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研究センターだより

3 第1回実業史研究会/渋沢国際儒教研究セミナー/日中韓実業交流史ワークショップ/2005年渋沢北米セミナー/第2回比較思想史研究会/2005年度慶應義塾大学法学部寄附講座

『青淵』No.678 2005(平成17)年9月号

前回の当部のご報告から3ヵ月が経ちました。最近の広尾の研究部での活動をお知らせいたします。

5月12日:第1回実業史研究会(副部長・楠本和佳子)

 ロンドン大学のジャネット・ハンター教授(日本経済史)をお迎えして、初めての実業史研究会を開催。渋沢栄一とも親交のあった日本郵便制度の父、前島密の生涯を軸に、近代国家として変貌を遂げる日本と通信機関の発達についてお話し頂きました。一人の人間の生涯と業績を窓口にして時代の動きを眺めるという、まさに第1回目の実業史研究会にふさわしい内容でした。

 実業史研究会は、渋沢敬三が思い描いた"実業史"という概念を継承し発展させるべく、様々な分野から講師をお招きし、人々の暮らし、仕事や生業といったものを、時代や社会背景を踏まえて検証、考察する会です。人は生きるために時代や外界とどのように渡り合い、"実の業(わざ)"を営んできたのか。現代を生きる私たちにも多くの示唆を含むお話やディスカッションが今後も展開されることを期待しています。

 ご関心のある方はどなたも大歓迎です。毎回研究会の詳細が決まり次第、研究部ホームページ(http://www.shibusawa.or.jp/research/index.html)でお知らせ致しますので、『青淵』読者の皆様もお誘い合わせの上ご参加ください。

5月21日〜23日:渋沢国際儒教研究セミナー(研究員・岡本佳子)

 昨年9月に東京で行われた第1回渋沢国際儒教研究セミナーにつづき、第2回セミナーが中国江蘇省南通市で開催されました。地元の張謇研究中心との共催により「中日近代企業家の文化事業と社会事業―渋沢栄一と張謇の比較研究」というテーマのもと、日本、中国、台湾、香港、アメリカから研究者が集まり、同時通訳を介した講演やセッションを展開しました。このセミナーでは、中国の実業家張謇(1853−1926)と渋沢栄一の事業について、「近代産業の発展と社会問題」、「企業家の経営倫理問題(義と利及び論語と算盤)」、「社会救済事業」、「教育事業」、「文化出版事業」、「環境保護事業」という六つの観点から比較研究を試みることを目標としました。

 6月6日の会員総会における、プロジェクトリーダーの陶徳民教授(関西大学)の講演録が、『青淵』10月号に掲載されますので、詳細はそちらでご覧頂けます。

6月6日〜7日:日中韓実業交流史ワークショップ(楠本)

 1840年頃〜1930年代にかけて、アジアの中でどのような交流があったのかを−実業−という観点から探るワークショップを開催しました。招かれた参加者は、陵南大学のブライアン・ブリッジス、香港大学のプイタック・リー、Netherlands Institute for War Documentationのピーター・ポスト、そして当財団実業史研究情報センターの松崎裕子の各氏です。参加者の豊富な知識と経験の恩恵を受け、実際のセッションは、初めの予想を上回る豊かな内容のものとなり、考察する地域も東南アジアにまで広がりました。西洋主導ではない、アジアの中で生まれ育った近代化の動きと、国境を越えたプライベートな結びつきがその過程で果たした大きな役割に改めて目を開かされた2日間でした。このプロジェクトが今後どのように育っていくか楽しみなところです。

6月18日〜19日:2005年渋沢北米セミナー開催(部長・木村昌人)

 1999年以来5回開催した渋沢国際セミナー"Challenges for Japan"(日本の挑戦)の後を受け、今年からは国際交流基金・ミズーリ大学・開催校との共催で2年に1回渋沢北米セミナーを行うことになり、さわやかな初夏のカナダ・トロントで2005渋沢北米セミナーが開かれました。

 今回のテーマは"Japan as a Normal Country"(正常な国・日本)でした。中国、韓国、シンガポール、米国、カナダ、日本から参加した30人ほどの研究者が、国際政治経済・比較倫理思想・歴史的視点から、正常な国としての日本のあり方についての討論を行いました。提出された論文は、トロント大学出版会から渋沢日本研究シリーズの一環として出版する予定です。またトロント大学に最近設立されたThe Centre for Ethicsと、渋沢栄一と東西倫理思想に関する共同プロジェクトを近々開始する予定です。

 5月の儒教セミナーとトロントでのセミナーを通して、錦絵など実業史関連の展示・講演・セミナーをパッケージとして企画・実行するという手法が確立され、新しいタイプの財団活動として各方面から注目され始めました。

7月4日:第2回比較思想史研究会(岡本)

 6月号の「研究部だより」でお伝えした比較思想史研究会の第2回目が研究部にて行われました。今回は見城悌治先生(千葉大学)をお招きし、「戦時期日本の『偉人』表象とアジア」と題した報告をしていただきました。1930〜40年代の日本で、大東亜共栄圏の理念や満州開拓を背景とした農業の精神的方向づけの言説のなかに、二宮尊徳や大原幽学といった歴史上の人物が、農業に従事する日本人の模範として組み込まれていった軌跡をたどるお話をうかがいました。出席者からも多様な質問やコメントが次々と寄せられ、今回も充実した楽しい会となりました。

 次回は小檜山ルイ先生(アメリカ研究・東京女子大学)をお迎えし、9月21日(水)に開催します。

2005年度慶應義塾大学法学部寄附講座が終了しました。(木村)

(財)日本国際交流センターと当財団との共催で2004年から開始した慶應大学三田キャンパスにおける寄附講座「シヴィル・ソサエティ論―新公益論」では、『日本の行政改革―政府とシヴィル・ソサエティの役割分担の調整』と題して、4月26日〜7月5日、計6回の講演とそれに基づく大学院での討論を行いました。加藤紘一衆議院議員、ジェラルド・カーティスコロンビア大学教授、佐々木毅前東京大学総長、松沢成文神奈川県知事、太田達男公益法人協会理事長、中曽根康弘元総理の順に講演が行われ、毎回様々な角度から過去の行政改革について検証すると共に、シヴィル・ソサエティの役割を議論しました。


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