ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信)

第101号(2024年3月29日発行)

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☆      □■□ ビジネス・アーカイブズ通信 □■□

☆       No.101(2024年3月29日発行)

☆    発行:公益財団法人 渋沢栄一記念財団 情報資源センター

☆                        〔ISSN:1884-2666〕
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この通信では海外(主として英語圏)のビジネス・アーカイブズ(BA)に関する情報をお届けします。

海外BAに関わる国内関連情報も適宜掲載しております。

今号は文献情報1件、行事情報1件です。

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◆ 目次 ◆

[掲載事項の凡例とご注意]

■文献情報:「ダイバーシティとビジネスアーカイブズ:
       渋沢栄一関連会社にみる継続企業の未来のためのアーカイブズ」

■行事情報:ICA/SBA、ポーランド開発銀行(BGK)&コズミンスキー大学主催
ビジネス・アーカイブズ国際シンポジウム
◎テーマ:「ビジネス・アーカイブズとレジリエンス」
     (2024年9月22-24日、ポーランド・ワルシャワ)
     発表者募集(締め切り:2024年4月1日)

☆★ 編集部より:あとがき、次号予告 ★☆
NOVARE Archives(清水建設歴史資料館)

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[掲載事項の凡例]

・欧文の場合、日本語で読みやすいものになるように、タイトルははじめに日本語訳を、続いて原文を記します。
・人名や固有名詞の発音が不明の場合も日本語表記を添えました。便宜的なものですので、検索等を行う場合はかならず原文を用いてください。
・普通名詞として資料室や文書室、物理的な記録資料を表現する際は「アーカイブズ」を用います。固有名詞の場合はこの限りではありません。また物理的およびデジタル記録資料の蓄積や組織化に関しては「アーカイブ」「アーカイブ化」「アーカイビング」などの表現を用いることもあります。

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[ご注意]
・受信時にリンク先を示すURLが途中で改行されてしまう場合があります。通常のURLクリックで表示されない場合にはお手数ですがコピー&ペーストで一行にしたものをブラウザのアドレス・バーに挿入し、リンク先をご覧ください。

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■文献情報:「ダイバーシティとビジネスアーカイブズ:
       渋沢栄一関連会社にみる継続企業の未来のためのアーカイブズ」

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◎「ダイバーシティとビジネスアーカイブズ:渋沢栄一関連会社にみる継続企業の未来のためのアーカイブズ」
『青淵』No.899 2024年2月号
https://www.shibusawa.or.jp/center/newsletter/899.html

渋沢栄一記念財団の機関誌『青淵』ならびにウェブサイトに掲載した「情報資源センターだより」から「ダイバーシティとビジネスアーカイブズ:渋沢栄一関連会社にみる継続企業の未来のためのアーカイブズ」をご紹介します。この記事は、当センター企業史料プロジェクト担当が企画者として関わった、2023年11月9日(木)開催の企業史料協議会主催第12回ビジネスアーカイブズの日シンポジウム「ダイバーシティとビジネスアーカイブズ」の内容を短くまとめたものです。
https://www.baa.gr.jp/syousai.asp?id=731
https://www.baa.gr.jp/

企画趣旨の概要は次のとおりです。

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ここ10数年のビジネス・アーカイブズを振り返ってみると、「アーカイブズは今の企業経営にふさわしいレリバントなものである必要がある。アーキビストは、アーカイブズを経営にふさわしいものであり続けるようにする必要がある」という認識を多くの企業アーキビストが共有していると言えます。

企業が社会に対して責任を果たしうる、信頼できる存在であるためには、企業アーカイブズにも現代の課題に何らかの形で対応しうるキャパシティ、力量、適応力が必要です。今現在の経営の課題とは何か、と考えてみた場合、ダイバーシティを尊重した経営は間違いなくその課題の一つと言えます。経団連は2017年の5月に「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて」という提言を発表しています。経済産業省も2018年6月に「競争戦略としてのダイバーシティ経営:ダイバーシティ2.0のあり方に関する検討会」報告書を公表するとともに、「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」改訂版を公開しています。2023年7月には「ダイバーシティ・コンパス」といったダイバーシティ経営実践のための支援ツールの提供も始めています。

その背景には、グローバルでは20世紀後半以降進んできた雇用における機会均等政策の推進、経済のグローバル化による人材の多国籍化、M&Aの増加、またビジネスと人権への関心の高まりといったものがあるでしょう。2011年に国連が発表したビジネスと人権に関する指導原則」が企業の人権尊重、責任を重視・強調し、人権デュー・ディリジェンスの実行を推奨するなどしていることも無関係ではないと思います。日本、東アジアでは少子高齢社会がすでに到来しており、これへの対応が喫緊の課題であることは誰の目にも明らかです。

そうしたなかでICA/SBAのメンバーをはじめとする各国のビジネス・アーキビストは、ダイバーシティの尊重という経営課題に対して近年とくに力を入れて取り組んでいます。企業アーカイブズ活動が知られている欧米各社のウェブサイトを見てみると、アーカイブズが担当する歴史コンテンツのなかに、軒並みダイバーシティに関わるコンテンツが加わるようになってきています。IBM、HSBC、エボニーク・インダストリーズ、P&G、フォード自動車、ザ・マッカラン(ウイスキーのブランド)、ロシュなどの著名な企業アーカイブズでは、アーカイブズのなかに埋もれて会社の歴史のなかで語られてこなかった女性やマイノリティの姿を可視化する、そういったコンテンツをウェブサイトから発信しています。資料のコンテクストを示し、これまで語られてこなかったマイノリティや女性のストーリーを紡ぎ出すことによる新しい価値の創造、と言えるでしょう。

あるいは、ネイションワイド・ビルディング・ソサイエティというイギリスの金融機関の場合は、HSBCのベテランアーキビストをスカウトして2016年に社内アーカイブズ部門を立ち上げました。他社が行っているようなアドボカシー、アウトリーチ活動に使えるようなダイバーシティに関わる記録がなかなか見つからないという状況であったために、アーキビストは現在の従業員にオーラル・ヒストリーを行って、現在の社内のダイバーシティを記録としてまとめて、それを発信するというプロジェクトを行いました。

世界有数の一般消費材メーカーであるユニリーバは、非常に整備されたアーカイブズを持っています。こちらは他社とは異なる方法でダイバーシティ経営への貢献を目指しています。同社ではエクイティ(Equity、公平性)とダイバーシティ(Diversity、多様性)とインクルージョン(Inclusion、包括性)をセットにして「EDI」と呼び、これをサステナビリティの項目のなかに位置付けています。アーカイブズのなかに埋もれている特定のテーマに関わるデータやストーリー、例えばダイバーシティに関わるデータやストーリーを発見するには、非常に手間がかかります。時間とお金をかけてリサーチを行う必要があります。多忙な企業アーキビストは、膨大な記録のなかから適切なデータやストーリーを探すのに時間をかける余裕はなかなかありません。そこで数年前から、アーキビストたちは外部の学術研究者に、資料のなかに埋もれるEDIに関わるデータの発掘や解釈を委託し、その研究から生まれた知見を経営にフィードバックするというプログラム作りに取り組んでいます。

海外の企業アーカイブズ、企業アーキビストの取り組みからは、様々な機会を捉えて、常にアーカイブズ(部署と資料の両方)の価値を社内外で認識してもらい、その価値をさらに高める活動を継続的に展開する、そういうプロアクティブな姿勢が伝わってきます。また、それは企業活動に貢献する、ポジティブなインプットを経営に提供することを目指しています。

さらに、企業アーキビストはアーカイブズの中に埋もれている適切な情報を探し出し、コンテクストを示し、ストーリーを語ることによって、聞き手の側からのエンゲージメントを引き出そうとする取り組みも注目されるものです。エンゲージメントは "企業文化"の問題として、アーキビストが考えていくべき課題の一つです。

以上の点から、日本の企業アーカイブズとアーキビストは、ダイバーシティとインクルージョンという経営課題において何ができるのか、どのように考え、どう取り組んだら良いのかを検討する場として、本企画を提案した次第です。

★☆★...編集部より...★☆★

シンポジウムを終えてみると、渋沢栄一と関わりのある二つの会社がアーカイブズ資料を大切に継承してきたこと、それらの記録資料は、それぞれの会社のこれまでの歴史に関する豊かで多様な情報を包含していること、そして、アーカイブズ担当者・アーキビストによるアーカイブズ資料への理解・通暁が新たな価値を引き出す鍵であること、これらを感じ取ることができました。

資料を理解し、これに通暁すること。そこへの道のりは、地道な整理や登録作業といった裏方的な仕事の連続です。しかし、そのようにして築いた堅牢な土台によって、アーカイブズは、ダイバーシティに限らず、未知の経営課題に対応するための知的資産・知的財産としての活用が可能になるのです。

シンポジウムの記録は、2024年6月刊行予定の『企業と史料』第19集に収録予定です。

[関連ページ]
企業史料協議会 刊行物『企業と史料』ページ
https://www.baa.gr.jp/kankobutu.asp?NoteAID=31

日本経団連
「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて」 (2017-05-16)
https://www.keidanren.or.jp/policy/2017/039.html

経済産業省
「競争戦略としてのダイバーシティ経営:ダイバーシティ2.0のあり方に関する検討会」報告書(NDL WARP)
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/13022278/www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/20180608001.html
「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」改訂版
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/h30_guideline.pdf" target="_blank">https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/h30_guideline.pdf

IBMアーカイブズ(米国)IBM史の中のダイバーシティの可視化
https://www.ibm.com/impact/be-equal/timeline/
https://www.linkedin.com/posts/ibm_today-we-celebrate-the-remarkable-life-of-activity-7088189629870329856-zGoH/(LinkedIn)

HSBCグローバル・アーカイブズ(英国)HSBC史の中の女性の可視化
https://history.hsbc.com/exhibitions/breaking-barriers

エボニーク・アーカイブズ(ドイツ)エボニーク史の中の女性の可視化(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=OSUUqoI8eeM

ネイションワイド・アーカイブズ(英国)過去資料がないためオーラル・ヒストリーで今の多様性を記録する
https://see-me-nationwide.org.uk/

P&Gアーカイブズ(米国)P&G史の中のマイノリティの可視化
https://us.pg.com/pg-history/#people

フォード自動車アーカイブズ(米国)フォード史の中の女性の可視化
https://corporate.ford.com/articles/history/women-of-ford-part-1-1900s-1940s.html

マッカラン・アーカイブズ(英国)マッカラン史の中の女性の可視化
https://www.themacallan.com/en/the-spirit-of-1926

ロシュ歴史コレクション&アーカイブ(スイス)ロシュ史の中の女性の可視化
https://celebratelife.roche.com/explore/culture/alice-keller-leadership/


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■行事情報:ICA/SBA、ポーランド開発銀行(BGK)&コズミンスキー大学主催
ビジネス・アーカイブズ国際シンポジウム
◎テーマ:「ビジネス・アーカイブズとレジリエンス」
     (2024年9月22-24日、ポーランド・ワルシャワ)
     発表者募集(締め切り:2024年4月1日)

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◎ICA/SBA、ポーランド開発銀行(BGK)&コズミンスキー大学主催
 ビジネス・アーカイブズ国際シンポジウム
「ビジネス・アーカイブズとレジリエンス」Business archives & resilience
発表者の募集 Call for contributions
https://www.wirtschaftsarchive.de/site/assets/files/25378/ica_sba_2024_call_for_contributions.pdf
(PDF。募集要項)
https://www.wirtschaftsarchive.de/aktuelles/veranstaltungen/business-archives-resilience-ica-sba-2024-conference/
(ドイツ・ビジネス・アーキビスト協会へのリンク)

国際アーカイブズ評議会企業アーカイブズ部会(ICA/SBA)では2024年度の会合を、2024年9月22日~24日にポーランド・ワルシャワで開催します。ポーランド開発銀行(Bank Gospodarstwa Krajowego:BGK)、コズミンスキー大学との共催イベントです。

今年の会合のテーマは「ビジネス・アーカイブズとレジリエンス」で、現在発表者を募集中です。

【開催趣旨】

「レジリエンス(回復力)」とは、組織が逆境や混乱、不確実性に耐え、そこから回復し、適応し、持続可能性と成長を確保する能力のことです。ビジネス・アーカイブズは、組織のレジリエンスを育む上で重要な役割を果たし、企業が困難に立ち向かい、変化に適応することを可能にするものです。ビジネス・アーカイブズは、過去の記録を保存することで、過去の戦略、成功、失敗に関する貴重な洞察を提供します。この豊かなリポジトリ(保管庫)は、意思決定、リスク管理、戦略立案に役立ち、将来のトレンドを予測し、リスクを軽減し、チャンスをつかむための知識を企業に提供します。

このように、ビジネス・アーカイブズは歴史に関わる単なるリポジトリではなく、弾力的かつ適応力を持った企業文化を構築するための基盤なのです。進化し続けるビジネス環境の中で、この会議は、ビジネス・アーカイブズとレジリエンスの接点を掘り下げることを目的としています。

ポーランド開発銀行(Bank Gospodarstwa Krajowego:BGK)の100周年を祝い、その歴史がポーランド経済のレジリエンスに果たす役割を強調する一方で、ICA/SBAメンバーの成果を広く周知し、ビジネス・アーカイブズの戦略的重要性に対する認識をポーランドのビジネス界において高めることを目指します。

また、アーキビスト、博物館学芸員、マーケティング専門家、NGOなど多様な専門家グループ間のネットワーキングを促進することで、学際的な協力関係を促進することを目指します。この会議では、プレゼンテーションやワークショップを通じてベストプラクティスを紹介し、アーカイブズの管理やレジリエンス戦略について、地元企業がすぐに用いることが可能な洞察を提供します。さらに、ポーランドと中欧の特殊性と可能性を海外からの参加者に紹介し、この地域特有のビジネスとアーカイブズの状況について、より深い理解を促します。

この集まりは、歴史的な節目を祝うだけでなく、ビジネス・アーカイブズの豊かな遺産を活用し、将来の協力の道筋を描くものでもあります。」

【発表フォーマット】
今回のシンポジウムでは2つのタイプの発表を募集します。

(1)プレゼンテーション(15分)とパネルディスカッション
(2)ポーランドのアーキビスト、博物館学芸員、マーケティング専門家を対象とした、ビジネス・アーカイブズ分野のベストプラクティスや最新動向をテーマとする先端的なワークショップ(3時間)。

【トピック】
次の分野での発表を募集しています。

■ビジネス・アーカイブズ、レジリエンス、持続可能性:
 Business archives, resilience, and sustainability
過去の成功や失敗から学び、組織がレジリエンスを構築し、長期的な成功のために持続可能な実践を追求するための、重要な戦略的資源としてのアーカイブズを紹介します。

■ビジネス・アーカイブズ、ラグジュアリー、ヘリテージ・マーケティング:
 Business archives, luxury, and heritage marketing
高級ブランドにとって、豊かな物語が持つ可能性を紹介し、最高レベルの財やサービスの消費者を魅了する魅力的なマーケティング・ストーリーに、伝統や職人技を織り込むことを可能にします。

■ビジネス・アーカイブズ、ミュージアム、再生:
 Business archives, museums, and revitalizations
地域文化と経済の再生に重要な役割を果たすビジネス・アーカイブズ、ミュージアム、不動産デベロッパー、観光業者間のパートナーシップを紹介することにより、産業と企業に関する歴史的な影響力を示します。

■ビジネス・アーカイブズ、会社史、記念日:
 Business archives, corporate histories, and anniversaries
企業の記念日や歴史を祝うためにアーカイブズを活用することで、企業はその長寿と進化を強調することができ、ブランドのアイデンティティとステークホルダー間のロイヤルティを強化することができます。

■ビジネス・アーカイブズ、デジタル・トランスフォーメーション、AI:
 Business archives, digital transformation, and AI
ビジネス・アーカイブズとデジタル技術や人工知能の融合を明らかにすることで、歴史的記録へのアクセスや分析に革命をもたらし、戦略的洞察や意思決定を強化します。


■世界のビジネス・アーカイブズ:
 Business archives around the world
グローバルなビジネス環境の豊かな多様性を反映し、独自の文化史・経済史を保存することで、グローバル市場のダイナミクスや企業の遺産の理解に貢献します。

【応募方法】
メールにて、radoslaw.milczarski@bgk.pl

【応募締め切り】
2024年4月1日まで

【応募に必要な情報】
- 発表の種類を明記(15分間のプレゼンテーションまたは3時間のワークショップ)
- トピック(どの分野に該当するかを明記してください)
- 発表タイトル(短いタイトルを歓迎します)
- 発表要旨(250字以内)
- 発表者情報(発表者氏名、メールアドレス、所属、略歴)

【採否の通知】
実行委員会で選考の後、採否の通知は2024年5月初旬までに行います。渡航費、宿泊費は参加者の負担となります。

【問い合わせ先】
詳細およびご質問は、下記までお気軽にお問い合わせください。
Radosław Milczarski:radoslaw.milczarski@bgk.pl
Tomasz Olejniczak:tolejniczak@kozminski.edu.pl

★☆★...編集部より...★☆★

共催者であるポーランド開発銀行(BKG)は、1924年設立、本年2024年が創業100周年目にあたります。ポーランドの歴史とともに、同行も激しい変化を潜り抜けて今日に至っています。

1939年9月1日、ドイツのポーランド侵攻により第二次世界大戦が現実のものとなりました。同行は1939 年 9月17日から、一方では亡命中の銀行経営者により、もう一方ではドイツの管理下にある国内の銀行と、2つの方法で運営されました。

亡命中のBGK経営の一時的な本部は、同年9月末のワルシャワのドイツへの正式降伏後、パリ、そして短期間ですが、ブカレストに置かれました。中立国やドイツと交戦中の国々では、ドイツと同盟を結んでいる国とは異なり、BGKの亡命経営が認められていました。1940年11月4日、同行のブカレスト事務所はポーランド大使館とともにルーマニアの首都を離れ、イギリス委任統治領であったパレスチナ・テルアビブに移転し、これとともにBGK文書ファイルはトルコ・アンカラのポーランド大使館に預けられ、そこから南アフリカを経由して1943年にロンドンに到着しました。

また、同行の駐在員事務所は、米国、スイス・チューリッヒ、イラン・テヘランに開設されています。ドイツ軍のフランス侵攻後、BGK のパリ事務所は1940年6月11日に最も重要な書類とともにフランス・アンジェに避難し、そこからスペインとポルトガルを経由してロンドンに避難し、1940年8月に業務を再開しました(以上は同行ウェブサイトによる)。
https://www.bgk.pl/o-nas/historia/bank-gospodarstwa-krajowego-przed-1939-r/
https://www.bgk.pl/o-nas/historia/bgk-na-emigracji/

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2019年10月25~26日、ワルシャワで開催された「中東欧における経営史ワークショップ」は中東欧地域におけるビジネス・アーカイブズに関わる初の会合で、本通信では2020年5月29日発行の第86号でこれを紹介しております。この動きをさらに展開するためのイベントが2020年から2021年にかけて予定されていました。残念ながらこれらは新型コロナウイルス感染症の拡大など、地域状況の変化のため実現しませんでした。
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20200529.html#02

本年2024年9月22~24日にポーランド・ワルシャワで開催予定のICA/SBA国際シンポジウム「ビジネス・アーカイブズとレジリエンス」は、中東欧におけるビジネス・アーカイブズ振興の動きを再び後押しすること、進化し続けるグローバルな経営環境における世界各地のビジネス・アーカイブズの現在の取り組みに関する知識を分かち合うこと、そしてネットワーキングの場となることを目指しています。

発表者として、またオーディエンスとして、多くの方々の参加を期待しております。


[関連ページ]
コズミンスキー大学
https://www.kozminski.edu.pl/en

ポーランド開発銀行
https://www.en.bgk.pl/

同行沿革
https://www.en.bgk.pl/about-us/history/


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[略称一覧]
ACA: Association of Canadian Archivists(カナダ・アーキビスト協会)
ARA: Archives and Records Association(アーカイブズとレコード協会)
ASA: Australian Society of Archivists(オーストラリア・アーキビスト協会)
BAC: Business Archives Council(ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BACS: Business Archives Council in Scotland(スコットランド・ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BAS: Business Archives Section(ビジネス・アーカイブズ部会:SAA内の部会)
CoSA: Council of State Archivists(米国・州文書館長評議会)
DCC: Digital Curation Center(英国デジタル・キュレーション・センター)
EDRMS: Electronic Document and Record Management System(電子文書記録管理システム)
ERM: Electronic Record Management(電子記録管理)
ICA: International Council on Archives(国際文書館評議会)
NAGARA: National Association of Government Archives and Records Administrators(米国・全国政府アーカイブズ記録管理者協会)
NARA: National Archives and Records Administration(米国 国立公文書館記録管理庁)
RIKAR: Research Institute of Korean Archives and Records(韓国国家記録研究院)
RMS: Record Management System(記録管理システム)
SAA: Society of American Archivists(アメリカ・アーキビスト協会)
SBA: Section for Business Archives(企業アーカイブズ部会、ICA内の部会)
TNA: The National Archives(英国国立公文書館)


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☆★ 編集部より:あとがき、次号予告 ★☆

渋沢栄一がその経営に深く関わった清水建設の歴史資料展示施設「NOVARE Archives(清水建設歴史資料館)」がこのほど完成し、同社施設「温故創新の森 NOVAREノヴァーレ」の一部として、本年4月から社内研修やNOVARE来館者向け見学施設としての運用を開始するとのお知らせがリリースされています。
https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2024/2023065.html
https://www.shimz.co.jp/novare/archives/index.html

同施設の今後の情報発信に注目したいと思います。

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次号ではアンダース・ショーマン『歴史マーケティング:歴史を企業の戦略資産として用いる』(原題:History marketing : using history as a corporate strategic asset)ほかのご紹介を予定しています。2024年5月発行予定です。

どうぞお楽しみに。

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◆◇◆バックナンバーもご活用ください◆◇◆

https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/index.html

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ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信) No.101
2024年3月29日発行 (不定期発行)
【創刊日】2008年2月15日
【発行者】公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センター
【編集者】公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センター
      「ビジネス・アーカイブズ通信」編集部/
      株式会社アーカイブズ工房
【発行地】日本/東京都/北区
【ISSN】1884-2666
【E-Mail】
【サイト】https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/index.html

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