情報資源センターだより

62 情報資源センターがデジタルアーカイブ学会第1回学会賞(実践賞)を受賞

『青淵』No.842 2019年5月号|情報資源センター長 茂原暢

 2019年3月15日(金)、情報資源センターはデジタルアーカイブ学会第3回研究大会において、同学会の第1回学会賞(実践賞)を受賞しました。この「実践賞」は「デジタルアーカイブの構築・運用・普及・継続発展等に優れた貢献をした個人・機関・団体を対象」とするもので、授賞理由にはデジタル版『渋沢栄一伝記資料』、「渋沢社史データベース」、「実業史錦絵絵引」を例に挙げ、工夫を凝らしたデジタルアーカイブの公開を行うだけでなく、継続的な拡充を図っていることが「優れたデジタルアーカイブの実践」である旨、記されていました*)

 情報資源センターにとって今回の受賞は「グッドデザイン賞」(2009年)、「Library of the Year優秀賞」(2009年)、「図書館サポートフォーラム賞」(2017年)に次いで4回目となるものです。グッドデザイン賞では「実業史錦絵絵引」を、Library of the Yearでは「研究機能をもつことによって情報・知識の生産を行っている点、アーカイブ・博物館と連携し、WEB配信を駆使して、図書館の枠を超えた活動をしている点」を、図書館サポートフォーラム賞ではデジタル版『渋沢栄一伝記資料』により「以後の史資料の公開に際して、モデルとなる事例を構築したこと」をご評価いただきました。今回の実践賞受賞にあたり印象的だったのは、これらのデジタルアーカイブをビジネス・アーカイブズ関連事業と結びつけ、「ビジネス・アーカイブズという基盤を押さえつつ、デジタルアーカイブを展開していることに価値がある」という声が聞かれたことでした。

 情報資源センターのビジネス・アーカイブズ関連事業は「社史プロジェクト」のひとつで、取り組みの内容は前回の「情報資源センターだより」で触れられているとおりです。現在では「世界/日本のビジネス・アーカイブズ」とメールマガジン「ビジネス・アーカイブズ通信」に注力していますが、ビジネス・アーカイブズ振興のため、特に前者では国内外の優良事例を広く紹介するとともに、本質的なデジタル社会の到来により不可避となるデジタル記録の問題も扱っています。

 そして公文書改ざん問題でもわかるように、アーカイブズは「倫理」や「信用」と密接に関わるものであることから、情報資源センターではビジネス・アーカイブズを「道徳経済合一説の現代的実践」と位置づけています。「ビジネス・アーカイブズという基盤を押さえつつ、デジタルアーカイブを展開している」ことに価値が見出されたということは、ビジネス・アーカイブズ関連事業がデジタルアーカイブに「信用」を与えたという点において、情報資源センターの事業が適切にデザインされていることの表れと言えるかもしれません。「公益財団法人渋沢栄一記念財団中期計画 : 2016年度~2020年度」には、情報資源センターのミッションのひとつとして「利用者のニーズを把握し、外部評価を収集すること」と書かれています。今回の受賞は我々の励みとなる以上に、情報資源センターの事業における重要な指針となることでしょう。

 授賞式では簡単なスピーチを行いました。その際に用意した原稿を、ここに記録として掲載したいと思います。

* * *

 この度はデジタルアーカイブ学会第1回学会賞として「実践賞」を情報資源センターにお授け頂き、誠にありがとうございます。渋沢栄一記念財団というメジャーではない団体の、情報資源センターという小さな部署が、そうそうたるデジタルアーカイブ関係者の皆様とともに第1回目の受賞者に選ばれるなど夢にも思ったことはなく、大変光栄なこととスタッフ一同感激しております。

 財団における情報資源センターの役割は、この社会をより善いものとするため、渋沢栄一の経験や考え方に誰でもアクセスできるよう、「渋沢栄一を社会の中に埋め込むこと」、そして「埋め込むための器を作ること」です。資料集『渋沢栄一伝記資料』のデジタル版公開は前者、栄一が作り上げた世界を社史に求め、その目次や索引を検索できるようにした「渋沢社史データベース」や、栄一が生きた時代の視覚的(ビジュアル)な索引とも言える「実業史錦絵絵引」の作成は後者に属する事業です。

 閲覧施設を持たないセンターにとって、デジタルアーカイブの開発は「運命」とも言えるものでした。10年以上前にプロジェクトが動き始めてからは毎日が挑戦の連続で、本当に多くの方々からお力添えをいただかなければならないことばかりでした。これまでにご協力いただいた皆様には、この場をお借りして御礼申し上げる次第です。

 そして、センターの発足から16年にわたり、これらの課題に果敢に取り組んできたスタッフひとりひとりの苦労と努力を称え、このご挨拶を終えたいと思います。

 情報資源センターの挑戦は今後とも続いて参ります。さらなるご指導・ご鞭撻の程をよろしくお願い申し上げます。本日はありがとうございました。

*) 学会賞 | デジタルアーカイブ学会
 http://digitalarchivejapan.org/about/awards


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