ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信)

第74号(2018年3月2日発行)

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☆      □■□ ビジネス・アーカイブズ通信 □■□

☆       No.74 (2018年3月2日発行)

☆    発行:公益財団法人 渋沢栄一記念財団 情報資源センター

☆                        〔ISSN:1884-2666〕
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この通信では海外(主として英語圏)のビジネス・アーカイブズ(BA)に関する情報をお届けします。

海外BAに関わる国内関連情報も適宜掲載しております。

今号は行事情報1件、文献情報3件です。

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◆ 目次 ◆

[掲載事項の凡例とご注意]

■文献情報:「〈講演ノート〉つながる世界のビッグデータ:敵か味方か?」

■文献情報:ICA/SBA主催 ビジネス・アーカイブズ国際シンポジウム 報告
◎テーマ:「ゴーイング・バック・トゥー・ザ・フューチャー:ブランド・アイデンティティと企業文化の再形成における企業アーカイブズの役割」
     2017年12月4~6日 ゴードレージ・アーカイブズ
     (インド・ムンバイ)

■文献情報:ゴードレージ・アーカイブズにおけるデジタル化の取り組み

■行事情報:中華人民共和国国家档案局主催/ICASBA後援 ビジネス・アーカイブズ・シンポジウム
◎テーマ:「アーカイブズが促進する企業イノベーションと成長」
     2018年5月16~17日
     中国銀行(中国・北京)

☆★ 編集部より:次号予告 ★☆

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[掲載事項の凡例]

・欧文の場合、日本語で読みやすいものになるように、タイトルははじめに日本語訳を、続いて原文を記します。
・人名や固有名詞の発音が不明の場合も日本語表記を添えました。便宜的なものですので、検索等を行う場合はかならず原文を用いてください。
・普通名詞として資料室や文書室、物理的な記録資料を表現する際は「アーカイブズ」を用います。固有名詞の場合はこの限りではありません。また物理的およびデジタル記録資料の蓄積や組織化に関しては「アーカイブ」「アーカイブ化」「アーカイビング」などの表現を用いることもあります。

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[ご注意]
・受信時にリンク先を示すURLが途中で改行されてしまう場合があります。通常のURLクリックで表示されない場合にはお手数ですがコピー&ペーストで一行にしたものをブラウザのアドレス・バーに挿入し、リンク先をご覧ください。


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■文献情報:「<講演ノート> つながる世界のビッグデータ:敵か味方か?」

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◎ティナ・ステイプルズ「<講演ノート> つながる世界のビッグデータ:敵か味方か?」
Tina Staples, Notes from a Conference Speech: Big Data in a Connected World: Friend or Foe?
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc014_staples.html

[PDF版]
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/pdf/doc014_staples.pdf

本通信は、企業アーカイブズ活動(収集・移管、整理、保存、活用)の優良事例・先進事例であるHSBCグローバル・アーカイブズの取り組みをこれまで何度も取り上げてきました。今回ご紹介する文章は、過去10年近くにわたって同アーカイブズが取り組んできたデジタル化経験に関するティナ・ステイプルズ(HSBCグローバル・アーカイブズ・ヘッド)による講演ノートです。講演は、ARA(イギリス・アイルランド アーカイブズ・レコード協会)2016年度年次会合2日目の基調講演として、2016年9月1日に行われたものです。

様々な記録や資料を所蔵する企業・団体・政府機関・地方自治体・文化機関といった組織は、近年ますます積極的にアーカイブズ資料のデジタル化に取り組んでいることと思います。ただし、「デジタルアーカイブ」として日本で議論されているいるものは、現在のところ、デジタル化した資料をインターネット上で公に閲覧に供する仕組み、あるいはそこで閲覧に供されるデジタル資料を指すものであると、当編集部では考えております。ティナが本講演で紹介するHSBCの取り組みは、社内の文書資料(経営資料など業務の過程で作成されたり受け取ったもの、必ずしも公開を目的としないもの)を中心とした記録資料のデジタルでのアーカイブ化です。こういったアーカイブズの体系的デジタル化を行っている企業は今のところ、HSBCのほかに見かけません。企業としては他に類を見ない先進的な取り組みです。

この講演はアーカイブズ管理に携わる専門職であるアーキビスト、あるいはレコード・マネージャーに向けての講演です。本講演は特に、急激に進む経済社会のデジタル化は企業アーカイブズとアーカイブズ専門職にどのような影響をもたらしているのか、デジタルによって可能となった相互につながる大量のデータ(ビッグデータ)はアーカイブズに関わる専門職(アーキビストやレコード・マネージャー)にとって敵なのか味方なのか、これらの点に焦点を当てています。

[目次]

【許諾について】
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc014_staples.html#01

【解題】
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc014_staples.html#02

【凡例・専門用語の訳語について】
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc014_staples.html#03

【講演ノート本文】
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc014_staples.html#04

・デジタル化状況のいま
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc014_staples.html#05

・デジタルでのアーカイブズ管理への道のり:HSBCの場合
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc014_staples.html#06

・デジタルでのアーカイブズの課題と強み
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc014_staples.html#07

・デジタルはグローバル。ふさわしいのは誰か
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc014_staples.html#08

【訳者注】
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc014_staples.html#09


★☆★...編集部より...★☆★

HSBCグローバル・アーカイブズによる、デジタル保存を核にした体系的管理と活用のためのデジタル化プロジェクトについてご紹介いたしました。21世紀初頭、同アーカイブズのスタッフは5名以下であったと聞いています。ここ10数年の間にスタッフ数を大幅に増やし、社内の各方面との連携を強化し、アーカイブズのデジタル化を進めた状況を詳しく知ることができたと思います。横の連携を可能にしたのは、何よりも予算を配分する権限を持つ基幹的な部署、マネジメントからの支持獲得であったはずです。

デジタル化時代のアーカイブズ専門職は、収蔵庫にこもって資料整理だけを行なっているわけには行きません。現代的な技術を用いた、よりよいアーカイブズ管理をプロアクティブに(積極的に)、さまざまな関係者と連携しながら開発することが求められています。HSBCグローバル・アーカイブズはこの点でも参考になります。

編集部が驚いたのは、所蔵記録のインターネット公開を将来的に展望している部分です。銀行ですから長期保存対象の記録の中には、顧客情報をはじめとする非公開情報も多数含まれます(こういった記録は非公開であり続けるでしょう)。これに関連して、リスクやセキュリティ、当局からの規制など、考慮すべき課題も多いはずです。それにもかかわらず、保有記録資産の公開を志向している点は、アーカイブズ資料自体が持つ文化的価値と合わせ、デジタル化時代における企業ブランディングの一要素として、透明性やグッド・ガバナンスが重視されていることを示しているように思われます。そして、アーカイブズにおける適切な情報管理を行うためには、専門的知識を持った人材の配置が欠かせません。日本ではこれからの分野ではありますが、下に示すような注目すべき取り組みが昨年から始まっています。

それは「アーキビストの職務基準」に関わるものです。国立公文書館がたたき台を2017年3月に公開し、その後外部有識者をまじえての検討会議3回を経て決定されたバージョンが、2018年2月に「アーキビストの職務基準書 平成29年(2017年)12月版」として国立公文書館のサイトで公開されています。職務基準書では、アーキビストの職務とその内容、職務遂行要件を一覧化しています。
http://www.archives.go.jp/about/report/pdf/syokumukijunsyo.pdf (PDF)
http://www.archives.go.jp/about/report/syokumukijun.html

このアーキビストの職務基準は、まずは公的機関において利用されることになると思われます。しかし、検討会議では「専門職の職務基準は、特定の組織のみ使えることは〔ママ〕避けるべき」(第2回検討会議議事概要2ページ)というように、機関の種類に関わらず適用・利用可能な職務基準を目指しています。外国企業は早くから専門職を配置して、アーカイブズが管理するヘリテージ資産を有効活用してきました。この職務基準表は、日本企業のアーカイブズ・スタッフの専門性評価のための基準や参考として活用できる可能性が高いように思われます。

自社のアーカイブズ部門の職務におけるチェックリストとして、参照してみることをおすすめします(下記URLの文書7枚目の「職務と遂行要件の対応表」)。その場合「公文書」は「(自社の)文書(・資料)」に置き換えてみるのがよいでしょう。
http://www.archives.go.jp/about/report/pdf/syokumukijunsyo.pdf (PDF)

なお、この職務基準表は完成版ではなく、各種機関や関係者を中心に広く意見を求めつつ検討を続けるものとのことです。本通信で今後の更新状況をお伝えしていきたいと思います。


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■文献情報:ICA/SBA主催 ビジネス・アーカイブズ国際シンポジウム参加記
◎テーマ:「ゴーイング・バック・トゥー・ザ・フューチャー:ブランド・アイデンティティと企業文化の再形成における企業アーカイブズの役割」
     2017年12月4~6日 ゴードレージ・アーカイブズ
     (インド・ムンバイ)

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◎テーマ:「ゴーイング・バック・トゥー・ザ・フューチャー:ブランド・アイデンティティと企業文化の再形成における企業アーカイブズの役割」
Going Back to the Future: The Role of Corporate Archives in Reshaping Brand Identity and the Corporate Culture
https://www.ica.org/en/annual-conference-of-section-of-business-archives-sba-of-the-ica

2017年12月4日(月)から6日(水)までの3日間、インド西部の都市、ムンバイのヴィクロリVikhroli地区にあるゴードレージ企業グループの本部で、2017年度2回目の国際アーカイブズ評議会企業アーカイブズ部会(ICASBA)の国際シンポジウムと関連行事が開催されました。

★ゴードレージ・グループ ウェブサイト
http://www.godrej.com/

テーマは「ゴーイング・バック・トゥー・ザ・フューチャー:ブランド・アイデンティティと企業文化の再形成における企業アーカイブズの役割」でした。企業アーカイブズは企業の組織的知識の倉庫です。そのため、アーカイブズの利用は企業の独自アイデンティティを社内外に伝えるのに貢献し、組織のDNAと一致する変化を主導することによって、より大きな戦略的役割を果たします。

このようなテーマでの会議への参加者はインド各地、アジアでは日本、中国、ヨーロッパはスイス、デンマーク、スウェーデン、イギリス、ドイツ、フランス、ベルギー、そして米国から、全体で130名ほどでした。内訳は企業アーカイブズ関係者(アーキビストのほか、広報、デザイン、人材開発関係者他)、大学関係者(教員、研究者)、マネジメント・スクール関係者(教員、研究者)、アーカイブズ管理やアーカイブズ活用に関するコンサルティング会社やIT関連企業関係者、博物館・美術館・図書館関係者です。


1日目は、英国図書館からオーラル・ヒストリーの第一人者とも言えるロブ・パークス博士を招いた、オーラル・ヒストリーのワークショップが行われました。
https://twitter.com/GodrejArchives/status/945959671369678849
(詳しくは次号にて紹介予定)

今号では、シンポジウムの模様をお伝えしたいと思います。


■□■ビジネス・アーカイブズ国際セミナー■□■
「ゴーイング・バック・トゥー・ザ・フューチャー:ブランド・アイデンティティと企業文化の再形成における企業アーカイブズの役割」

【プログラム】

◆◆◆12月5日(火)◆◆◆

◆09:00  オープニング・セッション  ◆

(1)「歓迎の挨拶」
スピーカー名:ペローザ・J・ゴードレージ博士(ゴードレージ・アーカイブズ・カウンシル議長)
スピーカー名原文:Dr. Pheroza J. Godrej, Chairperson Godrej Archives Council
ゴードレージ・アーカイブズ(GA)のtweet:
https://twitter.com/GodrejArchives/status/937895029229711360


(2)「歓迎の挨拶」
スピーカー名:アレックス・ビエリ(国際アーカイブズ評議会企業アーカイブズ部会部会長)
スピーカー名原文:Alex Bieri, Chair, Section of Business Archives, International Council of Archives
GAのtweet:
https://twitter.com/GodrejArchives/status/937898625178505217

(3)「2017年4月にストックホルムで開催された会議について」
スピーカー名:アンダース・ヘアマン(ストックホルム経営史センター)
スピーカー名原文:Anders Sjöman, Centre for Business History, Stockholm


◆09:30  セッション1  ◆

(1)「アーカイブズからブランド価値を作り出す」
タイトル原文:Creating brand value from archives
スピーカー名:アレックス・ビエリ(ロッシュ歴史アーカイブズ)
スピーカー名原文:Alex Bieri, Roche Historical Archives
[編集部のメモより]
*ヒストリー・マーケティングとは、過去のヘリテージを利用してブランドや製品をマーケティングすること。ブランドは価値(value)とつながっている。
*現代の情報社会(情報は爆発的に増加している)では、組織のアーキビスト、アーカイブズは、コレクションをできるだけ少なく保持する(keep the collection as lean as possible)ことを心がける必要がある。一方で、アーキビストは、情報を組織化し、情報に文脈を与える(contextualize)という役割を担う。
*アーカイブズとは、これまで築いてきたブランドや製品の価値がその中に生きているモノであり場である。つまりアーキビストは、そのような価値を伝えるエージェント(代理人)である。
*一番新しい展示施設であるミネアポリスの社屋の画像も紹介。製薬会社は規制産業であり、一般のBtoCビジネスのように、消費者に向けて直接的な商品の宣伝を行うことはない。ミネアポリスの建物は一般の人がアクセス可能。そこにアーカイブズ資料を用いた展示を行うことは戦略的なブランディングの一環。

(2)「リバイバル:企業改革の一環として自社のヘリテージを活性化させる」
タイトル原文:Revival: activating the company heritage as part of reinventing a company
スピーカー名:ヘニング・モーゲン(マースク)
スピーカー名原文:Henning Morgen, Maersk
GAのtweet:
https://twitter.com/GodrejArchives/status/937909805078974469

(3)「アーカイブズの中に企業文化を見つける」
タイトル原文:To find the company culture in the archive
スピーカー名:トニー・ニルソン(IKEA)
スピーカー名原文:Tony Nilsson, IKEA
動画:https://www.youtube.com/watch?v=TSKxzGKFGpY

GAの(re)tweet:
https://twitter.com/GodrejArchives/status/937918821779767296
https://twitter.com/BoutsofHysteria/status/937917127260102656
https://twitter.com/GodrejArchives/status/937919429219930114


◆11:30  セッション2  ◆

(1)「ロスチャイルドとインドの企業的リンク:海外のオフィス(とりわけムンバイ・オフィス)に歴史的な遺産を伝える」
タイトル原文:Rothschild's corporate link with India: communicating legacy to the offices abroad (especially the Mumbai office)
スピーカー名:メラニー・アスペイ(ロスチャイルド・アーカイブズ)
スピーカー名原文:Melanie Aspey, Rothschild Archives
GAのtweet:
https://twitter.com/GodrejArchives/status/937938827632611328
[メモ]
*ロスチャイルドのビジネスがグローバルである結果、ロンドンのロスチャイルド・アーカイブズでは、世界各地とのつながりを記録したさまざまな資料を管理している。インド、とりわけムンバイに関わるものとして、ビクトル・ユーゴ―とガンジー関連の資料を紹介。

(2)「バタのインドの足跡:グローバルな靴メーカーの地域的なヘリテージ」
タイトル原文:Bata's Indian Footprint: the local heritage of a global sheo company
スピーカー名:トビアス・エーレンボルド(エーレンボルド-文化的アイデンティのためのエージェンシー)
スピーカー名原文:Tobias Ehrenbold, Ehrenbold - Agency for Cultural Identity
動画:https://www.youtube.com/watch?v=WMg-Wr_jcfI

GAのtweet:
https://twitter.com/GodrejArchives/status/937943822629253120
https://twitter.com/GodrejArchives/status/937944948246183936
https://twitter.com/GodrejArchives/status/955360633624522752
[メモ]
*トビアス・エーレンボルドはさまざまな企業や団体に関わる歴史的なプロジェクトをサポートするスペシャリスト。
*バタというサンダルで有名な靴メーカーは、世界各地でビジネスを行っており、それぞれの国の人々はこの会社は自分たちの国の会社である、と感じていることが多い。その理由はバタのブランドがその国や文化に土着的な印象を与えているからである。ゴードレージ・アーカイブズのブルンダ・パターレは、2014年にICASBA会議参加のためスイスを訪問した際、バタの大きな広告を見て、非常に驚いた、という。彼女はバタはインドの会社だとずっと考えていたためである。
*バタの創業の地は現在のチェコスロバキアである。創業者はTomáš Baťa。創業年は1894年。その後さまざまな経緯を経て、1964年にカナダ・トロントに本社が移り、さらに2004年にはスイス・ローザンヌを本社としている。
*創業者の息子であるThomas J. BataはカナダのCanadian Business Reviews(1986年)にバタのビジネスの方法をMultidomesticと語っている。「ローカルなストーリーをグローバルなオーディエンスに語る」
*地域とのつながりをブランド価値としてマーケティングに生かしているベストプラクティス(編集部の感想)。

★関連サイト・ページ★
Bata
https://www.bata.com/
バタ靴博物館(カナダ・トロント)
http://www.batashoemuseum.ca/
トロント大学バタ・コレクション資料(PDF)
https://discoverarchives.library.utoronto.ca/uploads/r/thomas-fisher-rare-book-library-university-of-toronto/9/2/2/922ff5139d6079db15bc51a23d10b9e83f73b58e60c20e10afaac0afe822e909/bata686.pdf


◆13:30  セッション3  ◆

(1)「エボニーク・インダストリーズ株式会社における女性雇用の歴史について」
タイトル原文:On the history of women's employment at Evonik
Industries AG
スピーカー名:アンドレア・ホーメイヤー(エボニーク・インダストリーズ株式会社)
スピーカー名原文:Andrea Hohmeyer, Evonik
動画:https://www.youtube.com/watch?v=wClZCOYK5n8

GAの(re)tweet:
https://twitter.com/GodrejArchives/status/937964439185317889
https://twitter.com/HenningMorgen/status/937965359214288897
https://twitter.com/GodrejArchives/status/966520258646495232
[メモ]
*エボニーク・インダストリーズ社は2007年にドイツの5つの化学会社が合併して設立された。一番古い会社の設立は1870年代にさかのぼる。
*アーカイブズでは合併以前の各社の記録資料も管理している。なかでも宝の山と言えるのが従業員ファイルである。その中から、女性の従業員に光を当てるプロジェクトを企画、非常に成功した。1907年から1915年の間、女性従業員は1名しかいなかった。その後、徐々に女性は増えて行くが、同じ能力や学歴があっても、ながらく女性は劣位の職務しか与えられなかった。
*ドイツ語では"VerSIErt. Frauen machen Geschichte bei Evonik"、英語では"Breaking Barrier"というタイトルにした。ドイツ語のタイトルはうまく英語に訳せない。サブタイトルは「女性はエボニークで歴史を作る」といった意味。
*展示のオープニングは2015年11月。ドイツ国内の工場や事業所で巡回展を行った。
*化学会社が世界で初めて自社の女性の歴史を公表したということで2017年にはベルギー・ブリュッセルの欧州議会の建物内での展示も実現した。
*特設ウェブサイトを作成した。ただしこれはドイツ語版のみ。2018年に英語版をリリースする予定。

★関連サイト・ページ★
YouTube "VerSIErt."
https://www.youtube.com/watch?v=OSUUqoI8eeM


(2)「一般の人々との関わりから従業員との関わりにわたるビジネス・アーカイブズの役割 - シプラの経験」
タイトル原文:The role of business archives from public engagement to employee engagement - the Cipla Experience
スピーカー名:アシャ・アイアー(シプラ・アーカイブズ)
スピーカー名原文:Usha Iyer, Cipla Archives
GAの(re)tweet:
https://twitter.com/UshaIyer17/status/938297329051938816
[メモ]
*1935年にインド・ムンバイで創業した製薬会社シプラでは、2014年にアーカイブズの整備に着手した。
*アーカイブズではSNSやブログを積極的に用いたコミュニケーションを進めている。
*社内の部門間の連携も重要である。
*アーカイブズではインタビュー、オーラル・ヒストリーの手法を多用している。


◆15:00  セッション4  ◆

★企業におけるオーラル・ヒストリーに関するパネル・セッション

【パネリスト】
(1)ロブ・パークス博士(英国図書館)
Dr. Rob Perks, British Library

(2)インディラ・チョードュリー博士
(スリシティ・デザイン・技術スクール、パブリック・ヒストリーのためのセンター)
Dr. Indira Chowdhury, Centre for Public History, Srishti School of Design and Technology

(3)トレイシー・パネック(リーバイ・ストラウス)
Tracy Panek, Levi Strauss

GAの(re)tweet:
https://twitter.com/GodrejArchives/status/937989026455392257
https://twitter.com/GodrejArchives/status/937992574702366721
https://twitter.com/CandidaRemedios/status/938000728718790656
https://twitter.com/GodrejArchives/status/938005645739085824

[メモ]
*ロブ・パークス博士は英国図書館(BL)オーラル・ヒストリー部門の責任者。BLではNational Life Storiesというオーラル・ヒストリー・コレクションがよく知られている。数多くのフィールドワーク・プロジェクトに関わってきた。
*インディラ・チョードュリー博士はDr. Reddy'sというインドの製薬会社の関係者に関わる研究の一環で、同社関係者のオーラル・ヒストリーを行ってきた。
*トレイシー・パネックは1984年のオリンピック用米国選手向けジャケットをデザインしたEllen Duenow のインタビューについて紹介。事前にどんな内容を聞きとるべきかよく考えるのが大切。5分のオーラル・ヒストリーでも効果的。それをチームで、またSNSなどでシェアする。アプリで録音したインタビューはやはりアプリを使ってすぐに書き起こしをつくる。
https://twitter.com/traceypanek/status/819218351100600321
*書き起こし(transcription)の意義が議論された(録音データだけで十分なのか、書き起こしにも意味があるのか、など)。
*ネガティブ情報や機微に関わる(センシティブ)情報の扱い方について。非公開(Close)期間を設けるか、または削除して(reduct)提供する方法がある。パークス博士はイングランド銀行でのオーラル・ヒストリー・プロジェクトに関わった。イングランド銀行でのプロジェクトの場合は、ほとんどは非公開である。


◆◆◆12月6日(水)◆◆◆

◆09:00  セッション1  ◆

(1)「スウェーデン企業が自社の歴史を活用してきた方法と理由に関する実践例」
タイトル原文:Hands-on examples of how some Swedish companies have worked with their history and why
スピーカー名:アンダース・ヘアマン(ストックホルム経営史センター)
スピーカー名原文:Anders Sjöman, Centre for Business History, Stockholm
GAのtweet:
https://twitter.com/GodrejArchives/status/938255466290929666
https://twitter.com/GodrejArchives/status/938262703457660928
[メモ]
*エリクソン、ICA(スーパーマーケット)、スワロフスキーその他、ヘリテージを活かしている企業を紹介。
*歴史マーケティングは、ブランドづくり、組織を強化、リスクを減らすことにつながる。
*往々にして老舗と呼ばれるような企業にしか歴史がないと思われているが、若い企業も創業からの歴史を持っていることに気づかないといけない。

(2)「新しい形のデジタル・ナラティブを通じてリーボックのヘリテージを再考する」
タイトル原文:Reimagining Reebok's heritage through a new form of digital narrative
スピーカー名:ナイルズ・リクテンシュタイン(エンウォーヴン)
スピーカー名原文:Niles Lichtenstein, Enwoven
[メモ]
*米国では毎日1万人が会社を辞め、ミレニアム人口は平均すると4-5年で退職する状況。一方、ある統計によると1週間の仕事の20%は、社内にあるはずの情報を探すために費やされている。このような状況のなかで、社内情報の管理とヘリテージを活用した企業文化の創出はとても大切。
*エンウォーヴンは米国カリフォルニア州に本拠を置く、企業・団体の歴史プロジェクトをサポートする会社。ITの利用を得意としているようである(編集部の感想)。IT技術、データベース技術を使って、自分たちが歴史プロジェクトでサポートした会社の事例を紹介。
*質疑応答では、エンウォーヴンのシステムとクライアント企業のデータベースやタクソノミー(情報等の分類)をどうやって統合するのか、デジタル・アセット・マネジメント(DAM)システムへの登録の仕方など、エンウォーヴンが提供するサービスに関する質問が出た(ICASBAの会合はビジネスの場ではなく、学習・交流の場であることから、こういったやり取りを今後どうするのか、といった意見もSBA運営委員会の中では出ていた)。

★関連ページ
Enwoven
https://www.enwoven.com/
Enwoven Twitter
https://twitter.com/thehistoryproj


◆10:00  セッション2  ◆

(1)「企業アーカイブズ、戦略的センスメイキング(意味付与)、業績:グローバル金融危機の間の銀行業から得たエビデンス」
タイトル原文:Corporate archives, strategic sense-making and performance: evidence from banking during the Global Financial Crisis
スピーカー名:ヴィム・ファン・レンツ(フランス モンペリエ・ビジネス・スクール)
スピーカー名原文:Wim Van Lent, Montpellier Business School
動画:https://www.youtube.com/watch?v=-VEBiH_WetQ

GAのtweet:
https://twitter.com/GodrejArchives/status/938284092654833665
[メモ]
*ヴィムはオランダ出身の経営学者、歴史が経営に与える役割等を研究している。
*このプレゼンテーションは、リーマンショックとして知られるグローバルな金融危機の時期のバークレー銀行(英国)をサンプルとして、企業内アーカイブズは企業のマネジメントに戦略的に寄与するのかどうか、という研究報告。
*先行研究のまとめ(経路依存派とそれに対する反論ほか)、量的ならびに質的手法に関する説明があり、データ処理を行い、結論としては企業アーカイブズ(とそこに含まれる歴史的記録)はマネジメントに対してプラスの価値を持つという結論を得た。しかしながら、2つほど留意点がある。ひとつは、バークレー銀行のアーカイブズを利用するにあたり、研究者ではアクセスできない記録はデータ処理に含まれていない点。もう一つは、これはあくまでバークレー銀行という事例であり、他の銀行や他の業種まで適用できる結論であるかはまだ証明されていない。そのため、より大規模な調査を行いたい、と会議参加者に呼び掛けていた。
*ソーシャル・イベントで直接お話した際は、ビジネス・スクールの自分の授業のひとつは、マックス・ウェーバーを代表とする分野である宗教倫理と経済の関係について教えている、ということであった。ビジネス・スクールで歴史を扱うことは多くはないが、近年関心の高まりもみられるとのこと。実際に経営に携わる人材を教育・養成するビジネス・スクールで、マネジメントのために経営史がどのように意思決定に関与しうるのかを研究しているという点は、日本ではあまりみられないのではないか、と感じた(編集部の感想)。

(2)「ビジネス・ヒストリー(経営史)というビジネスとビジネス・ヒストリーの歴史(ヒストリー):IIMA(インディアン・インスティテュート・オブ・マネージメント・アフマダーバード )の観点」
タイトル原文:The business and history of business history: the IIMA perspective
スピーカー名:チンマイ・タンベ(インディアン・インスティテュート・オブ・マネージメント・アフマダーバード)
スピーカー名原文:Chinmay Tumbe, Indian Institute of Management - Ahmedabad
動画:https://www.youtube.com/watch?v=gQ0g7Q48rJc

GAのtweet:
https://twitter.com/GodrejArchives/status/938288134420353025
https://twitter.com/GodrejArchives/status/938288523513298944
https://twitter.com/GodrejArchives/status/953500082900320256
[メモ]
*インドにおけるビジネスの歴史に関する研究や教育は最近活発化してきている。現在大学院で博士論文をビジネスの歴史で書こうという院生も出てきている。ただし、インドの企業アーカイブズはまだ五指にもみたない。アーカイブズを整備することも同時に行っていかねばならない。IIMA自身の組織アーカイブズの設置も進めたい。


◆11:30  セッション3  ◆

(1)「日清食品におけるブランディングと教育ツールとして、歴史の中に根付く企業価値観」
タイトル原文:Corporate values rooted in history as branding and educational tool at Nissin Foods Group
スピーカー名:松崎裕子(渋沢栄一記念財団)
スピーカー名原文:Yuko Matsuzaki, Shibusawa Eiichi Memorial Foundation
動画:https://www.youtube.com/watch?v=IwhAWFNdJ4s

GAの(re)tweet:
https://twitter.com/GodrejArchives/status/938300907296575488
https://twitter.com/GodrejArchives/status/938304400862470144
https://twitter.com/GodrejArchives/status/960752127164350464
[概要(結論部分)]
*日清食品グループは日本の伝統的な社史編纂によって整理された歴史情報を、ヘリテージ活動の基盤に据え、広報、社史編纂グループなどが連携して、外部の著名なアートディレクターを起用し、自社の歴史をミュージアムやウェブサイトでブランディングのかなめとして活用しています。傑出した創業者・安藤百福氏の業績の存在抜きには同社を語ることはできませんが、いくつかの教訓を引き出すことができるでしょう。
*第一に、諸外国とは異なるメンバーシップ型の組織であるため、専門アーキビストは不在です。しかし、トップのリーダーシップ、広報、その他関連部署が社史編纂を通じて築き上げた既存の歴史情報資源を組み合わせて、ミュージアムをはじめとする情報発信で歴史コンテンツを「戦略的に」用いています。とりわけトップの関与が重要です。(トップの関与による戦略的な歴史コンテンツの活用)
*第二に、創業者の不屈のチャレンジ精神を単に顕彰するだけではなく、発明・発見のプロセスを可視化し、ミュージアムやウェブサイトによる情報発信に用いることが同社のブランディングの核心と言えます。ミュージアムでの体験型コンテンツ(マイカップヌードルファクトリー、チキンラーメンファクトリー)は、企業DNA(インベンションを可能にしたクリエイティブシンキングとチャレンジ精神)を来場者に五感で感じてもらうことを通じて、自社のブランディング、教育ツールとしてマーケティングに貢献しています。(歴史知識・企業理念の体験を通じた共有)
*第三に、ミュージアム、さらにウェブサイトをはじめとする同社の情報発信の歴史コンテンツ部分は、1992年、1998年、2008年に発刊された社史編纂のための資料収集、整理と管理、編纂自体が土台になっているということができます。アナログ(紙媒体)時代の蓄積がデジタル時代を迎え、大いに役立っています。史実に基づいたドラマチックな、作り物でないストーリーがミュージアム来場者の心の琴線に触れるコンテンツとなっています。現在日清食品グループは、同グループのイノベーションヒストリーをまとめた「ハードボイルドコミック社史」を制作中で、創業60周年にあたる来年2018年に刊行する予定です。このプロジェクトのコンセプト・ムービーが公開されています。
https://www.nissin.com/en_jp/
(地道なアーカイブズ資料の収集・管理と事実に基づくストーリー)

★準備にあたっては、日清食品ホールディングス社広報部鶴丸一毅さん、内田沙希さん、社史研究家・村橋勝子さん、丹青研究所・石川貴敏さん、トータルメディア研究所・藤澤伸佳さん、企業史料協議会事務局長・浮田清孝さん、同研修部会長・桧垣茂さんにご協力いただきました。記して感謝申し上げます。

(2)「歴史からの教訓:リーダーシップ・ツールとしての企業レガシー」
タイトル原文:Lessons from history: corporate legacy as a leadership tool
スピーカー名:ラジェンドラ・プラサード・ナルラ(タタ・セントラル・アーカイブズ)
スピーカー名原文:Rajendra Prasad Narla, Tata Central Archives
動画:https://www.youtube.com/watch?v=pi0FHy3ZlJg

GAのtweet:
https://twitter.com/GodrejArchives/status/938307600155856896
https://twitter.com/GodrejArchives/status/961851102768463873
[メモ]
*グループは19世紀後半に創業した、インド最大の企業グループである。タタ・セントラル・アーカイブズは、インド準備銀行(中央銀行)アーカイブズを除くと、インドで最初のビジネス・アーカイブズといえる。1991年設立。アーカイブズは、創業者やそれに続く経営者の生涯、会社の歴史を次代に伝えるなかでグループにおけるリーダーシップ教育に貢献している。

(3)「中国における企業アーカイブズ機関の役割と機能」
タイトル原文:Role and function of enterprise archival institutions in China
スピーカー名:王露露(中国人民大学档案学〈アーカイブズ学〉修士)
スピーカー名原文:Lulu Wang
動画:https://www.youtube.com/watch?v=yXJPSI--SKU

GAのtweet:
https://twitter.com/GodrejArchives/status/938312548578942977
https://twitter.com/GodrejArchives/status/967979354037870593
[メモ]
*プレゼンテーション・ペーパーは中国国家档案局経済科技档案業務指導司企業档案業務指導処の蔡盈芳(Cai YingFang)さん、中国人民大学信息資源管理学院(School of Information Resources Management)副教授のDr.Yongjun Xu、Dr.Xuが指導する王さんの共著。王さんが代表して発表した。


◆14:30  セッション4  ◆

(1)「レガシー STORedWELI」
タイトル原文:Legacy STORedWELI
スピーカー名:コパル・クルカルニ(ゴードレージ)
スピーカー名原文:Kopal Kulkarni, Godrej
動画:https://www.youtube.com/watch?v=f52Pz2ZC-7o

GAのtweet:
https://twitter.com/GodrejArchives/status/938338853777301504
https://twitter.com/GodrejArchives/status/956092404251090944
[メモ]
*コパルはゴードレージ社のデザイナー。
*ゴードレージには1923年に生まれたStorwelという、家具やセイフティ・ボックスのブランドを持っている。インド国内では、このブランドは著名である。コパルはデザイナーとしてアーカイブズを訪問し、アーカイブズ資料からインスピレーションを得て、現代の消費者向けの収納家具のデザインに携わった経験を発表。

(2)「社内においてヘリテージをどのように位置づけるか、あるいはどのように売り込むか?」
タイトル原文:How to position or sell heritage internally?
スピーカー名:ジェイソン・ドレッセル(ヒストリー・ファクトリー)
スピーカー名原文:Jason Dressel, History Factory
GAのtweet:
https://twitter.com/GodrejArchives/status/938345082532614145
https://twitter.com/GodrejArchives/status/938340090471960576
[メモ]
*ヒストリー・ファクトリーは歴史マーケティングやアーカイブズ整理を請け負う企業。本社は米国。

★関連ページ
History Factory
http://www.historyfactory.com/
History Factory Twitter
https://twitter.com/historyfactory


◆15:00  クロージング  ◆

◎「まとめ」Closing Remarks
スピーカー名:アレックス・ビエリ(国際アーカイブズ評議会企業アーカイブズ部会部会長)
スピーカー名原文:Alex Bieri, Chair, Section of Business Archives, International Council of Archives
動画:https://www.youtube.com/watch?v=EhEhKfA7DCI

GAのtweet:
https://twitter.com/GodrejArchives/status/938346826759049218
https://twitter.com/GodrejArchives/status/951702008922218496
(企業アーカイブズ関係者のみなさんにはぜひ一度視聴をお勧めします。励まされる内容です。)
[メモ]
*ビジネス・アーカイブズを取り巻く環境、ビジネス・アーカイブズ自体、この10年で大きく変わった。10年前の会議にはビジネス・スクールの若者がこのような会議に参加することなどなかった。
*アーキビストはかつては埃まみれのファイルを整理するというイメージであった。しかし、いまやたくさんのデータ(例えば画像データ)の中からどれを残すべきかといった判断を行う(キュレーションを行う)ことが主要な職務である。これこそがアーキビストのコア・コンピーテンシ―である。かつてはパイロットとかマーケティングや宣伝部門が花形であった。しかし、現代においてはアーキビストはデータ(をキュレーションする=操縦する)バイロットのようなもの、これから未来に向かって、鍵となる重要な専門職(dream profession)である。

◎「次のSBA会合のお知らせ」Announcement of the next SBA conference
スピーカー名:ツァイ・インファン(中華人民共和国国家档案局)
スピーカー名原文:Cai Yingfang
GAのtweet:
https://twitter.com/GodrejArchives/status/938347815721426944
[メモ]
*会議のテーマとしては"No Past, No Future"(過去がなければ未来もない)を考えている。

◎映画「マーチャント・プリンスィズ・オブ・ボンベイ」鑑賞
Screening of "The Merchant Princes of Bombay", a film by Zafar Hai
(PRSグループ グループ・チェア スシル・プレムチャンドによる紹介)
(Introduction by Sushil Premchand, Group Chairman, PRS Group)
GAのtweet:
https://twitter.com/GodrejArchives/status/938357899847487488
[メモ]
インドの大手企業グループの由来を尋ねると、パーシーという宗教的民族的マイノリティ出身である場合がある。タタ一族もゴードレージ一族もパーシーである。18世紀以降、商人としてムンバイでの商業・産業の発展に重要な役割を果たした一群の人々もまたパーシーの出であった。この映画では、そのようなインド人商人の商業的足跡のみならず、大学設立を主導し、教育・文化面でも地域の近代化に尽くしてきた姿を描いている。

★参考ページ
http://www.prs-group.com/heritage5.htm
http://www.oxfordscholarship.com/view/10.1093/acprof:oso/9780199459216.001.0001/acprof-9780199459216-chapter-2

◆見学
バック・トゥー・ザ・フューチャー ゴードレージ・ミュージアム 新展示
BACK TO THE FUTURE: A Godrej Archives exhibition
https://www.youtube.com/watch?v=0bOFyUXBw1I


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■文献情報:ゴードレージ・アーカイブズにおけるデジタル化の取り組み

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◎アムルータ・マラーテ「デジタルで行く グローバルに働く:ゴードレージ企業アーカイブズに簡単アクセス」
Amruta Marathe, Going digital doing global: Godrej business archives now accessible readily
https://issuu.com/godrej/docs/change_digital_changes_combined/44

ゴードレージ・グループのハウスマガジン(社内誌、ウェブ公開有り)である『チェンジ』Change の vol.15-16(2017年12月発行)にゴードレージ・アーカイブズにおけるデジタル化の取り組みについての記事が掲載されています。筆者は同アーカイブズのアムルータ・マラーテさん。同アーカイブズのサブ・ヘッドとして、SBAカンファレンスではロジスティック面を取り仕切っておられました。
https://issuu.com/godrej/docs/change_digital_changes_combined/44

1897年創業のゴードレージ・グループはインドを代表する企業グループの一つです。
https://www.shibusawa.or.jp/english/center/network/pdf/09_Pathare.pdf
(PDF)

アーカイブズ部門は2006年に設置されました。当初は収集したアーカイブズ資料は全てエクセルで管理していました。しかし、アーカイブズ資料をエクセルで管理することに限界を感じたとアムルータは述べています。100,000点ほど収集したアーカイブズ資料を、標準に依拠して整理して、検索・レポート作成を行うには困難が伴った、と言います。解決策を探した結果、ゴードレージでは、自分たちの必要性を満たすものとしてCumulus DAMSを選定しました。

Cumulus DAMSはプロプライエタリなデジタル・アセット・マネジメント・システムで、ドイツの会社Canto Inc.の製品です。Canto Inc.から薦められたベンダーをプロジェクト・コンサルタントとして、2014年7月に導入プロジェクトを開始、6カ月のプロジェクトの後、2015年1月から利用が可能になりました。このプロジェクトは3期に分かれており、最初の実装前の段階では、アーカイブズ部門の業務プロセスを細かく調査し、アーカイブズ・ワークフロー、主題カテゴリー、目録構造、デジタル構造、クエリ・パターンなどを分析しました。実装段階では、ゴードレージのサーバにソフトウェアをインストール、設定を行いながら、ゴードレージの業務構造と、カテゴリー・ツリー、メタデータ・フィールド、テンプレートなどを補完するCumulusの設計を仕上げることに取り組みました。そして最後にトレーニングとテストの段階がありました。

導入後2年を経て、ゴードレージ・アーカイブズ・チームでは記録資料の取り込みと問い合わせ対応、そして経営改善用レポート作成のためにこのソフトウェアを利用しています。そのほか、実務とそのプロセスの標準化、目録規則の定義、システム利用ガイドライン作成などに特に重点的に取り組んでいます。

2016年には最新のデジタルラボをスタートさせて、資料デジタル化の内製を始めました。ここでもDAMの場合と同様に、標準(例えばスキャニングにおける標準など、アーカイブズ分野の長期保存に適した国際規格)を最も重視しています。

ゴードレージ・アーカイブズは紙などの物理的資料とデジタル資料で構成されたハイブリッドなアーカイブズです。アムルータによると、資料デジタル化が終了すれば、アクセス権を持つ従業員は自分のデスクトップからアーカイブズのデータベースにアクセスし、デジタル資料を利用できるようになる、ということです。


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■行事情報:中華人民共和国国家档案局主催/ICASBA後援 ビジネス・アーカイブズ・シンポジウム
◎テーマ:「アーカイブズが促進する企業イノベーションと成長」
     2018年5月16~17日
     中国銀行(中国・北京)

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◎中華人民共和国国家档案局主催/ICASBA後援 ビジネス・アーカイブズ・シンポジウム
テーマ:「アーカイブズが促進する企業イノベーションと成長」
主催:中華人民共和国国家档案局(SAAC)
後援:国際アーカイブズ評議会企業アーカイブズ部会(ICASBA)
日程:2018年5月16日(水)~17日(木)
会場:中国銀行
参加費:無料

中華人民共和国国家档案局(SAAC)がビジネス・アーカイブズに関する国際的会議を開催します。会議のテーマは「アーカイブズが促進する企業イノベーションと成長」です。日程は5月16-17日の二日間、会場は北京市内北京金融街に位置する中国四大商業銀行の一つ、中国銀行本店です。国際アーカイブズ評議会企業アーカイブズ部会(ICASBA)もその趣旨に賛同し後援する企画です。

SAACは中国における公的・私的アーカイブズ全般に関する政策や指針を策定するとともに、中国国内の各種アーカイブズ機関がその政策・指針を実行できるように、指導・支援を提供する政府機関の一つです。
http://www.saac.gov.cn/

日本語でSAACを紹介したものとして、下記の文献があります。
大澤武彦「中国国家档案局・中央档案館の最近の動向」
国立公文書館『アーカイブズ』第52号(2014年3月)所収(PDF)
http://www.archives.go.jp/publication/archives/wp-content/uploads/2015/03/acv_52_p42.pdf

現在SAACではプログラムの詳細を詰めている最中です。すでに決定しているプレゼンテーションに関しては、下記の情報をSAACより提供していただきました。ICASBA主催のビジネス・アーカイブズ国際会議は欧州・北米での開催が多く、日本からの参加はなかなか叶わないという声も聞きます。そのような方々には、ぜひ北京で開催される、今年5月のSAAC主催によるビジネス・アーカイブズ会議へのご参加をお勧めします。


【プログラム】(2月7日現在)

◆◆◆5月16日(水)◆◆◆
09:00~  オープニング・セレモニー

09:20~  プレゼンテーション・セッション1
・SAAC「中国のビジネス・アーカイブズ体制紹介」
・華為技術有限公司アーカイブズ・センター「アーカイブズ管理プラットフォームが品質向上を助ける」
・海外(中国外)参加者プレゼンテーション

13:30~  プレゼンテーション・セッション2
・比亜迪自動車販売株式会社アーカイブ管理センター「ビジネス・アーカイブズが意思決定を支える」
・中国銀行アーカイブズ管理室「アーカイブズが事業コスト削減を助ける」
・中国中化公司レコード・オフィス「下からの品質管理を強化する:アーカイブズへのアクセス・サービスの革新が販売を促進する」

16:00~  中国銀行アーカイブズ見学会
18:00~  国家档案局主催歓迎夕食会

◆◆◆5月17日(木)◆◆◆
09:00~  プレゼンテーション・セッション3
・東風汽車有限公司東風商用車公司レコード・オフィス「職業アーカイブズの編纂と研究が生産安全管理を促進する」
・招商局集団有限公司アーカイブズ「アーカイブズが仁和保险公司(1876年創業中国最初の保険会社)の業務再開を助ける」
・海外(中国外)参加者プレゼンテーション
・国家電網公司アーカイブズ「緊急事態への備えのためのビジネス・アーカイブズの新棚方法」

14:00~  中国第一歴史档案館、国家電網公司アーカイブズ見学会
18:00~  国家档案局主催夕食会


【問い合わせ】
会議参加その他本件に関するお問い合わせは下記まで。
本通信編集部
メールの件名に「SAAC/ICASBA北京会議」とご記入ください。


*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

[略称一覧]
ACA: Association of Canadian Archivists(カナダ・アーキビスト協会)
ARA: Archives and Records Association(アーカイブズとレコード協会)
ASA: Australian Society of Archivists(オーストラリア・アーキビスト協会)
BAC: Business Archives Council(ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BACS: Business Archives Council in Scotland
(スコットランド・ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BAS: Business Archives Section
(ビジネス・アーカイブズ部会:SAA内の部会)
CoSA:Council of State Archivists(米国・州文書館長評議会)
DCC: Digital Curation Center(英国デジタル・キュレーション・センター)
EDRMS:Electronic Document and Record Management System
(電子文書記録管理システム)
ERM:Electronic Record Management(電子記録管理)
ICA: International Council on Archives(国際文書館評議会)
NAGARA: National Association of Government Archives and Records
Administrators
(米国・全国政府アーカイブズ記録管理者協会)
NARA: National Archives and Records Administration
(米国 国立公文書館記録管理庁)
RIKAR: Research Institute of Korean Archives and Records
(韓国国家記録研究院)
RMS:Record Management System(記録管理システム)
SAA: Society of American Archivists(アメリカ・アーキビスト協会)
SBA: Section for Business Archives
(企業アーカイブズ部会、ICA内の部会)
TNA: The National Archives(英国国立公文書館)

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

☆★ 編集部より:あとがき、次号予告 ★☆

日程が迫っておりますが、当財団では「学術シンポジウム グローバル時代の「普遍」をめざして -「帰一協会」の挑戦と渋沢栄一」を3月6日に東京・六本木の国際文化会館岩崎小彌太ホールで開催します(18:30~21:00)。

「帰一協会」は、1912年に渋沢栄一、成瀬仁蔵、姉崎正治などの経済人・知識人が集い、普遍的な道徳を模索し、宗教も一つにまとめ、世界平和を実現させるという理想を掲げ、結成した団体です。本シンポジウムでは、帰一協会に集った知識人たちが、同時代をどのように変革しようと挑戦しようとしていたのかを明らかにすることを目指します。詳しくは下記ページをご覧ください。
https://www.shibusawa.or.jp/research/project/symposium/post2018_02_02_74000.html

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ICASBAの運営委員のひとり、コカ・コーラ社アーキビストのテッド・ライアンは、昨年9月に出版社の招きで来日しました。これを機に、コカ・コーラ・アーカイブズとテッドに関する報道をいくつか目にしました。こういったメディア報道は、多くの人々が「アーキビスト」という言葉に触れるよい機会になったでしょう。以下に、テッドを取り上げた記事を集めてみました。

「アーキビスト テッド・ライアン来日!」(日本コカ・コーラ 広報ブログ)
https://www.cocacola.co.jp/pacblog/_0

「企業アーカイブ広がる 製品・ポスター、画像ずらり 」(NIKKEI STYLE)
https://style.nikkei.com/article/DGXKZO22299080W7A011C1BE0P01

「(聞きたい)企業アーカイブの重要性とは 米コカ・コーラ本社アーキビスト、テッド・ライアン氏」(朝日新聞デジタル)
https://www.asahi.com/articles/DA3S13196424.html

「「世界一幸せ」なコカ・コーラ社のアーキビストという仕事 ブランドの歴史をマーケティングに活かすには」(MarkeZine)
https://markezine.jp/article/detail/27290


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ゴードレージ・アーカイブズのデジタル化の記事の中で、デジタル・アセット・マネジメント(DAM)・ソフトウェアの導入の経緯を取り上げました。DAMに関して調べてみたところ、下のような市場調査をネット上で見つけました。シングルユーザライセンスが4,500米ドル、法人ライセンスが13,500米ドルということで、残念ながら内容をご紹介することはかないませんが、非常に興味深いですね。

『世界のデジタル資産管理 (DAM) ソフトウェアの世界市場』(2017年10月刊)
Digital Asset Management (DAM) Software
https://www.gii.co.jp/report/go358204-digital-asset-management-dam-software.html


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次号は2018年3月中旬発行、社史関係記事、ビジネス・アーカイブズ論集紹介、『ジャーナル・オブ・デジタル・メディア・マネジメント』目次紹介、ゴードレージ・アーカイブズ主催「オーラル・ヒストリー・ワークショップ」報告、ムンバイ会議ソーシャルイベント報告等の予定です。どうぞお楽しみに。

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◆◇◆バックナンバーもご活用ください◆◇◆

https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/index.html

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ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信) No.74
2018年3月2日発行 (不定期発行)
【創刊日】2008年2月15日
【発行者】公益財団法人渋沢栄一記念財団事業部情報資源センター
【編集者】公益財団法人渋沢栄一記念財団事業部情報資源センター
      「ビジネス・アーカイブズ通信」編集部/
      株式会社アーカイブズ工房
【発行地】日本/東京都/北区
【ISSN】1884-2666
【E-Mail】
【サイト】https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/index.html

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