史料館だより

68 コロナ渦における渋沢史料館の活動

『青淵』No.868 2021(令和3)年7月号

 新型コロナウイルス感染症に不安な毎日が続いています。ワクチン接種が開始され、少しずつ明るい光が見えるようにも感じますが、まだまだ気の休まることがありません。会員の皆様におかれましてもご心配が続いていることと思います。引き続き、どうぞ皆様もお身体に気をつけてお過ごしください。

 去る四月に再び「緊急事態宣言」が発令され、東京にある博物館・美術館は、「臨時休館」を余儀なくされました。そのため、来館を希望される皆様の楽しみや、学びの時間が制限をされる状況となりました。

 「コロナ禍」のなかで、昨年から全国の博物館・美術館に勤務する学芸員や職員は、さまざまな試行錯誤を続けています。その一つが、オンラインを活用したものです。例えば北海道博物館が開始した「おうちミュージアム」には全国の博物館・美術館が賛同、参加をしており、各館が特色ある「おうちミュージアム」を展開しています。またユーチューブ(YouTube)などを通じて、各館の展示資料や展覧会の解説、ワークショップや読み聞かせ会なども実施されています。

 その一方、渋沢史料館においては、オンラインを活用した活動はあまり実施できていないというのが現状です。そのなかで当館における「乏しい」事例の一つがツイッター(Twitter)を使用した情報発信です。

 2017年に、晩香廬竣工100周年の記念事業「晩香廬だ・い・す・き」プロジェクトをもりあげるため、「晩香廬ツイッター」を開設しました。晩香廬に住んでいる仲睦まじい夫婦、19(イッキュー)さんと17(イーナ)さんが、イベントの告知や実況、日々の晩香廬リポート、館長や学芸員による晩香廬こぼれ話、関連情報などを発信するものでした。

 当館のこの公式ツイッターは、それなりにご好評をいただきましたが、晩香廬の記念事業が約一年間の限定事業であったため、事業の終了に伴い、ツイッターは「休眠」の状態となりました。そして、公式ツイッターの存在はそのまま忘れ去られていました。その後、2020年11月に当館がリニューアルオープンをする際、学芸員が、「19さんと17さんのツイートを復活したい」と提案したことから、「渋沢史料館公式アカウント」として再出発をして、現在に至ります。

 このツイッターでは、当館の開館やリニューアル内容、協力した新聞・雑誌・テレビ番組等の情報をはじめ、当館にまつわる日々の様子などを発信しています。特に、2021年2月からは、渋沢栄一が1867年にパリ万国博覧会に行った際の記録、栄一と杉浦譲の共著「航西日記」の記述を毎日紹介しています。

 そして本年のゴールデンウィークの期間には、ツイッターを通じて、「所蔵資料の紹介」を試験的に実施してみました。
 5月1日から9日まで毎日、学芸員が当館所蔵資料を一点ずつ、画像とともに紹介をするものです。紹介した資料は、「渋沢栄一肖像」(古希)、「横浜焼打の準備」(小山正太郎画)、「三字経」、「青淵文庫の装飾タイル」、「渋沢栄一書簡 福田彦四郎宛」(1853年10月)、「レコード・渋沢栄一演説」(御大礼に際して迎ふる休戦記念日に就て)、「手捏陶製花瓶」(福田直一作)、『徳川慶喜公伝』(特装版)、「渋沢栄一の遺言書」(1931年)、以上の計9点でした。

 準備の段階で、学芸員が資料のラインナップを相談し合い、140文字というツイッターの文字数制限に苦心しながら、資料の見どころを執筆しました。限られた中で渋沢栄一の資料をどう伝えるか、どうまとめるか、という作業は私たちにとっても良い勉強の機会となりました。そして、おかげさまで毎回ご好評をいただき、多くの「いいね」をいただきました。特に「大河ドラマ」の影響でしょうか、『徳川慶喜公伝』には、予想以上の反響をいただき、皆様の関心の高さを実感しました。

 この資料紹介はあくまで期間限定の試験的なものでしたが、方法などを検討しながら、ぜひ再チャレンジをしてみたいと考えています。さらに今後は、映像の配信などによる情報発信や普及事業などを検討しています。また、今秋には企画展の開催を予定しており、オンラインでの展示資料紹介や関連事業も検討できるかもしれません。ぜひご期待いただければと思います。

 「コロナ禍」という大変な状況ではありますが、当館は今後も渋沢栄一を伝える博物館として、栄一の姿を史実に沿いながら、皆様にさまざまな情報を伝えていきたいと思います。そして、社会教育施設として皆様の学びの場、生活の場にある博物館を目指していきたいと思いますし、それこそが当館の果たすべき役割であると思います。

 現在、当館は事前予約制、開館日時の限定という、皆様にはたいへんなご不便をおかけしながらの活動となっています。

 一刻も早く新型コロナウイルス感染症がおさまり、様々な制限がなく快適に、当館にご来館を頂けるようになることを願っております。

(渋沢史料館副館長・学芸員 川上恵)


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