ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信)

第27号(2010年3月15日発行)

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

☆      □■□ ビジネス・アーカイブズ通信 □■□

☆       No.27 (2010年3月15日発行)

☆   発行:財団法人渋沢栄一記念財団 実業史研究情報センター

☆                         〔ISSN:1884-2666〕
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

この通信では海外(主として英語圏)のビジネス・アーカイブズに関する情報をお届けします。

今号は文献情報2件です。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――
◆ 目次 ◆

[掲載事項の凡例とご注意]

■文献情報:「ルイス・キャロル、子どもを救うために借金を重ねる」
  ◎Times Online 2010年2月14日

■文献情報:アーカイブズ論文集 2
  ◎『コミュニティ・アーカイブズ:記憶を形づくる』

☆★ 編集部より:次号予告 ★☆

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

[掲載事項の凡例]

・日本語で読みやすいものになるように、タイトルははじめに日本語訳を、続いて原文を記します。
・人名や固有名詞の発音が不明の場合も日本語表記を添えました。便宜的なものですので、検索等を行う場合はかならず原文を用いてください。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

[ご注意]
・受信時にリンク先を示すURLが途中で改行されてしまう場合があります。通常のURLクリックで表示されない場合にはお手数ですがコピー&ペーストで一行にしたものをブラウザのアドレス・バーに挿入し、リンク先をご覧ください。

===================================

■文献情報:「ルイス・キャロル、子どもを救うために借金を重ねる」

===================================

◎Times Online 2010年2月14日

Lewis Carroll ran up debts to save children
http://entertainment.timesonline.co.uk/tol/arts_and_entertainment/books/article7026254.ece

英国バークレイズ銀行アーカイブズの資料を利用したルイス・キャロル伝が刊行されました。伝記作家ジェニー・ウルフ(Jenny Woolf)による『ルイス・キャロルの謎』(原題:The Mystery of Lewis Carroll)です。

『不思議の国のアリス』で知られるルイス・キャロル(Lewis Carroll, 1832-1898)は、英国聖公会の牧師であり学者でもありました。キャロルの子どもへの関わりに関しては、これまでさまざまな憶測がありました。今回著者はバークレイズ銀行アーカイブズに含まれるキャロル(本名:Charles Lutwidge Dodgson)の口座記録から、キャロルが虐待された児童や女性を保護する団体へ秘かに多額の寄付を行っており、それによってしばしば負債を抱えるほどであったことを明らかにしています。

バークレイズ銀行がキャロルの口座に関する記録を公開することを決定した理由は、この記録が百年以上前のものであり、かつ関係者が全員故人となったことによります。

[関連ページ]

バークレイズ銀行アーカイブズ ウェブページ
http://group.barclays.com/About-us/Who-we-are-and-what-we-do/Our-history/Barclays-Group-archives

『ルイス・キャロルの謎』(原題:The Mystery of Lewis Carroll)ウェブサイト
http://www.jabberwock.co.uk/biography_prelim.html

===================================

■文献情報:アーカイブズ論文集 2

===================================

◎『コミュニティ・アーカイブズ:記憶を形づくる』
Community archives: the shaping of memory

日本語タイトル:コミュニティ・アーカイブズ:記憶を形づくる
原題:Community archives: the shaping of memory
シリーズ名日本語タイトル:記録管理とアーカイブズの原理と実務
シリーズ名:Principles and practice in records management and archives
編者名1:ジャンネット・A・バスチャン
編者名原文1:Jeannette A. Bastian
編者名2:ベン・アレクサンダー
編者名原文2:Ben Alexander
発行地:ロンドン London
発行者名原文:Facet Publishing
発行年:2009
ページ数:vii, 286 p.
ISBN:978-1-85604-639-8
版元紹介頁:http://www.facetpublishing.co.uk/title.php?id=639-8

今回ご紹介するのは、様々な集団やグループ(=コミュニティ)のアーカイブズ、コミュニティ・アーカイブズに関する新刊書籍です。コミュニティ・アーカイブズに関しては、近年イギリスを中心に関心が高まってきています。ただし、「コミュニティ」概念も時代とともに、変化・拡大しており、「コミュニティ・アーカイブズ」を定義することはそれほど簡単ではありません。

イギリスの場合、1950年代の社会政策において、コミュニティ事業に対する関心が生じました。当初コミュニティとはどちらかというと地理的な境界によって限定される地域、というものとしてとらえられていました。しかし1980年代ごろから、地理的な集団・グループという意味のほかに、共通の関心事で集まった人々の集団・グループという意味でもコミュニティという言葉が使われるようになりました。空間的には隔離されていても、同じ趣味をもったり、あるいは同じ病に苦しむ人々は、ひとつのコミュニティを形成している、というふうに考えられるようになったのです。

そのような人間の結びつきのなかで生まれる、そして保存され、利用される記録や資料は、どのような特質をもつのか、どのように扱うべきなのか、アーカイブズの世界でも、コミュニティのアーカイブズに関する理論的・実践的な取り組みが求められています。それに対する一つの成果が本書であると言えます。

執筆者は研究者、アーキビスト、コンサルタント、その他実務に関わる人々と多岐にわたっています。

ビジネス・アーカイブズとの接点はまだはっきりしません。しかし企業活動が繰り広げられる市民社会における新しい動きは、企業が社会的に貢献するために何が必要なのかを考える上で、何らかのヒントを与えてくれるのではないかと編集者は考えています。

今号では目次情報のほかに、執筆者に関する情報をご紹介したいと思います。(執筆者に関する情報は本書の「寄稿者 Contributors /xiii」を翻訳編集しました。)

☆★ 目次 ★☆

シリーズへの序文 Introduction to the series
  ジェフリー・イェオ Geoffrey Yeo /ix

謝辞 Acknowledgements /xi

寄稿者 Contributors /xiii

序論:コミュニティとアーカイブズ−ひとつの共生関係
  ジャンネット・A・バスチャン、ベン・アレクサンダー /xxi
Introduction: communities and archives - a symbiotic relationship
  Jeannette A. Bastian and Ben Alexander /xxi
[著者について]
ジャンネット・A・バスチャンはシモンズ・カレッジ図書館情報学大学院の准教授で、同大学院でのアーカイブズ管理教育プログラムを統括する。1987年から1998年までアメリカ領バージン諸島の図書館文書館長。1999年にピッツバーグ大学から博士号を授与される。ポスト・コロニアリズム、集合的記憶、そしてアーカイブズ学の教育に関心が高い。ベン・アレクサンダーはニューヨーク市立大学クイーンズ・カレッジの図書館情報学大学院アシスタント・プロフェッサー。ニューヨーク公共図書館の特別コレクションのアーキビストを10年以上務めた経験を持つ。

第1部 コミュニティ・アーカイブズのひとつのモデル /1
Part 1 A community archives model /1

◆1
タイトル:「謎じゃあない。あたしたちが歴史を作ってる。」自分たち自身の物語を語る:本流に挑戦しそれを転覆させるイギリスの独立アーカイブズとコミュニティ・アーカイブズ /3
原題:'It is noh mistri, wi mekin histri.' Telling our own story: independent and community archives in the UK, challenging and subverting the mainstream /3
著者名1:アンドリュー・フリン
著者名原文1:Andrew Flinn
著者名2:メアリー・スティーブンス
著者名原文2:Mary Stevens
[編者註]
タイトルの"It is noh mistri, wi mekin histri."はLinton Kwesi Johnsonの"Selected Poems" (London, Penguin, 2006)に収録された詩'Mekin Histri'(同書64頁)からの一節。Linton Kwesi Johnson(1952年ジャマイカ生まれ)はアフリカ・カリブ海系イギリス人。詩人。Jamaican Patois(ジャマイカのクレオール語)で表現活動を行う。
[著者について]
アンドリュー・フリンはロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ情報学部のアーカイブズ・記録管理修士課程プログラムのディレクター。そのほかにアーカイブズ・記録管理教育研究フォーラム(FARMER)の議長、コミュニティ・アーカイブズと文化遺産グループのメンバーでもある。現職に就く前はマンチェスターにある国立労働史博物館のアーキビスト。社会史家、アーカイブズ教育に携わる。草の根のコミュニティ組織と社会的政治的活動に関する記録保存、集合的社会的記憶、アーカイブズと文化遺産とアイデンティティの関係性などのテーマに関心がある。メアリー・スティーブンスはロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ情報学部博士研究員(post-doctoral research associate)。アンドリュー・フリンならびにエリザベス・シェファード(Elizabeth Shepherd)とともに「コミュニティ・アーカイブズとアイデンティティ」プロジェクト(2008年〜2009年)に携わる。博士論文のテーマは2007年にフランスで開館した国立移民博物館(Cite nationale de l'histoire del'immigration)のためのプロジェクトにおけるナショナル・アイデンティティの作り替えに関するものである。記憶に関する政治(とりわけフランスにおける)と、それが文化遺産に関わる実践や制度を通じて伝達されるあり方に関心を持つ。

◆2
タイトル:特別な、ローカルな、そしてわたしたちについて:イギリスにおけるコミュニティ・アーカイブズの発展 /29
原題:Special, local and about us: the development of community archives in Britain /29
著者名:デイビッド・マンダー
著者名原文:David Mander
[著者について]
デイビッド・マンダーはイギリスのアーカイブズ界で30年以上働く。1977年から2005年まではロンドンの2つの特別区のアーキビストとして働き、現在は文化遺産と美術に関するコンサルタント。英国国立公文書館によるコミュニティ・アーカイブズ関連プロジェクトに、ハックニー・アーカイブズ(Hackney Archives)のトップとして関わる。現在はアーカイブズ・フォー・ロンドン(Archives for London Ltd)というロンドン地域のアーキビストと利用者グループの議長を務める。2004年から2006年には博物館、図書館、アーカイブズのロンドン地域の連携組織であるMLA Londonの運営委員も務めた。イギリスのアーカイブズへの貢献によって、叙勲される(OBE)。

第2部 コミュニティと非伝統的レコードキーピング(記録の管理保存)/47
Part 2 Communities and non-traditional record keeping /47

◆3
タイトル:シングル・ヌーンガー・クレイム(単一のヌーンガー族の申し立て):西部オーストラリアにおける先住民の権利、アーカイブズ記録、そして先住民コミュニティ /49
原題:The Single Noongar Claim: native title, archival records and aboriginal community in Western Australia /49
著者名:グレン・ケリー
著者名原文:Glen Kelly
[編者註]
「シングル・ヌーンガー・クレイム」とは西部オーストラリアの先住民ヌーンガー人が主張する先住民の権利。この権利の主張を裏書きするのは、ヌーンガー人というのが様々な先住民族の寄せ集めではなく、単一的な民族であるという事実である。
[著者について]
グレン・ケリーはオーストラリア・パースにあるサウス・ウェスト先住民土地&海岸カウンシル(South West Aboriginal Land and Sea Council: SWALSC)の最高経営責任者。SWALSCは先住民族ヌーンガー人の利益のための権利代表機関。

◆4
タイトル:現存する文化における昔からの言い伝え:記憶の保存におけるアーカイブズの役割 /65
原題:Oral tradition in living cultures: the role of archives in the preservation of memory /65
著者名:パトリシア・ギャロウェイ
著者名原文:Patricia Galloway
[著者について]
パトリシア・ギャロウェイはノースカロライナ大学チャペルヒル校から比較文学(1973年)と人類学(2004年)の博士号を得ている。1970年代には中世を対象とする考古学者としてヨーロッパで働く。その後人文科学指向のコンピュータ分野に関与する。1979年から2000年までミシシッピー州政府アーカイブズ・歴史局(Mississippi Department of Archives and History: MDAH)で様々な業務に携わる。2000年以降はテキサス大学オースティン校でデジタル・アーカイブズ、評価選別、歴史系博物館等に関して教鞭をとる。

◆5
タイトル:私たちとは私たちの記憶である:フィジーにおけるコミュニティと記録 /87
原題:We are our memories: community and records in Fiji /87
著者名1:セタレキ・タレ
著者名原文1:Setareki Tale
著者名2:オペタ・アレファイオ
著者名原文2:Opeta Alefaio
[著者について]
セタレキ・タレはフィジー国立公文書館館長。23年間在勤。現在、国際文書館評議会太平洋地域支部(PARBICA)会長。オペタ・アレファイオはジャーナリスト出身で、過去5年間フィジー国立公文書館勤務。国立公文書館に勤務前はフィジー政府の情報省情報サービス部門で働く。

第3部 記録の紛失、破壊、そして回復 /95
Part 3 Records loss, destruction and recovery /95

◆6
タイトル:同性愛者をアーカイブし、アーカイブズに関する常識をくずす:カナダ・レズビアン・ゲイ・アーカイブズ(CLGA)の事例研究 /97
原題:Archiving the queer and queering the archives: a case study of the Canadian Lesbian and Gay Archives (CLGA) /97
著者名:マルセル・バリオー
著者名原文:Marcel Barriault
[著者について]
マルセル・バリオーはカナダのニュー・ブランズウィック州出身。1999年よりカナダ国立公文書館(現カナダ国立図書館文書館)に勤務。レファレンス・アーキビストとして出発し、その後政治アーカイブズ部門(Political Archives Section)で働く。カナダ南東部沿海州(ノバ・スコシア、ニュー・ブランズウィック)を指すアケイディア(Acadia)のアーカイブズと系図学に関心を持っている。カナダにおけるゲイに関する本の出版を準備中。現在カナダ・アーキビスト協会の機関誌Archivariaのフランス語編集者。

◆7
タイトル:記録の共同体によって共有される、ある生きたアーカイブ /109
原題:A living archive, shared by communities of records /109
著者名:エリック・ケテラール
著者名原文:Eric Ketelaar
[著者について]
アムステルダム大学名誉教授。1997年から2009年までアムステルダム大学アーカイブズ学教授。国連旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷(UN International Criminal Tribunal for the former Yugoslavia: ICTY)の求めで、ICTYの記録とアーカイブズ管理を精査し、2005年にICTYの遺産と正義・和解のためのその利用に関する提言付き報告書を執筆。2007年から2008年にはルワンダでの同種の活動に関わった。1989年から1997年までオランダ国立公文書館館長。1992年から2002年までライデン大学歴史学部でアーカイブズ学を教授する。2000年には国際文書館評議会名誉会長。その他多くの要職を歴任するとともに、著作多数。アーカイブズ専門誌Archival Scienceの3人の編集者のうちのひとり。

◆8
タイトル:真実委員会と集合的記憶の創出:チリの経験 /133
原題:Truth commissions and the construction of collective memory: the Chile experience /133
著者名:ジョエル・A・ブランコ=リベラ
著者名原文:Joel A. Branco-Rivera
[著者について]
ジョエル・A・ブランコ=リベラはミシガン大学情報学大学院でアーカイブズ・記録管理を専攻、修士号(MSI)取得。2004年から2005年までプエルトリコ大学でアーカイブズ・記録管理を教える。現在ピッツバーグ大学情報学大学院博士課程在籍中。ラテンアメリカにおける真実委員会と人権に関わる記録が持つアーカイブズ的な意味、アーカイブズと社会的記憶、政府秘密主義、アカウンタビリティに関心を持つ。

第4部 オンライン・コミュニティ:技術はいかにしてコミュニティとその記録をひとつに結び付けるか /149
Part 4 Online communities: how technology brings communities and their records together /149

◆9
タイトル:イツコル書からブログへ:集団虐殺、草の根における記録の作成と保存、そして新しい技術 /151
原題:From Yizkor Books to weblogs: genocide, grassroots documentation and new technologies /151
著者名1:アンドゥラス・リードゥルメイヤー
著者名原文1:Andras Riedlmayar
著者名2:スティーブン・ネイロン
著者名原文2:Stephen Naron
[編者註]
イツコル書とは20世紀のホロコーストの時代に破壊された東欧のある特定のユダヤ人共同体の歴史に関わる資料を編纂したもの。
[著者について]
アンドゥラス・リードゥルメイヤーはハンガリーのブダペスト出身で、ドイツ、アメリカで教育を受ける。シカゴ大学歴史学部卒業後、プリンストン大学で東方学(Eastern Studies)を、シモンズ・カレッジで図書館情報学を専攻しそれぞれ修士号取得。1985年以来、ハーバード大学芸術図書館のイスラム建築のためのアガ・カーン・プログラム資料保存を担当。バルカン地域の歴史・文化の専門家として、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争(1992年〜1995年)、コソボ紛争(1998年〜1999年)によって破壊された建築、アーカイブズ、図書館、その他文化遺産の記録化に10年以上取り組んできた。国連旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷やボスニア・ヘルツェゴビナ紛争に関する国際刑事裁判所において、専門家として幾度か証言してきた。2006年から2008年にはトルコ研究協会議長、2003年から2007年には中東ライブラリアン協会のイラク図書館委員会の議長を務めた。その他ボスニア資料収集プロジェクト(Bosnian Manuscript Ingathering Project)共同発起人のひとりである。スティーブン・ネイロンはカンザス・シティ近郊出身。テキサス大学オースティン校で情報学修士号取得。テルアビブ大学、ベルリン自由大学等海外の大学でも学んだ経験がある。2003年よりイェール大学ホロコーストの証言のためのフォーチュノフ・ビデオ・アーカイブ(Fortunoff Video Archives for Holocaust Testimonies: FVAHT)で5年近くアーキビストとして働く。現在はスウェーデンのストックホルムに在住し、翻訳家として働きながらFVAHTの顧問を務めている。

◆10
タイトル:グレイトフル・デッドの音源アーカイブズの共同制作:コントロール、アクセス、そしてキュレーション(作成・保存・管理)のコミュニティ /169
原題:Co-creation of the Grateful Dead sound archive: control, access and curation communities /169
著者名:デイビッド・A・ウォレス
著者名原文:David A. Wallace
[編者註]
グレイトフル・デッドは1965年に結成されたアメリカのロックバンド。即興音楽で有名。
[著者について]
デイビッド・A・ウォレスはミシガン大学情報学大学院講師兼研究調査員。アーカイブズと記録管理について教えている。主要な関心分野は、アーカイブすることと現在・過去を形作ることの間の関係を調査すること、アカウンタビリティと正義を可能にする、あるいはそれらを拒絶するにあたってのアーカイブズの役割、政府記録の電算化である。1994年以来、レコードキーピング、アカウンタビリティ、情報公開、政府の秘密主義、専門職倫理、電子記録管理、大学院におけるアーカイブズ学教育、ウェブ上の情報インフラと文化遺産といったテーマで45本以上の専門的論文を発表、専門家の会合においては50回以上の発表を行っている。ネルソン・マンデラ財団の記憶プログラム(Nelson Mandela Foundation's Memory Programme)、南アフリカ歴史アーカイブ(South Africa History Archive)、社会的責任のためのコンピュータ専門職(Computer Professionals for Social Responsibilities)といった団体のコンサルティングも担当している。

第5部 コミュニティ・アーカイブを立ち上げる /195
Part 5 Building a community archive /195

◆11
タイトル:「わたしたちがはっきりと言い表すことのできないことすべて」:植民地のハンセン病アーカイブズと共同体の記念 /197
原題:"All the things we cannot articulate": colonial leprosy archives and community commemoration /195
著者名:リカルド・L・プンザラン
著者名原文:Ricardo L. Punzalan
[著者について]
リカルド・L・プンザランはフィリピン大学図書館情報学大学院のアシスタント・プロフェッサー。現在ミシガン大学情報学大学院博士課程に在籍中。論文のテーマは、ハンセン氏病に結び付けられたスティグマ(汚名、烙印)の伝播と、フィリピンのハンセン氏病療養施設におけるこの疾病に関する集合的な記憶の形成に、アーカイブズがどのように関わりがあるのか、というものである。

◆12
タイトル:匿名性を乗り越える:キッツ人とかれらのアーカイブズ /221
原題:Overcoming anonymity: Kittitians and their archives /221
著者名:ビクトリア・ボーグ・オフラーティ
著者名原文:Victoria Borg O'Flaherty
[編者註]
キッツ人とは東カリブ海に浮かぶSt Kitts島の住民。
[著者について]
ビクトリア・ボーグ・オフラーティはセント・キッツ・ネビス国立公文書館(National Archives of St Kitts-Nevis)館長。国際文書館評議会カリブ地域支部(Caribbean Branch of the International Council on Archives: CARBICA)の事務局長を2003年から2005年の間務めた。セント・キッツにおける労働史に関する著作・講演を行っている。近年は奴隷制への抵抗に関心を広げている。

◆13
タイトル:いつも奇妙で、いつもここに:黒人文化研究のためのショムバーグ・センターにブラック・ゲイ・アンド・レズビアン・アーカイブを作りだす /235
原題:Always queer, always here: creating the Black Gay and Lesbian Archive in the Schomburg Center for Research in Black Culture /235
著者名:スティーブン・G・フルウッド
著者名原文:Steven G. Fullwood
[著者について]
スティーブン・G・フルウッドは黒人文化研究のためのショムバーグ・センターのブラック・ゲイ・アンド・レズビアン・アーカイブの創設者であり、プロジェクト・ディレクターである。黒人文化研究のためのショムバーグ・センターはニューヨーク公共図書館の一部門。2005年にニューヨークタイムズ・ライブラリアン賞を受賞した。

結論:アーキビストとコミュニティ
  リチャード・J・コックス /251
Conclusion: the archivist and community
  Richard J. Cox /251
[著者について]
リチャード・J・コックスはピッツバーグ大学図書館情報学教授。アメリカ・アーキビスト協会(SAA)の理事会メンバー(1986年〜1989年)、American Archivist誌編集者(1991年〜1995年)ほか、アーカイブズ、記録管理分野での要職歴任。この分野での著書も13冊ある。

文献目録 Bibliography /265

索引 Index /277

[関連ページ] 順番は記事の順
L. K. Johnson執筆による記事(Guardian紙2006年3月4日号)
http://www.guardian.co.uk/news/2006/mar/04/guardianobituaries.socialexclusion

ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ情報学部 ウェブページ
http://www.slais.ucl.ac.uk/

英国国立労働史博物館 ウェブサイト
http://www.phm.org.uk/

フランス国立移民博物館 ウェブサイト
http://www.histoire-immigration.fr/

フランス国立移民博物館 英文紹介ページ
http://www.histoire-immigration.fr/upload/file/ext_media_fichier_448_cite_english.pdf

英国国立公文書館コミュニティ・アーカイブズ関連プロジェクト ウェブページ
http://www.nationalarchives.gov.uk/partnerprojects/caap/

英国国立公文書館内コミュニティ・アーカイブズ・ディベロップメント・グループに関する ウェブページ
http://www.nationalarchives.gov.uk/partnerprojects/caap/development-group.htm

ハックニー・アーカイブズ ウェブページ
http://www.hackney.gov.uk/ca-archives

MLA London ウェブサイト
http://www.mlalondon.org.uk/

サウス・ウェスト先住民土地&海岸カウンシル(オーストラリア) ウェブサイト
http://www.noongar.org.au/

シングル・ヌーンガー・クレイム関連書籍
It's Still in My Heart, This Is My Country: The Single Noongar Claim History
http://www.junkudo.co.jp/y_detail.jsp?ID=8192140142

ノースカロライナ大学チャペルヒル校 ウェブサイト
http://www.unc.edu/

ミシシッピー州政府アーカイブズ・歴史局 ウェブサイト
http://mdah.state.ms.us/

テキサス大学オースティン校情報学大学院 ウェブページ
http://www.ischool.utexas.edu/

フィジー国立公文書館 ウェブページ
http://www.info.gov.fj/archives.html

国際文書館評議会太平洋地域支部 ウェブサイト
http://www.parbica.org/

カナダ国立図書館公文書館 ウェブサイト
http://www.collectionscanada.gc.ca/index-e.html

カナダ・アーキビスト協会機関誌 Archivaria ウェブサイト
http://journals.sfu.ca/archivar/index.php/archivaria/index

アムステルダム大学 ウェブサイト
http://www.uva.nl/start.cfm/la=en

国連旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷 ウェブサイト
http://www.icty.org/

アーカイブズ専門誌 Archival Science ウェブページ
http://www.springer.com/new+%26+forthcoming+titles+%28default%29/journal/10502

ミシガン大学情報学大学院 ウェブサイト
http://www.si.umich.edu/

ピッツバーグ大学情報学大学院 ウェブサイト
http://www.ischool.pitt.edu/

ボスニア資料収集プロジェクト ウェブページ
http://www.kakarigi.net/manu/ingather.htm

イェール大学図書館 ホロコーストの証言のためのフォーチュノフ・ビデオ・アーカイブ ウェブページ
http://www.library.yale.edu/testimonies/

ネルソン・マンデラ財団記憶プログラム ウェブページ
http://www.nelsonmandela.org/index.php/memory/

南アフリカ歴史アーカイブ ウェブサイト
http://www.saha.org.za/

社会的責任のためのコンピュータ専門職 ウェブサイト
http://cpsr.org/

セント・キッツ・ネビス国立公文書館 ウェブサイト
http://www.nationalarchives.gov.kn/

国際文書館評議会カリブ地域支部 ウェブサイト
http://www.carbica.org/

ニューヨーク公共図書館黒人文化研究のためのショムバーグ・センター ウェブページ
http://legacy.www.nypl.org/research/sc/sc.html

*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*

[略称一覧]
ACA: Association of Canadian Archivists(カナダ・アーキビスト協会)
ARC: ARC magazine: archives - records management - conservation
(SoAが発行する月刊ニュースレター)
ASA: Australian Society of Archivists(オーストラリア・アーキビスト協会)
BAC: Business Archives Council(ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BACS: Business Archives Council in Scotland
(スコットランド・ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
DCC: Digital Curation Center(英国デジタル・キュレーション・センター)
EDRMS:Electronic Document and Record Management System
(電子文書記録管理システム)
ERM:Electronic Record Management(電子記録管理)
ICA: International Council on Archives(国際文書館評議会)
LSE: London School of Economics and Political Science
(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)
MLA: Museums, Libraries and Archives Council
(英国 博物館、図書館、アーカイブズ評議会)
NARA: National Archives and Records Administration
(米国 国立公文書館記録管理庁)
RIKAR: Research Institute of Korean Archives and Records
(韓国国家記録研究院)
RMS:Record Management System(記録管理システム)
SAA: Society of American Archivists(米国アーキビスト協会)
SBL: Section for Business and Labour Archives
(企業労働アーカイブズ部会、ICA内の部会)
SoA: Society of Archivists(イギリス・アーキビスト協会)
TNA: The National Archives(英国国立公文書館)

*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

☆★ 編集部より:あとがき、次号予告 ★☆

最近、イギリスのアーカイブズ関係者のメーリングリスト
https://www.jiscmail.ac.uk/cgi-bin/webadmin?A0=ARCHIVES-NRAで、公的に所有されることになった企業の過去の記録は、公的なものなのか、それとも私的なものなのか、という話題で意見が交わされました。2007年秋のサブプライムローン問題の影響で、2008年2月に国有化された銀行ノーザンロック(Northern Rock)などの場合、所有する過去の記録はどうなるのか、という疑問が提起されたのです。英国国立公文書館のAlex Ritchie氏の投稿によると、公記録法(Public Records Acts)は、企業の国有化が即座に所蔵記録を公的なものとすることを定めてはいないということです。

それを受けて、企業が国有化されたならば、その企業の過去の記録も公的文化財、あるいは公的記録として位置付けるべきであり、そのようなキャンペーンに取り組むべきである、という投稿が、地方公文書館関係者からなされました。これに対して、民間企業に籍を置くアーキビストからは、過去の記録を公的なものとして位置付けることにどんな利益があるのか、という問いかけがなされました。

その後、問題は公的記録と位置付けるのかどうかが問題なのではなく、不安定な企業の記録をどう守るのかにあるのだろう、という指摘とともに、昨年TNA、BAC、SoAその他が共同で作成し発表した「企業史料に関する全国的な戦略」への関心を高め、企業史料というものがどれだけ脆弱な資源なのかという点に対する社会的関心を向上させるべきであるという投稿がありました。

さらに一方では実務的な側面から、ブリティッシュ・レイランド(British Leyland)の関係者から、合併、国有化、民営化といった企業経営の変遷に伴って、公的記録と私的記録を分ける作業はほとんど不可能であるという指摘が成されました。ブリティッシュ・レイランドは、合併、国有化、民営化等の複雑な変遷を経た企業で、2005年に経営が行き詰まり中国企業に買収されてしまいました。

メーリングリストでの議論は、「企業史料に関する全国的な戦略」の有用性を認め、これに対する社会的関心を喚起すべきである、という点に収束しました。

☆〜〜〜☆〜〜〜☆〜〜〜☆〜〜〜☆〜〜〜☆〜〜〜☆

さて、前号の「編集部より:あとがき、次号予告」では英国の「国立図書館、国立公文書館の幹部がコンサルタント出身というのは、ブレア政権時代にもたらされた大変化のひとつのようです。」と記しました(バックナンバーではこの部分は掲載しておりません。)この部分を先月来日されたグラスゴー大学アーカイブズのレスリー・リッチモンドさんに確認したところ、イギリスではかなり前から、国立図書館や国立公文書館のトップがライブラリアンやアーキビスト出身ではない、ということです。この場を借りて、お詫びし、訂正いたします。

☆〜〜〜☆〜〜〜☆〜〜〜☆〜〜〜☆〜〜〜☆〜〜〜☆

次号ではアメリカ・アーキビスト協会年次大会プログラム他をご紹介します。2010年4月中旬配信予定です。

どうぞお楽しみに。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――
◆◇◆バックナンバーもご活用ください◆◇◆

http://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/index.html

―――――――――――――――――――――――――――――――――――
◆◇◆配信停止をご希望の方は次のメールアドレスまでご連絡ください◆◇◆

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

◆◇◆〈渋沢栄一記念財団からのお知らせ〉◆◇◆

□「企業史料ディレクトリ」:企業アーカイブズと企業史料の所在・概要ガイド

2008年7月22日公開いたしました。日本を代表する企業を中心とした企業アーカイブズと史料保存・学術研究機関合わせて30企業・団体・機関の概要、所蔵資料に関する情報を掲載しております。ぜひご覧ください。
http://www.shibusawa.or.jp/center/dir/index.html

□実業史研究情報センター・ブログ「情報の扉の、そのまた向こう」

「今日の栄一」「渡米実業団」「栄一情報」「栄一関連文献」「センターニュース」「今日の社史年表」「社史紹介(速報版)」「ビジネス・アーカイブズ通信(速報版)」「アーカイブズニュース」「図書館ニュース」をお届けしております。
http://d.hatena.ne.jp/tobira/

「アーカイブズニュース」では公文書等の管理に関する法律に関する動向やアーカイブズのデジタル化、資料の発見・公開に関わるニュースを随時ご紹介しております。

ブログ画面右側の「カテゴリー」にある「アーカイブズニュース」をクリックしてください。「アーカイブズニュース」として掲載した記事をまとめて一覧することができます。

・カテゴリーの紹介
http://d.hatena.ne.jp/tobira/20080203

実業史研究情報センター・ブログ「情報の扉の、そのまた向こう」はほぼ毎日更新しております。どうぞご利用ください。

□「渋沢栄一関連会社社名変遷図」

渋沢栄一がどのような会社に関わったか、それが今にどうつながっているのか、一目でわかるように業種別にまとめて変遷図にしました。現在92図掲載中です。社名索引もありますので、どうぞご覧ください。2010年3月25日更新予定です。
http://www.shibusawa.or.jp/eiichi/companyname/index.html

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

***********************************

ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信) No.27
2010年3月15日発行 (不定期発行)
【創刊日】2008年2月15日
【発行者】財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター
【編集者】財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター
      「ビジネス・アーカイブズ通信」編集部
【発行地】日本/東京都/北区
【ISSN】1884-2666
【E-Mail】
【サイト】http://www.shibusawa.or.jp/center/ba/index.html

***********************************

Copyright (C)
財団法人渋沢栄一記念財団
2007- All Rights Reserved.

***********************************

一覧へ戻る