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『青淵』No.720 2009(平成21)年3月号
昨年12月6日(土)午後、渋沢史料館会議室で、渋沢栄一研究に関するシンポジウムを下記のとおり行いました。50人を超える参加者があり、充実した内容になりました。
第1セッション 渋沢栄一研究の現状―最近の渋沢栄一記念財団の取り組みから
財団の協力事業の事例として、2006年に設立した華中師範大学の渋沢栄一研究センターについてご紹介をいただきました。そして様々な切り口から渋沢栄一研究にアプローチする当財団の3つの事業の柱を紹介し、栄一研究の専門家から分析をしていただきました。
司会 | 陶徳民(関西大学教授、文化交渉学教育研究拠点リーダー) |
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報告者 | 1 田彤(華中師範大学教授、渋沢栄一研究センター秘書長) 2 井上潤(渋沢史料館 館長) 3 小出いずみ(実業史研究情報センター センター長) 4 木村昌人(研究部 部長) |
討論者 | 島田昌和(文京学院大学教授) 桐原健真(東北大学助教) |
第2セッション 渋沢栄一研究のフロンティア
近年海外へとますます広がりを見せる渋沢栄一研究。その最新の事例を中国とフランスからご紹介いただきました。
司会 | 由井常彦(文京学院大学大学院経営学科長、教授) |
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パネリスト | 1 周見(中国社会科学院世界経済政治研究所教授) 2 クロード・アモン(パリ第7大学准教授) 3 于臣(関西大学文化交渉学教育研究拠点PD) 4 見城悌治(千葉大学准教授) |
討論者 | ジャネット・ハンター(ロンドン大学政治経済学部教授) 橘川武郎(一橋大学教授) |
見城悌治(千葉大学準教授)氏の著書『渋沢栄一「道徳」と経済のあいだ』(日本経済評論社、2008年、2,500円)が11月下旬に刊行されました。2007・2008年の2年間に、渋沢栄一について著書を刊行された内外の研究者5人全員が一堂に会しました。このシンポジウムがきっかけになり、新たな渋沢栄一研究が始まることを期待しています。
最近研究部との交流が急速に深まっている中国での活動についてご紹介します。昨年12月8日、渋沢理事長が南京大学商務院(趙曙明院長)の講堂で、450人ほどの学生を前に、「東アジアの政治経済:鄧小平・孫文・渋沢栄一を中心として」(英語)について講演を行いました。講演後、数人の学生から「東アジアにはEUのような共同体を創設することは可能かどうか」など、鋭い質問が出され、盛り上がりました。
湖北省武漢の華中師範大学での第2回寄附講座は、12月10日にエズラ・ヴォーゲル先生(ハーヴァード大学名誉教授)が、「日中国交回復後の日中関係」と題し、二国関係の歴史について客観的な立場から講演しました。講演は中国語で行われましたので、武漢市内各大学から集まったおよそ200名の学生は、目を輝かせながら講義に聞き入っていました。講義終了後も数多くの質問が出され、温かい雰囲気の中で、日中間の将来にかかわる大切な問題が討論されました。ヴォーゲル先生は中国の学生の熱心さに驚いていました。
続いて12月12日・13日の2日間、上海の華東師範大学新キャンパスでの「世界の中の日中関係史」と題するシンポジウム(華東師範大学、関西大学、当財団共催)に小松常務理事と木村が参加しました。日中以外の米国、モンゴル、カナダなどから日中関係史研究者が参加し、和やかな雰囲気の中で、日中間の重要かつホットなテーマをクールに議論することができました。
今年は、日中米三国共同展覧会が8月―9月に南通市博物苑で開催され、研究部は9月22日・23日に「グローバル社会形成における企業家の果たす役割」というテーマでシンポジウムを行う予定です。また2010年3月には、1910年南洋勧業博覧会100周年と上海万国博覧会を踏まえて、記念シンポジウムを上海復旦大学・当代上海研究所と共催で行う準備を始めています。
世界同時不況に負けず、将来を見据えて日中共同事業を進めていきたいと考えています。
(研究部・木村昌人)