情報資源センターだより

19 「今月の栄一」「渋沢栄一関連会社社名変遷図」を本誌『青淵』に連載開始

『青淵』No.713 2008年8月号掲載|実業史研究情報センター長 小出いずみ

 実業史研究情報センターは、世に言うバーチャル・ライブラリーです。センターの事業成果は、インターネット上で広く一般に提供されています。渋沢栄一について、あるいは関連する事象について、インターネットに接続すれば、いつでも誰でもどこにいても調べられるように、ウェブ上で情報提供を行っています。
 とはいうものの、インターネットをご覧にならない方も多いと思われます。そこで、とくに本誌『青淵』読者がご興味をお持ちではないかと思われるものについて、連載していくことになりました。一つは、すでに7月号から連載を開始した「今月の栄一」、もう一つは9月号から開始予定の「渋沢栄一関連会社社名変遷図」です。

「今月の栄一」
 このシリーズは、その月のある日の栄一の出来事を取り上げます。出来事の記述は『渋沢栄一伝記資料』の目次から選んでいます。目次は古い文体ですが、「是日」「是より先」などで始まる短い文章により、栄一の活動を要領よくまとめてあります。例えばこれを書いている6月27日では、明治32年(栄一59歳)に、「是日栄一、徳川慶喜・井上馨を飛鳥山別邸に招き、新築の茶室に於て午餐を呈す」という記述があります。「今月の栄一」では、このような目次の文章を取り上げて、短いメモを加えて掲載します。
 長寿であった栄一にとって、たとえば8月は92回あったわけです。その中からどのような項目をご紹介するか、楽しみであるとともに悩ましいところでもあります。日本中におられる『青淵』読者を思い浮かべながら、その出来事のゆかり場所が全国にわたるように、というのが選択方針の一つです。
 栄一は実にたくさんの仕事をしたので、その全体像に圧倒され、かえって一つ一つの経済活動や社会活動が見えにくくなることがあります。「今月の栄一」でご紹介することによって、あらたな角度で事績を確認できれば、と願っています。
 この連載は、着々と進んでいる『渋沢栄一伝記資料』データベースを利用したものです。いまウェブではほぼ毎日「今日の栄一」が掲載され、更新されています。
http://d.hatena.ne.jp/tobira/

「渋沢栄一関連会社社名変遷図」
 渋沢栄一は500に上る企業の設立に関係した、と言われています。ただ、会社の名称は、時代を経るにしたがい合併や社名変更によって変わっていきます。栄一が係った会社がその後どうなったのか、今のどの会社につながるかについて確認する資料は、これまでまとめられていませんでした。社名の変遷がわかれば、現在のある会社、またある時期のある会社が渋沢に関係するのかどうか、判断することができます。
 そこでセンターでは、『渋沢栄一伝記資料』目次に掲載されている会社について社名がどのように変遷したか、各社の有価証券報告書や社史などを基に調査してきました。その結果を業種ごとの社名変遷図としてまとめ、順次ウェブ上で提供しています。6月末現在、13業種61会社を掲載しています。
 社名変遷図を作ってみてわかったのは、栄一関連会社のその後だけではありませんでした。そもそも、どんな会社にいつ関わったのか、図中の会社名に○栄の印がついて、一目瞭然になりました。社名の使用期間も付いています。
 『青淵』には、業種ごとに作成された変遷図を一枚ずつ、9月号から連載いたします。全体で100枚位になると思われます。これを全部集めると、栄一の係わった会社が現在どう生きているのか、時間軸を経た今の姿が浮かびあがります。
 ウェブ上では、どのような資料に基づいて変遷を調べたか、典拠資料も紹介していますので、こちらもぜひご覧下さい。
http://www.shibusawa.or.jp/eiichi/companyname/index.html

(実業史研究情報センター長 小出いずみ)


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