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研究センターだより

24 技術移転プロジェクト/第3回ヘボン-渋沢記念講座/ワークショップ「地域振興と人材育成-企業家とNPOとのネットワーク形成を通じて」

『青淵』No.741 2010(平成22)年12月号

今回は、1)2009年度から本格的に開始しました技術移転プロジェクト(Technology Transfer Project略称TTP)、2)第3回ヘボン-渋沢記念講座(東京大学)および、3)9月に宇都宮で行いました「渋沢栄一に学ぶ 企業家精神再発見事業」(宇都宮商工会議所との共催)からワークショップ「地域振興と人材育成-企業家とNPOとのネットワーク形成を通じて」をご紹介します。

技術移転プロジェクト

優れた技術や制度を移転することは社会の発展にとって大変重要です。明治の日本は西洋の進んだ技術を巧みに取り入れ、近隣諸国に先んじて、近代化・産業化を促進しました。その際、渋沢栄一など実業家はどのようなリーダーシップをふるったのかについて分析するのがこのプロジェクトの狙いです。

デービッド・シシリア(メリーランド大学教授 経営史)、ツェキ・ホーン(ニューヨーク州立大学准教授 比較文化史)、デービッド・ヴィットナー(ユチカ大学准教授 産業技術史)、ジェファー・デイキン(ポートランドコミュニテイカレッジ専任講師)のコアメンバーと井上潤(渋沢史料館館長)と木村の6人でコア・グループを形成し、研究会と産業博物館見学を組み合わせながら、日本、中国、米国、三国実業家の技術移転におけるリーダーシップのあり方を比較研究しています。

2009年度は米国メリーランド大学で第1回目のブレーンストーミング、ボルチモア産業博物館とデュークたばこ博物館の見学を通じて、米国の技術移転の実態を学びました。今年7月は、明治時代の技術導入を代表する富岡製糸場、碓氷峠鉄道文化村を見学したのち、深谷の渋沢栄一記念館、生家、諏訪神社などを訪問しました。栄一に対する理解が深まったことに加え、日本の近代化・産業化を支えた関東地域の経済・社会・文化の豊かさを体感してもらうことができたのではないかと思います。

今後は、ヨーロッパ(ドイツ、イギリス)の産業博物館の見学、日米中の技術移転の比較に関する国際セミナーを開催し、2014年には論文集を刊行する予定です。

第3回ヘボン-渋沢記念講座

7月29日(木)に第3回ヘボン-渋沢記念公開講座「オバマ大統領の政治理念を分析する」が東京大学本郷キャンパスで開催され、オバマ米大統領の憲法・政治理念を深く掘り下げる議論が展開されました。150名近くの参加者は最後まで熱心に聴講し、質問も多数出され、格調高い雰囲気でした。翌日から8月6日(金)までロジャーズ・スミス(ペンシルバニア大学)教授による米国憲法史に関する集中講義(英語)が行われました。1776年に独立した米国は、それほど古い国ではありませんが、米国憲法は数多くの修正を加えられながらも、現在まで続く世界最古の成文憲法です。日本ではその精神や成立過程があまり知られていませんが、米国研究の基礎となる最も重要なテーマの一つです。スミス教授の丁寧な講義に、25名ほどの大学院生が最後まで熱心に履修しました。なおスミス教授は、来日翌日の7月27日に財団を来訪し、渋沢史料館の常設展示を熱心に見学、渋沢栄一の活動の幅広さに改めて驚かれた様子でした。

ワークショップ「地域振興と人材育成-企業家とNPOとのネットワーク形成を通じて」

『青淵』11月号にも紹介されましたように、9月1日から10日まで宇都宮商工会議所との共催事業「渋沢栄一に学ぶ 企業家精神再発見事業」は大きな反響を呼びました。今回はいままで当財団のシンポジウム・講演会を行ってきました長岡、宇和島、深谷、旭(海匝支部)の若手リーダーおよび奈良の仲川氏と、宇都宮で地域振興に活躍されている3人に参加していただきワークショップを開催しました。各地域が直面している課題を紹介し、互いに知恵を出し合い、どのようにして現状を打開し将来につなげるかという話し合いを行いました。毛受(めんじゅ)氏の行き届いた司会進行により、ざっくばらんな2時間の討論で、メデイアではなかなかカバーできない成功例(宇都宮の餃子)、各地の面白い取り組み、本音の苦労話を伺うことができました。

約20人の宇都宮商工会議所婦人部のみなさんが聴講しました。五百籏頭薫(東京大学社会科学研究所准教授)氏から、めったに聞けない現場のなまなましい話を聞くことができた、と評価していただいた半面、フロワーから渋沢栄一にいま学ぶべき企業家精神についてもっと触れてほしいという厳しい意見も出されました。このコメントは討論の内容だけでなく、事前準備、特に広報の在り方の改善点として、今後に生かしてゆきたいと考えています。パネリストからは各地域の面白いアイデアを学び、お互いの抱えている課題に対して理解を深めることができ、あたらしいネットワークの形成につながったという評価もいただきました。

ワークショップの概要は次の通りです。
テーマ:地域振興と人材育成-企業家とNPOとのネットワーク形成を通じて
開催日時:2010年9月9日(木)午後12時30分〜午後3時30分
開催場所:宇都宮商工会議所 会議室
参加者:飯田恭介氏(ちば醤油株式会社、旭市)
下妻慶悟氏(下妻液化ガス株式会社、深谷市、渡米実業団参加者)
仲川順子氏(奈良NPOセンター理事長、奈良市)
中村公哉氏(中小企業診断士中村公哉事務所、長岡市)
福田泰子氏(宇都宮商工会議所女性部会長、宇都宮市)
三原浩司氏(宇和島商店街連盟、宇和島市)
村上達也氏(宇都宮商工会議所青年部副会長、宇都宮市)
矢口季男氏(社団法人中小企業診断協会栃木支部長、宇都宮市)
司会:毛受敏浩氏(財団法人日本国際交流センター、東京)

(研究部・木村昌人)


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