史料館だより

67 新年度にあたって~2021年度の渋沢史料館~

『青淵』No.865 2021(令和3)年4月号

 若草が萌たち春も深まってまいりました。新型コロナウイルス感染症拡大による外出自粛等の影響で、今春の桜は、何か寂しげに感じられます。しかし、NHK大河ドラマ「青天を衝け」の放送が始まり、渋沢史料館のある東京・飛鳥山公園は静かに賑わっています。

 コロナ禍の現在、当館は従来のように、皆様には自由にご来館いただけない状況です。しかしながら、制限付きの開館であっても、できるだけ多くの皆様に安心してご来館いただけるように努力し続けるとともに、この状況に屈することなく成長し続ける博物館を目指します。そして渋沢栄一への興味関心が高まるなかで、当館にしかできない博物館活動を実施していくことを忘れずに、本年度も事業を展開してまいります。

(1)所蔵資料の維持・管理、充実

 博物館運営の中心部である、収蔵庫・書庫の除塵と清掃をはじめ、館内環境を調査し、より良い博物館環境を目指します。また所蔵資料の保存の観点から、マイクロフィルム撮影や複製の製作を実施し、資料の活用と公開を継続します。
 さらに所蔵資料をより充実させ、博物館活動の基礎を固めます。維持・管理だけでなく、継続して資料や図書の収集を行い、活用を図っていきます。また、近年増加傾向にある、新聞・雑誌掲載記事の収集も積極的に行います。

(2)調査研究事業 

 当館が成長し続けるため、その根幹となる調査研究活動を充実させます。学芸員がそれぞれ持つ研究テーマの探求を継続して行い、それを当館の活動に活かしていきます。そのためにも、コロナ禍で制限はありますが、できるだけ他の博物館等を視察し、展示手法、施設運営、博物館活動の全体を学ぶことを心掛けるほか、関係する学会、研究会などにも参加するように努めてまいります。

 また、昨年より渋沢栄一の肖像写真をはじめとした写真資料の利用希望が激増している状況です。そこで希望者への対応がスムーズとなるよう、写真資料の貸し出しに伴う手続きの電子対応の検討を始めます。今年度は、他館における電子対応の事例を参考にしながら、まずは当館業務に即した対応方法を検討し、実現するための調査期間を設けます。

(3)展示事業

 リニューアルオープン準備に伴い、縮小していた企画展、収蔵品展などの展示事業を通常のペースに戻していきます。まずは今秋、来春に企画展を開催します。そして次年度以降の企画展準備と調査研究もすでに担当学芸員が着手しています。さらに常設展示の展示替えも随時実施を予定し、渋沢栄一の書画などの諸資料もご紹介してまいります。
 また常設展示においては、新たな展示の楽しみ方として「デジタル・コンテンツ」の運用を予定していますので、ぜひご期待ください。

(4)教育普及事業

 新型コロナウイルスが収束し、社会が落ち着きを取り戻した際には、ご来館の皆様が集うことのできるような講座やワークショップなどを開催したいと、入念に準備をしています。

 これまで開催し、皆様に親しんでいただいている事業も再開してまいります。渋沢栄一命日を偲ぶ、「青淵忌」はその一つです。当館所蔵の栄一葬儀の映像をご覧いただく、貴重な機会としたいと思います。また重要文化財「晩香廬」、「青淵文庫」をテーマとして、ご好評いただいている「ミュージアムコンサート&レクチャー」や建築プログラムなども再開させる予定です。

(5)図書刊行事業

 当館の博物館活動を記録化した『渋沢史料館年報』を今年度も刊行します。この『年報』は、単なる活動記録だけでなく、学芸員の研究発表の場でもあります。是非、機会がございましたら、お手に取ってご覧いただければ幸いです。さらに、「渋沢栄一漢詩訳注本」、「英語版パンフレット」、「ガイドブック」、企画展の図録などの刊行を予定しております。

(6)渋沢史料館のPR

 大河ドラマや新札肖像などをきっかけに、当館の活動を多くのメディアでご覧いただくことが増えていることと思います。ただ、それに甘んじることなく、渋沢史料館の活動をあらためて皆様に、そして広く周知するための広報活動をさらに充実させます。またコロナ禍においては、当館のウェブサイトでの入館事前予約システムを継続してまいります。

(7)国指定重要文化財 晩香廬と青淵文庫の内部公開

 渋沢史料館は、かつて渋沢栄一が過ごした「旧渋沢庭園」跡地に建っています。現存する大正建築「晩香廬」と「青淵文庫」は、栄一の息遣いを今に伝える貴重な建築です。

 動態保存を念頭におき、「晩香廬」と「青淵文庫」の内部公開のほか、展示空間として、さらには講座やワークショップを実施する場として活用していきます。展示事業や教育普及事業を通じて、大正建築の素晴らしさとともに、栄一が過ごした飛鳥山の歴史的な意義を皆様にお伝えしてまいります。

(8)史料館運営

 ご来館いただく皆様に安心してご見学いただける館内環境を維持するよう努めてまいります。そのためにはまずは学芸員をはじめ職員一同が、感染症への予防対策、健康管理を徹底します。また館内の換気、消毒、清掃なども継続して徹底をしていきます。さらに施設の定期点検や修繕など、安定した館内環境を維持してまいります。

 その他、ミュージアムショップ「青淵商店」のオリジナルグッズを充実させるなど、ご来館いただく皆様により一層楽しんでいただけるよう努めてまいりたいと考えております。

 以上が、2021年度に予定している活動概要です。当館が活動するにあたっては、学芸員だけで実施することはできません。当財団の会員の皆様をはじめ、財団職員、受付職員など多くの力や励ましをいただいて、初めて実現ができます、そして何よりもご見学いただく皆様がいらしてこそ、「渋沢栄一」を紹介する博物館として活動ができます。

 本年度も皆様にお力添えをいただき、ご指導を賜りながら、丁寧に渋沢栄一を伝える活動をしてまいります。どうぞよろしくお願い申し上げます。

(渋沢史料館副館長 川上恵) 


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