情報資源センターだより

22 センター・ブログの1年 「情報の扉の、そのまた向こう」

『青淵』No.722 2009年5月号掲載|実業史研究情報センター 専門司書 茂原暢

 みなさんは「ブログ」ってご存じですか?
 一般的には、インターネット上でつける「日記」のことだと言われています。たいていのブログには「日付」が付いていて、日々、誰でも簡単に情報を追加・更新できるところが特徴です。飛鳥山の桜の様子や東京・渋谷で1,000円ランチをしたことなど様々な事柄が、文章だけではなく写真や動画などと共に記述され、世界中の人々に読まれています。
 最近では、研究機関や専門情報機関でもブログを開設するところが増えており、学術情報の発信ツールや広報媒体として利用されることも多くなってきました。わからないことがあるとパソコンや携帯電話からインターネットに接続し、検索エンジンで調べ物をすることが当たり前のこととなっている時代のニーズに応えようというわけです。実業史研究情報センターでもウェブサイトに加え、昨年の2月13日に公式ブログを開設しました。おかげさまで、約1年を経た2009年3月にはブログの閲覧数を表わすカウンターの数字が「30,000」を突破しました。
 センターのブログで発信する内容は、日付がついた仕組みであることを活かした「今日の栄一」などの渋沢栄一関連情報、社史年表や社史紹介など社史に掲載された内容を扱う社史関連情報、アーカイブズや専門図書館にとって有用と思えるインターネット上のニュース、そして実業史研究情報センターの最新情報、という四本柱からなっています。ブログの記事の更新は月曜日から金曜日までの平日、これまでにほぼ300日分の記事を作成・発信してきました。
 センターがブログを開設する前、インターネットの世界の中で渋沢栄一関連の情報は決して充実しているとは言えませんでした。ご存じのように、栄一は500を越える企業の設立・育成、600を越える公共事業に関係を持ったと言われていますが、「渋沢栄一」と会社名を掛け合わせて検索しても、なかなかこれといった情報に巡り会うことはありませんでした。しかし、センターでブログを始めて1年が経過した今、たとえば検索エンジン「Google」で「渋沢栄一 第一銀行」「渋沢栄一 王子製紙」「渋沢栄一 東京瓦斯」を検索すると渋沢栄一記念財団のサイトに加え、センター・ブログで発信したさまざまな情報が表示されるようになってきました。ちなみに、この原稿を執筆している2009年3月19日18時57分の時点で「渋沢栄一 東京瓦斯」をGoogleで検索すると、検索結果の1番目と2番目がセンター・ブログに掲載した東京瓦斯の社史に関する記事、3番目には「渋沢栄一関連会社社名変遷図 瓦斯A」の情報、4番目には渋沢栄一記念財団の「渋沢栄一Q&A」(Q2. 渋沢栄一が関わった会社は現在どうなっていますか。ゆかりのある会社で現存しているのはどこですか。)が表示されています。
 不思議なことではありますが、このような様を見続けていると、まるでインターネットの世界の中に「渋沢栄一」という人物とその事績を溶かし、染み込ませているような錯覚に陥ることがあります。これからは、いろいろなところで栄一の名前に接する機会が増えていくことでしょう。
 確実な情報と不確実な情報が混在し、どのような情報も一瞬で飲み込まれていくインターネットの世界。センター・ブログは情報と情報を結びつけて整理・集約し、混沌とした世界に有益な情報への扉を開いています。
 今年は「渡米実業団」から100周年にあたります。その記念事業の一環として、この夏より、センター・ブログでは渡米実業団の動向を日々追ってゆく予定です。どうぞご期待下さい。

実業史研究情報センター・ブログ「情報の扉の、そのまた向こう」
http://d.hatena.ne.jp/tobira/

(実業史研究情報センター 茂原 暢)


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