ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信)

第46号(2013年7月2日発行)

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☆      □■□ ビジネス・アーカイブズ通信 □■□

☆       No.46 (2013年7月2日発行)

☆ 発行:公益財団法人 渋沢栄一記念財団 実業史研究情報センター

☆                        〔ISSN:1884-2666〕
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この通信では海外(主として英語圏)のビジネス・アーカイブズ(BA)に関す
る情報をお届けします。

海外BAに関わる国内関連情報も適宜掲載しております。

今号は行事情報1件です。

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◆ 目次 ◆

[掲載事項の凡例とご注意]

■行事情報:国際アーカイブズ評議会(ICA)企業労働アーカイブズ部会(SBL)
  シンポジウム
  ◎テーマ:「危機、信頼、そして会社史」

☆★ 編集部より:次号予告 ★☆

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[掲載事項の凡例]

・欧文の場合、日本語で読みやすいものになるように、タイトルははじめに日本語訳を、続いて原文を記します。
・人名や固有名詞の発音が不明の場合も日本語表記を添えました。便宜的なものですので、検索等を行う場合はかならず原文を用いてください。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

[ご注意]
・受信時にリンク先を示すURLが途中で改行されてしまう場合があります。通常のURLクリックで表示されない場合にはお手数ですがコピー&ペーストで一行にしたものをブラウザのアドレス・バーに挿入し、リンク先をご覧ください。

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■行事情報:国際アーカイブズ評議会(ICA)企業労働アーカイブズ部会(SBL)
シンポジウム

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  ◎テーマ:「危機、信頼、そして会社史」
       2013年4月14〜16日
       エフ・ホフマン・ラ・ロシュ社 バーゼル(スイス)

http://www.ica.org/13958/news-events/international-seminar-crises-credibility-and-corporate-history-tackling-the-archives-conflict-between-scientific-history-and-marketing-basel-switzerland-1416-april-2013.html

http://www.ica.org/download.php?id=2732

本通信第43号(2013年1月23日発行)
http://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20130123.html
でお伝えした上記シンポジウムが終了しました。

参加者はヨーロッパ(スイス、ドイツ、イギリス、ノルウェー、アイルランド、イタリア、スウェーデン、デンマーク、ラトビア、フランス、ベルギー他)を中心に、米国、インド、中国、日本が加わり、100名超の規模のシンポジウムとなりました。

SBLと共同で主催者となり、会場を提供してくれたロシュ社歴史アーカイブズ部門では、現在会議録を編集中です。会議録には発表全文も収録される予定です。

今号では当日配布されたプログラム最終版を基にしつつ、講演のタイトルとその趣旨、関連情報をお届けします。

◇◇§4月15日(月)午前§◇◇

会場:ロシュ社カンファレンスセンター(バーゼル)

■ 開会あいさつ Welcome and introduction

ブルース・スミス(SBL部会長)&アレクサンダー・L・ビエリ(ロシュ社キュレーター)
Bruce Smith and Alexander L. Bieri

◆◆第1セッション:会社史叙述における左右の両極端を目立たせる◆◆
Marking out the extremes in corporate history

■ジョナサン・スティーブン(ザ・コーポレート・ストーリー社)
  Jonathan Steffen, The Corporate Story
  「何を選ぶかはあなた次第です。 あるいは、企業はわたしたちに一体何を教えてくれたのか?」
  Stick or twist? Or: what has the company ever taught us?

□□概要□□
ザ・コーポレート・ストーリー社は「あなたの物語(ストーリー)をあなたのために役立たせる」Making your story work for youというモットーで、企業広報、会社史執筆、マーケティング等の分野でコンサルタント、サポート業務を行っている英国の会社です。同社のジョナサン・スティーブン代表は、「4人に1人の子供が栄養失調、14億人が肥満、そして破壊的な新技術によって地球の表面から古い産業が消し去られつつある世界の中で、会社史はどのような位置づけを与えられているのか、それを検証したい」として、今日、会社の歴史を叙述するということに対して次のような問いが投げかけられると語ります。

「会社史とは何か?」
「栄誉の殿堂か、それとも恐怖の部屋か?」
「胸に輝く勲章か、それとも一生付いてまわる過去の罪の烙印か?」
「会社史をどのように考えるにせよ、企業は実際にはそれとどう向き合うべきなのか?」

「あるひとつの企業の歴史から、一般の人々も何かを学ぶことを期待してもよいものだろうか?」
「会社史というものは、企業の単なるショーウィンドウの飾りつけにすぎないのか、それともコマーシャルな組織であっても組織がその過去を物語るということの中には、信頼できる、倫理に即した目的意識が存在しうるのか?」

「歴史叙述自体の目的とは何か?」
「ビクトリア朝の隆盛期の資本主義から、バーチャルな会社、グローバル・ブランド、消費者活動といったものが拡がる今日の世界に至る過程での、企業の目的の変化とは?」

「誰が会社の歴史を所有するのか、誰がそれを語るべきなのか?」
「歴史とは勝者によって語られるものと言われているが、この戦いでの勝者は一体誰なのか?どのような戦いが実際には戦われているのか?」

「かつてないほど急速に変化しつつある世界のなかで、企業は『何を選ぶかは自分次第』という考えを取るべきなのか?」
「新しい環境に対する新たなニーズを前にして、自分たちの価値観を保ち続けるために歴史を紡ぐべきなのか、それとも新しいかたちで進化し生き残るために、細心の注意を払いつつ、過去に決別すべきなのか?」

コンサルタント、ライターとして、上のような問いが存在することを念頭に置きつつ、会社モットーに則って、クライアント企業の広報、会社史執筆・編集等に携わっているということです。

[関連ページ]
ザ・コーポレート・ストーリー社ホームページ
http://corporatestory.co.uk/index.html

ジョナサン・スティーブン代表について
http://corporatestory.co.uk/biogs/jonathan_steffen.html

■クレメンス・ビッシャーマン教授(コンスタンス大学)
  Prof. Clemens Wischermann, University of Constance
  「経営史か、企業広報か」
  Business history or corporate communication?

□□概要□□
ビッシャーマン教授によると、企業の歴史(business history)に関する専門的な情報発信は国際的レベルで非常に盛んになってきているということです。アカデミックな歴史家(経済史家に限らない)はこの分野の研究に大きな、そして経済的な潜在力を見いだしつつある一方、かつて自社の歴史を公にすることには距離を置いて、どちらかというと自社の歴史情報開示を慎んできた多くの企業が、今や自分たちの過去を市場戦略として、特定のターゲットに向けた広報のために利用している、という二つの特徴が見出されます。

ただし、企業の歴史は、学術的な要件を満たすものと、商業的なマーケティング・ツール、とのあいだのグレーゾーンに位置していると言えます。ビッシャーマン教授の議論は、いったん会社が学術的な基準に従うことを決めたならば、それは明確な結果を伴う、つまりある研究者グループに委託することを決めたならば、企業はそのグループに資金を提供するだろうが、最終的には企業は研究結果への介入は断念する、すべき、ということです。そこには、学術の分野では最終決定権を持つのは資金提供者ではない、という考え方があります。しかしビッシャーマン教授によれば、このような態度(カネは出すが口は出さない)によって、企業は自社の真摯さ(integrity)が立証可能(verifiable)であり、その組織は透明性を備えた経済主体であることを示すことができ、それによって社会的な名声を得るであろうと言います。

◆◆第2セッション:会社史における新しいアプローチ:いくつかの事例◆◆
Novel approaches in corporate history: selected examples

■ヘニング・モーゲン(A. P. モラ―・マースク社)
  Henning Morgen, A.P. Moller-Maersk
  「客観的?私に...?」
  Objective? Me...?

□□概要□□
モーゲン氏によれば、A. P. モラー・マースク社における歴史のドキュメンテーション(History Documentation)とは、歴史的事実を用いて、現在における広報(communication)をサポートすることです。アーカイブズ部門が行っている広報とは、マースク社の影響力に関わります。つまり、マースク社が活動している社会、個人の生活、さらにマースク社がその構成部分の一つでもある産業界に対する影響力に、アーカイブズ部門の広報が関わっているのです。

また、歴史のドキュメンテーションとは、日々のマースク社のビジネスとその外部への影響力に、必要に応じて適切な歴史的な見方を付け加えるということであるといいます。

アーカイブズ部門は、会社の価値観に基づき、調査研究にあたってはプロフェッショナルでかつ正確であること、そして歴史的事実に対する適切な文脈を世の人々に受け入れてもらうことを目指しているといいます。しかしながら、アーカイブズ部門にとっては客観的であることは目標ではありません。

アーカイブズ部門は主観的です。なぜならアーカイブズは中立的でもなく独立した存在でもないからです。アーカイブズは企業活動の前提、つまり株主利益の増大をサポートする、会社の広報機能の一部だからです。マースク社、そして社内のアーカイブズ部門は、高度なビジネスの基準を保持しており、このことが、大局的かつ適切な、そして信頼しうる成果を生み出すことを保証しています。

現在マースク社で進行中の2件の書籍刊行プロジェクトは、調査研究と情報発信に対するこれまでのアーカイブズの見方に挑戦するものであり、社内アーカイブズでの調査研究に新しいアプローチを生みだす基にもなりました。マースク社が属するさまざまなコミュニティと、マースク社がこれまで保持し続けてきた価値観や文化といったものが、同社の歴史を記録して伝える際のアーキビストの役割を決定するものであるということでした。

■アルベール・フィフナー(ネスレ社)
  Albert Pfiffner, Nestle S. A.
  「『会長に代わって』:現代の会社『史』のリスクとチャンス」
  "On behalf of the Chairman": the risks and opportunities of contemporary company "history"

□□概要□□
ネスレ社アーキビストのアルベール・フィフナー氏は、1990年から2005年にかけてネスレ140周年(2006年)記念の会社史の編集に携わった後、2013年に迎えるネスカフェ75年を記念するブランド史、2016年の150年記念のためのネスレ・グループ150年史、さらには「ヘリテッジ・センター」の実現に現在取り組んでいます。これらの事例を基に、フィフナー氏はこの講演で上述のプロジェクトに関するネスレ社ならびに同社アーカイブズ部門の考えや決定事項を語ってくれました。

フィフナー氏によると、社内外のマーケティングの専門家や歴史家からのさまざまな期待─時には反対─が存在するために、アーカイブズ部門では会社の歴史を扱うにあたって、同じ時期に、また同じ社内であっても、異なるアプローチをとったということです。そのどれもがそれぞれリスクとチャンスを持つといいます。

プロジェクトのスタートの最初の時点で、当該刊行物の「広報上の役割」(communication tasks)と「ターゲット層」(target audience)等を定めることが重要なのですが、これはしばしば困難なことでもありました。

フィフナー氏らアーカイブズ部門が、140年史作成の際、会長に代わって遂行したように、近い過去について書くことは伝統的な意味での「歴史」の執筆とは異なります。多くの経営上の決定が持つ意味はまだ完全には明らかではありませんし、バランスのとれた評価も不可能です。通常存在すべき歴史家とその研究対象との距離も失われています。そのために、アーキビストたちが意図したのは「会社の公式の歴史」official company history を出版することではなく、企業「内部」、あるいはむしろそこでの主たるプレーヤーたちの見方を伝えることでした。なぜなら企業の戦略と行動に影響を与えるものは環境ではなく、その環境に向かう会社内の主要なプレーヤーたちの態度だからです。この点で、ネスレ社140年史は近い過去を記述しているため、後の時代にネスレの歴史を執筆する場合には同時代的資料となるであろうとフィフナー氏はみています。またプロジェクトをスタートさせる前に、いくつかのルールを定めたということです。

ネスカフェのブランド史へのアプローチは他と異なっていました。ネスレ社では社外の歴史家にネスカフェ・ブランド史を学術的に、また事実に基づいて執筆することを委託したのです。こちらの刊行物はネスレ社のマーケティング部門と、自社のステークホルダーたちに配布する卓上用大型豪華本製作業者の両者に役立つものです。この歴史家は、リサーチの結果を彼の博士論文に仕上げています。つまりネスレ社としては、内部的なマーケティング主導の刊行物と、外部向けの学術的な刊行物(博士論文)の両方を持つことになります。

2016年の150周年記念のための出版とヘリテッジ・センターに関しては、内外のパートナーと共同しつつより総合的なアプローチ(holistic approach)を取ることになるだろうということでした。

■リオネル・ロー(ロシュ社)
  Lionel Loew, F. Hoffmann-La Roche AG
  「アーキビストは歴史に対する権利を持つか?」
  Do the archivists have the right to do history?

□□概要□□
ロシュ社アーキビストのリオネル・ロー氏は、企業内アーキビストという立場から、「客観的」歴史の叙述の可能性・不可能性について講演しました。

ロー氏によると、歴史家が共有する主な価値観の一つは「客観性」であり、素朴に言うならば、人は自分自身の社会的・組織的立場が歴史の記述に干渉するのを避けなければならないのですが、自分が働く企業の過去を扱う時、アーキビストが客観的であることはほとんど不可能のように見えます。とすると、企業組織に属するアーキビストたちには歴史を記述する権利はないのでしょうか?企業アーキビストは「ニュース映画」の歴史や「カタログ」の歴史にだけに取り組むべきなのでしょうか?これが、ロー氏の講演のテーマです。

このテーマを検討にするにあたって、ロー氏はロシュ社の過去における最も劇的な出来事、すなわち「1976年のセヴェソ事件」Seveso 1976 に関する従来の見方(この見方は多くの人が受け入れてきたけれどかつて一度も検証されたことがない)を問い直すため、過去のドイツの学界での個人的経験や社会学的なツールを用いながら、「アーキビストが学術的な歴史をなす可能性」「社会学的ツールの重要性」といった議論を講演してくれました。

「アーキビストが学術的な歴史をなす可能性」...ロー氏の主張では、アカデミックな世界はプライベートな組織(例えば企業)のアーカイブズで働くアーキビストたちの中に、しばしば「従業員性」しか見出しません。このような烙印を押されて、アーキビストはたいていの場合、企業利益の擁護者と理解されるだけです。しかし、ロー氏は逆に、組織内にいるという立場によって、多くの利点が得られることに注意を促したいといいます。例えば、アーキビストはだれよりも自分が管理する文書をよく理解できるばかりでなく、どんなに面白い質問を発することができるのかも知っているのです。

「社会学的ツールの重要性など」...社会学では「単なる客観性」なるものは存在しない、という前提事実を受け入れます。社会学のなかの、例えば「象徴的相互作用論」("symbolic interactionism")は支配的なグループの常識的な前提や価値観をただ受け入れるのではなく、問い正すことが義務である、と見ます。このことから、ロー氏は、これまでの見方をうのみにせずにきちんと検証し直すことが会社史においても必要であると主張します。このことはロシュ社の会社史の叙述における「1976年のセヴェソ事件」についてもあてはまるだろうと結論づけます。

[編集部注:セヴェソ1976とは、1976年7月10日にイタリアのロンバルディア州セヴェソで発生した爆発事故によって大量のダイオキシンが飛散した事件のことである。爆発事故を起こしたICMESA (Industrie Chimiche Meda Societa Azionaria)社はGivaudan社の子会社で、このGivaudan社がロシュ社の子会社にあたる]

◇◇§4月15日(月)午後§◇◇

◆◆第3セッション:歴史叙述:英雄譚と神話にさようなら!◆◆
Historical writing: no more tales of heroes and myths!

■シロ・ユングキント(コンスタンス大学)
  Thilo Jungkind, University of Constance
  「社会科学理論と経営史」
  Theories of social science and business history

□□概要□□
ユングキント氏の講演は、現代の経営史は社会科学に関する理論的アプローチから着想を得るべきである、という主張から始まりました。このシンポジウムのトピックに従って、同氏は経済・社会学的基礎に基づいた二つのアプローチ─「埋め込み理論」(embeddedness-theory)と「新制度派組織論」(neo-institutional organization theory)─を紹介しました。このアプローチは、ユングキント氏によると、アカデミックな方向性を持つ経営史だけではなく、企業が主導する経営史の執筆にも役立つだろうということです。二つのアプローチはともに、企業内のビジネス・アーキビストが、企業を取り巻く社会との相互関係のなかで会社史を執筆するという作業をサポートするものです。

ユングキント氏の研究によれば、過去20年間の経営史に対する数多くの概念的・理論的アプローチの傾向は、企業の行動とその機能の分析に収斂しがちであり、説明・分析パターンも内部的なプロセスを記述することに集中しています。しかし企業の歴史とは、製品、生産、あるいは「功労者」という観点からみると、企業を超えた環境とつながっているといいます。そのため、企業のマーケティング活動や企業の評判(reputation)のマネジメントは、内部的プロセスの記述一辺倒の会社史ではなく、企業と企業外部の環境との相互作用を重視するような経営史によってサポートされうると結論づけています。

■ビルギッテ・ポシング教授(デンマーク国立公文書館)
  Prof. Birgitte Possing, Danish National Archives
  「伝記作家の力(ちから)と民間アーカイブズ」
  The biographer's power and private archives

□□概要□□
ポシング教授によると、今日、歴史的人物・公的人物が歴史に対してどのような影響を与えたかを理解するのに、歴史的伝記が重要な公共的なツールとなってきています。西洋社会では、エンターテインメント、ビジネス、メディア、文学、そして歴史といった市場には伝記があふれかえっています。ポシング教授は、「伝記を書くに当たってのアーカイブズの役割とは何か?」「民間のアーカイブズが社会の文化的遺産として妥当であるとは一体どういうことなのであろうか?」「伝記作者たちは人格を表現するため、あるいは彼または彼女の仕事とその登場人物の名声をほめたたえたりけなしたりするために、どのようにアーカイブズを利用しているのか?」といった問いに関して議論を行いました。

■ヨアヒム・ショルティゼック教授(ボン大学)
  Prof. Joachim Scholtyseck, Bonn University
  「ひとりの大学の学者として会社史を執筆することの可能性と挑戦:19世紀から1954年までのギュンター・クァントGunther Quandtグループの例」
  Possibilities and challenges of writing company history as a university academic: the example of the Gunther Quandt group from the 19th century to 1954

□□概要□□
ショルティゼック教授は次のように語ります。今日、歴史的伝記は、企業や銀行の歴史に取り組む時、アカデミックな歴史家がいかに数多くの問題に立ち向かっているのか、ということを理解するための重要な公共的ツールとなっています。通常なら利用できない企業や一族のアーカイブズに依拠した研究を出版することは、アカデミックな歴史家にとってはもちろん、それ自体がたいへん魅力的なことです。企業が有名になればなるほど、これらの歴史家は自分たちの仕事が関係者や批判的読者から綿密に吟味されることを発見するでしょう。

アカデミックな調査研究における自由は、自立した研究者にとってもちろんたいへん尊ばれる事柄です。この自由は全体主義時代に活動していた企業の研究にとっては前提条件でもあります。なぜなら、記録の中で暗く、怪しげな側面を掘り起こしてしまう可能性があるからです。もしアカデミックな歴史家が当該企業のマーケティング戦略の下に自らを従属させてしまうならば、その歴史家は自立した研究者としての自分の名声を必然的に失います。

一方、企業にとっては、汚れのないサクセス・ストーリーを期待する立場にそぐわない事実に直面する可能性があることも考慮しておかねばなりません。同族企業にとっては、歴史的事実とのこのような対立は、匿名の株式会社にくらべるとずっとつらいものかもしれません。株式会社の場合は容易に他者に非難の矛先を向けることができるからです。そのような苛立ちを避けるためには、信頼という雰囲気が助けになります。しかしながら、さらに重要なことは明確な取り決めです。

この講演では、ショルティゼック教授は1800年代後期から1950年代にかけて事業を構築した、繊維・電機・防衛工学グループであるギュンター・クァントの事例研究を用いて、この問題に光をあてています。二つの系統のクァント一族がいずれも無条件で一族のアーカイブズをショルティゼック教授に見せてくれるという必要な便宜を図ってくれました。さらに、両クァント一族は関連する大量のファイルをパブリックな保管場所に引き渡してくれたので、将来の研究者が利用可能となりました。それと同時に、クァント一族は研究内容の変更を要求する権利を放棄し、いちいち一族に確認することなく研究内容を今後公開することにも合意しました。

とは言え、この事例研究が果たして将来の歴史研究プロジェクトにも適用可能なモデルと認められるかどうかはまだ結論が出ていません。

◆◆第4セッション:学術的信頼性とメッセージを伝えること:橋渡しは可能か?◆◆
Scientific credibility and getting across the message: can we bridge the gap?

■カール=ペーター・エラーブロック(ウェストファリア企業文書館)
  Karl-Peter Ellerbrock, Stiftung Westphalisches Wirtschaftsarchiv
  「信憑性、相互信頼、企業利益の間で:歴史研究と経済経営のパートナーとしての地域企業文書館」
  Between credibility, mutual trust and corporate interests: regional business archives as partners of historical research and economic business

□□概要□□
ドイツのアーカイブズのランドスケープのなかで、明確な特異性を示しているものがあります。それは地域企業文書館です。ドイツの郡レベルの立法では、公的な責務をもって地方商工会議所の歴史を守ることを地域企業文書館に課しているそうです。さらに、地域企業文書館は、多くのプライベートな企業アーカイブズのための避難場所、という役割も引き受けています。エラーブロック氏は、企業の所有者と地域企業文書館の間の信頼関係だけが、これらのかけがえのない資料を後世に確実に伝えることを可能にしている、といいます。資料は地域企業文書館というパブリックな領域に移管され、調査研究利用に提供されるのです。

■トマス・イングリン(チューリヒ保険会社)
  Thomas Inglin, Zurich Insurance
  「無駄遣いするな!周年記念誌は忘れろ!」
  Don't waste your money! Forget a jubilee book!

□□概要□□
チューリッヒ保険グループは2012年に米国支社の100周年を祝いました。同保険は1912年までにはヨーロッパのほとんど全域で営業を行っており、ほかの保険業者からの問い合わせに応じるかたちで、米国の保険市場の可能性を探るために、マネージャーであり当時希望の星でもあった アウグスト・レオンハルト・トブレル (August Leonhard Tobler)を同地に送り出しました。ここから米国での事業が始まったのです。トブレルは米国で急速に自動車保有が増大していることと、州が統制する労働者補償法が、大きなビジネスチャンスであることを発見したのでした。彼は、投資収入は米国での成功の重要な構成要素になるだろう、と記録に残しています。

このトブレルの物語は、同保険会社の周年記念におけるメイン・ストーリーのひとつです。周年記念の準備では、米国現地のプロジェクトチーム、スイス本社の社内アーカイブズ、そして外部の業者でもって、記念のための非常に優れたコンセプトを作り上げています。担当者は、周年記念を統一的なキャンペーンとすることを決定しました。イングリン氏は、統一的キャンペーンの目的を次のように説明しています。それは「過去、現在、未来を、新鮮で色あせることのない洞察、そしてストーリーテリングで一つに結びつけること」。別の言い方をすると、ストーリーの裏にある人間に焦点を定め、現在の業務との関連性をそれらに与える、ともいえるといいます。

周年記念担当者が最初に取り組んだのが、いわゆるストーリー・アーク(StoryARCs:映像業界用語。テレビシリーズにみられる、ひとつづきのつながったストーリーラインのこと。いくつかのエピソードを通じて次第にその内容が明らかになる。:編者注)ということです。これはチューリッヒ保険の歴史の中から、伝説、そして特別なストーリーを見つけることであるといいます。そして見出されたストーリーは、マーケティング、スピーチ、出版物、展示、ビデオ、そしてウェブにおける全ての記念事業のベースとして活用されたということです。周年記念担当者は、もちろん記念誌を出版し記念イベントを組織することを目指したのですが、それだけではなく、従業員と顧客の心をとらえることもまた大きな目的であったといいます。

◇◇§4月16日(火)午前§◇◇

◆◆第5セッション:グローバルな規模での会社史:環境が変われば期待も変わる◆◆
The global scale of corporate history: changing expectations in changing environments

■アレクサンダー・L・ビエリ(ロシュ社)
  Alexander L. Bieri, Roche
  「21世紀のアーカイブズとコレクション:"イケてない"から"イケてる"へ?」
  Archives and collections in the 21st century: from drab to sexy?

□□概要□□
ロシュ社キュレーターのアレクサンダー・ビエリ氏は次のように語っています。

もし19世紀が技術発展の世紀であったならば、20世紀は社会の中で大混乱が始まった時代であり、今後への影響は予測不可能です。人類が誇りうる重要な発明のほとんどは、19世紀に行われたか、あるいは少なくとも19世紀に着想されたものです。技術の進歩は歴史家を驚嘆させ続けています。しかしながら、社会の側からしてみると、大英帝国のビクトリア時代やドイツ語圏におけるビーダーマイヤー(1815年から45年までのドイツ語圏における復古期の時代精神:編者注)は言うに及ばず、フランスにおいては君主制が復活するなど、それはむしろ反動の時代でした。20世紀には、大混乱に組み込まれたあらゆる残虐行為とともに、社会的転換が生じました。人間は20世紀を通じて、戦争というものはどちらの側も勝者となることはできないと悟ったのです。また、この地球上の資源が限られていることに気づかねばなりませんでした。もし人が長期的に生き延びようとするなら、もはや環境は人間の利益を損なうものではなく、人間こそがその環境を保護しなければならない、ということにも気づきました。さらに、今では経済と金融モデルの限界について学び、市場経済は現実には厳格な倫理的規則の中にあってこそ、持続可能であるということも理解しています。

これらすべての転換は社会に対して深い影響を及ぼしており、技術の発展によって加速しています。それにもかかわらず、現在の制度のほとんどは19世紀に作られたもので、その時代は封建主義から生まれた、荘園に基盤を置く社会(Standegesellshaft)だったのです。これはとりわけ博物館学、コレクション、そしてある程度まではアーカイブズによって担われる公的な仕事についても特に当てはまります。また、このことはアーカイブズ、とりわけプライベートな企業によって保有されるアーカイブズにも深い影響を与えています。この講演の目的はこれらの点のいくつかを説明し、アーカイブズというものが、明日の求めに応じることができる手段であるという洞察を与えることにあります。さらに講演ではアーカイブズというもの、それ自体がなぜ重要となりつつあるのか、とりわけ若者にとって重要なのかが議論されました。

■ポール・ラーサウィッツ(IBM社)
  Paul Lasewicz, IBM Inc
  「象牙の塔からの眺め:企業の歴史と遺産に関する戦略価値についての学術的見方」
  The View from the Ivory Tower: the academic perspective on the strategic value of corporate history and heritage

□□概要□□
IBM社アーキビストであるラーサウィッツ氏は、企業アーカイブズにとってのホーリーグレイル(聖杯=困難な探求の対象)とは、その(企業アーカイブズの)存在を正当化する確実な理由である、といいます。それは市場が上向きの時と同様に、経済が困難な時期にあっても、経営幹部たちに対して同じ程度の影響力を持つ存在理由のことです。今までのところ、アーカイブズ業界においてはこの聖杯はまだみつかっていません。聖杯を得るにはどのようなことが今後必要なのか、それを特定することを試みています。

経営学の学会誌や、組織の過去からの価値を引き出すことに関連するような学問分野(アーカイブズ学・歴史学以外)のジャーナルを用いて、学際的な文献レビューを行ってみた結果、先の聖杯探求に役立ちそうな知見が得られたということです。60以上の学会誌を対象に検討した結果、ラーサウィッツ氏によると、アーカイブズ業界が聖杯を見つけ出すのに、「アーキビスト以外の人々の見方」が重要な手掛かりを握っている可能性があるということです。

■松崎裕子(渋沢栄一記念財団)
  Yuko Matsuzaki, Shibusawa Eiichi Memorial Foundation
  「トヨタの75年:トヨタ自動車の最新『社史』と日本における会社史づくりの動向」
  75 Years of TOYOTA: Toyota Motor Corporation's latest shashi and trends in the writing of Japanese corporate history

□□概要□□
19世紀末以来、日本では13,000点以上の社史が刊行されており、現在の厳しい経済状況にも関わらず、毎年おおよそ200点の新しい社史が刊行されています。「社史」とは文字通りには「会社の歴史」を意味し、伝統的には歴史学やアーカイブズ学の正式なトレーニングを受けていない社員によって、社内で編纂・編集・発行されることの多い、会社の歴史に関する刊行物のことです。1960年代後半以降、指導的な経営史学者─そのうちの何人かはアメリカ合衆国の有力ビジネススクールで経営史を学んだ人々─が、企業経営陣の指揮の下、日本企業の会社史執筆に貢献するようになりました。

大学の経営史学者たちは特別に許可されて企業アーカイブズへのアクセスを享受するようになり、このことは学問としての経営史学を発展させました。企業はより信用しうる会社史を刊行することができるようになり、それによって自社への信頼を高めてきました。学術的な歴史の執筆と企業の利害の衝突もありましたが、経営史学者と企業という2つのグループ間の協力は、多くの場合両者にとって有益なものでした。経営史学者と企業間の、この相互に有益な協力は、日本の経済状況が悪化しグローバリゼーションが加速する1990年初頭ごろまでは比較的順調に機能してきました。

このような背景を分析した後、この講演では2012年に創業75周年を祝ったトヨタ自動車を取り上げています。トヨタは、長年にわたって、何度も社史やその他の刊行物を出版し、大規模な歴史に関わるウェブサイトにおいて75年史をオンライン公開して創業75周年を記念するなど、歴史資源や歴史遺産を長期にわたって活用してきました。ここではトヨタにおける社史づくりに目を向けて、トヨタがどのように会社の歴史と企業アーカイブズを取り巻く挑戦に立ち向かってきたのかを紹介しました。

■ティナ・スティプルズ(香港上海銀行)
  Tina Staples, HSBC Holdings plc
  「...に関する記録ありますか?」
  Do you have records on...?

□□概要□□
HSBC(香港上海銀行)の主任アーキビスト・スティプルズ氏によると、同行では現在、2015年に迎える150周年を記念するために、新しい会社史を作成している最中です。それ自体は取り立てて新しいことには見えないのですが、そこには固有の挑戦が横たわっているということです。

この150年史叙述・刊行の最大の目的は、1980年代から現在までの、金融部門における劇的な事件と世界経済における大きな混乱をカバーしながら、同行の驚異的な発展に焦点を合わせることとされています。

150年史の執筆自体は外部の研究者に委託したそうです。ただし、そのための資料に関しては、HSBCの社内アーキビストが責任をもって提供せねばなりません。150年史全体をカバーするためには、最近の記録、そして機微に触れる(sensitive)記録も特定して、収集、提供しなければなりません。その際多くの実務的問題に直面しているといいます。かつてなら、過去の業務記録・取引記録はファイリングして、キャビネットに収納しておくことを誰もが当然と考えていました。しかしそういう時代はとっくに過ぎ去り、今日、HSBCのアーキビストたちは、デジタルで作成された記録を収集・保管せねばならず、またこのことは必然的に記録管理に対してアーキビストがどちらかというと従属的な立場に置かれることも意味し、さらに業務自体が国境をまたいで複雑に展開することから記録の管理も複雑化しているということです。さらに、法律、コンプライアンス、リスクに関わる課題はたいへん緊張を強いられるものであるということです。

★☆★...編集部よりひと言...★☆★

「トヨタの75年:トヨタ自動車の最新『社史』と日本における会社史づくりの動向」の項で述べたように、日本では毎年200点以上の社史が発行されており、関係者は「日本は社史大国である」と認識していることと思います。大企業のみならず、中小企業も含めて社史刊行に熱心に取り組んでいるという点では、まさにその通りではないかと思います。そのためのセミナーも毎年数回どこかで開催されており、社史づくりのノウハウを得る機会には事欠かないといえるでしょう。

今回SBLがロシュ社を会場に開催したシンポジウムはこのような社史づくりのためのセミナーとはいささか趣が異なるものでした。日本でもアカデミックな歴史家が社史執筆に加わることは珍しくありません。しかし、何をどのように叙述するか、客観性、学術性をどのように担保するのか(あるいはし得るのか)、企業が社内刊行物として刊行する社史は企業の事業目的に合致する以外の目的を必要とするのか、といった議論をオープンな場で行うことはほとんど皆無ではないでしょうか。

今回のシンポジウムでは、マースク社やチューリッヒ保険といった企業のアーキビストは当然のことながら、社内のマーケティングや広報部門をサポートするという観点から、企業の事業目的に合致するように会社の歴史を利用するという立場の講演を行っています。

一方、大学に籍を置いた歴史家たちは、「客観的」「学術的な」歴史叙述・歴史の語りのためには、企業は資料を提供しつつも、内容に関しては歴史家に一任すべきである、たとえ表面的には企業にマイナスとなるような会社史であろうとも、ありのままの過去を歴史家の手によって社会に提示することは、その企業の透明性を証明するものであり、企業活動に寄与する、と主張します。

さらに、日本とは異なっている状況として、欧州の大企業では企業内に専門的な教育を受けた歴史家を雇用しているという点があります。ネスレ社やロシュ社の場合はそれにあたり、かれらにとっては企業の一員でありつつ、学術的な会社史づくりをめざすという立場も捨て去ることはできません。

日本企業、とりわけグローバルに展開する大企業にとって示唆的なのは、おそらくHSBCの事例ではないかと思います。グローバルな記録管理システムとアーカイブズ管理を確立し、来るべき150年史作成に備えているという講演は、過去20年間海外事業を拡大してきた日本企業のこれからの記録管理とアーカイブズ管理、そして社史づくりにも示唆的です。

当財団からの講演も「今後は恐らく全世界の事業体から情報を集めないと社史編纂はなしえないと思われる。コーポレイト・アーカイブの在り方を含め将来の検討課題」であるという、『トヨタ自動車75年史』の編集後記における指摘を、今後の日本の企業アーカイブズ全体の問題として提示いたしました。
http://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/editors_note/index.html
http://www.toyota-global.com/company/history_of_toyota/75years/editors_note/index.html

今号が日本の企業アーカイブズや社史編纂に関わる方々のご参考となれば幸いです。

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[略称一覧]
ACA: Association of Canadian Archivists(カナダ・アーキビスト協会)
ARA: Archives and Records Association(アーカイブズとレコード協会)
ARC: ARC magazine: archives - records management - conservation
(SoAが発行する月刊ニュースレター)
ASA: Australian Society of Archivists(オーストラリア・アーキビスト協会)
BAC: Business Archives Council(ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BACS: Business Archives Council in Scotland
(スコットランド・ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BAS: Business Archives Section
(ビジネス・アーカイブズ部会:SAA内の部会)
CITRA: International Conference of the Round Table on Archives
(アーカイブズに関する国際円卓会議:ICAの年次会議)
CoSA:Council of State Archivists(米国・州文書館長評議会)
DCC: Digital Curation Center(英国デジタル・キュレーション・センター)
EDRMS:Electronic Document and Record Management System
(電子文書記録管理システム)
ERM:Electronic Record Management(電子記録管理)
ICA: International Council on Archives(国際文書館評議会)
LSE: London School of Economics and Political Science
(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)
MLA: Museums, Libraries and Archives Council
(英国 博物館、図書館、アーカイブズ評議会)
NAGARA: National Association of Government Archives and Records
Administrators
(米国・全国政府アーカイブズ記録管理者協会)
NARA: National Archives and Records Administration
(米国 国立公文書館記録管理庁)
RIKAR: Research Institute of Korean Archives and Records
(韓国国家記録研究院)
RMS:Record Management System(記録管理システム)
SAA: Society of American Archivists(米国アーキビスト協会)
SBL: Section for Business and Labour Archives
(企業労働アーカイブズ部会、ICA内の部会)
SoA: Society of Archivists(イギリス・アーキビスト協会)
TNA: The National Archives(英国国立公文書館)

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☆★ 編集部より:あとがき、次号予告 ★☆

前号では英国における事務弁護士事務所の古い文書の公文書館への寄託に関する実務メモを取り上げました。民間アーカイブズと公文書館の連携という点で、関連したニュースが昨日(2013年7月1日)付「中国新聞」オンライン版に掲載されています。

「公文書館がカープ資料収集へ」
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201307010003.html

記事によると広島市公文書館は「広島東洋カープと連携し、カープ資料の本格的な収集、保存に乗り出す。書籍や入場券などの印刷物や文書、写真を中心に収集し」て、「将来的には『カープ資料室』(仮称)を目指す」ということです。また「カープの歴史を物語る資料は、長年、経営が不安定だったことなどから、球団にはほとんど残されていない」とも。

公文書館による収集、保存、公開が、将来的には球団内部における組織アーカイブズ機能の導入や積極的な活用につながってほしいものです。公文書館(とその利用者)にとっても、球団にとっても、『カープ資料室』が情報資源として大いに役立つことを期待します。

もう一つ最近のニュースをご紹介します(2013年6月27日付「フジニュースネットワーク」)。

「倉庫に眠る『アーカイブ』を活用する動きが広まっています。」

「レコードのジャケット写真などに採用されなかった未公開カットなど、およそ400点を収めた『キャンディーズ』の写真集が、このたび発売され」るということです。

捨てられはしないものの、倉庫やオフィスの片隅に何年、何十年も放置されたままの記録資料を最近活用する動きが広がってきているようです。

これをきっかけに、活用のための基盤づくりとして、これまで埋もれてきた記録資料という情報資産の棚卸しやデジタル化が進むのではないかと思われます。

また、現在はデジタルとして生成しつつある、「将来のお宝」の管理・活用法の開発も進んでほしいですね。

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次号は7月下旬発行予定です。どうぞお楽しみに。

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◆◇◆〈渋沢栄一記念財団からのお知らせ〉◆◇◆

■『渋沢栄一を知る事典』(東京堂出版、2012)

2012年10月19日に公益財団法人渋沢栄一記念財団編『渋沢栄一を知る事典』が刊行されました。本書は渋沢栄一の事績を網羅的に解説した初めての事典となります。第1部では栄一の生涯と活動を100の項目に分けてわかりやすく紹介し、第2部では栄一をより深く理解するための資料と情報をまとめました。

なお、実業史研究情報センターでは、項目の執筆のほか第2部「資料からみた渋沢栄一」の編集を担当いたしました。ご高覧いただければ幸いです。
http://d.hatena.ne.jp/tobira/20121102/1351818423

□「企業史料ディレクトリ」:企業アーカイブズと企業史料の所在・概要ガイド

2008年7月22日公開いたしました。日本を代表する企業を中心とした企業アーカイブズと史料保存・学術研究機関合わせて30企業・団体・機関の概要、所蔵資料に関する情報を掲載しております。ぜひご覧ください。
http://www.shibusawa.or.jp/center/dir/index.html

□実業史研究情報センター・ブログ「情報の扉の、そのまた向こう」

渋沢栄一、社史を始めとする実業史、アーカイブズや図書館に関連する情報をご紹介しています。文化資源に関わる東日本大震災と復興についての情報は「震災関連」カテゴリーに集約しています。
http://d.hatena.ne.jp/tobira/

「アーカイブズニュース」では公文書管理法に関する動向やアーカイブズのデジタル化、資料の発見・公開に関わるニュースを随時ご紹介しております。ブログ画面右側の「カテゴリー」にある「アーカイブズニュース」をクリックしてください。「アーカイブズニュース」として掲載した記事をまとめて一覧することができます。

・主なカテゴリーの紹介
http://d.hatena.ne.jp/tobira/20080203

□「社史に見る災害と復興」

2011年3月の東日本大震災に際し実業史研究情報センターでは、センター・ブログに「社史に見る災害と復興」というカテゴリーを新設しました。そこでは現在構築中の「社史索引データベースプロジェクト」の蓄積データを検索し、「災害と復興」に関する記事を含む社史について紹介しています。
http://goo.gl/WUE3b

災害の中で特に関東大震災についての社史記述をまとめたものが2012年12月にピッツバーグ大学図書館発行の電子ジャーナル「社史」に掲載されましたのでご紹介します。

The Great Kanto Earthquake as Seen in Shashi / Yuriko Kadokura
(社史に見る関東大震災 / 門倉百合子)
〔Shashi: the Journal of Japanese Business and Company History〕
http://shashi.pitt.edu/ojs/index.php/shashi/article/view/7

実業史研究情報センター・ブログ「情報の扉の、そのまた向こう」はほぼ毎日更新しております。どうぞご利用ください。

□「渋沢栄一関連会社社名変遷図」

渋沢栄一がどのような会社に関わったか、それが今にどうつながっているのか、一目でわかるように業種別にまとめて変遷図にしました。現在122図掲載中です。社名索引もありますので、どうぞご覧ください。またセンター・ブログのカテゴリー「社名変遷図紹介」も併せてご覧ください。なお上記『渋沢栄一を知る事典』第2部には、この社名変遷図のうち100図を掲載してあります。
http://www.shibusawa.or.jp/eiichi/companyname/index.html

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★渋沢栄一記念財団は2010年9月1日に「公益財団法人」になりました★

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ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信) No.46
2013年7月2日発行 (不定期発行)
【創刊日】2008年2月15日
【発行者】公益財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター
【編集者】公益財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター
      「ビジネス・アーカイブズ通信」編集部
【発行地】日本/東京都/北区
【ISSN】1884-2666
【E-Mail】
【サイト】http://www.shibusawa.or.jp/center/ba/index.html

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