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『青淵』No.793 2015(平成27)年4月号
今年度は、①企画展(企業の原点を探るシリーズ)を通して展示手法等の試行、②史料館常設展示リニューアル・再構築の本格的検討といった重点目標を掲げ、今年度もほとんどは継続事業となりますが、以下のような事業を展開させます。
渋沢栄一の事績・思想及び生きた時代等、周辺を伝える展示を行います。常設展示では、書画コーナーの展示替えを2回、定例で書簡コーナーの展示替えを行います。
書画コーナーの展示替えの1回目は、富岡製糸場との関わりも含めた「一八七三年ウィーン万博と渋沢栄一」とする収蔵品展の開催を6月から9月にかけて予定しています。
企画展示では、現在、企画展「近代紡績のススメ―渋沢栄一と東洋紡」(3月14日~5月31日)を開催中で、研究部主催の関連シンポジウムも2回予定されていますが、2015年度も引き続き「企業の原点を探る」シリーズの企画展を開催予定です。秋季には「渋沢栄一と銀行業(仮)」(会期:2015年10月3日(土)~11月29日(日)で検討)を開催します。
本展の狙いは、日本において近代的銀行としてスタートする第一国立銀行の創設にいたる過程を中心に据えて、銀行業の育成状況と渋沢栄一との関わりを様々な関係資料を通じて、紹介します。今日、改めて銀行業の意義を考えるため、栄一の考えを交えながら、その原点を探っていくことを狙いとしています。
そして、今年度春季には「渋沢栄一と清水建設(仮)」(会期:2016年3月中旬~5月末で検討)を開催します。当館本館、そして隣接し、現存する「晩香廬」「青淵文庫」の建築とも深く関わり、創業以来、栄一を尊敬し、その精神を受け継いで事業を続けてきた清水建設株式会社の事例を通じて、栄一の建築業への関わり、考えを探っていきたいと思っています。
両展とも、関連イベントとしてシンポジウム等各種イベントを予定しています。
2011年からの中期計画と合わせてスタートさせた「企業の原点を探る」シリーズの企画展が一つの区切りを迎えますが、ここまでの成果をまとめ、現在そして将来の企業、財界のあり方を考えるヒント等が提供できればと考えています。
その他に、閲覧コーナー、エントランスコーナーを活用しての展示も考えています。
より一層の資料整備を図ることとし、資料の保存という観点からと活用という観点から、情報資源の大元を整備します。
例年通り、館内の環境調査をはじめとして、虫・黴対策としての収蔵庫及び書庫の除塵・防黴作業として、文化財清掃、資料のくん蒸、劣化した資料の修復、写真・映像フィルムの整理・保存処置、美術工芸資料の整備、資料活用に向けての一次資料のマイクロフィルム・デジタル画像への代替化、複製資料の作製及び製本などの調整作業、さらに、滞っていた兜稲荷社保存処置等を行います。
学校や企業からの来館対応や、依頼を受けての出張授業などの学習支援事業、「ウィーン万博と渋沢栄一」をテーマとする収蔵品展に合わせて2回の講座開催を予定しています。
また、重要文化財の建物を活用した企画を充実させます。案内の充実のみならず、青淵文庫でのコンサート等も予定しています。
渋沢栄一命日記念の企画(入館無料デー、生前の栄一を映す映像の上映、展示・建物の特別解説、記念品の贈呈等)を今年も同様に行います。
さらに、定着した飛鳥山3つの博物館合同事業(クイズラリー、区民まつりへの参加、街めぐり、飛鳥山をベースにした座学「飛鳥山一日大学」等)を通して地元・東京都北区へさらに溶け込んでいくことを期待したいと思っています。
渋沢栄一の事績・思想及び周辺事象や史料館活動を広く知らしめるため、または記録として残すために、図書類を刊行します。
昨年度より、館の事業報告に論文や資料紹介、調査報告等を加えた年報、前年度開催した収蔵品展の記録・講演集、『渋沢研究』28号等の発行を予定しています。
例年通り、国内・外における渋沢栄一及び実業史関係も含む周辺事象に関係する資料(原資料だけでなく、二次的媒体に変換されたものも含む)・情報(関係資料の所蔵先、関係の出版物、研究発表、聞き取り情報等)の集積を行います。
史料館(学芸)活動の基底部分をなすものであり、館活動の深化へとつながるものです。今年度も、日々増加傾向にありますレファレンス対応の調査に加え、渋沢栄一および周辺に関するオーラルヒストリー、穂積歌子日記の翻刻により内容を読み解く作業を継続させます。
さらに、調査・研究の一環として、資質の向上を含めた意味で博物館等の視察、各種研究会、学会、研修会へも例年通り積極的に参加します。
国指定重要文化財である青淵文庫・晩香廬の内部公開と同時に、ミュージアムグッズの開発・製作、そして、重点目標にも掲げました常設展示リニューアル・史料館再構築に向けて本格的な検討などを進めていきたいと思います。
最後に、先述の通り、2011年度からの中期計画の締めくくりとなりますが、その成果をしっかり見据え、次期中期計画につなげていきたいと思います。今年度も史料館の活動を暖かく見守り続けていただきますようお願い申し上げる次第です。
(館長 井上 潤)