ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信)

第37号(2012年4月11日発行)

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☆      □■□ ビジネス・アーカイブズ通信 □■□

☆       No.37 (2012年4月11日発行)

☆ 発行:公益財団法人 渋沢栄一記念財団 実業史研究情報センター

☆                        〔ISSN:1884-2666〕
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この通信では海外(主として英語圏)のビジネス・アーカイブズ(BA)に関する情報をお届けします。

海外BAに関わる国内関連情報も適宜掲載しております。

今号は企業団体情報2件です。

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◆ 目次 ◆

[掲載事項の凡例とご注意]

■企業団体情報:アーカイブズ関連企業 1
  ◎ヒストリー・アソシエイツ社(本社所在地・米国メリーランド州ロックビル)

■企業団体情報:アーカイブズ関連企業 2
  ◎ウィンスロップ・グループ社(本拠地・米国ニューヨーク州マンハッタン)

☆★ 編集部より:次号予告 ★☆

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[掲載事項の凡例]

・欧文の場合、日本語で読みやすいものになるように、タイトルははじめに日本語訳を、続いて原文を記します。
・人名や固有名詞の発音が不明の場合も日本語表記を添えました。便宜的なものですので、検索等を行う場合はかならず原文を用いてください。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

[ご注意]
・受信時にリンク先を示すURLが途中で改行されてしまう場合があります。通常のURLクリックで表示されない場合にはお手数ですがコピー&ペーストで一行にしたものをブラウザのアドレス・バーに挿入し、リンク先をご覧ください。

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■企業団体情報:アーカイブズ関連企業 1

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◎ヒストリー・アソシエイツ社 History Associates Inc.
http://www.historyassociates.com/

米国アーキビスト協会ビジネス・アーカイブズ部会が編纂している企業・団体アーカイブズ・ディレクトリには現在約350の企業・団体アーカイブズがリストされています。
http://www.archivists.org/saagroups/bas/directory/corporat.asp

このディレクトリでは、アーカイブズ部門のために外部の会社もしくはコンサルタントを利用している企業団体名に「*」が付されています。例えば、シアーズ・ローバック社(Sears, Roebuck & Co.*)、米国スバル社(Subaru of America, Inc.*)、アメリカン・エクスプレス社(American Express Company*)などです。

今号では、企業・団体のアーカイブズ管理業務を当該企業・団体に代わって遂行するビジネスに取り組んでいる会社を二つご紹介します。一つは米国メリーランド州ロックビル(首都ワシントンDCに隣接しています)に本拠を置くヒストリー・アソシエイツ社です。

1981年創業で、昨年創業30周年を迎えた同社は2011年4月16日に、ワシントンDCの国立公文書館で創業30周年を記念する祝賀会を開催しました。合衆国アーキビスト(国立公文書館・記録管理局の長)であるデビッド・フェリーロ氏もこの席で祝辞を述べています。
http://www.historyassociates.com/30th-anniversary-at-nara-announce

■□■ヒストリー・アソシエイツ社■□■

History Associates Inc.
http://www.historyassociates.com/

◆はじまりと沿革
http://www.historyassociates.com/30-years-in-history
(同社30年略史)

http://www.youtube.com/watch?v=sZ7j3IdBIBA
(同社創業30周年にあたって作成されユーチューブに投稿された会社紹介動画)

http://www.historyassociates.com/20th-anniversary-history
(同社20年史)[PDF]

1981年創業の同社の起源は、実は1979年3月28日にアメリカ合衆国東北部ペンシルベニア州で起こったスリーマイル島原子力発電所事故にあります。この事故が起きた直後、合衆国連邦政府エネルギー省(Department of Energy: DOE)は、将来のエネルギー政策策定という同省の任務のために、同事故の「歴史」に関する書物の執筆を歴史家であるリチャード・ヒューレット(Richard Hewlett)氏に依頼しました。時間がたいへん限られていたため、ヒューレット氏は、当時求職中であった元大学講師フィリップ・カンテロン(Philip Cantelon)氏と、ミズーリ州セントルイスにあるワシントン大学講師で歴史を教えていたロバート・ウィリアムズ(Robert Williams)氏に助けを求めたのでした。締め切りが近づくなか、カンテロン氏とウィリアムズ氏はDOEの客員研究員であったロドニー・カーライル(Rodney Carlisle)氏に原稿のタイプ打ちの協力を求めることに。この人々はスリーマイル島原子力発電所事故という極めて現代的な事件に取り組み、歴史研究の価値を説明する中で、過去を保存し、解釈し、活用しようとしているさまざまな顧客と専門的な歴史学者を結び付けるという、さらなるビジネスの機会を発見しました。そして1981年1月にヒストリー・アソシエイツ社を設立したのでした。

創業者のひとりカンテロン氏が創業から2006年まで同社社長として勤務しています。ちなみに、ヒューレット氏はシカゴ大学歴史学博士で米国原子力委員会内に同委員会の歴史資料室とアーカイブズを設立し、DOEの主任歴史学者として1980年まで勤務しました。カンテロン氏はインディアナ大学歴史学博士で、フルブライト教授として日本で教鞭をとった経験もあります。ウィリアムズ氏はハーバード大学歴史学博士で専門はロシア史、カーライル氏はカリフォルニア大学バークレー校歴史学博士で海運史・エネルギー史が専門です。

DOEの依頼による調査は1980年に『封じ込められた危機:スリーマイル島におけるエネルギー省:一つの歴史』(Crisis Contained: The Department of Energy at Three Mile Island: A History )として同省が発行した後、1982年にSouthern Illinois Univ Pressから刊行されています 。これはスリーマイル島原子力発電所事故に対する科学者、政治家、そしてDOEの対応を、DOEアーカイブズ資料を用いてまとめた、原子力発電所事故の記録です。

さて、最初の事業であったスリーマイル島原子力発電所事故に関するプロジェクトの時から、同社の仕事は単に1冊の本を書くということを超えて、顧客が求めているものを特定し、その要求に応えることであったといいます。DOEの場合は核実験による放射能の遺産ともいうべきものに対処するために、同社と契約を結び「死の灰」に関する記録を調査・整理してDOE記録の機密解除を行ったのでした。その後同社とDOEとの関係は拡大し、DOEのオーラルヒストリー、記録管理、さらには政策研究まで行うようになりました。

同社スタッフが連邦政府の公文書に精通していることから、環境汚染被害訴訟や水利権訴訟といった訴訟における歴史的証拠を求める法律家たちも同社サービスを利用し始めました。フィリップ・カンテロン氏は、次のようなエピソードを語っています。同氏は国立公文書館でテキサス州における土地記録委員が、公文書館職員にイライラしながら質問しているところに居合わせました。この委員は、度重なる暴風によって地形が変化した同州サウスパドリー島(South Padre Island)の地形の変化を調べようとしていました。スムーズに調査が進んでいなかったようで、カンテロン氏が自分の名刺を委員に渡すと翌日にはこの調査を代行する契約がすぐに結ばれたということです。カンテロン氏はこの時初めて、他の人々は、歴史研究など自分がこれまで知っていたのとは違った目的のために「歴史」に価値を見出すのだと悟ったということです。

ニューヨーク銀行やMCI社の社史作成で高い評価を受けたことに加え、1984年には未整理だったテキサスインスツルメント社の記録の整理といったアーカイブズ管理、記録管理分野にも事業を拡大しています。

DOEとの大型契約が1992年に終了したことは、同社にとって困難な時期の到来ともいえました。それ以前からすでに西海岸の顧客が徐々に増えていたのですが、この頃にロサンゼルスに事務所を開設。またメリーランド州ベセスダ(本社所在地ロックビルに隣接)にある国立衛生研究所(National Institute of Health: NIH)内の国立医学図書館(National Library of Medicine)やIBM社の大規模アーカイブズ・プロジェクトを受注することによって、事業が多角化していきました。

そしてこれまでの同社の成長にとって最も重要であったのは、なんといっても法律関係者のための歴史調査であったといいます。その大部分はスーパーファンド法という環境関連法(過去の土壌汚染に関わる関係者に対策修復コストの負担を求める法律)の遡及責任条項によるものです。さらに、1990年代末までには第二次世界大戦時期のホロコースト被害者の資産問題とナチスによる強制労働問題といった議論への、企業広報上の関心によって、同社の事業は国際的なものに拡大していきました。(当実業史研究情報センター編『世界のビジネス・アーカイブズ:企業価値の源泉』13章に、スイスでの第二次世界大戦に対する企業の関与に関するスイス政府設立団体による調査についての記述があります。この時期の状況を現わす事例でしょう。)

2004年のシカゴ市議会が可決した条例に関する事業も特筆すべきものでした。この条例はシカゴ市内の全ての事業者に対して、過去における奴隷制との関連を調べ報告書を市に提出することを義務付けるものでした。市内に支店を持つ金融機関JPモルガン・チェイス社は数百の前身会社から成り立っており、その全てに関して調査を行う必要が生じました。この案件はヒストリー・アソシエイツ社のジェームズ・ライド(James Lide)氏が担当、最古の前身会社は18世紀後半から営業を行っており、このうち1830年代から事業を行っていたルイジアナ州の二つの銀行が奴隷貿易と関係あることが判明しました。19世紀のフランス語による銀行取引記録やルイジアナ州内の400の教区記録・郡役所記録といった膨大な資料を調査して1冊の報告書にまとめ、一般に公開したことは非常に高く評価されたといいます。

2001年にはデュポン社ウェブサイトのオンライン歴史ページの作成を担当するなど、飛躍的に進化したデジタル技術を駆使した分野に進出しました。南北戦争財団(Civil War Trust)との業務では、GPSを活用したゲティスバーグ国立軍事公園訪問者のための「バトル・アップ(Battle App)」もスマートフォン用に開発してます。

アーカイブズ資料を博物館の展示に活用する事業にも取り組んでいます。1923年に議会によって設立されたアメリカ戦闘記念碑委員会(American Battle Monuments Commission: ABMC)は米国国外における米国兵士の墓地や米国軍が関わった戦争記念物を管理する連邦政府の一機関です。ABMCは2005年にフランス・ノルマンディーの米軍人墓地に新しいビジターセンターを開設することを決定しました。ヒストリー・アソシエイツ社は、他の博物館専門家とも協力して、米国、英国、フランス、ドイツのさまざまなアーカイブズ資料を用いて、同ビジターセンターに相応しいストーリー作りに従事しています。

◆業務分野
http://www.historyassociates.com/services.html
上記「はじまりと沿革」で述べたように、同社の業務は下記の分野に広がっています。

◇◇企業団体史 Corporate Histories
http://www.historyassociates.com/histories.html

◇◇展示 Exhibits
http://www.historyassociates.com/exhibits.html

◇◇アーカイブズ・サービス Archival Services
http://www.historyassociates.com/archival-services.html

◇◇歴史・訴訟調査 Historical and Litigation Research
http://www.historyassociates.com/historical-research.html

◇◇(国立公園などの)利用案内の計画 Interpretive Planning
http://www.historyassociates.com/interpretive-planning.html

◇◇記録管理 Records Management
http://www.historyassociates.com/records-management.html

◆顧客
http://www.historyassociates.com/clients.html
顧客リストもウェブサイトに掲載されています。各分野に関してリストされて
いる機関名をご紹介します。

◇◇企業 Companies
シェブロン社 Chevron/フォード社 Ford Motor Company/ ロッキード・マーティン社 Lockheed Martin 他

◇◇法律事務所 Law Firms
アーノルド&ポーター Arnold & Porter 他

◇◇連邦政府 Federal Government
国立公園サービス National Park Service/ ナチ戦争犯罪と大日本帝国政府記録省庁間ワーキンググループ Nazi War Crimes and Japanese Imperial Government Records Interagency Working Group/ 合衆国内ホロコースト資産大統領諮問委員会 Presidential Advisory Commission on Holocaust Assets in the United States/ 原子力規制委員会 U.S.Nuclear Regulatory Commission 他

◇◇州・地方政府 State and Local Governments
アリゾナ州司法長官 Attorney General, State of Arizona/ ワシントンDC譲渡証書記録事務所 District of Colombia Office of the Records of Deeds 他

◇◇協会、団体、慈善団体 Associations, Organizations and Philanthropies
全米フットボールリーグ選手協会 National Football League Players Association/ 国立公文書館信託基金理事会 National Archives Trust Fund Board/ 原子力発電運転協会 Institute of Nuclear Power Operations 他

◇◇博物館・美術館 Museums
国際スパイミュージアム International Spy Museum/ サンフランシスコ現代美術館 San Francisco Museum of Modern Art 他

◇◇大学 Universities
ジョージワシントン大学 George Washington University/ インディアナ大学医療人文学プログラム Medical Humanities Program, Indiana University 他

◇◇海外顧客 International Clients
BBC The British Broadcasting Corporation/ 日本国際協力銀行 Japan Bank of International Cooperation 他

◆事業所所在地

◇◇本社:米国メリーランド州ロックビル
300 N. Stonestreet Avenue
Rockville, MD 20850-1655
Phone: 301-279-9697
FAX: 301-279-9224

◇◇西部地域事務所
588 Explorer Street
Brea, CA 92821-3108
Phone: 714-529-3953
FAX: 714-529-8543

[関連ページ]

フィリップ・カンテロン、ロバート・ウィリアムズ著
『封じ込められた危機:スリーマイル島におけるエネルギー省:一つの歴史』
(Crisis Contained: The Department of Energy at Three Mile Island: A History )
1982年にSouthern Illinois Univ Pressから刊行 。初版は1980年に米国エネルギー省が発行。[Google Books]
http://books.google.co.jp/books?id=Rf1SAAAAMAAJ

米国エネルギー省核エネルギー・科学・技術室編・発行『核エネルギーの歴史』
(The History of Nuclear Energy)[PDF]
巻末23ページの参考文献一覧の筆頭にカンテロン&ウィリアムズ『封じ込められた危機:スリーマイル島におけるエネルギー省:一つの歴史』があげられています。
http://www.ne.doe.gov/pdfFiles/History.pdf

米国国立衛生研究所
http://www.nih.gov/

米国国立医学図書館
http://www.nlm.nih.gov/

デュポン社歴史ページ(英語)
http://www2.dupont.com/Phoenix_Heritage/en_US/index.html

デュポン社歴史ページ(日本語)
http://www2.dupont.com/DuPont_Home/ja_JP/history/history_index.html

ゲティスバーグ国立軍事公園博物館・ビジターセンター
http://www.gettysburgfoundation.org/

アメリカ戦闘記念碑委員会
http://www.abmc.gov/home.php

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■企業団体情報:アーカイブズ関連企業 2

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◎ウィンスロップ・グループ社 The Winthrop Group, Inc.
http://www.winthropgroup.com/

企業・団体のアーカイブズ管理業務を当該企業・団体に代わって遂行するビジネスに取り組んでいるもう一つの会社は、ニューヨーク・マンハッタンに本拠を置くウィンスロップ・グループ社です。

■□■ウィンスロップ・グループ社■□■

ウィンスロップ・グループ社 The Winthrop Group, Inc.
http://www.winthropgroup.com/

◆はじまりと沿革
http://www.winthropgroup.com/OurHistory.html

ヒストリー・アソシエイツ社創業の翌年にあたる1982年にマサチューセッツ州ケンブリッジの5人の歴史家がウィンスロップ社を設立しました。同社は自分たちの事業を「応用歴史(学)」"applied history"と呼んでいます。同社は自社のミッションを「組織が経験を記録し、それを活用するのを助ける(To help organizations "capture experience and put it to work")」こととしています。

同社創業メンバーたちは、1978年〜82年にかけて反トラスト問題でAT&T社のコンサルタントとして関わり、この取り組みは後にハーバード・ビジネス・スクール出版から『アメリカの産業を新たにする』(Renewing American Industry)として出版されました。これに加え、失敗に終わったRCA社のビデオディスク事業に関する『RCA社とビデオディスク:研究という事業』(RCA and the Videodisc: The Business of Research)の出版など(ケンブリッジ大学出版より)、経営と歴史に関わる知的な貢献を行ってきたということです。特に1981年に創業メンバーの一人ジョージ・デイビッド・スミス(George David Smith)氏とローレンス・ステッドマン(Lawrence Steadman)氏が共同で『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌に発表した論文「会社史の現在的価値」(The Present Value of Corporate History)はウィンスロップ社の新たなミッションのマニフェストになりました。この論文は1993年刊行の『企業アーカイブズと歴史:過去を活かす』(Corporate Archives and History: Making the Past Work)に収録されるなど高い評価を受け、現在でもしばしば引用されています。同書ならびに「会社史の現在的価値」論文については、2008年10月20日発行の本通信10号でもすでにご紹介しております。次のような一行解説を行っております。

「この章は最初『ハーバード・ビジネス・レビュー』(1981年11/12月号)に掲載された。現代の企業にとって歴史が果たしうる役割について書かれたもので、大変大きな影響力をもった論文とされる。歴史とは継続性とアイデンティティの感覚を提供してくれる企業の文化・記憶の欠くことのできない部分であるが、過去を再現するのは簡単なことではない。著者たちは組織の歴史資源を強力な経営手段と位置づける。」
http://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20081020.html

会社設立後は政府調達を請け負う電気事業者に対する比較的小規模なビジネスや陸軍関係の事業を行っていましたが、設立9カ月後にアルミニウム関連の大手企業アルコア社から、同社の経営戦略、技術、文化に関する調査研究を受託しています。その後はヒストリー・アソシエイツ社と同様に、歴史に関わる各種事業、訴訟対応のための調査事業、編集執筆業務等を提供してきました。

一方、ロックフェラー家の元アーキビストであるリンダ・エッジャリー(Linda Edgerly)氏はその頃ニューヨークを拠点として、ウェアーハウザー社とチェイス銀行の社内アーカイブズの立ち上げを行ったところでした。1980年代半ばまでにはエッジャリー氏は、企業、団体、家族の、歴史的に有用な情報と記録を整理し活用する仕事の専門家として広く知られるようになりました。彼女が請け負ったユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)社のプロジェクトに、1987年デボラ・シアー(Deborah Shea)氏が加わり、1989年にはマサチューセッツ州ケンブリッジのウィンスロップ社とニューヨークのエッジャリー氏のビジネスが合併し、ウィンスロップ・グループ社としてニューヨーク・マンハッタンに事務所を構えることになったのです。

現在ウィンスロップ・グループ社はケンブリッジに事務所を残していますが、事業はニューヨーク事務所が中心となっています。さらに、ワシントンDC、フロリダ州マイアミ、カリフォルニア州サンフランシスコ、カナダ・モントリオール、イギリス・ロンドン、ドイツ・ミュンヘンに代理人を置いて国際展開も行っています。
http://www.winthropgroup.com/ContactUs.html

◆業務分野

◇◇歴史 Histories
http://www.winthropgroup.com/histories.html

◇◇情報とアーカイブズ・サービス Information & Archival Services
http://www.winthropgroup.com/Inform_Arch_Serv.html

◇◇コンサルティング Consulting
http://www.winthropgroup.com/consulting.html

◇◇編集サービス
http://www.winthropgroup.com/editorial.html

◆顧客
http://www.winthropgroup.com/Clients.html

◇◇企業 Business
http://www.winthropgroup.com/Clients1.html
フォード社 Ford Motor Company/GM社 General Motors Corporation/ 米国トヨタ自動車販売社 Toyota Motor Sales, U.S.A., Inc./ メリルリンチ Merrill Lynch & Co./クラフト・フーズ社 Kraft Foods Inc. 他

◇◇政府 Government
http://www.winthropgroup.com/Clients2.html
ニューヨーク連邦銀行 Federal Reserve Bank of New York/ ワシントン州シアトル市 City of Seattle (WA)/ ルドルフ・W・ジュリアーニ市長(都市問題のためのルドルフ・W・ジュリアーニ・センター) Mayor Rudolph W. Giuliani(Rudolph W. Giuliani Center for Urban Affairs) 他

◇◇非営利団体等 Not-For-Profit
http://www.winthropgroup.com/Clients3.html
WGBHボストン(公共放送局) WGBH (Boston)/コロンビア大学 Columbia University/ハーバード大学 Harvard University/ジュリアード音楽院 The Julliard School/ビル&メリンダ・ゲイツ財団 Bill & Melinda Gates Foundation/世界銀行 World Bank/エリス島移民博物館 Ellis Island Immigration Museum 他

◇◇個人 Private Clients
http://www.winthropgroup.com/Clients4.html
ロバート・クシュナー Robert Kushner/ロイ・リキテンシュタイン・エステート/Roy Lichtenstein Estate 他

◆事業所所在地

◇◇米国マサチューセッツ州ボストン近郊ケンブリッジ
2 Canal Park
Cambridge, MA 02141
Phone: 617-679-9866
Fax: 617-679-9878

◇◇ニューヨーク州マンハッタン
226 West 37th Street, 17th floor
New York, NY 10018
Phone: 888-497-0777

[関連ページ]

『アメリカの産業を新たにする』
(Renewing American Industry)[Google Books]
http://books.google.co.jp/books?id=V564AAAAIAAJ

『RCA社とビデオディスク:研究という事業』
(RCA and the Videodisc: The Business of Research)[Google Books]
http://books.google.co.jp/books?id=tSCqnnTYVxAC&lpg=PP1&hl=ja&pg=PP1#v=onepage&q&f=false

『企業アーカイブズと歴史:過去を活かす』
(Corporate Archives and History: Making the Past Work)[Google Books]
http://books.google.co.jp/books?id=sdpyQgAACAAJ

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

☆★ 両社の顧客 ★☆

ヒストリー・アソシエイツ社は首都ワシントンDC郊外に本拠を構えていることから、連邦政府関係に多数の顧客を得ています。一方ウィンスロップ・グループ社は非営利団体等や個人の顧客を多く得ているようです。

☆★ 訴訟にとっての歴史資料の重要性 ★☆

ヒストリー・アソシエイツ社とウィンスロップ・グループ社の業務を見てみると、訴訟社会と言われる合衆国の特質とも密接に関わっているのでしょうが、企業・団体のアーカイブズ資料が証拠として法律関係者に重視されていること、またその活用のためには歴史資料に関する専門家が必要不可欠であることが伝わってきます。

ただし歴史資料に関する専門家として訴訟に関わるのは難しいことです。もし、顧客の利益を守ることが第一と考えるならば、顧客に有利な情報・資料だけを取り出して証拠として提出する、そのような可能性を多くの人は危惧するでしょう。特に訴訟のための調査は利益率が高いからです。この点について、ヒストリー・アソシエイツ社の「20年史」は27ページで次のように述べています。

「ヒストリー・アソシエイツ社が論争的な問題に前向きに取り組むにあたっては、二つの原則を置いた。第一に、訴訟では他の種類の業務と同様に、当社の歴史家は(依頼者の)ちょうちんもちとしてではなく、事実の発見者として行動すること。第二には、すべての法律的案件では、当社は不偏不党を保つというインセンティブをずっと保ってきた。教養ある顧客は意外なことを求めていない。彼らは、悪いこととともに良いことを発見するために歴史家を雇うのである」

HAI's willingness to become involved in controversial issues rested on two principles. First, in litigation as in other types of work, HAI historians acted not as advocates but as fact finders. Second, in all legal matters there has been a built-in incentive for the company to maintain its impartiality. Sophisticated clients do not want surprises,and they hire historians to uncover the bad news as well as the good.

法律は国や文化によって相当異なるものです。アメリカほど訴訟が身近なものでない日本の場合、訴訟のための歴史調査の需要は現在のところそれほど多くはないと思われます。ただしアメリカでビジネスを行う日本のグローバル企業などは避けては通れない問題です。

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[略称一覧]
ACA: Association of Canadian Archivists(カナダ・アーキビスト協会)
ARA: Archives and Records Association(アーカイブズとレコード協会)
ARC: ARC magazine: archives - records management - conservation
(SoAが発行する月刊ニュースレター)
ASA: Australian Society of Archivists(オーストラリア・アーキビスト協会)
BAC: Business Archives Council(ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BACS: Business Archives Council in Scotland
(スコットランド・ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BAS: Business Archives Section
(ビジネス・アーカイブズ部会:SAA内の部会)
CITRA: International Conference of the Round Table on Archives
(アーカイブズに関する国際円卓会議:ICAの年次会議)
CoSA:Council of State Archivists(米国・州文書館長評議会)
DCC: Digital Curation Center(英国デジタル・キュレーション・センター)
EDRMS:Electronic Document and Record Management System
(電子文書記録管理システム)
ERM:Electronic Record Management(電子記録管理)
ICA: International Council on Archives(国際文書館評議会)
LSE: London School of Economics and Political Science
(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)
MLA: Museums, Libraries and Archives Council
(英国 博物館、図書館、アーカイブズ評議会)
NAGARA: National Association of Government Archives and Records Administrators
(米国・全国政府アーカイブズ記録管理者協会)
NARA: National Archives and Records Administration
(米国 国立公文書館記録管理庁)
RIKAR: Research Institute of Korean Archives and Records
(韓国国家記録研究院)
RMS:Record Management System(記録管理システム)
SAA: Society of American Archivists(米国アーキビスト協会)
SBL: Section for Business and Labour Archives
(企業労働アーカイブズ部会、ICA内の部会)
SoA: Society of Archivists(イギリス・アーキビスト協会)
TNA: The National Archives(英国国立公文書館)

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☆★ 編集部より:あとがき、次号予告 ★☆

ヒストリー・アソシエイツ社とウィンスロップ・グループ社の紹介はいかがでしたか。本通信編集部が昨年2011年8月のSAAシカゴ大会で日本の企業アーカイブズに関して発表を行った際、ウィンスロップ社のリンダ・エッジャリー氏から声をかけられ、同社に関する説明をうかがいました。現在は引退しておられますが、ビジネス・アーキビストとして多くの著作をあらわしているカレン・ベネディクト氏もウィンスロップ・グループ社に所属し、アーキビスト、コンサルタントとして長く働かれました。ベネディクト氏はご家族の仕事の関係で日本に長期滞在中の1992年7月15日には、千葉県文書館にて全国歴史資料保存利用機関連絡協議会(全史料協)関東部会特別講演「アメリカ合衆国のアーキビスト、レコードマネジャー、ライブラリアンの関連性」を行っておられます。本通信創刊号ではベネディクト氏の著作『倫理とアーカイブズ専門職─手引きと事例研究』をご紹介しております。
http://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/20080215.html
エッジャリー氏によると、当時ウィンスロップ・グループ社として、日本での事業の可能性を検討したこともあったということです。

ヒストリー・アソシエイツ社は、同じく昨年のSAA大会で本通信編集部がその存在を知りました。アーカイブズ関連事業者の展示会場の同社ブースでヒストリー・アソシエイツ社通信(チラシ)「HAIpoint」2011年冬号をいただきました。他の大量の資料と一緒に日本に持ち帰り、中身を精査しないままでした。『世界のビジネス・アーカイブズ』編集作業がひと段落したところであらためて「HAIpoint」2011年冬号に目を通してみると、スリーマイル島原子力発電書事故とそれに対する合衆国エネルギー省の対応が同社の起源であることに関心を引かれました。翻って日本では、東日本大震災による福島原子力発電所事故に関連する各種会議議事録問題がつい最近耳目を集めたばかりです。

両社はともに1970年代末から1980年代初頭にかけて創業され今日まで30年間、会社史・アーカイブズ管理等の事業に携わってきました。両社の場合、会社史作成のための事業単体だけでなく、記録管理やアーカイブズ管理サービスを併せて提供することによって、1回限りの社史制作にとどまらず、各顧客組織内における記録の包括的管理に寄与しているのではないかと考えられます。また、ライバル社の存在は競争を通じてのイノベーションと業界全体の発展に寄与しているように思われます。今後さらに両社をはじめとする同業界の動向も追っていけたらと考えます。

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次号は5月上旬発行予定です。どうぞお楽しみに。

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◆◇◆バックナンバーもご活用ください◆◇◆

http://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/index.html

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◆◇◆〈渋沢栄一記念財団からのお知らせ〉◆◇◆

□「企業史料ディレクトリ」:企業アーカイブズと企業史料の所在・概要ガイド

2008年7月22日公開いたしました。日本を代表する企業を中心とした企業アーカイブズと史料保存・学術研究機関合わせて30企業・団体・機関の概要、所蔵資料に関する情報を掲載しております。ぜひご覧ください。
http://www.shibusawa.or.jp/center/dir/index.html

□実業史研究情報センター・ブログ「情報の扉の、そのまた向こう」

渋沢栄一、社史を始めとする実業史、アーカイブズや図書館に関連する情報をご紹介しています。文化資源に関わる東日本大震災と復興についての情報は「震災関連」カテゴリーに集約しています。
http://d.hatena.ne.jp/tobira/

「アーカイブズニュース」では公文書管理法に関する動向やアーカイブズのデジタル化、資料の発見・公開に関わるニュースを随時ご紹介しております。ブログ画面右側の「カテゴリー」にある「アーカイブズニュース」をクリックしてください。「アーカイブズニュース」として掲載した記事をまとめて一覧することができます。

・主なカテゴリーの紹介
http://d.hatena.ne.jp/tobira/20080203

□「社史に見る災害と復興」

この度の東日本大震災に際し実業史研究情報センターでは、センター・ブログに「社史に見る災害と復興」というカテゴリーを新設しました。そこでは現在構築中の「社史索引データベースプロジェクト」の蓄積データを検索し、「災害と復興」に関する記事を含む社史について紹介しています。
http://goo.gl/WUE3b

実業史研究情報センター・ブログ「情報の扉の、そのまた向こう」はほぼ毎日更新しております。どうぞご利用ください。

□「渋沢栄一関連会社社名変遷図」

渋沢栄一がどのような会社に関わったか、それが今にどうつながっているのか、一目でわかるように業種別にまとめて変遷図にしました。現在122図掲載中です。社名索引もありますので、どうぞご覧ください。またセンター・ブログのカテゴリー「社名変遷図紹介」も併せてご覧ください。
http://www.shibusawa.or.jp/eiichi/companyname/index.html

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★渋沢栄一記念財団は2010年9月1日に「公益財団法人」になりました★

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ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信) No.37
2012年4月11日発行 (不定期発行)
【創刊日】2008年2月15日
【発行者】公益財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター
【編集者】公益財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター
      「ビジネス・アーカイブズ通信」編集部
【発行地】日本/東京都/北区
【ISSN】1884-2666
【E-Mail】
【サイト】http://www.shibusawa.or.jp/center/ba/index.html

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