史料館だより

24 2007年度の渋沢史料館事業

『青淵』No.697 2007年(平成19)4月号

 開館25周年を迎える渋沢史料館の2007年度は、最初に、本館改築工事に伴う長期休館についてお伝えしなければなりません。
 渋沢栄一記念財団は、ここ数年大きく成長し、事業と同時に組織規模を拡大させて参りました。それに伴い、業務施設の拡充も必要にせまられ、本年、本館建物の改築に着手することにし、つきましては、5月7日(月)〜10月31日(水)の期間、渋沢史料館を休館することに致しました。
 その他に今年度の目標・課題として、(1)資料整備事業の強化(資料の保存対策の本格稼動、資料管理・検索システムの稼動)、(2)飛鳥山3つの博物館10周年事業にむけての対応、(3)リニューアル計画の検討を掲げ、以下に示すような事業を展開させます。

展示

 今年度は、改築工事のため、秋の企画展は実施しない予定です。
 2008年春季(今年度末)の企画展が、飛鳥山3つの博物館10周年記念展となります。3館が「王子・飛鳥山」を共通テーマに掲げ、それぞれ個別の企画展を予定していますが、当館は、「地域の人々と渋沢栄一(仮題)」ということで、渋沢栄一と現在の東京都北区、王子、飛鳥山、旧滝野川町との関係を示すと同時に、活動の拠点とした飛鳥山邸に訪れた人々を紹介する展示をいくつかの付帯事業と共に予定しています。
 その他に企画展示室・書画コーナーを会場としてのミニ企画展や、常設展示・書簡コーナーの展示替えなどを予定しています。
 また、さらに将来の企画展の準備として4つの調査・研究を行なうことにしています。1つは、2008年度秋季企画展(飛鳥山3つの博物館10周年記念の一環)、2つ目は、2009年度に予定しているフランス・アルベール・カーン博物館との共同展示、3つ目は、実業史関連として開催予定の陶磁器展覧会、そして最後は、以前、日米の近代化・産業化の比較を試みる展覧会を開催したが、そこにアジアを視野に入れて日米中の比較を行なう展覧会です。以上のような展覧会の準備に着手し始めることとなっています。

資料整備

 昨年度に引き続き、より一層の資料整備の強化をはかることとしました。資料の保存という観点からと活用という観点から、具体的に次のような作業を行うことにしています。
 虫・黴対策としての収蔵庫及び書庫の除塵・防黴作業、資料のくん蒸、資料活用に向けての一次資料のマイクロフィルム・デジタル画像への代替化、複製資料の作製、劣化した資料の修復、写真・映像フィルムの整理・保存処置などを行います。また、屋外資料として旧渋沢邸内の兜稲荷社の石造狐の保存処置にも取り組む予定です。その他、資料整理用品・保存器材の調製を行い、収蔵庫内の環境整備などに着手します。
 この事業の強化が史料館業務への強化にも繋がるところです。

教育普及(コミュニケーション)事業

 今年度は、改築工事を終えた11月の再開館以後の後、特に秋季に行なう予定です。東京都教育庁が主催する「文化財ウィーク」に合わせた企画として晩香廬・青淵文庫といった重要文化財に因んだ講演会や、11月11日の渋沢栄一命日記念の企画、学校出張授業、閲覧コーナーでの企画などを行います。

図書等の刊行

 今年度は、昨年度より準備を進めてきた建物案内パンフレット、昨年度刊行出来なかった一昨年開催した展覧会「日米実業史競」の関連講演会講演集、『晩香廬保存修理工事報告書』、『曖依村荘小史』、『渋沢研究』20号を刊行したいと考えています。

資料収集

 例年通り、国内・外における渋沢関係及び実業史関係資料(原資料だけでなく、二次的媒体に変換されたものも含む)・情報(関係資料の所蔵先、関係の出版物、研究発表、聞き取り情報等)の集積を行います。

調査・研究

 史料館(学芸)活動の基底部分をなすものであり、不断の綿密な調査・研究の成果の蓄積が今後の博物館活動の深化へとつながるものです。さらに、調査・研究の一環として、資質の向上を含めた意味で博物館等の視察、各種研究会、学会、研修会へも従来通り積極的に参加します。飛鳥山3つの博物館10周年事業(シンポジウム等)の調査研究、建築関係の調査・研究を進めます。

その他

 国指定重要文化財である青淵文庫・晩香廬の内部公開(休館中は行いません)、常設展示リニューアルにむけての検討、ミュージアム・グッズの開発、昨年からスタートした防災対策事業の他、現状の常設展示の中で傷みのある箇所や訂正を要する解説パネルなどの修正作業にも着手したいと考えています。
 以上のように、6ヵ月におよぶ休館中もけっして事業が停止しているわけではありません。むしろ、休館であるからこそ出来る部分に力点を置き、再開館した際に、さらには将来の渋沢史料館が、利用者の皆様にとってより利用しやすく、より質の高い情報が発信出来るように、いわゆる「充電期間」として捉え、さらなる飛躍に通じるように努力して参りたいと考えています。皆様のご理解を賜り期待を寄せて見守っていただければと存じます。

(館長 井上 潤)


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