情報資源センターだより

30 2011年3月11日、東日本大震災

『青淵』No.746 2011年5月号|実業史研究情報センター 専門司書 茂原暢

地震発生当日の様子について

 2011年3月11日金曜日14時46分、北海道から関東にかけての広い範囲で地震がありました。それは、明治以降、日本が経験したことのない大きな規模の地震であり、揺れや津波、火災などで本当に多くの方々が被災されました。この原稿を書いている4月1日現在、警察庁のまとめによると、亡くなられた方と行方不明の方の総数が2万8000人を超え、17万人近くの人々が避難所で生活を送られているということで、まさに言葉もありません。亡くなられた方に心からのお悔やみを申し上げると共に、被災地の皆様方には謹んでお見舞いを申し上げます。

 地震発生時、実業史研究情報センターの職員は地下の執務室と財団1階にある会議室等で仕事をしておりましたが、幸いなことに渋沢史料館の来館者の方はもちろんのこと、センターを含む財団の職員に怪我などはありませんでした。また、今回の地震は東西より南北方向への揺れの方が大きかったようで、書庫の北側の壁に立てかけていた棚板が倒れることはありましたが、書庫や収蔵庫の資料に被害はありませんでした。

 地震当日は交通機関、特にJRの運転が終日中止されたこともあり、財団裏手にある本郷通りは車が渋滞するだけではなく、これまで見たこともなかったほど多くの人々が、遅い時間まで家路を急いでおられました。電話も通じにくくなり、携帯でのメールのやりとりにも支障を来すようになっていましたが、インターネットを通じた情報交換は活発に行われていました。特に短文投稿サービス「Twitter(ツイッター)」を通じて都内の交通状況や避難所についての情報が数多く発信され、携帯電話やスマートフォンなどでその情報を確認しながら行動された方も多かったように見受けられました。

インターネットを通じた災害・復興支援

 さて、2009年5月号の「センターだより」でもお伝えしたように、実業史研究情報センターではブログを開設しています。今回の震災にあたっては、記録の意味も込めて、いわゆる「MLA」つまり「M=Museum 博物館」「L=Library 図書館」「A=Archives 文書館」が「どのような状況にあるのか」「どのような対処を行っているのか」がわかるサイトや、検索エンジンがインターネットを通じて行っている災害・復興支援活動などを集めたリンク集の作成を行い、2011年3月14日、ブログに掲載いたしました。
 そのリンク集に掲載した中でも「@wiki (アット ウィキ)」というサービスを利用した「savemuseum@ウィキ・東日本大地震によるミュージアムの被災情報・救援情報」、「savelibrary@ウィキ・東日本大地震による図書館の被災情報・救援情報」、「savearchives@ウィキ・東日本大地震によるアーカイブズ関連施設の被災情報・救援情報」の活動には目を見張るものがありました。これらはMLAの関係者を中心に、地震直後から自発的に行われているもので、ツイッターをはじめ、インターネット上に大量に流れているMLA各館の被災情報・救援情報・開館情報などをネットの濁流の中からすくい上げ、一定の書式にまとめることで、非常に多くの情報が整理され、誰でも参照可能な状態となりました。なお、これらの活動は現在「SaveMLAK 博物館・美術館、図書館、文書館、公民館(MLAK)の被災・救援情報サイト」として統合され、新たなスタートを切っています。

 また、検索エンジンを運営する会社の積極的な活動には驚くべきものがありました。Googleは震災当日の3月11日、「災害に関する情報や、被害状況をリアルタイムで更新」する特設サイト「東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)」や行方不明者の消息情報を検索できるようにする「パーソンファインダー Person Finder」の提供を行い、その後も自社のテクノロジーを活用した復興支援活動を続けています。Yahoo! JAPANは災害に関わる情報を幅広く集めた「地震・津波災害に関する情報」や「被災地別支援情報」の提供、検索結果に東京電力の計画停電の情報を表示する機能の開発などを行っています。ちなみにAFPBB Newsの「グーグル社員、勤務時間の20%で地震被災者を技術支援」という記事によると、Googleの災害援助ツールは、有名な「20%ルール」(「20%の時間は自分の好きなことを自由にやっていてもよい」というGoogleのルール)を使って開発されているのだそうです。

明るい笑顔を取り戻すために

 事態は依然として流動的で、予断の許されない状況が続いています。さまざまな災害・復興支援活動が実を結び、日本という国が少しでも明るく穏やかな方向に向かって行くことを願わずにはおられません。センターでは「復興への一助となれば」という思いから、ブログでは引き続きMLAKに関わる震災関連情報の集約を行うと共に、新しく「社史に見る災害と復興」という記事の連載を行う予定です。また、財団ウェブサイトでは渋沢栄一と災害・復興に関するコンテンツの作成などを計画しています。

 私たちは飛鳥山より、被災地の一日も早い復興を切に祈っております。被災者の皆様に明るい笑顔が戻りますように。

(実業史研究情報センター専門司書 茂原暢)


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