ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信)

第70号(2017年3月24日発行)

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
☆      □■□ ビジネス・アーカイブズ通信 □■□

☆       No.70 (2017年3月24日発行)

☆    発行:公益財団法人 渋沢栄一記念財団 情報資源センター

☆                        〔ISSN:1884-2666〕
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


この通信では海外(主として英語圏)のビジネス・アーカイブズ(BA)に関する情報をお届けします。

海外BAに関わる国内関連情報も適宜掲載しております。(今号は国内BA関連情報も掲載しております。)

今号は企業団体情報4件、文献情報2件、行事情報2件です。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――
◆ 目次 ◆

[掲載事項の凡例とご注意]

文献情報:「企業を変える、戦略を生む:ビジネス・アーカイブズとデジタル社会」

行事情報:デジタルアーカイブin岐阜 2017年2月11日 岐阜女子大学
◎デジタルアーカイブ・セッション「なぜ大量のレシピが集まってくれたのか」

行事情報:デンマーク・日本協会講演会
◎テーマ:「日本の企業アーカイブズ」
      2017年4月3日 マースク社(デンマーク・コペンハーゲン)

企業団体情報:コカ・コーラ・アーカイブズ

企業団体情報:デルタ航空デルタ・フライト・ミュージアム

企業団体情報:コンデナスト・パブリケーションのアーカイブズ利用

企業団体情報:ディズニー・アニメーション研究図書館

文献情報:ビジネス・アーカイブズ論文集 6
◎『インターナショナル・ビジネス・アーカイブズ・ハンドブック:企業の歴史的記録を理解し管理する』2017年

☆★ 編集部より:次号予告 ★☆

◎渋沢史料館企画展「渋沢栄一渡仏150年:渋沢栄一、パリ万国博覧会へ行く(第1期)」お知らせ他

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

[掲載事項の凡例]

・欧文の場合、日本語で読みやすいものになるように、タイトルははじめに日本語訳を、続いて原文を記します。
・人名や固有名詞の発音が不明の場合も日本語表記を添えました。便宜的なものですので、検索等を行う場合はかならず原文を用いてください。
・普通名詞として資料室や文書室、物理的な記録資料を表現する際は「アーカイブズ」を用います。固有名詞の場合はこの限りではありません。また物理的およびデジタル記録資料の蓄積や組織化に関しては「アーカイブ」「アーカイブ化」「アーカイビング」などの表現を用いることもあります。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

[ご注意]
・受信時にリンク先を示すURLが途中で改行されてしまう場合があります。通常のURLクリックで表示されない場合にはお手数ですがコピー&ペーストで一行にしたものをブラウザのアドレス・バーに挿入し、リンク先をご覧ください。


===================================

■文献情報:「企業を変える、戦略を生む:ビジネス・アーカイブズとデジタル社会」

===================================
◎「企業を変える、戦略を生む:ビジネス・アーカイブズとデジタル社会」
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc011_kigyo_wo_kaeru.html

去る2月11日、岐阜市で開催された「デジタルアーカイブin岐阜」で講演する機会がありました(NPO法人日本デジタル・アーキビスト資格認定機構主催、岐阜女子大学共催)。当日のプログラムは下記URLをご覧ください。
http://www.gijodai.ac.jp/dagifu/index.html
http://www.gijodai.ac.jp/dagifu/Session.html

当編集部は「デジタルアーカイブ」のセッションの最初の発表として「企業を変える戦略を生む:ビジネスアーカイブズとデジタル社会」というタイトルでお話させていただきました。今号では、当日のパワーポイント講演資料の内容をもとに論旨はそのまま新たに書き起こした講演内容をご紹介します。冒頭の講師自己紹介の部分、その他冗長な部分は省略しました。また加筆修正した部分があります。


[目次]

・企業アーカイブズ(BA)とは?
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc011_kigyo_wo_kaeru.html#01

・今、なぜ企業アーカイブズ(BA)か?
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc011_kigyo_wo_kaeru.html#02

・デジタル社会におけるBA事例
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc011_kigyo_wo_kaeru.html#03

・ビジネス・アーカイブズとデジタルアーカイブ:「道徳経済合一説」との関係
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc011_kigyo_wo_kaeru.html#04


★☆★...編集部より...★☆★

デジタルアーカイブに関わる教育に約20年前から取り組んでいる岐阜女子大学で開催された「デジタルアーカイブin岐阜」で講演する機会がありました。講演では最初に花王株式会社の120年史『花王120年』と株式会社帝国データバンクの100年史『情報の世紀 : 帝国データバンク創業百年史』を取り上げて、「意思決定(決断)の記録/資料」、「事実を証明するエビデンス」、「企業文化を伝達するメディア」というビジネス・アーカイブズの三つの要素(側面)を考察しました。次に過去41年間の経済紙の記事データベースを利用し、バブル経済崩壊後のビジネス社会において、「アカウンタビリティ/説明責任」「コンプライアンス/法令順守」「ガバナンス/企業統治」が求められるようになったことを確認しました。そして、デジタル社会がビジネス・アーカイブズ、さらには企業経営にどのような可能性をもたらすのか、またそれはなぜ必要なのかについてお話しした後、渋沢栄一の「道徳経済合一説」がデジタル社会とどのような関係にあるのかを最後に考察しています。栄一の哲学を実践するために、デジタルはアナログ時代にくらべより可能性を持つだろう、と結びました。


===================================

■行事情報:デジタルアーカイブin岐阜 2017年2月11日 岐阜女子大学
◎デジタルアーカイブ・セッション「なぜ大量のレシピが集まってくれたのか」

===================================
◎デジタルアーカイブ・セッション「なぜ大量のレシピが集まってくれたのか」
講演者:伊尾木将之氏(クックパッド株式会社研究開発部)

当編集部と同じセッションでご一緒したクックパッド株式会社研究開発部の伊尾木将之氏の講演は、企業理念とその実現という面でとても興味深い内容でした。

★クックパッドと企業理念★

クックパッドのレシピが難民問題にも関わりがある、というお話から講演はスタートしました。"難民"というと食べるものに事欠いているのでは、というイメージがあるかもしれません。しかし、パレスチナ難民が生活する中東の地域では、食べるものの不足よりは、偏った食生活から起こる生活習慣病が問題となっているそうです。アラビア語版のクックパッドでは生活習慣病予防に役立つようなレシピも投稿されており、これが中東地域の難民の方々にも利用されている、というお話でした。

料理レシピの投稿・検索サービス「クックパッド」を運営するクックパッド株式会社 (英文社名 : Cookpad Inc.)の創業は1997年に遡ります(神奈川県藤沢市に前身会社設立)。国内外に子会社を持つグローバルなIT企業です。
https://info.cookpad.com/corporate/about

現在17の言語でサービスを提供しており、利用者は国外が3,500万人超、国内が6,300万人超にのぼります(2016年12月時点)。

20年間にわたり発展を続けてきたクックパッド株式会社の企業理念は「毎日の料理を楽しみにする」英語では Make everyday cooking fun! です。伊尾木さんのお話では「料理を通じて世界をよりよいものにしたい」という企業のミッションも紹介されました。


★レシピが集まる仕組み★

講演では、「レシピが集まる仕組み」として以下の3つの点が紹介されました。

(1)レシピ投稿のハードルを下げる。
そのために投稿用のフォーマットの作り方、とくに文字数(タイトルは20文字、手順は60文字)にこだわる、オリジナルなレシピであることを確認するために「このレシピの生い立ち」を記入してもらう、など。

(2)投稿者にポジティブなフィードバックを送る。
これは2006年に誕生した「つくれぽ(みんなのつくりましたフォトレポートの略)」機能に表れています。「つくれぽ」はレシピを参考に調理した人が、レシピ作者さんに対して感想を送る機能です。フォーマットは写真が必須(実際に作ったことを証明する)で、文字数は32字に制限しており、シンプルに「ありがとう」といったようなフィードバックを行うようなつくりになっています。

(3)安心して楽しめるコミュニティを維持する
レシピや「つくれぽ」は、書き間違いはないか、いたずら投稿ではないか、など投稿サポートチームがすべて確認しているということです。伊尾木さんの言葉によれば「ユーザーの人生に寄り添う」のが投稿サポートチームの仕事、ということです。その際、レシピの良し悪しは判定しない、あくまで安心して楽しめるコミュニティを維持することが重要とのことでした。ユーザーの多くは「家族に喜んでもらいたい」といった気持ちで料理を作っており、レシピの利用もそのためです。

3つの仕組みを通じる考え方は「ユーザーファースト」ということです。例えば、レシピ作者さんを大切にする取り組みとして、

・レシピが二次利用される場合には、レシピ作者さんに連絡する。
・レシピが表示される時には作者名を出す。

こういったことを行っているそうです。


★☆★...編集部より...★☆★

クックパッドは一般にはなんとなくお料理関係の会社と思われているかもしれませんが、膨大な投稿・検索データを集積し、それをビジネスその他に活かすテクノロジーカンパニーです。レシピ投稿・検索によって集積されたデータは、食品製造業・流通業・小売業などに提供することで、生活者のニーズを反映した売場作りや商品開発をサポートしています。法人向けの「たべみる」のサービスがこれです。
https://info.tabemiru.com/

クックパッドが集積したデータは学術機関向けに無償で提供することで、料理に関する研究を促進しています。
https://cookpad.com/terms/cookpad_data/academy

開発者のブログもあります。
http://techlife.cookpad.com/

上でご紹介したように、クックパッドの事業は、毎日の生活に欠かせない料理の作り手を応援するビジネスと言えるでしょう。「毎日の料理を楽しみにする」という企業理念がそのまま事業内容に直結していますね。

最後にアーカイブズ学の観点からクックパッドのレシピの意味を考えてみたいと思います。クックパッドは果たしてデジタルアーカイブでしょうか?これらはクックパッド株式会社という組織の業務の過程で発生もしくは収受したという意味で、デジタルな企業記録の一部ととらえられ、これらを長期的に蓄積していくことはデジタルなアーカイブとみることができるでしょう。


===================================

■行事情報:デンマーク・日本協会講演会
◎テーマ:「日本の企業アーカイブズ」
      2017年4月3日 マースク社(デンマーク・コペンハーゲン)

===================================
◎デンマーク・日本協会講演会「日本の企業アーカイブズ」
Denmark-Japan Society (Dansk-Japansk Selskab) Lecture,
"Corporate Archives in Japan"

http://www.dansk-japanskselskab.dk/aktiviteter.html

今年は日本とデンマークが修好通商航海条約を締結して150年にあたります。これを記念して、両国では一年を通じて官民さまざまなレベルでのイベントが開催される予定です。本通信編集部では、コペンハーゲンに本部のあるデンマーク・日本協会が主催する講演会にて、日本の企業アーカイブズに関する講演を行う予定です。

デンマーク・日本協会 Dansk-Japansk Selskab は1958年に設立されました。マルグレーテ女王陛下の従姉にあたるエリザベス妃が後援者です。
http://www.dansk-japanskselskab.dk/

★デンマーク・日本協会主催 日・デンマーク修好通商航海条約締結150周年記念講演会
http://www.dansk-japanskselskab.dk/aktiviteter.html
テーマ:日本の企業アーカイブズ Corporate Archives in Japan
講師:公益財団法人渋沢栄一記念財団企業史料プロジェクト 松崎裕子
日時:2017年4月3日 17時~18時(開場16時30分)
会場:マースク社(コペンハーゲン市内)  A.P. Moller - Maersk, Esplanaden 50, Copenhagen K
言語:英語

★☆★...関連イベント...★☆★

今秋には日本・デンマーク外交関係樹立150周年を記念する展覧会が東京竹橋の国立公文書館で開催される予定です。

150年前に締結された条約原本のうち、日本側のものは関東大震災時に焼失してしまいました。この度、外交関係樹立150年を記念し、最新のテクノロジーを用いて日本企業(大日本印刷)がデンマーク側に残っている原本から複製を作成しました。本年2月7日、東京竹橋の国立公文書館でデンマークのメテ・ボック文化大臣から日本側への贈呈式が行われました。今秋開催予定の展示にこの精巧な複製も展示予定のようです。

https://twitter.com/jpnatarchives/status/828891195082416128
https://twitter.com/jpnatarchives/status/828892320649060353
https://twitter.com/jpnatarchives/status/828893626893746176
https://twitter.com/danishembtokyo/status/828877183582081024
https://twitter.com/jpnatarchives/status/822277524503875586
https://twitter.com/konotarogomame/status/828853073997029378

[関連ページ]
外務省 デンマーク王国のページ
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/denmark/

「日デンマーク外交関係樹立150周年推進委員会」および「日デンマーク外交関係樹立150周年事務局」の設置(2016年12月26日)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_004110.html

「日デンマーク外交関係樹立150周年」記念切手の発行(2017年3月10日)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/erp/we/dk/page25_000727.html

皇太子殿下の「日デンマーク外交関係樹立150周年」日本側名誉総裁御就任(2016年12月16日)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_004071.html


===================================

■企業団体情報:コカ・コーラ・アーカイブズ

===================================
◎テッド・ライアン「なぜコカ・コーラ・アーカイブズは6,000以上のアナログテープをデジタル化しているのか」
Ted Ryan, Why the Coca-Cola Archives is digitizing more than 6,000 analog tapes
Jan 19, 2017
Coca-Cola Journey
http://www.coca-colacompany.com/stories/why-the-coca-cola-archives-is-digitizing-more-than-6-000-analog-

コカ・コーラ・アーカイブズのウェブサイト、「コカ・コーラ・ジャーニー」に今年1月19日に掲載された記事を紹介します。

コカ・コーラ・アーカイブズでは複数年にわたるプロジェクトとして6,000本以上のビデオテープのデジタル化に取り組んでいます(アーカイブズが所蔵するビデオテープ数は約10,000本)。ビデオテープはテレビ・コマーシャル、ニュース報道、販売会議、経営幹部インタビュー、1996年のアトランタ・オリンピック時の聖火リレーなど多様なコンテンツを含んでおり、これらすべてのビデオテープはコカ・コーラ社のヘリテッジに関する物語の重要な部分なのです。

コカ・コーラのアーキビストでヘリテッジ・コミュニケーション・ディレクターを務めるテッド・ライアンは、ビデオテープは保存が最も難しい媒体であると語っています。保存のための唯一の方法は、媒体の性質上マイグレーションしかありません。ただし、多様なフォーマットを扱わねばならず、再生装置自体の入手が困難になりつつあるなど、マイグレーションも一筋縄ではいきません。同アーカイブズではCrawford Media Servicesという企業をパートナーに選んで、このデジタル化に取り組んでいます。

〈テッド・ライアン他のインタビュー動画〉
https://www.youtube.com/watch?v=sFVcl8PGGE8


===================================

■企業団体情報:デルタ航空デルタ・フライト・ミュージアム

===================================
◎「デルタ・コレクション、オンライン公開しました」
Delta Collections now online
http://www.deltamuseum.org/about-us/blog/from-the-hangars/2017/01/09/new!-delta-collections-now-online

デルタ航空デルタ・フライト・ミュージアムは同社の本拠地米国アトランタ市内にあります。同ミュージアムでは所蔵資料データベース(目録=メタデータと画像)の一部オンライン公開を今年1月に開始しました。最初は400件超のデータを公開、今後も公開件数を毎週増やしていくということです。
http://www.deltamuseum.org/about-us/blog/from-the-hangars/2017/01/09/new!-delta-collections-now-online

デルタ・フライト・ミュージアムは1995年にオープン、最近リノベーションが完了し、新しくなりました。64,000平方メートルの広さの館内は、デルタ航空とそこで働く人々の歴史を広く紹介するという役割を担っています。博物館自体は米国歳入庁の規定501(c)(3)による非営利団体です。
http://www.deltamuseum.org/about-us

2011年には米国航空宇宙工学連盟(American Institute of Aeronautics and Astronautics)の歴史的航空サイトにも指定されています。
http://www.deltamuseum.org/docs/site/brochure/headquarters_booklet

■オンライン・コレクション・データベースのページ
http://delta.pastperfectonline.com/

■公開対象
公開対象は、寄贈されたもの、その他ミュージアムが収集したものに限られます。目録(メタデータ)のCredit line項目に寄贈者名が記載されています。会社の組織アーカイブズの一部であるコーポレート・コレクションはオンライン公開の対象からは除外されています。
http://www.deltamuseum.org/about-us/blog/from-the-hangars/2017/01/09/new!-delta-collections-now-online

■検索メニュー
〈キーワード検索〉
http://delta.pastperfectonline.com/search

〈高度な検索〉
http://delta.pastperfectonline.com/advancedsearch

〈ランダム・イメージ(画像のサムネイル表示)〉
http://delta.pastperfectonline.com/randomimages

■検索事例
〈King〉をキーワードで検索すると(2017年3月19日現在)3件のデータがヒットします。そのうちの1件は、マーチン・ルーサー・キング博士がデルタ航空に搭乗した際のスナップショット。
http://delta.pastperfectonline.com/photo/CE7BE7F6-F1B4-4772-8883-996847871045

〈このアイテムの公開されているメタデータ〉
タイトル Title
日付 Date
コレクション名 Collection
物品名称 Object Name
目録番号 Catalog Number
説明 Description
撮影者 Photographer
出所 Provenance
人 People
検索語 Search Terms
主題 Subjects
クレジットライン Credit line
関連 


===================================

■企業団体情報:コンデナスト・パブリケーションのアーカイブズ利用

===================================
◎ローラ・M・ホルソン「売り出し中:コンデナストの宝」
Laura M. Holson, For sale: Conde Nast Treasures
January 4, 2017
The New York Times
https://www.nytimes.com/2017/01/04/fashion/conde-nast-magazine-archives-photographs-sale.html

「ニューヨークタイムズ」サイトに本年1月4日に掲載された出版社コンデナストのアーカイブズに関する記事です。コンデナストは「ヴァニティ・フェア」や「ヴォーグ」「ニューヨーカー」「ワイヤード」を発行する出版企業です。アーカイブズはニューヨーク・マンハッタンの本社からそれほど遠くないビルの15階にあります。100年以上の歴史を持つ雑誌にかかわる資料が所蔵されており、昨年8月にアーカイブズの写真関係ディレクターに任命されたアイヴァン・ショー(前「ヴォーグ」誌写真担当役員)の言葉を借りると「ここはファッションの歴史そのもの」です。

ショーはアーカイブズ関連グッズ販売チームの一員でもあります。つい最近までアーカイブズにとっての優先順位の第一は保存でしたが、現在は販売との連携を重視しています。というのは、紙媒体の雑誌広告収入が減収し続ける中、コンデナストをはじめとするメディア・カンパニーは新しい収入源を求めており、この点でアーカイブズ資料が活用できるからです。そのため、販売チームの現在のメインの仕事は、オンラインストアの準備です。現在は二つの展示と書籍刊行プロジェクトも進めています。

★☆★...編集部より...★☆★

アーカイブズ資料を利用した新しいビジネスモデルの構築が近年増えてきていると思います。過去のコンテンツをデジタル化してこれをDAM(デジタル・アセット・マネジメント)システムに取り込み、メタデータ等を整備し、迅速・効率的な再利用を目指すものです。コンデナストのDAMに関する記事情報を本通信第61号(2015年12月2日発行)に掲載しています。
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20151202.html#02


===================================

■企業団体情報:ディズニー・アニメーション研究図書館

===================================
◎エイミー・ラトクリフ「ディズニー・アニメーション研究図書館を訪問するとこんな感じです」
Amy Ratcliffe, Here's what it's like to visit the Desney Animation Research Library
Februrary 7,2017
Nerdist
http://nerdist.com/heres-what-its-like-to-visit-the-disney-animation-research-library/

1940年2月7日に公開されたディズニー映画『ピノキオ』を記念して、今年の1月31日、報道関係者にディズニー・アニメーション研究図書館(ARL)が公開されました。米国のエンターテインメント関連情報サイトNerdistに今年2月7日に掲載されたARLに関する記事をご紹介します。

ロサンゼルスにあるディズニー・スタジオの近くのビルの中にあるARLはディズニーのアニメーションにかかわる記録資料を保存することを目的とする施設です。ドローイング、原案図、セル、背景画や人形劇で利用された人形など6,500万点を所蔵します。1940年ごろは、映画が完成すると作成・利用したアイテムは捨ててしまうのが一般的でした。ところがウォルト・ディズニーは捨てずにこれをアニメのクリエーターやアニメ史の研究者が利用できるようにしたわけです。施設内は温度調節など保存環境を適切に保っているということです。

この図書館は企業内での利用や専門家への利用提供を第一のミッションとするため、一般の人々は利用することができません。それにかわって、資料のデジタル化を積極的に進めており、7年間で100万点をデジタル化しました。

★☆★...編集部より...★☆★

記事の中でARLの研究部門のマネジャーFox CarneyさんによるARLを紹介するYouTube動画が紹介されています。ここで扱っている資料はすべてアーカイブズ資料で、アーキビストがさまざまな作業を行っています。設定から字幕>英語(自動生成)を選択すると聞き取りが容易になるでしょう。
https://www.youtube.com/watch?v=MQoGpnLB6jg


===================================

■文献情報:ビジネス・アーカイブズ論文集 6

===================================
◎『インターナショナル・ビジネス・アーカイブズ・ハンドブック:企業の歴史的記録を理解し管理する』
The international business archives handbook: understanding and managing the historical records of business
https://www.routledge.com/p/book/9780754646631

イギリスの企業アーキビストが中心となって執筆・編集が進められていたビジネス・アーカイブズに関するハンドブックが来月刊行されます。本書には国際アーカイブズ評議会企業アーカイブズ部会(ICASBA)メンバーに加え、日本の大学文書館関係者や経営史学者も編集・査読に協力しています。英米以外の地域の企業とそのアーカイブズにも目配りした内容となっています。詳しい内容は刊行後改めてご紹介する予定です。今号では版元が公開している書誌・目次情報をご案内します。

[書誌情報]
◆タイトル:
インターナショナル・ビジネス・アーカイブズ・ハンドブック:企業の歴史的記録を理解し管理する
The international business archives handbook: understanding and managing the historical records of business

◆編者:アリソン・タートン Alison Turton

◆編者について:アリソン・タートンはロイヤル・バンク・オブ・スコットランド銀行アーカイブズ長を28年間務めてきた。彼女が1981年に編者として出版した 'Managing Business Archives' はビジネス・アーカイブズ分野における主要なテキストブックである。
https://www.routledge.com/p/book/9780754646631#authorbio

◆出版社:Routledge

◆ISBN:9780754646631

◆ページ数:462

◆価格:定価165ポンド、割引価格132ポンド(決済時に FLR40 というコードを入力してください)

[目次情報]
https://www.routledge.com/The-International-Business-Archives-Handbook-Understanding-and-managing/Turton/p/book/9780754646631#toc

●編者序 Editor's preface

●第1部:コンテクストの中のビジネス・アーカイブズ
Part I: Business archives in context

第1章 ビジネス・アーカイブズ入門 / ケイティ・ローガン
1. An introduction to business archives by Katey Logan

第2章 国際ビジネスの発展 / ロイ・エドワーズ, ケビン・テネント
2. The development of international business by Roy Edwards and Kevin
Tennent

第3章 オフィス・テクノロジーの変化 / ジョン・オーベル
3. Changes in office technology by John Orbell

●第2部:ビジネス・レコードの特質
Part II: The nature of business records

第4章 中核的なビジネス・レコードを理解する / マイケル・モス
4. Understanding core business records by Michael Moss

第5章 業界特有のビジネス・レコードを理解する / レズリー・リッチモンド
5. Understanding industry-specific business records by Lesley Richmond

●第3部:ビジネス・アーカイブズを管理する
Part III: Managing business archives

第6章 組織と目的 / ジャネット・ストリックランド
6. Organisation and objectives by Jeannette Strickland

第7章 収集・評価選別・編成・記述 / リチャード・ウィルトゥシャー
7. Acquisition, appraisal, arrangement and description by Richard Wiltshire

第8章 保存 / アリソン・タートン
8. Preservation by Alison Turton

第9章 アクセス / アリソン・タートン
9. Access by Alison Turton

第10章 デジタル・ビジネス・アーカイブズ / ウィリアム・キルブライド,
ジェイムズ・モートロック, ティナ・ステイプルズ
10. Digital business archives by William Kilbride, James Mortlock and Tina Staples

第11章 リスクを管理する / セラ・キンゼイ
11. Managing risk by Sara Kinsey

●第4部:ビジネス・アーカイブズを利用する
Part IV: Using business archives

第12章 アドボカシー(理解増進のための活動)、アウトリーチと企業アーキビスト / ポール・C・ラーサウィッツ
12. Advocacy, outreach and the corporate archivist by Paul C. Lasewicz

第13章 経営史学 / レズリー・ハンナ
13. The business history discipline by Leslie Hannah

●索引
Index


*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

[略称一覧]
ACA: Association of Canadian Archivists(カナダ・アーキビスト協会)
ARA: Archives and Records Association(アーカイブズとレコード協会)
ARC: ARC magazine: archives - records management - conservation
(SoAが発行する月刊ニュースレター)
ASA: Australian Society of Archivists(オーストラリア・アーキビスト協会)
BAC: Business Archives Council(ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BACS: Business Archives Council in Scotland
(スコットランド・ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BAS: Business Archives Section
(ビジネス・アーカイブズ部会:SAA内の部会)
CITRA: International Conference of the Round Table on Archives
(アーカイブズに関する国際円卓会議:ICAの年次会議)
CoSA:Council of State Archivists(米国・州文書館長評議会)
DCC: Digital Curation Center(英国デジタル・キュレーション・センター)
EDRMS:Electronic Document and Record Management System
(電子文書記録管理システム)
ERM:Electronic Record Management(電子記録管理)
ICA: International Council on Archives(国際文書館評議会)
LSE: London School of Economics and Political Science
(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)
MLA: Museums, Libraries and Archives Council
(英国 博物館、図書館、アーカイブズ評議会)
NAGARA: National Association of Government Archives and Records
Administrators
(米国・全国政府アーカイブズ記録管理者協会)
NARA: National Archives and Records Administration
(米国 国立公文書館記録管理庁)
RIKAR: Research Institute of Korean Archives and Records
(韓国国家記録研究院)
RMS:Record Management System(記録管理システム)
SAA: Society of American Archivists(米国アーキビスト協会)
SBA: Section for Business Archives
(企業アーカイブズ部会、ICA内の部会)
SoA: Society of Archivists(イギリス・アーキビスト協会)
TNA: The National Archives(英国国立公文書館)

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

☆★ 編集部より:あとがき、次号予告 ★☆

4月5~6日にスウェーデン・ストックホルムで開催予定のICA/SBA主催ビジネス・アーカイブズ国際シンポジウム「ビジネス・アーカイブズの未来の役割」の基調講演者が発表されました。ウィキメディア財団事務局長のキャサリン・マーハーさんです。講演タイトルは次の通りです。

"事実に対する抵抗が高まる世界における透明性とアーカイブズの役割"
"Transparency in a fact-resistant world: and the role of archives"

またプログラムが一部変更になっております。詳細は下記にてご確認ください。

一般の参加申し込みは締め切りました。残席はSBAメンバーのみ申し込み可能です。
http://naringslivshistoria.se/en/cfn-news/future-role-business-archives/

☆~~~☆~~~☆~~~☆~~~☆~~~☆~~~☆

当財団が運営する渋沢史料館では企画展「渋沢栄一渡仏150年:渋沢栄一、パリ万国博覧会へ行く(第1期)」が先週土曜日(3月18日)開幕しました。

1867年(慶応3)、徳川昭武がパリ万博へ参列するに際し、渋沢栄一は随員として渡仏しました。この時に栄一は初めて西欧近代社会を体験し、後の活動に影響を与えたと言われます。2017年は、栄一が渡仏して150年という節目にあたります。この企画展では、パリから日本にいる妻や家族に宛てた手紙、日記など様々な資料から栄一の欧州体験をたどります。また、栄一がパリから徳川慶喜に宛てた書簡草稿、パリから持ち帰った書類など、初公開となる資料も展示します。栄一にとって慶応3年の渡仏とは、どのような意味を持ったのかを、あらためて考える機会となれば幸いです。

第1期の会期は本年6月25日(日)までです。詳しくは下記URLをご参照ください。
https://www.shibusawa.or.jp/museum/special/2016/kikaku2016_03.html

☆~~~☆~~~☆~~~☆~~~☆~~~☆~~~☆

次号は2017年4月下旬発行予定です。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――
◆◇◆バックナンバーもご活用ください◆◇◆

https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/index.html

***********************************

ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信) No.70
2017年3月24日発行 (不定期発行)
【創刊日】2008年2月15日
【発行者】公益財団法人渋沢栄一記念財団事業部情報資源センター
【編集者】公益財団法人渋沢栄一記念財団事業部情報資源センター
      「ビジネス・アーカイブズ通信」編集部/
      株式会社アーカイブズ工房
【発行地】日本/東京都/北区
【ISSN】1884-2666
【E-Mail】
【サイト】https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/index.html

***********************************

一覧へ戻る