ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信)

第56号(2015年1月7日発行)

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
☆      □■□ ビジネス・アーカイブズ通信 □■□

☆       No.56 (2015年1月7日発行)

☆ 発行:公益財団法人 渋沢栄一記念財団 実業史研究情報センター

☆                        〔ISSN:1884-2666〕
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


この通信では海外(主として英語圏)のビジネス・アーカイブズ(BA)に関する情報をお届けします。

海外BAに関わる国内関連情報も適宜掲載しております。

今号は企業団体情報1件、文献情報2件です。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――
◆ 目次 ◆

[掲載事項の凡例とご注意]

企業団体情報:メルセデス・ベンツ コーポレート・アーカイブズ

文献情報:アーカイブズ論文集 5
 ◎ICA会誌 "Comma" ICAブリスベン大会特集 2012/2号
 「変化の風(1):デジタル環境における信頼と持続可能性」

文献情報:企業コンテンツのデジタル保存 1
 ◎「エンタプライズ(企業)・コンテンツのためのデジタル保存:ECMとOAIS間のギャップ分析」ほか

☆★ 編集部より:次号予告 ★☆

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

[掲載事項の凡例]

・欧文の場合、日本語で読みやすいものになるように、タイトルははじめに日本語訳を、続いて原文を記します。
・人名や固有名詞の発音が不明の場合も日本語表記を添えました。便宜的なものですので、検索等を行う場合はかならず原文を用いてください。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

[ご注意]
・受信時にリンク先を示すURLが途中で改行されてしまう場合があります。通常のURLクリックで表示されない場合にはお手数ですがコピー&ペーストで一行にしたものをブラウザのアドレス・バーに挿入し、リンク先をご覧ください。

===================================

■企業団体情報:メルセデス・ベンツ コーポレート・アーカイブズ

===================================
◎メルセデス・ベンツ コーポレート・アーカイブズ
Corporate Archives, Mercedes-Benz
https://www.mercedes-benz.com/en/mercedes-benz/classic/history/corporate-archives/

ドイツ・シュツットガルトのダイムラー社の企業アーカイブズをご紹介します。

ダイムラー社の前身、ベンツ社は1883年ドイツ人技術者カール・ベンツによって設立されました。1926年、ダイムラー・モトレン・ゲゼルシャフト社(1900年にゴットリープ・ダイムラーらによって設立)と合併しダイムラー・ベンツ社となり、1998年には米国のクライスラー社と経営統合し、ダイムラー・クライスラーとなりました。2007年にクライスラー部門は売却されて、ダイムラー社となり現在に至っています。

アーカイブズは1936年に設置されています。ダイムラー・ベンツ社、ダイムラー・モトレン・ゲゼルシャフト社、ベンツ社の資料を一か所に集中させたものです。第二次世界大戦中の1941年からは所蔵資料管理を外部に委託していましたが、1948年に全資料をドイツ南西部のシュトゥットガルト市にある Untertürkheim の工場敷地に移管しています。1998年のクライスラー社との経営統合によって、ダイムラー・クライスラー・コーポレート・アーカイブズとなりました(場所は Untertürkheim と米国の Auburn Hills の2か所)。2007年のクライスラー部門分離以後は、それまでPR・広報部門の下にあったものが、ブランド・コミュニケーション部門に移り、博物館とアーカイブズが一体運営されるようになりました。

アーカイブズは4つの部門に分かれています。「企業アーカイブズ」「製品・技術関係アーカイブズ」「メディア・アーカイブズ」「図書室」です。さらに「車両コレクション」もアーカイブズと一体的に管理されています。
https://www.mercedes-benz.com/en/mercedes-benz/classic/history/corporate-archives/

【企業アーカイブズ】
創業者・会社史・工場に関する文書、取締役会・監査役会議事録、販売、投資、関連会社、広報資料、アート・コレクション(ポスター含む)、広報用グラフィック・デザイン関係資料、1885年以来の宣伝関係資料、社会史関係資料、モノ資料(コイン、メダル、カップ、販促品など)。レース・コレクションが充実。

【製品・技術関係アーカイブズ】
乗用車・商用車の歴史を記録する資料群。パンフレット、価格リスト、運転マニュアル、工場・部品関係の資料、技術調査レポート、デザイン画、注文綴り、エンジン関係綴り、車両記録、1945年から85年までの乗用車に関するカード1,000万枚以上が含まれます。

【メディア・アーカイブズ】
メディア・アーカイブズの根幹は初期の自動車製造以来の300万枚以上の写真資料。約30万枚の大型ガラス乾板ネガを含む。4,000以上のフィルム、オーラル・ヒストリーを記録したインタビューなどの録音資料も貴重。これらはデータベースによって管理されており、検索利用に迅速に対応しています。

【図書室】
自動車の技術と経済を中心としたレファレンス・ライブラリー。1900年創刊の Allgemeine Automobil Zeitung は全巻所蔵。蔵書の総数は約10,000、雑誌が220タイトル(そのうち90タイトルが現在も刊行中)。

【車両コレクション】
1921年以来の自社製作車両に関するコレクション。700台のうち約500台が乗用車、140台がレーシングカー、60台が商用車。160台が展示されています。その他の車両も展示会やモーターショー、クラシックカー・イベントやラリー等に出展。車両コレクションには明確な収集基準が設定されています。


[関連ページ]

ドイツ・ビジネスアーキビスト協会自動車/部品メーカー・アーカイブズ部会2012年11月15日開催「集中アーカイブズ、イエスかノーか?」シンポジウム資料(ドイツ語)
http://www.wirtschaftsarchive.de/arbeitskreise/fachliche-arbeitskreise/automobil-zuliefererarchive/Zusammenfassung4.AKAZTreffenStuttgart2013.pdf

http://www.wirtschaftsarchive.de/arbeitskreise/fachliche-arbeitskreise/automobil-zuliefererarchive

ドイツ・バーデンビュルテンベルク州のアーカイブズ案内の中のメルセデス・ベンツ・アーカイブズのページ
http://www.archive-bw.de/sixcms/list.php?page=seite_archivanschrift&sv[id]=10362

メルセデス・ベンツ・ミュージアム
https://www.mercedes-benz.com/en/mercedes-benz/classic/museum/

メルセデス・ベンツ 会社史
https://www.mercedes-benz.com/en/mercedes-benz/classic/history/corporate-history/

===================================

■文献情報:アーカイブズ論文集 5

===================================
◎ICA会誌 "Comma" ICAブリスベン大会特集 2012/2号
 「変化の風(1):デジタル環境における信頼と持続可能性」
 A climate of change (1) Trust and sustainability in the digital environment

国際アーカイブズ評議会(ICA)の会誌である "Comma" の最新号2冊(2012/2号と2013/1号)が2014年末に同時に刊行されました。最新号は2012年8月に開催された同評議会のブリスベン大会でのプレゼンテーションから選ばれた報告を2分冊にまとめたものです。(ICAの Congress と呼ばれる大会は4年に一度開催されるもので、次回は2016年に韓国ソウルでの開催が予定されています。)
http://www.ica.org/16750/news-and-events/the-latest-two-issues-of-comma-papers-from-the-2012-brisbane-congress-are-now-available.html

ブリスベン大会のテーマは「変化の風:信頼、持続可能性、アイデンティティ」でした。2012/2号のテーマは「2012年ブリスベン大会 変化の風(1):デジタル環境における信頼と持続可能性」 A climate of change (1) Trust and sustainability in the digital environment、2013/1号は「2012年ブリスベン大会 変化の風(2): アイデンティティとコミュニティ」Brisbane 2012 Congress. A climate of change (2) Identities and communities となっており、2012/2号には信頼と持続可能性に関わる報告が、2013/1号にはアイデンティティに関わる報告が収録されています。

「ビジネス・アーカイブズ通信」今号では "Comma" 2012/2号を、同2013/1号は次号(第57号、2015年2月発行予定)にてご紹介します。

"Comma"はリバプール大学出版(Liverpool University Press)から刊行されています。ICA会員の場合、ICAのユーザー名とパスワードでログインして本文を参照することができます。非会員の場合は、有料(ペイ・パー・ビュー方式)でアクセスできます。


[書誌情報]
タイトル原文:Comma
出版者:Liverpool University Press
ISSN:1680-1865(印刷物) 2049-3355 (オンライン)


[目次情報]

■□■ 2012/2号 ■□■
「2012年ブリスベン大会 変化の風(1):デジタル環境における信頼と持続可能性」
http://liverpool.metapress.com/content/v178n8251281/

〈1〉
タイトル:はじめに:コンマ 2012/2号 大会記録
タイトル原文:Introduction: Comma 2012:2 Congress proceedings
著者:デイビッド・フリッカー
著者名原文:David Fricker
著者所属:オーストラリア国立公文書館
著者所属原文:National Archives of Australia
DOI:10.3828/comma.2012.2.1
http://liverpool.metapress.com/content/421gw70876825609/?p=953ed5278a724f1082e4f65c5d8ef039&pi=0

〈2〉
タイトル:オーストラリア国立公文書館におけるデジタル時代のためのビジネスモデルを明らかにする
タイトル原文:Defining a business model for the digital age at the National Archives of Australia
著者:デイビッド・フリッカー
著者名原文:David Fricker
著者所属:オーストラリア国立公文書館
著者所属原文:National Archives of Australia
DOI:10.3828/comma.2012.2.2
一行解説:オーストラリア国立公文書館館長で、現在ICA会長であるデイビッド・フリッカー氏による大会テーマ「持続可能性(サステナビリティ)」に関する講演。内容は国立公文書館のビジネスモデル、デジタル時代においてアーカイブズが必要とする改革について。講演は「記録」「保管」「保存」「アクセス」「法的枠組み」といったコンセプトを再考する必要がある点を指摘しつつ、情報の爆発的増大という環境下、完全かつ真正な記録を提供することがアーカイブズの役割として引き続き極めて重要であると主張。
http://liverpool.metapress.com/content/6x08453207000450/?p=227b3ca877404c7fa9c94e646f512ea1&pi=1

〈3〉
タイトル:デジタル時代におけるアーカイブズ機能を再考する
タイトル原文:Rethinking the archival function in the digital era
著者:ハンス・ホフマン
著者名原文:Hans Hofman
著者所属:オランダ国立公文書館
著者所属原文:National Archives of the Netherlands
DOI:10.3828/comma.2012.2.3
一行解説:デジタル時代におけるアーカイブズ機能、特にアーカイブズが現用記録の領域で果たす役割を再考。オランダ国立公文書館を主に取り上げる。
http://liverpool.metapress.com/content/692566138kk45364/?p=2747994f93ed4142aa31115b788164b1&pi=2

〈4〉
タイトル:フランスにおける公的アーカイブズのための新たな組織
タイトル原文:Une nouvelle organisation pour les services publics d'archives en France
著者:エルベ・ルモワン
著者名原文:Hervé Lemoine
著者所属:フランス陸軍歴史サービス
著者所属原文:Service historique de l'armée de terre
DOI:10.3828/comma.2012.2.4
一行解説:文化スポーツ省の監督の下、フランス省庁間アーカイブズ部が国内の公文書館の管理運営方針を定める。これはフランス革命以来の歴史的伝統である。国立公文書館と地方公文書館も同部の指揮監督の下にある。
http://liverpool.metapress.com/content/x44531tw06484v5w/?p=d46af98c7fbc42e0913db5ccf790d43f&pi=3

〈5〉
タイトル:戦後オーストラリア・クイーンズランドにおける建築実践に関するオンライン・デジタル・アーカイブ構築のためのウェブ3.0アプローチ
タイトル原文:A Web 3.0 approach to building an online digital archive of architectural practice in post-War Queensland
著者1:ジェーン・ハンター
著者名原文1:Jane Hunter
著者所属1:クイーンズランド大学情報技術電気工学大学院(オーストラリア)
著者所属原文1:School of ITEE, University of Queensland
著者2:ジョン・マカーサー
著者名原文2:John Macarthur
著者所属2:クイーンズランド大学(オーストラリア)
著者所属原文2:The University of Queensland
著者3:デボラ・ヴァン・デア・プラッツ
著者名原文3:Deborah van der Plaat
著者所属3:クイーンズランド大学(オーストラリア)
著者所属原文3:The University of Queensland
著者4:ジェニナ・ガーズィー
著者名原文4:Janina Gosseye
著者所属4:クイーンズランド大学(オーストラリア)
著者所属原文4:The University of Queensland
著者5:アンドリュー・ウィルソン
著者名原文5:Andrew Wilson
著者所属5:クイーンズランド大学(オーストラリア)
著者所属原文5:The University of Queensland
著者6:アンドレア・ムイス
著者名原文6:Andrae Muys
著者所属6:クイーンズランド大学(オーストラリア)
著者所属原文6:The University of Queensland
著者7:ガビン・バナーマン
著者名原文7:Gavin Bannerman
著者所属7:クイーンズランド州立ブリスベン図書館(オーストラリア)
著者所属原文7:The State Library of Queensland Brisbane, Queensland, Australia
DOI:10.3828/comma.2012.2.5
一行解説:「戦後オーストラリア・クイーンズランドにおける建築実践:オーラル・ヒストリー・アーカイブを構築し解釈する」プロジェクトはクイーンズランド大学、クイーンズランド州立図書館、同州の4つの歴史ある建築会社による共同プロジェクト。建築史上重要だがきちんと記録が残されていない1945年から75年の間の建築実務を記録に留める総合的マルチメディア・デジタル・アーカイブづくりが目的。オンラインで進化し続けるナレッジベース作成に向けて、セマンティックウェブとウェブ3.0技術を利用する革新的なアプローチを紹介する。
http://liverpool.metapress.com/content/p08m5456752k5680/?p=3ed65a9ed92e46e097a2c6401951e924&pi=4

〈6〉
タイトル:アーカイブズにとってさらに持続可能な将来を達成するために情報の可視化と視覚分析を利用する
タイトル原文:Using information visualization and visual analytics to achieve a more sustainable future for archives: A survey and critical analysis of some developments
著者:ビクトリア・L・ルミュー
著者名原文:Victoria L. Lemieux
著者所属:ブリティッシュ・コロンビア大学図書館部金融電子記録研究センター(カナダ)
著者所属原文:Centre for the Investigation of Financial Electronic Records, University of British Columbia's School of Library
DOI:10.3828/comma.2012.2.6
一行解説:本稿はアーカイブズ分野における情報の可視化と視覚分析開発に関する調査結果を提供する。情報の可視化と視覚分析の源流を議論しその差異を説明する。さらにアーカイブズ分野におけるこれらのアプローチの適用に関する文献を批判的に分析する。そこから明らかになったのは、未整理のアーカイブズ資料にこれらの技術を応用することにもっと注目すべきであるということ。また、アーキビストと様々なユーザーが心地よいインターフェイスを創り出すという認知課題を分析する研究が必要である。さらに、情報の可視化と視覚分析がアーカイブズに影響を与える方法に関する文献において、さらに批判的考察が必要であることを提唱する。
http://liverpool.metapress.com/content/g6700k68310l8154/?p=ab17c860996e47bf989aaac0365ea255&pi=5

〈7〉
タイトル:デジタル・アーカイブとソース・システムの継ぎ目のない統合に向けて(パート1)
タイトル原文:Towards seamless integration of digital archives with source systems (Part 1)
著者1:カルダー・エース
著者名原文1:Kuldar Aas
著者所属1:エストニア国立公文書館デジタル・アーカイブズ
著者所属原文1:Digital Archives of the National Archives of Estonia
著者2:タルボ・ケーベルグ
著者名原文2:Tarvo Kärberg
著者所属2:タルトゥ大学(エストニア)
著者所属原文2:University of Tartu
DOI:10.3828/comma.2012.2.7
一行解説:過去数十年にわたって、電子記録管理アプリケーションから記録とメタデータを取り込むことがアーカイブズにとって決定的に重要な課題であった。作成される記録の激増に伴い、そのプロセスを速め効率化するとともに、将来のユーザーに対し十分な品質と発見可能性(discoverability)を提供する必要がある。本稿ではエストニア国立公文書館を紹介する。記録管理メタデータをアーカイブズ目的のために再利用する作業を自動化することが目的である。開発された原理とツールは、自動化されたメタデータのマッピング方法によって複数の省庁で利用されている異なったメタデータ・セットを標準化し、デジタル・リポジトリ―で用いられている主たるメタデータ・モデルに統一することを可能にする。
http://liverpool.metapress.com/content/82414234038l4j24/?p=a00d6f8e18a4459d8498aa686ae87140&pi=6

〈8〉
タイトル:デジタル・アーカイブとソース・システムの継ぎ目のない統合に向けて(パート2)
タイトル原文:Towards seamless integration of digital archives with source systems (Part 2)
著者1:アラン・ゲリー
著者名原文1:Alan Gairey
著者所属1:テセラ社セーフティ・デポジット・ボックス・アーカイビング&プリザベーション・ソリューション(イギリス)
著者所属原文1:Tessella's Safety Deposit Box Archiving and Preservation Solution
著者2:ケビン・オフェアリー
著者名原文2:Kevin O'Farrelly
著者所属2:テセラ社セーフティ・デポジット・ボックス・アーカイビング&
プリザベーション・ソリューション(イギリス)
著者所属原文2:Tessella's Safety Deposit Box Archiving and Preservation Solution
著者3:ロバート・シャープ
著者名原文3:Robert Sharpe
著者所属3:テセラ社デジタル・アーカイビング・ソリューション
著者所属原文3:Digital Archiving Solutions, Tessella
DOI:10.3828/comma.2012.2.8
一行解説:電子文書管理システムやウェブ・アーカイビング・ソフトウェアといったソースをデジタル・アーカイビング・システムに統合する時、ソース側のメタデータ・スキーマをアーカイブズのメタデータ・スキーマに翻訳しなければいけないことが普通である。その結果、不正確なメタデータ・マッピングによって情報が失われる可能性がある。ソースのメタデータ・スキーマとアーカイブズ・システムのメタデータ・スキーマは時の経過によって変化する場合もある。その場合、必要とされる変換にはコストがかかる。本稿では、ソース・システムと長期アーカイブの統合を簡便に行う代替的なアプローチを紹介する。このアプローチはどのタイプの記録でもソースで使われていたオリジナルの記述スキーマの利用を可能にする。それぞれのメタデータ・フィールド内で閲覧、編集、検索が可能であることを保障する適切な技術を用いている。アーカイブズ内のメタデータ・スキーマは構造的、技術的、保存目的のメタデータに対してのみ関与する必要がある。それゆえ、アーカイブズではある固定的な記述スキーマが利用されるならば、複雑なマッピングの必要なしに、期待されるすべての機能性が発揮されうる。
http://liverpool.metapress.com/content/1n004k5012166350/?p=c2d23979260545f1881a732dd97df4e6&pi=7

〈9〉
タイトル:変化しつつある理論を実践の中に:メタデータ・ゲームを繰り広げる
タイトル原文:Changing theory into practice: playing the Metadata Game
著者:ヨーリン・ウェタリングス
著者名原文:Jorien Weterings
著者所属:オランダ国立公文書館
著者所属原文:National Archives of the Netherlands
DOI:10.3828/comma.2012.2.9
一行解説:記録のためのメタデータに関する国際標準ISO:23081はオランダのアーカイブズ法制に取り入れられてきた。本稿ではメタデータ・スキーマを開発し、アプリケーション・プロファイルを実装するための中央政府の取り組みを紹介する。オランダ国立公文書館はe-Depotを開発した。電子記録をe-Depotに移管するために、記録とそれに結びつけられたメタデータは、MeDuSaと呼ばれるXMLスキーマを用いたSIP(Submission Information Package:OAISの用語:編者注)としてラップ(wrap)される。このXMLスキーマは、SIPの構造とひと組のメタデータ・エレメンツを定義し、同時的にオランダ政府のメタデータ・スキーマに従っている。また、職員、アーキビスト、レコードマネージャー、情報アーキテクトその他の人々が、メタデータに関する最も重要ないくつかのコンセプトに慣れ親しむための「メタデータ・ゲーム」も開発した。
http://liverpool.metapress.com/content/1412k556qtj1q755/?p=b8de366a554b4b63b954d840499508cf&pi=8

〈10〉
タイトル:協同的なアーカイブズ教育におけるバーチャルな経験:デジタル学習のためにデジタル実験室を構築する
タイトル原文:Virtual experiments in collaborative archival education: constructing a digital laboratory for digital learning
著者1:カレン・アンダーソン
著者名原文1:Karen Anderson
著者所属1:ミッド・スウェーデン大学アーカイブズ・情報科学(スウェーデン)
著者所属原文1:Archives and Information Science, Mid Sweden University
著者2:ジャネット・A・バスチァン
著者名原文2:Jeannette A. Bastian
著者所属2:シモンズ・カレッジ図書館情報科学大学院(米国ボストン)
著者所属原文2:Graduate School of Library and Information Science, Simmons College, Boston
著者3:アンドリュー・フリン
著者名原文3:Andrew Flinn
著者所属3:ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン アーカイブズ・記録管理修士プログラム(イギリス)
著者所属原文3:Archives and Records Management Masters programme, University College London
著者4:ギュラン・サミュエルソン
著者名原文4:Göran Samuelsson
著者所属4:ミッド・スウェーデン大学アーカイブズ・情報科学(スウェーデン)
著者所属原文4:Archives and Information Science, Mid Sweden University
DOI:10.3828/comma.2012.2.10
一行解説:グローバルなデジタル社会では持続可能なアーカイブズと保存教育は、協同的な枠組みと地理的に多様性を持つパートナーシップを必要とする。これは教育者に大きな挑戦をつきつける。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン、ミッド・スウェーデン大学、ボストンのシモンズ・カレッジのアーカイブズ学教育プログラム間のコンソーシアムは、革新的でバーチャルな学習環境を三機関共同で開発、構築、共有し、その挑戦に立ち向かっている。本稿では各機関の参加者が現在進行中の協力、研究、カリキュラム開発(デジタル・カリキュラム・ラボラトリー(DCL)を通じて統一されたもの)について説明、分析、デモンストレーションを行う。このタイプの学習リソースと協同的アプローチが国際的なアーカイブズ学教育にどのような意味を持つのかも探求する。
http://liverpool.metapress.com/content/053410tx18726528/?p=a6018e3b6cf949f790e38ef277cf1a81&pi=9

〈11〉
タイトル:フランスにおけるEAC-CPF(アーカイブズ資料に関連する個人、団体、家について記述したコンテクスト情報のエンコーディングに関する標準)の推進:全国典拠ファイルの開発に向けて
タイトル原文:Implementation of EAC-CPF (Encoded Archival Context - Corporate bodies, Persons, Families) in France: towards the development of national authority files
著者:クレア・シビーユ・ドゥ・グリムアール
著者名原文:Claire Sibille-de Grimoüard
著者所属:フランス文化通信省文化遺産総局
著者所属原文:General Department of Cultural Heritage, Archives of France
DOI:10.3828/comma.2012.2.11
一行解説:本稿では、記録作成者(records' creator)に関する標準化された記述の創出と、アーカイブズ機関がそれぞれの記録作成者を記述するために再利用できるモデルを提起する、フランス・アーキビスト協会と文化遺産総局の共同プロジェクトを紹介する。その目的はフランス政府各省庁に、利用しやすいインタラクティブな参加型のツールを提供することにある。プロジェクト・マネジャーは、アーカイブズ機関に対し再利用可能で真に交換可能な典拠記録を提供することを期待しており、このモデルはレファレンス・コンテンツの標準ISAAR(CPF)、コミュニケーションの標準であるEAC-CPFに準拠したものとなっている。
http://liverpool.metapress.com/content/0530873x865l4832/?p=94b7fc58949c449b96933ffddfa9cafe&pi=10

〈12〉
タイトル:ウェブAPI経由のオンライン・アーカイブズ目録へのアクセス
タイトル原文:Access to online archival catalogues via web APIs
著者:リチャード・ルへイン
著者名原文:Richard Lehane
著者所属:ニュー・サウス・ウェールズ州記録局(オーストラリア)
著者所属原文:State Records Authority of New South Wales
DOI:10.3828/comma.2012.2.12
一行解説:本稿ではニュー・サウス・ウェールズ州記録局のオープン・データ・プロジェクト、オンライン目録のためのウェブAPIの開発、そしてアーカイブズ捜査官(Archives Investigator)を紹介する。ウェブAPI開発の過程では、カタログに対する新しい実験的なユーザー・インターフェイスも構築された。この新しいインターフェイスの主要な特徴を説明する。
http://liverpool.metapress.com/content/q8423662x2427141/?p=4dbeef8694c04de383c379f412b081e2&pi=11

〈13〉
タイトル:アーカイブズ・コレクションのための優しいインターフェイスに向けて
タイトル原文:Towards generous interfaces for archival collections
著者:ミッチェル・ホワイトロウ
著者名原文:Mitchell Whitelaw
著者所属:キャンベラ大学人文デザイン学部(オーストラリア)
著者所属原文:Faculty of Arts and Design, University of Canberra
DOI:10.3828/comma.2012.2.13
一行解説:本稿ではデジタル・アーカイブズ・コレクションへのアクセスに関する課題とチャンスを考察する。デジタル化の時代を経て、収集アーカイブズは膨大なデジタル資料を所蔵することになった。しかし、これらのコレクションへのアクセスに関わる技術は変わっていない。相変わらず検索にたよっている。本稿では検索の限界を明らかにし、デジタル・コレクションに対する「優しいインターフェイス」(generous interface)の要点を述べながら、代替アプローチを提起する。本稿はこの新しいインターフェイスとその実装への課題を考えつつ、これまでの試験的な作業に基づいて、新インターフェイスのデザイン原理とパターンの概要を述べる。
http://liverpool.metapress.com/content/003l424h6663x71u/?p=7b0b3491ebe54a2dbe7e66be8c567d01&pi=12

〈14〉
タイトル:アーカイブズの真正性、記述、アクセス提供のためにデジタル・フォレンジックの方法を適用する
タイトル原文:Archival application of digital forensics methods for authenticity, description and access provision
著者:クリストファー・A・リー
著者名原文:Christopher A. Lee
著者所属:ノースカロライナ大学チャペルヒル校情報図書館学大学院(米国)
著者所属原文:School of Information and Library Science, University of North Carolina, Chapel Hill
DOI:10.3828/comma.2012.2.14
一行解説:ボーン・デジタルな資料を取得するとき、アーキビストはしばしばある特定の方法で、メディアからデジタル資料を抽出する。その方法は記録と結びついたリッチ・メタデータを反映し、記録の全体性を確保するものである。アーキビストはまたユーザーに対して、センシティブなデータのうっかりした開示を避けつつも、ユーザーが資料を理解してそのコンテクストを分かるようにさせねばならない。デジタル・フォレンジックの分野から、この作業に役に立つ多様な方法と戦略をひき出すことができる。本稿ではアーカイブズにおける受け入れ、管理、アクセスの各機能を向上させるためのデジタル・フォレンジックのツールの開発と適用を議論する。いくつかのアーカイブズ機関での現在および望ましいワークフローを特定し、そのワークフローを支援するツールを開発し検証するBitCuratorプロジェクトも紹介する。デジタル・フォレンジックのツールと実務によってアーキビスト専門職の仕事が変わるいくつもの可能性がある。
http://liverpool.metapress.com/content/q753m78851074001/?p=1698215bdcf74f92be7dad8e34ae1bfc&pi=13

〈15〉
タイトル:アーカイブズにおけるコモンズ・ライセンスに向けて:デジタル・ユニバース内の私的な領域へのアクセスを管理する
タイトル原文:Towards an Archival Commons Licence: managing access to the private domain in the digital universe
著者:ギャバン・マッカーシー
著者名原文:Gavan McCarthy
著者所属:メルボルン大学eリサーチ・センター(オーストラリア)
著者所属原文:eScholarship Research Centre, The University of Melbourne
DOI:10.3828/comma.2012.2.15
一行解説:アーカイブズに所蔵されている記録、とりわけボーンデジタル記録とデジタル化された資料に対して、ネット上倫理的にアクセスする方法を効率化したい、というアーカイブズとコミュニティの要求が存在する。本稿は、この要求に応えるインターネット対応のアーカイバル・コモンズ・ライセンス(AC)の確立を提起する。クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC)がそのようなサービスを支援するのに必要な基盤のための有用なモデルと実例を提供してくれる。しかしながら、クリエイティブ・コモンズはもっぱらパブリック・ドメインのための資料用に設計されたものである。アーカイブズ資料は一般には、公開を想定して作成されたものではない。これはつまりCCライセンスはアーカイブズ資料には適切ではないことを意味する。アーカイバル・コモンズ・ライセンスの中心にあるのは、ユーザーがアーカイブズ資料にアクセスする前に必ずサインアップする(登録する)べきであるという義務を認識し、成文化することである。オーストラリアにおける経験が、実例ならびに他の場所における同様の提案を考察する基準を与えるだろう。それは達成可能と思われる。そして、国際的に共同して試みる場合、その影響はずっと大きなものになるだろう。
http://liverpool.metapress.com/content/q4552748051w1075/?p=c3233c8ac6b54475b3b925659033ce65&pi=14

〈16〉
タイトル:最善の国際的アーカイブズ標準を地方レベルで適用する:小規模行政体向けの簡便な実務ハンドブック
タイトル原文:Adapter les meilleures pratiques archivistiques internationales au niveau local: manuel pratique tout simple à destination des petites administrations
著者:クリスティーナ・ビアンキ
著者名原文:Cristina Bianchi
著者所属:国際アーカイブズ評議会専門職団体部会(ICA/SPA)
著者所属原文:Conseil International des Archives (ICA/SPA)
DOI:10.3828/comma.2012.2.16
一行解説:記録管理はアーキビスト専門職が内部に存在しない小さな組織や自治体にとって大きな挑戦である。古文書などの歴史的な文書、非現用文書は通常は紙であれデジタルであれしっかり管理されているものだが、現用文書管理は大きな課題である。ITシステムが文書管理機能を持たない場合なおさらである。スイスのフランス語を話すアーキビストの協会( L'Association vaudoise des Archivistes (AVA))は、自治体における現用文書管理を改善する手引きを開発した。AVAの観察によると、非常勤の専門家でない担当者の場合、専門文献を読むこともなければ国際標準も知らない。つまりアーカイブズの原理に通じていないということである。そのため、手引きのタイトルを「知識がなくてもできるアーカイブズ」(Comment faire de l'archivage sans le savoirの意訳:編者注) とした。このツールの目的は、現用文書とアーカイブズを確実に保護し、地方の行政機能に役立てることにある。
http://liverpool.metapress.com/content/q356073074773385/?p=722e83ccfd6c4d48890474b3b68994a3&pi=15

〈17〉
タイトル:廃墟から明日への希望の発見へ:東日本大震災からの復興への取り組み
タイトル原文:From devastation to discovery of hope for tomorrow: efforts towards recovery from the Great East Japan Earthquake
著者:高山正也 Masaya Takayama
著者所属:国立公文書館フェロー/慶應義塾大学名誉教授(日本)
DOI:10.3828/comma.2012.2.17
一行解説:2011年3月11日の東日本大震災は岩手、宮城、福島の三県に未曾有の損害をもたらした。多くの重要記録(vital records)が浸水した。日本の国立公文書館は被災公文書の迅速な修復支援に重点的に取り組んだ。2012年1月には政府、関連団体と連携し、修復プロジェクトを開始。本プロジェクトは政府から資金上の支援を、民間の修復家から技術的援助を受けて被災自治体と協力し実施された。国立公文書館では被災地に職員を派遣するとともに、必要な資材を無料で提供、現地の人材を雇用し技術研修も提供した。本稿では以上のプロジェクトをはじめとする国立公文書館の施策の概要を説明するとともに、日本政府とアーカイブズ関連諸団体の取り組みを議論し、大震災後の施策のなかから生じつつあるアーカイブズの問題を幅広い観点から検討する。
http://liverpool.metapress.com/content/q4385p31h054t5w5/?p=ade8a11ffe29469897274a1872f83abb&pi=16

〈18〉
タイトル:記録管理と公的アーカイブズの発展への日本の地方自治体の取り組み
タイトル原文:Efforts of Japanese local government to develop records management and public archives
著者:白井哲哉 Tetsuya Shirai
著者所属:筑波大学図書館情報メディア系(日本)
DOI:10.3828/comma.2012.2.18
一行解説:日本では1960年代まで重要な歴史資料の保存と利用に取り組む自治体はほとんどなかった。その後1970年代から1990年代にかけて公文書管理が進展したのには3つの理由がある。一つは歴史資料保存のための運動によって公文書館設置を求める世論が高まったこと、二つ目は1980年に地方自治体が政府に先駆けて情報公開政策を進めたこと、三つ目は1987年に公文書館法が成立したことである。しかしながら、重要な歴史資料の保存と利用はいまだに十分でない。地方公文書館職員の資料保存や利用に関する知識が乏しいこと、評価選別基準があいまいな点、保存に対する財政的物理的限界などから、地方公文書館の発展が阻害されている。公文書管理法が「地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、その保有する文書の適正な管理に関して必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう努めなければならない」としていることから、2011年には官民ならびに学会を代表する専門家グループが公文書管理条例策定のためのガイドラインを策定した。現在のところ、いくつかの自治体が公文書管理条例を制定しつつある一方、地方公文書館設立に向けて活動する動きもある。
http://liverpool.metapress.com/content/32152361ww1641wr/?p=c4b934d100214d5bbd18b53dbe1f1d7c&pi=17

〈19〉
タイトル:日本の公文書管理法とその施行後の課題
タイトル原文:Japan's Public Records and Archives Management Act and challenges after its enforcement
著者:岡本信一 Shinichi Okamoto
著者所属:内閣府(日本)
DOI:10.3828/comma.2012.2.19
一行解説:2009年7月に成立し2011年4月に施行された日本の「公文書等の管理に関する法律」(公文書管理法)は政府機関と独立行政法人の記録管理を改善し、国立公文書館を含む日本のアーカイブズ・システムを顕著に強化するものである。本稿では、政府の透明性と新たに導入された記録管理の推進力としての公文書管理法の特徴を議論する。第一に、コンプライアンス機構が実際的に働く必要がある。第二に、大量の行政文書のレコード・スケジュールを明確化し、行政機関の長による文書の廃棄への同意を得る手続きを整えるために、包括的文書管理システムを開発する必要がある。第三に、ボーンデジタル記録の管理に関する共通ルールの詳細を定める必要がある。公文書管理法に関する将来の課題、すなわちボーンデジタル文書の取り込み、東日本大震災や福島における原子力発電所災害のような緊急時における重要記録の作成・保存のためのルールなども議論される。
http://liverpool.metapress.com/content/bv55836516535427/?p=7a02444e8ad44cdcbb8b48ba3dcb2315&pi=18

〈20〉
タイトル:要約
タイトル原文:Abstracts
DOI:10.3828/comma.2012.2.20
http://liverpool.metapress.com/content/l573677554317328/?p=2c2c1ed8e5ab40ed864a7d852759d63b&pi=19

〈21〉
タイトル:著者の連絡先
タイトル原文:Authors' contact details
DOI:10.3828/comma.2012.2.21
http://liverpool.metapress.com/content/l2u4g8650157673q/?p=84d6bad05046432a994584cb21c04356&pi=20

〈22〉
タイトル:編集部
タイトル原文:Editorial Board
DOI:10.3828/comma.2012.2.22
http://liverpool.metapress.com/content/d623x82107t5h347/?p=d9d703148c4e4641a4c083c522faf439&pi=21

===================================

■文献情報:エンタプライズ(企業)・コンテンツのデジタル保存 1

===================================
◎「プリザービカ白書:コンテンツ・マネジメントとデジタル保存」
Preservica White Paper, Content management and digital preservation
http://preservica.com/download/4052
http://preservica.com/resources/white-papers/

◎「エンタプライズ・コンテンツのためのデジタル保存:ECMとOAIS間のギャップ分析」
Digital preservation for enterprise content: a gap-analysis between ECM & OAIS
http://www.ifs.tuwien.ac.at/~strodl/paper/korb_ipres2010.pdf
http://publik.tuwien.ac.at/files/PubDat_191180.pdf


当センターウェブページで優良事例としてご紹介したイングランド銀行アーカイブズに関する記事では、同行の記録管理システム(ヒューレット・パッカード社の HP Autonomy を利用)とアーカイブズ・システム(アクシエル社、Axiell Limited の CALM を利用)の接続、統合について言及しています。
https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bunken/doc003_BOEA.html

編集部が昨年4月にHSBCアーカイブズ(イギリス・ロンドン市内)を訪問した際、同行ではアーカイブズにおけるデジタル保存システムとして Preservica(テセラ社、Tessella Ltd.)を利用しており、記録管理とアーカイブズ・システムの接続・統合問題に現在取り組んでいるということでした。

記録管理とアーカイブズのシステムの接続/統合はデジタル時代のアーカイブズ実務の大きな課題です。"Comma" ICAブリスベン大会特集号における「デジタル・アーカイブとソース・システムの継ぎ目のない統合に向けて(パート1、2)」はまさにこの点に焦点をあてた発表でした。企業の場合、「継ぎ目のない統合」はテキスト中心の文書記録のみならず、コンテンツとして作成された膨大なデジタル記録物(テキスト、画像、動画、eメール、ウェブサイト等々)に関しても、解決されねばならない重要課題です。

いっぽう、記録管理(records management)はIT業界では現在「エンタブライズ・コンテンツ・マネジメント」Enterprise Content Management: ECM の一部とされます。
(例えばHP Autonomy のウェブサイトを参照)
http://www.autonomy.com/offerings/enterprise-content-management/

ECMは米国の文書情報管理に関する非営利団体AIIM(Association for Information and Image Management、1943年に全国マイクロフィルム協議会 National Microfilm Association として設立され、1982年に現在の名称に変更)が提唱した概念で、AIIMと提携関係にあるJIIMA(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会)では、ECMを次のように説明しています。

「ECM(Enterprise Content Management)とは、企業(エンタープライズ)の非構造化データ(コンテンツ)を統合的に管理する(マネジメント)ためのフレームワークをいい、2000年に米国AIIMが提唱しました。JIIMAが提唱している『統合文書情報マネジメント』と同義です。
 組織で必要な全ての情報資産(コンテンツ)をデジタル化し、簡単に利用・検索ができるようにするために、全ての形式のコンテンツを最も効率的な手段で一元的に管理して必要な時に必要なコンテンツを取り出し、活用できるようにするシステムを文書情報マネジメント・システムといいます。文書情報マネジメント・システムには目的に応じた機能を提供するドキュメント・マネジメント・システムやナレッジ・マネジメント・システム、レコード・マネジメント・システム、Eメール管理システムなどがありますが、組織の部門を越えた情報共有と運用・管理を実現する統合的な文書情報マネジメントの手法がECMです。ECMは、統合文書情報マネジメントであり、一般に複数の文書情報マネジメント・システムの集合体として、人が使う文書情報(非構造化データ)を企業レベルで最適化するためのマネジメント手法を提供します。」
http://www.ecm-portal.jp/faq/#q1

ECMは現用段階の組織の情報資産の管理フレームワークと言えます。現用段階の組織の情報資産であるECMとアーカイブズ・システムを継ぎ目なく統合する問題を考える上で参考になるのが、今回ご紹介する「プリザービカ白書:コンテンツ・マネジメントとデジタル保存」と「エンタプライズ・コンテンツのためのデジタル保存:ECMとOAIS間のギャップ分析」です。


◆「プリザービカ白書:コンテンツ・マネジメントとデジタル保存」(2014年)
http://preservica.com/download/4052

プリザービカ Preservica は1980年に創業した英国のIT企業テセラ Tessela社がデジタル保存のために提供しているITシステム・サービスです。
http://tessella.com/who-we-are/history/

同社は英米豪欧州を中心に、政府、地方自治体、大学、企業を主な顧客としています。(英国国立公文書館、欧州委員会、オランダ国立公文書館、スイス連邦公文書館、フィンランド国立公文書館、イギリス議会、ウィスコンシン歴史協会、バーモント州公文書館、ブタペスト市公文書館、ウェルカム・ライブラリー、オーストラリア国立図書館、グラスゴー大学、リバプール大学ほか、企業ではユニリーバ社、HSBCなど)
http://preservica.com/customers/

この白書では、「コンテンツ・マネジメントとは何か」、「レコード・マネジメントとコンテンツ・マネジメントの関係」、「コンテンツ・マネジメント、レコード・マネジメントとアーカイブズ情報マネジメントの関係」、「デジタル保存とは何か」、「デジタル保存が困難な理由」、「デジタル保存とコンテンツ・マネジメント・システム(CMS)の関係」、「プリザービカが提供するアクティブなデジタル保存に関して」が説明されています。
http://preservica.com/download/4052

白書3ページ目のCMSとデジタル保存(Digital Preservation: DP)との特徴の比較が大変分かりやすいです。

+‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+

<コンテンツのバージョン>
CMS:バージョン管理可能
DP:バージョンは固定されたもの

<アクセスのスピード>
CMS:速い、即時
DP:遅い、待機も

<ファイル形式の陳腐化>
CMS:問題でない
DP:主要な問題

<データ量>
CMS:一般的には小さい
DP:膨大な可能性、長期間にわたって蓄積された幅広い種々のソース(sources)を持つ

<ビットレベルの保護>
CMS:有り。しかしデータ量が小さければあまり問題でない。
DP:有り。データ量が膨大で長期にわたると深刻な問題になる。

<ダウンロード・ツール>
CMS:コンテンツ作成と同じシステムを用いる。
DP:異なったシステムを使うかもしれない。

<特殊な利用>
CMS:有り。特定のビジネス・ニーズのために組み入れられる。
DP:複数のソースからコンテンツを取り込むかもしれない。

+‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+

デジタルなコンテンツをアーカイブズとして保存し、必要な時に利用するためには、CMSからDPシステムに長期保存すべきデータが確実に移管されるような仕組みを創出せねばなりません。この問題を含めて、同社がトータルにデジタル保存をサポートする際の考え方が「アクティブ・プリザベーション」ということです。
(「アクティブ・プリザベーション」については以下のURLをご参照ください。)
http://preservica.com/resource/auctor-aliquam-white-paper/

この問題をより詳細に、学術的立場で論じているのが次に紹介する「エンタプライズ・コンテンツのためのデジタル保存:ECMとOAIS間のギャップ分析」です。


◆「エンタプライズ・コンテンツのためのデジタル保存:ECMとOAIS間のギャップ分析」(2010年)
http://www.ifs.tuwien.ac.at/~strodl/paper/korb_ipres2010.pdf
http://publik.tuwien.ac.at/files/PubDat_191180.pdf

最初に書誌と目次をご紹介します。

[書誌情報]
論文タイトル:エンタプライズ・コンテンツのためのデジタル保存:ECMとOAIS間のギャップ分析
論文タイトル原文:Digital preservation for enterprise content: a gap-analysis between ECM and OAIS
著者1:ホアヒム・コルプ
著者名原文1:Joachim Korb
著者所属1:オーストリア技術研究所 セイフティ&セキュリティ部門
著者所属原文1:Safety & Security Department, AIT Austrian Institute of Technology
著者2:シュテファン・シュトロル
著者名原文2:Stephan Strodl
著者所属2:ウィーン工科大学 情報とソフトウェア・エンジニアリンググループ
著者所属原文2:Information and Software Engineering Group, Vienna University of Technology
収録誌:第7回デジタル・オブジェクト保存国際会議論文集(iPRES 2010)
収録誌名原文:Proceedings of the 7th International Conference on Preservation of Digital Objects (iPRES 2010)
発行年:2010年
発行地:ウィーン(オーストリア)
ページ:221-228

[目次情報]
要約 Abstract
1 はじめに Introduction
2 エンタプライズ・コンテンツ・マネジメント Enterprise content management
 2.1 ECM構成要素 ECM components
  キャプチャ(インプット管理) Capture (Input management)
  管理 Manage
  ・文書管理 Document management
  ・コラボレーション・ツール Collaboration tools
  ・ウェブ・コンテンツ管理 Web content management
  ・記録管理 Records management
  ・業務プロセス管理/ワークフロー Business process management/Workflow
  格納 Store
  提供(アウトプット管理) Deliver (Output management)
  保存 Preserve
 2.2 ECM、記録管理、保存と長期アーカイビング
    ECM, Records management, preserve and long-term archiving
3 OAISモデル The OAIS model
 3.1 記述 Description
  3.1.1 OAIS情報と情報パッケージ定義 OAIS information and information
  package definitions
   ・出所 Provenance
   ・レファレンス Reference
   ・不変性 Fixity
   ・コンテンツ情報 Content information
  3.1.2 OAIS役割 OAIS roles
   ・プロデューサー Producer
   ・マネジメント Management
   ・コンシューマー Consumer
  3.1.3 OAIS機能エンティティとデータフロー OAIS functional entities and data flow
   ・取り込み Ingest
   ・アーカイブズ保管 Archival storage
   ・データ管理 Data management
   ・アクセス Access
   ・管理 Administration
   ・保存計画 Preservation planning
4 ギャップ分析 Gap analysis
 4.1 ECMをOAISに適合させるには何が要求されるか?
    What is required to make an ECM OAIS compliant?
5 まとめ Summary
6 参照文献 References


[概要]
http://www.ifs.tuwien.ac.at/~strodl/paper/korb_ipres2010.pdf
http://publik.tuwien.ac.at/files/PubDat_191180.pdf

「現代は情報がどんどんデジタルな形で生産されている。そればかりでなく、もともとアナログな形で生産された資料も保存やアクセスを容易にするためにデジタル化されつつある。しかし大きな問題が存在する。マイクロソフトのワード形式やCADファイルの例に明らかだが、これらはソフトウェアに依存しており、古いバージョンのソフトウェアで作成されたものは新しいバージョンのソフトウェア、まして他社のソフトウェアでは再現することができないことがしばしば起こる。

デジタル保存には2つの要素がある。一つはビット・ストリームの保存 bit-stream preservation で、これは多くのECMシステムでは解決されている。もう一つの要素は論理的保存 logical preservation として知られるものである。時間の経過とともにデータ形式やソフトウェア、プログラムの実行時に必要となる実行環境が旧式化し、コレクション全体のデータが失われることがある。これらを防ぎ、長期にわたって保存することが論理的保存である。本稿の関心は後者にある。

デジタルな情報資産の長期保存に関して、学術機関や図書館、文書館、博物館は近年さまざまな取り組みを行ってきた。その際特に留意されてきたのは、ISO:14721として国際規格化された「開放型記録保管情報システム」Open Archival Information System (OAIS)参照モデルとの適合性である。OAIS参照モデルはもともと宇宙データシステム諮問委員会(Consultative Committee for Space Data Systems: CCSDS)が策定したものである。この標準を開発する過程で、CCSDSはこの標準が扱っている問題は、宇宙開発業界以外の他の分野にとっても重要であることに気づき、他分野から幅広く─とりわけ伝統的なアーカイブズ業界から─標準モデル開発プロセスに参加することを可能にした。OAISの "Open" というのはそういう意味であり、OAISのコンテンツに対するオープン・アクセスを意味するわけではない。OAISはデジタル長期保存システムを記述しているのみならず、これに関わる人々に対して、長期保存に関する共通のボキャブラリーを与えている。

(編者注:OAISは2003年に「ISO 14721:2003 Space data and information transfer systems -- OAIS -- Reference model」として国際規格化され、この論文が書かれた後の2012年に「ISO 14721:2012 Space data and information transfer systems -- (OAIS) -- Reference model」が発行されています。)

ビジネス界も学術機関、図書館、文書館、博物館と同じ状況である。ただし、企業の場合は、膨大なボーンデジタル記録、デジタル化された資料がECMシステムに取り込まれ、管理され、利用されている。学術機関、図書館、文書館、博物館とビジネスの違いは、ECMシステムが現在のところシステムに格納された情報に対して、長期的なアクセス手段を提供していない、という点にある。

なお、ECMという言葉は事業者によってさまざまに使われており、現在のところインターネットにおけるコンテンツ管理を扱うソフトウェアとして理解されることが多い。しかし、本稿ではAIIMの定義に従う。

ECMとOAISの機能性を対照した場合、必要とされる条件には重なるものと重ならないものがある。

(1)ECMのキャプチャ機能は組織が作成するすべてのコンテンツを収集するが、OAISの取り込み機能には、保存すべき情報(だけ)が提供されなければいけない。

(2)ECMは通常、組織のインフラの中に組み込まれているが、OAISの場合は他組織が生産した情報の保存に対して責任を負う外部組織であることがしばしばある。

(3)ECMのキャプチャ機能は所有者やアクセス権に関するメタデータと、その他文書のライフサイクルの現用期間に必要とされる情報を収集する。OAISの取り込み機能はこれらの情報のある部分に関係するけれども、保存に関連するメタデータに特化している。例えばファイル形式、表現、保存に関わるメタデータなどである。

(4)OAISでは記述情報は実際のデータ(これは保存されるべき情報を表す)から切り離されている。

(5)ECMは保存計画機能、監視機能、あるいは継続的な論理的保存は提供しない。OAISにとってこれらは管理機能によって提供されている。」


★☆★ 編集部より ★☆★

◎「記録管理、アーカイブズとITが共通の言葉を持つこと」

今月1月2日にイギリスのアーカイブズ関係者のメーリングリスト ARCHIVES-NRA Archives に投稿されたイングランド銀行アーカイブのアシスタント・アーキビスト(1年契約)募集のお知らせには、当該ポジションの職務・責任の一つとして「CALMを用い、国際記述標準(ISAD(G))とイングランド銀行アーカイブのガイドラインに従いコレクションの目録を作成する」と記載されています。CALMとはアクシエル社(Axiell Limited)が提供するアーカイブズ向けデータベース・アプリケーションで、英国を中心に主として欧州のアーカイブズ機関で広く利用されています。
https://www.jiscmail.ac.uk/cgi-bin/webadmin?A1=ind1501&L=archives-nra
https://www.jiscmail.ac.uk/cgi-bin/webadmin?A2=ind1501&L=archives-nra&F=&S=&P=3749

同社は、グループの本拠地をスウェーデンのLundに置き、北欧、イギリスを中心に図書館、アーカイブズ、博物館向けのITシステムとサービスを提供しています。イギリスにおける前身は、1970年創業のPlessey Data Systems社。英国の地方自治体の三分の一が利用しているシステムを提供しているほか、チャンネル4(テレビ局)やセインズベリー(小売り)、英国上院などの顧客を持っています。
http://www.axiell.co.uk/thisisaxiell

同社によるとCALMはグラフィカル・アーカイブズ管理システムで、次のような国際標準に準拠しています。
・ISAD(G)...国際標準記録史料記述一般原則(ICAによる)
・EAD...符号化永久保存記録記述
・ISAAR(CPF)...団体、個人、家に関するアーカイブズ典拠レコード(ICAによる)
・NCA name authority guidelines(英国・全国アーカイブズ評議会による人名典拠ガイドライン)
・UNESCO or UKAT thesaurus(ユネスコまたは英国アーカイブズ同義語辞典)
・OAI-PMH(Open Archives Initiativeメタデータ・ハーベスティング・プロトコル)
・Spectrum(英国ドキュメンテーション協会 MDA:Museum Documentation
Association が1994年に出版した博物館で使用する所蔵品記録の手順標準)
http://www.axiell.co.uk/calm-for-archives
http://www.axiell.com/c/document_library/get_file?uuid=c8bf2dc3-af68-4cf2-9fc2-45d47a49de39&groupId=10099 (PDF)

アーカイブズ記述/目録の国際標準を理解してそれに準拠したソフトウェアを事業者が開発、これが広く利用される状況にあるということです。CALMのユーザー同士の横のつながりもあります。
http://www.wm-calm-ug.bham.ac.uk/weblinks.html
http://www.wm-calm-ug.bham.ac.uk/calmview-sites.html

各機関がインハウスでアーカイブズ資料管理のためのアプリケーション・ソフトを内製する場合、社会的にみるならば重複によるムダが生じるのは明らかです。標準に依拠したプロダクトの商業的開発は意義あることのように思われます。もちろんパブリック・セクター主導で非営利事業として開発を行うこともありえるでしょう。

さらに、(主としてパブリック・セクターのアーカイブズに関わることですが)標準に準拠したデータは、他の機関とのデータ・エクスチェンジ・プロジェクトを容易にします。英国において、アーカイブズの目録情報の全国的データベースが発達しているのは、個々のアーカイブズ機関・アーキビストの側でのISAD(G)対応だけではなく、これを支援する商用プロダクト(国際標準に準拠したアプリケーション・ソフト)が存在することもその一因ではないでしょうか。

テスラ社がプリザービカ導入事例として公開している英国国立公文書館のケース・スタディでも同様のことを感じます。この事例では、長期保存のためのマイグレーションの繰り返しによって生じるうる陳腐化によって可読性が損なわれないように、ひとつひとつの記録のプロパティーをマイグレーションの過程で厳格にコントロールしています(具体的にはマイグレーション前とマイグレーション後のプロパティーを比較して、失われた情報がないかどうかを自動的に確認する)。このようなデジタル記録情報保存の一般的課題に加えて、アーカイブズ情報の記述が要請する階層性をマイグレーションを繰り返す中でも保持する、といったアーカイブズの特性に由来する課題への対応も述べられています。
http://preservica.com/resource/the-uk-national-archives/
http://preservica.com/download/4040

CALMにおけるアーカイブズ記述の国際標準への対応、あるいはプリザービカのアーカイブズ記述の階層性(フォンドとしての記録群の把握)への対応、これらは何を示しているのでしょうか。編集部の考えでは、アーカイブズを真に持続可能で利用が容易なものにするためには、ITの力が必要であり、さらにそのためにはアーキビストとITスタッフが共通の言葉を持つ必要がある、ということです。

英国国立公文書館のプリザービカとの協力事例では、テスラ社の担当ロブ・シャープ氏 Rob Sharpe, Head of Archiving Solutions at Preservica は次のように語っています。(上のPDF4ページ目)

「長年にわたりテスラ社と英国国立公文書館が築いてきた密接な協力関係は、これらの問題(マイグレーションによってアーカイブズの特徴である階層性が失われてしまうことなど)を乗り越えるのに、計り知れないほど貴重なものでした。"わたしたちは同じ言葉を話していました"」

'the close working relationship that Tessella and The National Archives had built up over a number of years was invaluable in overcoming these and other challenges. "We were talking the same language,"'
http://preservica.com/download/4040

企業アーカイブズを含めて日本のアーカイブズ機関がISAD(G)等の国際標準を適用すべきかどうかについてのコンセンサスはまだ得られていないと思われます。しかし、持続可能なアーカイブズを構築するためには「アーカイブズの実務担当者が、社内(組織内)のIT部門、社外(組織外)のITベンダーと共通の言葉で話すこと」が必要なのは明らかです。本通信がそれに対してわずかであれ寄与できたら、と思います。


[関連ページ]

ウィーン工科大学のデジタル保存関係文献リスト
http://www.ifs.tuwien.ac.at/dp/publications.html

宇宙データシステム諮問委員会(CCSDS)のOAIS参照モデル2012年版(マゼンタ・ブック)
http://public.ccsds.org/publications/archive/650x0m2.pdf

ISO 14721:2003 Space data and information transfer systems -- OAIS -- Reference model
http://www.iso.org/iso/catalogue_detail.htm?csnumber=24683

ISO 14721:2012 Space data and information transfer systems -- (OAIS) -- Reference model
http://www.iso.org/iso/home/store/catalogue_ics/catalogue_detail_ics.htm?csnumber=57284

ジョルディ・セラ・セラ(バルセロナ大学)
「コンサルティングとアーキビストにとってのビジネス機会としてのデジタル保存ポリシー開発」(ICA2014ジローナ大会報告)
Development of a digital preservation policy as a business opportunity for consulting and archivists
http://www.girona.cat/web/ica2014/ponents/textos/id135.pdf

ウェルカム・ライブラリーのデジタル保存に関する記事
Insight and analysis for IT leaders (2011年6月28日)
「デジタル・ヒストリー:ウェルカム・ライブラリーは医学の歴史をデジタル形式でどのように保存しているのか」
Digital history: How the Wellcome Library is preserving the history of medical science in digital form
http://www.information-age.com/technology/information-management/1633333/digital-history#sthash.VscixaMk.dpuf

栗山正光「長期保存型電子図書館とOAIS参照モデル」(2003年1月24日 筑波大学・図書館情報大学統合記念公開シンポジウム『電子図書館の軌跡と未来:ますます広がる電子図書館サービス』)
http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/pub/dlsympo/hobunshu/kuriyama.pdf


*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

[略称一覧]
ACA: Association of Canadian Archivists(カナダ・アーキビスト協会)
ARA: Archives and Records Association(アーカイブズとレコード協会)
ARC: ARC magazine: archives - records management - conservation
(SoAが発行する月刊ニュースレター)
ASA: Australian Society of Archivists(オーストラリア・アーキビスト協会)
BAC: Business Archives Council(ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BACS: Business Archives Council in Scotland
(スコットランド・ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BAS: Business Archives Section
(ビジネス・アーカイブズ部会:SAA内の部会)
CITRA: International Conference of the Round Table on Archives
(アーカイブズに関する国際円卓会議:ICAの年次会議)
CoSA:Council of State Archivists(米国・州文書館長評議会)
DCC: Digital Curation Center(英国デジタル・キュレーション・センター)
EDRMS:Electronic Document and Record Management System
(電子文書記録管理システム)
ERM:Electronic Record Management(電子記録管理)
ICA: International Council on Archives(国際文書館評議会)
LSE: London School of Economics and Political Science
(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)
MLA: Museums, Libraries and Archives Council
(英国 博物館、図書館、アーカイブズ評議会)
NAGARA: National Association of Government Archives and Records
Administrators
(米国・全国政府アーカイブズ記録管理者協会)
NARA: National Archives and Records Administration
(米国 国立公文書館記録管理庁)
RIKAR: Research Institute of Korean Archives and Records
(韓国国家記録研究院)
RMS:Record Management System(記録管理システム)
SAA: Society of American Archivists(米国アーキビスト協会)
SBL: Section for Business and Labour Archives
(企業労働アーカイブズ部会、ICA内の部会)
SoA: Society of Archivists(イギリス・アーキビスト協会)
TNA: The National Archives(英国国立公文書館)

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

☆★ 編集部より:あとがき、次号予告 ★☆

年の初めにふと、「次に生れてくる時はコンピュータ・サイエンスを専攻したい...」とつぶやいたところ、家族には一笑に付されました。

さて、海外のアーカイブズ関係の求人広告は興味深いものです。どのような職務にどの程度のキャリアを持つ人を、どのような待遇で募集するのかを知ることができるからです。

本文でご紹介した今年1月2日付のイングランド銀行アーカイブ(BOEA)のアシスタント・アーキビスト(写真プロジェクト担当)の求人広告を詳しく見てみましょう。
https://www.jiscmail.ac.uk/cgi-bin/webadmin?A2=ind1501&L=archives-nra&F=&S=&P=3749

★・・・・・・・★・・・・・・・・★

年俸:約500万円~約600万円(£28,308ポンド~£33,000)
勤務地:ロンドン
勤務期間:52週限定

職務内容:イングランド銀行(BOE)の写真コレクション・シリーズを評価選別、目録作成、デジタル化する。

BOEAについて:ロンドンのスレッドニードル通りのイングランド銀行本店内にあり、BOEの秘書部門に属する。第一の責務は、BOEの取締役会をはじめとする主要な審議会を支援すること。アーカイブズは1694年のBOE開業以来の同行の歴史をカバーする80,000点以上の資料を所蔵する。事前にアポイントメントをとった外部の研究者に対して週4日公開されている。BOEAチームは歴史家であるアーカイブ・マネジャー、4人のアーカイブズ専門職、1人のアーカイブ・アシスタントによって構成される。

写真プロジェクト担当アシスタント・アーキビストの役割詳細説明:
・写真担当アシスタント・アーキビストはコレクション担当アーキビストに直属する。
・写真コレクションの評価選別に責任を負う。
・目録化する重要なシリーズを特定する。
・国際記述標準であるISAD(G)とBOEAガイドラインを用いて、CALMによってコレクション目録を作成する。
・修復のための優先順位を特定し記録する。
・アーカイブズ標準に則った保存箱への移し替え
・選別した写真のデジタル化
・新規展示に関してイングランド銀行博物館と連絡を取り合う。

コレクションの概要:
・約45,000点以上の画像で、さまざまなフォーマットから成る。
・テーマはBOEに関わるもので、職員、建築、戦争、偽造ほか広い範囲に及ぶ。
・多くの画像は古くかつ珍しいもので、BOEの歴史とともに写真の歴史を表すものでもある。

職務・責任:
・コレクションを評価し、目録化すべきシリーズを特定する。
・CALMを用い、国際記述標準(ISAD(G))とBOEAガイドラインに従いコレクションの目録を作成する。
・複製物と不要なものを特定する。
・オリジナルのガラス乾板ネガとそのプリントを照合し、これを目録に記載する。
・修復が必要なものの優先順位を特定する。
・アーカイブズ標準に則った保存箱へ移し替える。ラベルを貼付し、箱に入れて、配架する。
・デジタル化するアイテムを選ぶ。
・選んだ画像をBOEA内のスキャナーを用いてBOEAガイドラインに従いTIFFとJPEGフォーマットでデジタル化する。
・写真を用いた展示作成に関してイングランド銀行博物館と連携する。
・コレクションに関する問い合わせに答える。

職務資格:
■必須条件
・専門的な、一般に認められている大学院でのアーカイブズに関するトレーニングを受けた資格保有者、または評価選別と目録作成に関してこれと同様な経験を持つと認められる者。
・専門分野における現在の実務スタンダードに関して詳しい知識を持つ者。
・厳格な納期で高品質な作業を提供できる卓越した時間管理スキルと能力。
・チームで、また、自立的にも働くことができること。
・卓越した書くスキル、ならびにコミュニケーション能力と対人能力。
・ITに通じていること。

■望ましい条件
・CALMを利用した経験
・フォトショップとアドビ・アクロバット・プロ利用経験
・TIFFとJPEGを含む、さまざまな写真のファイル形式に関する十分な理解
・写真コレクションを扱った経験
・写真コレクションに関連した修復問題に関する理解

このポストは最近資格を取得したアーキビストまたはこれと同レベルの者に適しているだろう。

締め切り:2015年1月16日
2015年2月2日からの週に面接を予定。

★・・・・・・・★・・・・・・・・★

以上、アーカイブズ専門職資格を取得して間もない応募者を想定した、1年間の期限付き雇用に関する条件と職務内容でした。実際のスキャニングの作業と並行して、45,000点以上の画像がどのようなシリーズで構成されているのか理解し、シリーズレベルで評価選別し、国際標準ISAD(G)に則った目録作成を行うことがこの職務の中核部分にあたるでしょう。

☆~~~☆~~~☆~~~☆~~~☆~~~☆~~~☆

次号は2015年2月中旬発行予定です。どうぞお楽しみに。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――
◆◇◆バックナンバーもご活用ください◆◇◆

https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/index.html

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

***********************************

ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信) No.56
2015年1月7日発行 (不定期発行)
【創刊日】2008年2月15日
【発行者】公益財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター
【編集者】公益財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター
      「ビジネス・アーカイブズ通信」編集部
【発行地】日本/東京都/北区
【ISSN】1884-2666
【E-Mail】
【サイト】https://www.shibusawa.or.jp/center/ba/index.html

***********************************

Copyright (C)
公益財団法人渋沢栄一記念財団
2007- All Rights Reserved.

***********************************

一覧へ戻る