企業史料ディレクトリ

渋沢栄一「道徳経済合一説」の現代的実践

2022年8月31日更新

 現在、企業など私的な経営事業体の記録や史料(以下、「企業史料」とします)は、企業、大学などの研究機関、企業博物館などに、散在して保存されています。

 「企業史料ディレクトリ」は、企業史料がどこにどれほどの規模で保存されているのかということを、2007~2008年に財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター(現・公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センター)が企業史料協議会の協力を得て調査し、その結果を記録として公開するものです。調査の概要は以下のとおりです。
 ・調査期間:2005~2006年(事前調査)、2007~2008年(本調査)
 ・調査対象:企業史料協議会会員企業・団体
 ・調査内容:編纂方法解説をご覧ください
 ・回答数:33、うち承諾を得た企業・団体・機関について情報を公開
 注)それぞれの調査結果は上記本調査期間の記録であり、現在の状況とは異なる場合があります。

 経営史研究には欠かせない企業史料は、企業のものであるとともに社会的にも貴重な遺産でもあります。企業の社会的責任が問われている昨今、史料を大切にすることで社会的責任の一端が果たせるのではないでしょうか。企業が記録や史料を適切に管理し、資料に基づき透明性を確保して説明責任を果たすことによって、経営的観点のみならず組織的観点や社会的役割から、企業活動を検証することが可能になると考えられます。

 渋沢栄一は「仁義道徳と生産利殖とは元来共に進むべきもの」*1として道徳経済合一説を主張しました。この栄一の主張を栄一の孫である渋沢敬三の手法*2に依拠して現代的に実践しようとするところに、このプロジェクトの意義と目的があります。

*1 帝国発明協会における録音(1923年6月13日)「道徳経済合一説」草稿。『渋沢栄一伝記資料』第46巻、359頁

*2 渋沢敬三の学問分野での仕事には、資料を整備することによって研究を支援するという方法論に、大きな特徴がありました。それが最も明瞭にあらわれているのが『渋沢栄一伝記資料』全68巻の編纂です。