ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信)

第81号(2019年6月29日発行)

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☆      □■□ ビジネス・アーカイブズ通信 □■□

☆       No.81 (2019年6月29日発行)

☆    発行:公益財団法人 渋沢栄一記念財団 情報資源センター

☆                        〔ISSN:1884-2666〕
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この通信では海外(主として英語圏)のビジネス・アーカイブズ(BA)に関する情報をお届けします。

海外BAに関わる国内関連情報も適宜掲載しております。

今号は文献情報4件です。

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◆ 目次 ◆

[掲載事項の凡例とご注意]

■文献情報:標準化 1
◎JIS法改正(産業標準化法)

■文献情報:標準化 2
◎「標準化」とその意義を理解するための文献案内

■文献情報:アーカイブズ論文集 9
◎ICA会誌 "Comma" 2017/2号 目次

☆★ 編集部より:あとがき、次号予告 ★☆

・国立公文書館のアーキビスト認証準備委員会

・購読ご継続への御礼

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[掲載事項の凡例]

・欧文の場合、日本語で読みやすいものになるように、タイトルははじめに日本語訳を、続いて原文を記します。
・人名や固有名詞の発音が不明の場合も日本語表記を添えました。便宜的なものですので、検索等を行う場合はかならず原文を用いてください。
・普通名詞として資料室や文書室、物理的な記録資料を表現する際は「アーカイブズ」を用います。固有名詞の場合はこの限りではありません。また物理的およびデジタル記録資料の蓄積や組織化に関しては「アーカイブ」「アーカイブ化」「アーカイビング」などの表現を用いることもあります。

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[ご注意]
・受信時にリンク先を示すURLが途中で改行されてしまう場合があります。通常のURLクリックで表示されない場合にはお手数ですがコピー&ペーストで一行にしたものをブラウザのアドレス・バーに挿入し、リンク先をご覧ください。

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■文献情報:標準化 1

JIS法改正(産業標準化法)

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◎JIS法改正(産業標準化法)
https://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun-kijun/jisho/jis.html

企業のアーカイブズも、物理的な資料(紙文書、製品やパッケージ、ポスター等)とそれをデジタル化したデジタル化資料のみでなく、すでに最初からデジタルなかたちで作成された文書、オブジェクトといった情報を扱うようになってきています。これらのものを適切に収集・整理・保存・管理していかないと、これからの年史制作は多大な困難を伴うであろうことが容易に予想されます。そのように考えると、社史、年史の典拠となる社内文書情報その他のデータ作成や保存に関して、担当者はその標準(規格)や標準化の動向に通じている必要があるでしょう。

そういったなか、2018年度(平成30年度)第196通常国会において、「不正競争防止法等の一部を改正する法律」(法律第33号)が可決成立し、工業標準化法が一部改正されて「産業標準化法」に代わりました。これとともに日本工業規格(JIS)は日本産業規格(JIS)に変わります。施行日は2019年7月1日です。

経済産業省はこの法改正の背景、目的について次のように述べています。

「第四次産業革命の下、IoTやAIなどの情報技術の革新が進み、企業の競争力は、データやその活用に移り変わってきています。こうした中、ビッグデータ等と産業とのつながりにより新たな付加価値が創出される産業社会(コネクテッド・インダストリーズ)への対応が、我が国産業の喫緊の課題となっています。

また、近年では、モノだけではなく、マネジメント分野、サービス分野等の規格が制定されるようになったほか、第4次産業革命の中で自動走行、スマートマニュファクチャリングなど業種を越えた国際標準化が進みつつあり、標準化の対象やプロセスにも変化が現れています。

様々な環境変化に対応するため、日本における標準化活動の基盤となっている工業標準化法について、(1)データ、サービス等への対象拡大、(2)JISの制定・改正の迅速化、(3)JISマークによる企業間取引の信頼性確保、(4)官民の国際標準化活動の促進を図る改正を行います。」

同法改正に関するページでは、この法改正のポイントを簡明に表した図表をみることができます。
https://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun-kijun/jisho/jis.html


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■文献情報:標準化 2

「標準化」とその意義を理解するための文献案内

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◎標準化を知るための文献

社内文書や製品をはじめとする企業活動に関わる文書の作成や各種情報のアウトプットがデジタルデータによるものに置き換わりつつあります。それらの収集・整理・組織化、保存と活用の今後を展望すると、標準化や規格の問題は企業アーカイブズとも無縁ではありません。

アーカイブズや社内文書作成に関連する個々の標準や規格を取り上げる準備として、まずはそもそも「標準化」とは何かということを理解することが大切でしょう。今号では標準化についての理解に役立つ、日本語の参考文献を紹介します。このテーマに関しては、国際標準化機構(International Organization for Standardization:ISO)の国内審議団体を引き受けている一般社団法人情報科学技術協会(INFOSTA)の会誌が過去何度かにわたり、「標準化」をテーマにした特集号も発行しています。

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(1)宮澤 彰, 標準化の世界, 情報の科学と技術, 2017, 67 巻, 11 号,
p. 594-599, Online ISSN 2189-8278, Print ISSN 0913-3801,
https://doi.org/10.18919/jkg.67.11_594
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jkg/67/11/67_594/_article/-char/ja

(2)宮澤 彰, 標準化の世界(<特集>ISOと標準化), 情報の科学と技術, 2015,
65 巻, 8 号, p. 328-334, Online ISSN 2189-8278, Print ISSN 0913-3801,
https://doi.org/10.18919/jkg.65.8_328
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jkg/65/8/65_KJ00010005170/_article/-char/ja

(3)宮澤 彰, 総論:情報標準の世界(<特集>情報活動と標準規格), 情報の科学
と技術, 2006, 56 巻, 7 号, p. 302-306, Online ISSN 2189-8278, Print
ISSN 0913-3801,
https://doi.org/10.18919/jkg.56.7_302
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jkg/56/7/56_KJ00004336730/_article/-char/ja

(4)小谷 允志, 文書・記録の標準・規格(<特集>情報活動と標準規格), 情報の
科学と技術, 2006, 56 巻, 7 号, p. 317-322,Online ISSN 2189-8278, Print
ISSN 0913-3801,
https://doi.org/10.18919/jkg.56.7_317
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jkg/56/7/56_KJ00004336733/_article/-char/ja

(1)-(3)の著者宮澤彰氏は、長らく情報分野における標準化に関わってこられた国立情報学研究所名誉教授です。この3つの文献を読むと、標準のタイプ、標準化の対象分野、標準の種類(国際標準、国家標準、業界標準)、標準化における最近の動向、国際標準のひとつISOにおける標準化手続き、標準化の意義と課題を知ることができます。

(4)の著者小谷允志氏は、レコード・マネジメントに関する専門団体ARMAインターナショナル東京支部顧問で、元記録管理学会会長です。(4)は2006年発行ですが、小谷氏の多数の著作のうち、文書・記録の標準類をひととおりカバーした文献として有用です。

*・・・*・・・*・・・*・・・*・・・*・・・*・・・*・・・*

さてここで、(3)の本文から次の一節をご紹介いたします。

「情報標準の意義に理解を求める活動は,二重に難しい。情報そのものの作成・保存・提供という活動が,もともと裏方の仕事であり,その意義を認められにくい性格を持っている。特に日本では,情報の意義が無視されやすいと感じているのは筆者だけではないだろう。情報標準は,その情報の作成や流通を円滑にするためのもので,いわば縁の下のさらに下を支える活動である。このため,図書館など情報サービスに関わる人々からも,十分理解されているとは言い難い。」

経産省の文書は「第四次産業革命の下、IoTやAIなどの情報技術の革新が進み、企業の競争力は、データやその活用に移り変わってきています」と述べていました。この観点からすると、データとかかわりの深い情報標準という「縁の下のさらに下を支える活動」に対する認識は、今後刷新されていく必要があるでしょう。

[関連ページ]

一般社団法人情報科学技術協会(INFOSTA)
https://www.infosta.or.jp/


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■文献情報:アーカイブズ論文集 9

ICA会誌 "Comma" 2017/2号 目次

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◎ICA会誌 "Comma" 2017/2号

国際アーカイブズ評議会(International Council on Archives: ICA)の会誌の最新号が刊行されました。今号は特に特集を立てない"Miscellany"-さまざまなテーマの論文を集めたものです。以下で、タイトルの日本語訳と筆者、簡単な内容紹介を行います。ICAの会員はICAサイトでログインし、刊行物Commaのページからリバプール大学出版へのリンクをたどると本文が利用できます。

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■◇■『コンマ』2017-2号(2019年)■◇■
Comma, Volume 2017, Issue 2, 2019
https://online.liverpooluniversitypress.co.uk/toc/coma/2017/2


日本語タイトル:ある国際機関における自動分類:実現可能性調査からの報告
原タイトル:Auto-classification in an international organization: report from a feasibility study
著者:Gesa Büttner
言語:英語
2017(2), pp. 15-26
https://online.liverpooluniversitypress.co.uk/doi/abs/10.3828/comma.2017.2.2
紹介:著者はフランス・ストラスブールのヨーロッパ評議会Directorate of Information Technology部門のInformation Life Cycleセクション所属。増大する記録文書の評価選別を自動化する「概念実証」(Proof of Concept:POC)の事例。実験にはPingarが提供するソフトウェア・ツールDiscoveryOneを利用。


日本語タイトル:カメルーン経済計画開発省文書へのアクセスに対する障害
原タイトル:Les barrières à l'accès aux documents administratifs au Ministère de l'économie, de la planification et de l'aménagement du Territoire du Cameroun
著者:Jacques Albert Monty
言語:フランス語
2017(2), pp. 27-34
https://online.liverpooluniversitypress.co.uk/doi/abs/10.3828/comma.2017.2.3
紹介:著者はカメルーンのEcole Superieure des Sciences et Techniques de L'Information et de La Communication (ESSTIC)准教授。世界人権宣言第19条で定められた「情報及び思想を求め、受け、及び伝える自由を含む、意見及び表現の自由に対する権利」の一つとしての、行政文書へのアクセスの権利を妨げる障害について、カメルーンにおいては行政上の制限にとどまらず、文化的、政治的、イデオロギー的、あるいは職業上の要因が存在するという。
(世界人権宣言については下記外務省ページ参照)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/udhr/1b_002.html
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/udhr/1b_001.html


日本語タイトル:アーカイブズ記述技法とレコード・マネジメント分類法間の断絶
原タイトル:The disconnect between archival descriptive technique and records management taxonomies
著者:G. Mark Walsh
言語:英語
2017(2), pp. 35-42
https://online.liverpooluniversitypress.co.uk/doi/abs/10.3828/comma.2017.2.4
紹介:著者は米国バージニア州ノーフォークにあるオールド・ドミニオン大学のレコード・マネジメントとITポリシーに関するアシスタント・ディレクター。同大学レコード・マネージャー。認定アーキビスト。認定レコード・マネージャー。米国では非現用記録であるアーカイブズ管理と現用記録の管理(レコード・マネジメント)が明確に異なった職務とされてきた経緯がある。レコード・マネジメントの側がアーキビストの記述技法を身に付けることにより、これまで非構造的なデータとされてきたものの処理とアーカイブズへの引き継ぎが促進されると提言。


日本語タイトル:先住民の知識の筆記者としてのアーキビスト
原タイトル:Archivists as amanuenses (scribes) of Indigenous knowledge
著者:Nicola Laurent
言語:英語
2017(2), pp. 43-52
https://online.liverpooluniversitypress.co.uk/doi/abs/10.3828/comma.2017.2.5
紹介:著者はメルボルン大学の"Find and Connect Web Resource"プロジェクトを担当するアーキビスト。本稿はオーストラリアン・リサーチ・カウンシルから助成を受けたオーストラリア国立大学先住民研究センターのプロジェクトである"Return, Reconcile, Renew: understanding the history, effects and opportunities of repatriation and building an evidence base for the future"(帰郷、和解、更新:帰還の歴史、影響、機会に関する歴史を理解し、未来のためのエビデンス基盤を作り上げる)とその関係者を取り上げる。著者はこのプロジェクトに関わる4人のアーキビストへのインタビューを行い、空間、時間と場所、中立性、アクセスの4項目にわたるアーカイブズの課題を探求している。



日本語タイトル:アーカイブズでの複写・複製の新しい現実:メタデータからプロセス管理へ
原タイトル:Las nuevas realidades de la reprografía en archivos: de los metadatos a la gestión de procesos
著者:Francisco Javier Crespo Muñoz
言語:スペイン語
2017(2), pp. 53-62
https://online.liverpooluniversitypress.co.uk/doi/abs/10.3828/comma.2017.2.6
紹介:著者はスペイン・バリャドリッドのシマンカス城にある Archivo General de Simancas(1540年創設)の複製部門のヘッド。技術的な進歩によって、アーカイブズの利用者に対する複写・複製サービスは近年大きく変化している。本稿では1984年のランプ・スタディ以来の複写・複製サービスの変化をたどる。デジタル時代の到来による変化、特にメタデータの問題を扱う。さらに、組織課題としての「品質」概念、プロセス管理の分析、これからのアーカイブズにおける複写・複製について検討する。



日本語タイトル:モロッコにおけるアーカイブズ:誕生、発展、現状
原タイトル:L'archivistique au Maroc : naissance, évolution et situation actuelle
著者:Siham Alaoui
言語:フランス語
2017(2), pp. 63-72
https://online.liverpooluniversitypress.co.uk/doi/abs/10.3828/comma.2017.2.7
紹介:著者はカナダ・ケベック州にあるラバル大学歴史学部博士課程在籍。本稿ではモロッコにおけるアーカイブズの誕生、進化、現状に影響を与えた要因を探るほか、大学におけるアーカイブズ学の現状、アーキビストの養成について述べる。


日本語タイトル:明日の社会のためにはどんなアーカイブズ?:2000年以降のフランスにおけるアーカイブズ・コレクションをめぐる討論
原タイトル:Quelles archives pour la société de demain? Le débat autour de la collecte des archives en France depuis les années 2000
著者:Marie Ranquet
言語:フランス語
2017(2), pp. 73-84
https://online.liverpooluniversitypress.co.uk/doi/abs/10.3828/comma.2017.2.8
紹介:著者はフランス国立公文書館の文化遺産修復専門家。アーカイブズ法制とアーカイブズ学の歴史に興味を持つ。歴史学博士。フランスのアーカイブズの伝統は、高度な中央集権的性格と1980年代以降あらわれた分権化志向の二つのアプローチによって特徴づけられるという。本稿では2000年以降のアーカイブズにおける収集対象に関する議論をたどっている。最近のデータ・プライバシー保護の動きがアーカイブズに対して持つ意義についてもふれている。



日本語タイトル:ジンバブエ国立公文書館の文書遺産に対するアクセスへの物理的障害
原タイトル:The physical barriers to accessing the documentary heritage at the National Archives of Zimbabwe
著者:Forget Chaterera and Antonio Rodrigues
言語:英語
2017(2), pp. 85-92
https://online.liverpooluniversitypress.co.uk/doi/abs/10.3828/comma.2017.2.9
紹介:著者のひとりForget Chatereraは南アフリカ国立科学技術大学情報学部と南アフリカ大学情報学部兼任、Antonio Rodriguesは南アフリカ大学情報学部所属。本稿はジンバブエ国立公文書館を例に、国立公文書館と所蔵アーカイブズへのアクセスを妨げている要因、とくに物理的障壁について分析している。この研究では、国立公文書館の中央集権化、閲覧利用その他の利用に対してサービス料金を課金すること、媒体変換した資料を取り戻せないこと、障碍者のための適切な設備の欠如といった要因を特定している。



日本語タイトル:芸術盗難の芸:ブラジルにおける盗難および盗難ルートのマッピング
原タイトル:El arte de robar Arte: Por una cartografía de los robos en Brasil y sus conexiones
著者:Beatriz Kushnir
言語:スペイン語
2017(2), pp. 93-108
https://online.liverpooluniversitypress.co.uk/doi/abs/10.3828/comma.2017.2.10
紹介:著者は労働社会史が専門。2013年よりリオデジャネイロ国立大学(ブラジル)教授。2006年からリオデジャネイロ市のアーカイブズ部門の責任者。研究テーマは検閲、軍政、季節労働、アーカイブズ、文化財盗難、歴史遺産保護など。リオデジャネイロにおける2001年から2008年の間に頻発した文化財盗難事件により、文化財関係機関(アーカイブズ、博物館等)ではセキュリティを強化したり、監視カメラの設置などの対策がとられた。しかし、著者によると、盗難防止のためには教育活動や社会的包摂、市民の権利(citizenship)に関する考えを強固にすることなども重要である。著者は、社会に存在する不平等は、(アーカイブズなどの)「記憶に関わる場所」に関する政策の不在と深く関係しているという。



日本語タイトル:デジタル・アーカイブズ、オープン・ガバメント、透明性
原タイトル:Archivos digitales, gobierno abierto y transparencia
著者:Alicia Barnard
言語:スペイン語
2017(2), pp. 109-116
https://online.liverpooluniversitypress.co.uk/doi/abs/10.3828/comma.2017.2.11
紹介:著者はメキシコ在住の独立コンサルタント・研究者。本稿において、著者はメキシコ国内におけるアーカイブズ管理とレコード・マネジメント間の連携の必要性への認識強化を期待しつつ、インターネット、クラウド・コンピューティング、オープン・ガバメント戦略とそのプログラムにおけるアーカイブズの役割、有用性、問題点といったものを議論している。


日本語タイトル:美術館、図書館、文書館、博物館のためのウィキデータの利用とデジタル・ヒューマニティーズにおけるその位置
原タイトル:The uses of Wikidata for galleries, libraries, archives and museums and its place in the digital humanities
著者:Stacey Cook
言語:英語
2017(2), pp. 117-124
https://online.liverpooluniversitypress.co.uk/doi/abs/10.3828/comma.2017.2.12
紹介:著者はカナダのカールトン大学で人類学とデジタル・ヒューマニティーズを学ぶ大学院生。カナダ国立図書館文書館のウィキペディアン・イン・レジデンスとして働いた経験があり、同館で最初のウィキペディア・エディタソン開催をサポートした。美術館、図書館、文書館、博物館(GLAM)はウィキデータを利用したデジタル・ヒューマニティーズにおけるコンテンツのデジタル化、大規模オンラインオープンコース(MOOCs)、コンテンツのゲーム化、VR(バーチャル・リアリティ)などを関わることができることを示す。ウィキデータの編集には文化的な解釈が忍び込み、文化間に優劣の価値観を持ち込んでしまうことがある点にも注意を促している。



日本語タイトル:国際機関におけるアーカイブズ、レコード・マネジメント職の要件ー国連に焦点を当てて:2016年の求人情報分析
原タイトル:Requirements for archives and records management jobs in international organizations with focus on United Nations - A job analysis of the vacancy announcements in 2016
著者:Maik Schmerbauch
言語:英語
2017(2), pp. 125-134
https://online.liverpooluniversitypress.co.uk/doi/abs/10.3828/comma.2017.2.13
紹介:著者は2016年以降ベルリンでドイツ連邦アーキビストとして働いている。それ以前はドイツとポーランドのカトリック教会のアーカイブズ・プロジェクトや国連機関のアーカイブズ管理とレコード・マネジメントに携わった経験を持つ。この論文は2016年一年間に募集された国際機関におけるアーカイブズ管理、レコード・マネジメント関係の39のポストについての求人情報(肩書きや応募条件、職務内容など)を分析している。求められるレベルはたいへん高度である。その要件をみたすだけでなく、ネットワーキングといった人的なつながりも非常に重要であるといった指摘を行っている。



日本語タイトル:アーカイブズ用語標準化における国際動向:多言語アーカイブズ用語集(MAT)を一つのモデルとして
原タイトル:International trends in standardizing archival terminology : the Multilingual Archival Terminology (MAT) as a model
著者:Amany M. Abdelaziz
言語:アラビア語
2017(2), pp. 135-161
https://online.liverpooluniversitypress.co.uk/doi/abs/10.3828/comma.2017.2.14
紹介:著者はエジプトのカイロ大学人文学系図書館文書館情報技術学部講師。アーカイブズ学における国際協力の進展のため、とりわけアラブ圏の専門家が国際的に活躍するためには専門用語の標準化が不可欠である。このような前提に立って、この論文はアラブ圏でのプロジェクト、またICAのアーカイブズ用語多言語データベースなど国際的なアーカイブズ学用語標準化プロジェクトの動向を探る。さらに、英語、フランス語でのアーカイブズ学用語が、正確にはどのアラビア語に相当するのかを特定することの困難さについても光を当てる。


[関連ページ]

ICAサイト
https://www.ica.org/en

Commaのページ
https://www.ica.org/en/public-resources/comma

入会のためのページ
https://www.ica.org/en/join-international-council-archives


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[略称一覧]
ACA: Association of Canadian Archivists(カナダ・アーキビスト協会)
ARA: Archives and Records Association(アーカイブズとレコード協会)
ASA: Australian Society of Archivists(オーストラリア・アーキビスト協会)
BAC: Business Archives Council(ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BACS: Business Archives Council in Scotland(スコットランド・ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BAS: Business Archives Section(ビジネス・アーカイブズ部会:SAA内の部会)
CoSA:Council of State Archivists(米国・州文書館長評議会)
DCC: Digital Curation Center(英国デジタル・キュレーション・センター)
EDRMS:Electronic Document and Record Management System(電子文書記録管理システム)
ERM:Electronic Record Management(電子記録管理)
ICA: International Council on Archives(国際文書館評議会)
NAGARA: National Association of Government Archives and Records Administrators(米国・全国政府アーカイブズ記録管理者協会)
NARA: National Archives and Records Administration(米国 国立公文書館記録管理庁)
RIKAR: Research Institute of Korean Archives and Records(韓国国家記録研究院)
RMS:Record Management System(記録管理システム)
SAA: Society of American Archivists(アメリカ・アーキビスト協会)
SBA: Section for Business Archives(企業アーカイブズ部会、ICA内の部会)
TNA: The National Archives(英国国立公文書館)

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☆★ 編集部より:あとがき、次号予告 ★☆

・国立公文書館のアーキビスト認証準備委員会
http://www.archives.go.jp/about/report/ninsyou.html

日本の国立公文書館では昨年2018年12月「アーキビストの職務基準書」を策定し、現在はアーキビストの資格認定にかかわる制度を開発中です。制度制定にあたっては、有識者による「アーキビスト認証準備委員会」が組織され、今年3月から会合が持たれています。同館ウェブサイトにて委員会会合のための資料や議事録が公開されています。
http://www.archives.go.jp/about/report/ninsyou.html

第1回委員会(2019年3月11日)配布資料(PDF)
http://www.archives.go.jp/about/report/pdf/ninsyou_haifu_01.pdf

同議事の記録(PDF)
http://www.archives.go.jp/about/report/pdf/ninsyou_giji_01.pdf

第2回委員会(2019年5月29日)配布資料(PDF)
http://www.archives.go.jp/about/report/pdf/ninsyou_haifu_02.pdf

民間組織、とくに企業のアーカイブズは、公的機関のアーカイブズとは、存在目的や規模、予算その他の点で異なることが多々あります。そのため、現在国立公文書館が進める資格制度が実現したとしても、企業とそのアーカイブズやミュージアムにすぐに直接的な影響があらわれるとは考えにくいでしょう。

しかしながら、今号の最初で述べたように、今後行われる年史編纂や資料整理業務にはデジタル技術をはじめとする専門的な知識をもった担当者、または担当者を助ける人材が必要です。そういったスタッフを探すため、採用するために、資格制度は今後企業にとっても意味を持つものになっていくであろう、と編集部は考えます。

森永製菓の史料室の須古さんの、アーカイブズ資料の整理と活用に関するお話はそのような可能性を強く感じさせてくれます。

「価値と感動を伝える『食』とアーカイブズの繋がり」『Muse : 帝国データバンク史料館だより』第33号(2019年1月)4-6ページ(PDF)
http://www.tdb-muse.jp/report/Muse_No33all.pdf

・購読ご継続への御礼
先日もお知らせしたとおり、「ビジネス・アーカイブズ通信」は新しい配信システムに移行いたしました。
これまでの配信不具合についてお詫び申し上げますとともに、皆様のご協力とご購読の継続に深く感謝いたします。
新しいシステムに移行いたしましても、これまで通り有益な情報をお届けする所存です。
今後ともよろしくお願い申し上げます。


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次号は2019年7月下旬発行の予定です。どうぞお楽しみに。

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◆◇◆バックナンバーもご活用ください◆◇◆

https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/index.html

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ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信) No.81
2019年6月29日発行 (不定期発行)
【創刊日】2008年2月15日
【発行者】公益財団法人渋沢栄一記念財団事業部情報資源センター
【編集者】公益財団法人渋沢栄一記念財団事業部情報資源センター
      「ビジネス・アーカイブズ通信」編集部/
      株式会社アーカイブズ工房
【発行地】日本/東京都/北区
【ISSN】1884-2666
【E-Mail】
【サイト】https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/index.html

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