴァル=ド=マルヌ県アーカイブズ部)が保管・管理・利用提供するのは

・1790年以前の公文書(フランス革命中に収集され、解散した行政、司法、宗教機関、または没収された移民や受刑者から提供されたもの)
・1790年(革命時の県創設日)以降に、領域当局としての県、国家サービス(県庁、公庫、裁判所、警察、登記、抵当権など)および県領域で活動する公共施設が作成した歴史的価値のある公文書
・20世紀初頭までの公証人のアーカイブズ
・自治体から寄託された自治体アーカイブズ
・所有者から寄贈、寄託、売却された個人由来のアーカイブズ
https://archives.valdemarne.fr/r/97/les-archives-departementales/

このページの中ほどのDécouvrez nos missions en vidéos !(私たちのミッションを動画でご紹介します!)のそれぞれ1分程度の長さの4本の短い動画は、同県のアーカイブズの4つの機能(収集、分類、保存、利用)を視覚的・直感的に理解するのに役に立ちます(音声は音楽のみ)。

このページの一番下の動画では、「1968年5月」に関する証言を集める1998年のキャンペーンの一環として、同県公文書館初代館長(県のアーカイブズ部の部長)を務めたクレア・ベルシュClaire Berche 氏が1968年から1975年までの同館の歴史を証言しています(動画の長さ:19分13秒)。なお1968年5月1日に館長に就任した時、ベルシュ氏は若干24歳だったとのことです。

■文書係とは?■

サラ・モーテンセンが演じる文書係アストリッド・ニールセンの役柄と仕事に関しては、フランスのアーカイブズ関係者の中でも話題になっているようです。「アーカイブズとポップカルチャー」ARCHIVES ET CULTURE POPというブログでは、「アストリッドとラファエル:たぐいまれなアーキビスト」Astrid et Raphaëlle : une archiviste hors du communと題したマルク・スカリオーネMarc Scaglione 氏による記事が2020年4月4日に公開されています。
https://archivespop.wordpress.com/2020/04/04/astrid-et-raphaelle-une-archiviste-hors-du-commun/

この記事によると、この番組に関わる宣伝や解説では、アストリッドの職業を表すのに「ドキュメンタリスト」documentaliste と「アーキビスト」archivisteの両方の言葉が使われているそうです(ちなみに「司書」はbibliothécaire )。アストリッド自身は自分のことを「犯罪記録サービス(部門)のドキュメンタリスト」documentaliste au Service de la Documentation criminelle と定義しています。上に述べたように、この部門の撮影場所は、ヴァル=ド=マルヌ県公文書館(県アーカイブズ部)の建物です。また記事では、犯罪記録サービス(部門)Service Central de la Documentation Criminelle は行政機関の中に実際に存在する、とも指摘しています。ドラマの中での文書管理に関わる場面からすると、歴史アーカイブズと現用文書管理の両方に関わる仕事のようです。

さらにこの記事は、自閉症という役柄設定をネガティブに捉える必要はなく、むしろ、文書やアーカイブズを扱うには「沈黙と厳しさ」という資質が大切なこと、文書係アストリッドは関連する情報を素早く提供できるプロとしての資質、読んだものをすべて記憶し、それを書き写すことができるという素晴らしい記憶力を持っているといったことを示しており、文書管理、アーカイブズ管理に関わる職業の価値を高めるイメージを与えている、という見方を示しています。

■その他関連ページ■
・ヴァル=ド=マルヌ県観光・レジャー部門サイトの同県公文書館のページ
https://www.tourisme-valdemarne.com/patrimoine-culturel/archives-departementales-du-val-de-marne/

・ヴァル=ド=マルヌ県公文書館(県アーカイブズ部)Twitter
https://twitter.com/Archives_94

・ヴァル=ド=マルヌ県公文書館(県アーカイブズ部)フェイスブック
https://www.facebook.com/archivesdepartementalesduvaldemarne/

・ヴァル=ド=マルヌ県公文書館(県アーカイブズ部)Vimeo(動画公開サイト)
https://vimeo.com/archivesvaldemarne

・SNSを通じて興味深い所蔵資料を公開しています。そのうちの一つに、1977年10月に韓国ソウルで開催された第29回青少年音楽国際連盟世界大会の動画があります(ナレーションは英語、18分52秒、レファレンス番号:レファレンス4AV 2547)。
https://vimeo.com/768503590

・France2(テレビ局)の「アストリッドとラファエル」のページ
https://www.france.tv/france-2/astrid-et-raphaelle/

・「アストリッドとラファエル」インスタグラム
https://www.instagram.com/astridetraphaellejla/

・映画のロケ地情報に関するサイト「居ながらシネマ」の「アストリッドとラファエル」のページで「犯罪資料局」についての記事が公開されています。
https://inagara.octsky.net/astrid-et-raphaelle#i-4
https://inagara.octsky.net/astrid-et-raphaelle


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次号は2023年3月発行の予定です。どうぞお楽しみに。

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◆◇◆バックナンバーもご活用ください◆◇◆

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ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信) No.96
2023年1月27日発行 (不定期発行)
【創刊日】2008年2月15日
【発行者】公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センター
【編集者】公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センター
      「ビジネス・アーカイブズ通信」編集部/
      株式会社アーカイブズ工房
【発行地】日本/東京都/北区
【ISSN】1884-2666
【E-Mail】
【サイト】https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/index.html

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