ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信)

第9号(2008年9月26日発行)

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

☆      □■□ ビジネス・アーカイブズ通信 □■□

☆       No.9 (2008年9月26日発行)

☆   発行:財団法人渋沢栄一記念財団 実業史研究情報センター

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

この通信では海外(主として英語圏)のビジネス・アーカイブズに関する情報をお届けします。

今号は「企業アーカイブズ調査」と行事情報2件を掲載しております。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――
◆ 目次 ◆
■企業アーカイブズ調査
  □アメリカ・アーキビスト協会(SAA)ビジネス・アーカイブズ部門
   国際文書館評議会(ICA)ビジネス・労働アーカイブズ部門(SBL)共同企画
■行事情報:国際文書館評議会(ICA)企業労働アーカイブズ部会(SBL)会合
  2008年6月15-17日 Stavanger(ノルウェイ)
  □事務局会議・年次大会と「企業内リテンション(保管)の指針」に関するワークショップ
■行事情報:アメリカ・アーキビスト協会(SAA)第72回年次大会
  2008年8月26日-30日 サンフランシスコ
  □大会テーマ: 「アーカイブズ2008:アーカイブズの革命/進化とアイデンティティ」 
☆★ 編集部より:次号予告 ★☆
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

===================================

■企業アーカイブズ調査

アメリカ・アーキビスト協会(SAA)ビジネス・アーカイブズ部会
国際文書館評議会(ICA)ビジネス・労働アーカイブズ部会(SBL) 共同企画

===================================

□Survey of Corporate Archives 企業アーカイブズ調査
┌─────────────────────────
│◆企業アーカイブズに関する調査に協力してください◆
└─────────────────────────

「ビジネス・アーカイブズ通信」からの呼びかけです。

アメリカ・アーキビスト協会(SAA)ビジネス・アーカイブズ部会と国際文書館評議会(ICA)ビジネス・労働アーカイブズ部会(SBL)の共同企画による「企業アーカイブズ調査」に協力してください。

これはSAAのビジネス・アーカイブズ部会とICA/SBLが2005年に共同提案した企業アーカイブズに関するグローバルな調査です。この調査はアンケート手法によって企業アーカイブズのベスト・プラクティスを見つけ出すことを目的としています。

調査はどの企業アーカイブズでも参加することができます。下のURLをクリックすると調査票のページに飛びます。原文は英語です。みなさまのご参加を促進するために、以下にアンケートの内容を日本語で訳出いたしました。

ご不明な点は、次のメールアドレスにご連絡ください。本通信編集者が記入の方法など具体的にご案内いたします。

調査は以下のURLをクリックしてください。
http://www.surveymonkey.com/s.aspx?sm=tzP2UhDu_2fcsofm_2f65r4dKw_3d_3d
(締め切り:2008年12月1日)

◆◆◆ 全訳 ◆◆◆

1 調査序文

SAA(アメリカ・アーキビスト協会)ビジネス・アーカイブズ部門
ICA(国際文書館評議会)SBL(ビジネス・労働アーカイブズ部門)

企業アーカイブズ・ベンチマーク・アンケート

◆なぜグローバルな調査?

2005年のSAA年次大会中に開催されたSAAビジネス・アーカイブズ部門とICAビジネス・労働アーカイブズ部門のリーダーによる合同会議において、企業アーカイブズにおけるベストプラクティスを突き止める必要性が提起されました。この集まりでは、グローバルな調査が情報を集めるのに最も効果的であると判断されました。ボランティア・チームが結成され、このチームが(アーカイブズ・)プログラムと(アーカイブズの)実践に関する一連の質問を作成して入念に検討しました。

◆皆様方の知識を提供してください

より多くのアーカイブズがこの調査を行えば行うほど、すべての人にとってそのデータがいっそう有用なものになります。結果は皆様と皆様の同僚の方々に、世界中の企業アーカイブズ・プログラムの本質と範囲に関するかなりの情報を提供してくれるでしょう。

◆参加の仕方

この調査には各企業アーカイブズにつき1名の方に記入をお願いします。もし貴社に社名が異なり、アーカイブズ・プログラムも異なる別個の事業所がある場合は、それぞれの事業所(アーカイブズ)ごとに1名の方がこの調査に記入しなければなりません。この調査は英語版のみですが、私どもはこのことが非英語圏のアーキビストの参加の妨げにならないことを期待します。もし言語が問題となる場合、トニー・ジャン(Tony Jahn,)までメールにてご連絡ください。

◆結果

調査結果は匿名です。すなわち、私どもはこの調査にお答えいただいた個人のメールアドレスを特定したり追跡したりすることはできません。それゆえ、結果を調査回答記入者へ直接に送付することは不可能です。

結果は調査ツールを用いて集められ、その後、国レベルのさまざまなビジネス・アーカイブズ組織と関連ウェブ・サイトを利用して、できるだけ広い範囲に発表され周知されるでしょう。これらの組織にはSAAとICA/SBLを含みます。

◆結果をまとめるのに協力してください

すべての回答が提出された時点で、情報が利用可能な形式で共有されるように調査結果を集め、仕分けして、整理するボランティアをそれぞれの地域で必要とします。ボランティアを希望する方は、トニー・ジャン(Tony Jahn,)までメールにてご連絡ください。

この重要な試みに対する皆様方の参加に感謝いたします。

2 会社概観

(1) 貴社を最もよく表す産業部門を特定してください。
□ 銀行業
□ 消費者製品
□ 情報コミュニケーション技術
□ 保険
□ 製造業
□ 小売業
□ サービス
□ その他(具体的に明記してください       )

(2) 貴社が事業を展開する、あるいは製品を投入している市場である国は何カ国ですか?(回答は1つのみ)
□ 1カ国
□ 2〜10カ国
□ 10カ国以上

(3) 創業はいつですか?
□ 1900年以前
□ 1901-1950
□ 1951-2000
□ 2001年以降

(4) 貴社の本社がある地域を記入してください。

  国名を入力してください。

(5) 貴社の従業員総数を示してください(全世界で)。
□ 1-5,000
□ 5,001-50,000
□ 50,001-250,000
□ 25万人以上

(6) 貴社の年間収入(売上高)は?
□ 5000万以下
□ 5000万-2億5000万
□ 2億5000万-10億
□ 10億以上

 この範囲が基づいている通貨を明記してください(米ドル、ポンド、円、ユーロなど)。

3 アーカイブズのプロフィール

(7) 貴社がアーカイブズ機能またはアーカイブズ事業を開始した年を記入してください。

(8) アーカイブズが属する部門/職務分野を特定してください。
□ コミュニケーション
□ 施設/管理サービス
□ 人事
□ 法務/コンプライアンス
□ マーケティング
□ パブリックまたはコーポレート業務
□ その他(具体的に明記してください       )

(9) 貴社が持つアーカイブズ(物理的に離れており別のスタッフがいる)の数を記入してください。業者の保管施設にあるアーカイブズ記録に関してはこの数に含めないでください。

(10) もし貴社が1カ所以上のアーカイブズを持つ場合、その管理体制を示しコメントしてください。
□ 管理は集中型(すべてのアーカイブズは本社中央の同一のスタッフの管理下にある)ですか?
□ 管理は分権型(アーキビストたちは本社の管理下にあるというよりは、地方的に管理されている)ですか?

(11) 報告体制は効率的ですか?
□ はい
□ いいえ
□ その理由(具体的にコメントしてください             )

(12) もし貴社が2カ国以上にアーカイブズを持つ場合、その国数を示してください。(回答は1つのみ)
□ 2
□ 3
□ 4以上

4 アーカイブズのプロフィール(続き)

(13) 貴社はアーカイブズもしくは歴史的記録を、アーカイブズを担当する専門職員が管理しない社内部署で保存していますか?
□ はい
□ いいえ

(14) 貴アーカイブズ・プログラムの年間予算はどれに当たりますか(人件費とプログラム費用両方を含む)?
□ 25万以下
□ 25万-50万
□ 50万-75万
□ 75万-100万
□ 100万以上

 この範囲が基づいている通貨を明記してください(米ドル、ポンド、円、ユーロなど)。

(15) すべてのアーカイブズ施設で働くスタッフの総数は何名ですか(フルタイムに換算して)?

(16) それらのスタッフのうち、アーカイブズに関して正規のトレーニングを受けているのは、あるいは「専門的な」スタッフとみなされるのは何名ですか?

(17) それらのスタッフのうち、「支援」スタッフ、あるいは事務スタッフは何名ですか?

(18) それらのスタッフのうち、契約・業務委託(非職員)あるいは外部コンサルタントは何名ですか?

5 アウトリーチとマーケティング

(19) アーカイブズの成果を上層部の経営陣、もしくは直属上司にどのように報告しますか?(該当項目すべてチェックしてください)
□ 定期的な報告書
□ 定期的な直接面談またはプレゼンテーション
□ その他(具体的に記入してください                )

(20) どのようにしてアーカイブズのサービスを従業員に売り込んでいますか?
□ イントラネットのサイト
□ 印刷された冊子やチラシ
□ 新人研修
□ ターゲット集団に対する顔を突き合わせたプレゼンテーション
□ 展示
□ アーカイブズ・ツアー
□ その他(説明してください                    )

(21) もしアーカイブズが展示プログラムを持つ場合、それを説明してください。その目的、観客、展示物等に関する情報を提供してください。

6 サービス

(22) どの部門がアーカイブズの「主要な顧客」とみなされますか?(該当項目すべてチェックしてください)
□ コミュニケーション
□ 企業の貢献
□ 施設/管理サービス
□ 人事
□ 法務
□ マーケティングと販売
□ 業務
□ 製品開発
□ 広報
□ その他(リストアップしてください                )

(23) アーカイブズは社内利用の場合、サービス料を徴収しますか?
□ いいえ
□ はい

(24) 貴アーカイブズの取り組みの効果を何らかの方法で測定するために利用者統計や他のタイプの記録をつけていますか?
□ いいえ
□ はい

アーカイブズの社外からの利用に関してコメントしてください。

(25) アーカイブズは一般に公開されていますか?
□ はい
□ いいえ

「はい」の場合、その状況に関してコメントしてください。「いいえ」の場合、外部の研究者(職員ならびに取引先・提携先以外の人々)に対して、アーカイブズ内でのリサーチをこれまで許可したことがありますか?

(26) 社外の人々が機密情報以外の情報を求められた場合、(手紙、メール、ファックス、電話を通じて)提供しますか
□ はい
□ いいえ

(27) たいていの外部からのリクエストはアーキビストのもとへ直接来ますか、それとも他部署(例えばコミュニケーションや法務など)を経由して来ますか?
アーカイブズ □はい □いいえ
他部署    □はい □いいえ

(28) 外部からのリクエストを促進するために、外部向けのウェブサイトを保持していますか?
□ はい
□ いいえ

「はい」の場合、アーカイブズがそのウェブサイトを管理しますか? あるいはそのウェブサイトは他の部署によって管理されますか?(どの機能または部署か明記してください)

(29) アーカイブズは毎月平均で何件のレファレンスのリクエストを受けますか?

(30) リクエストに占めるそれぞれの割合は?
社内
社外

(31) 以下の業務は全業務時間の何パーセントにあたりますか?
レファレンス・リクエストに対する回答
目録作成(索引作成/整理作業)
展示
アウトリーチ(マーケティング、プレゼンテーション、ツアー)
管理
保存
レファレンスに関わりのないリサーチ

7 コレクション

(32) アーカイブズはどのようにして記録を入手しますか?(割合を下に示してください)
レコードマネジメントや業者倉庫からの移管
社内各部門もしくは社内の個人からの直接の移管
退職者その他外部からの寄贈
購入
その他

(33)  上で「その他」を選択の場合、説明してください。

(34) アーカイブズは被合併会社と被買収会社の記録を保管・維持しますか?
□ はい
□ いいえ

(35) 「はい」の場合、アーカイブズへの記録の移管に関する方針や手続きはありますか?
□ はい
□ いいえ

その処理に関してコメントしてください。

(36) アーカイブズは多言語による記録を含みますか?

(37) 「はい」の場合、翻訳はありますか?
□ はい
□ いいえ

「はい」の場合、コメントしてください。

(38) アーカイブズとレコードマネジメント機能の間の関係を説明してください。それらは(一つ選択)
□ 組織的に分離した機能であり別々の幹部に報告する
□ 同一機能に属する(境目、分離がない)
□ 同一の機能上のリーダー(例えばアーカイブズ&レコードマネジメント長)に報告する別々のチーム
□ その他(説明してください)

(39) アーカイブズとレコードマネジメント機能が分離している場合、アーカイブズ記録は会社のリテンション・スケジュール(保管計画)に基づいて識別されますか?□ はい
□ いいえ

(40) アーカイブズとレコードマネジメント機能が分離している場合、アーキビストは永続的価値を持った記録を識別するためにリテンション・スケジュール(保管計画)を見直しますか?

(41) 貴社にはeメールのリテンション・ポリシー(保管方針)がありますか?
□ はい
□ いいえ

「はい」の場合、アーキビストはそのeメールに関するポリシーの開発に当たって評価を行ったり、アドバイスの提供を行ったりしましたか?

8 オンライン/電子記録

(42) アーカイブズはオンライン目録/データベース/検索手段を維持していますか?
□ はい
□ いいえ

(43) 「はい」の場合、これはだれが使用可能ですか(一つ選択)
□ アーカイブズのスタッフのみ
□ アーカイブズのスタッフと従業員
□ 全従業員と社外の研究者

(44) もしアーカイブズがイントラネット・サイトを持つ場合、従業員にはどのタイプの情報が利用できますか?(該当項目すべてにチェックしてください)
□ アーカイブズのスタッフによって準備された情報
□ アーカイブズにある物理的記録に関するメタデータを含む検索手段/目録
□ キーワード検索が可能な完全な電子記録/コンテンツ

(45) アーカイブズは会社が作成したウェブサイト、またはそれらのサイトから選別されたコンテンツを保存しますか?
インターネット □はい □いいえ
イントラネット □はい □いいえ

いずれかが「はい」の場合、そのプロセスを説明してください。

(46) アーカイブズは「ボーンデジタル」な電子記録を保存または保管しますか?
□ はい
□ いいえ

「はい」の場合、これらはどんなタイプの記録ですか? またこれらの記録は社内のどのファンクションから来ますか?

(47) アーカイブズは社内のレコードマネジメント規格に発言権がありますか?
□ はい
□ いいえ

◆◆◆ 全訳ここまで ◆◆◆

http://www.surveymonkey.com/s.aspx?sm=tzP2UhDu_2fcsofm_2f65r4dKw_3d_3d
(締め切り:2008年12月1日)

===================================
■行事情報:国際文書館評議会(ICA)企業労働アーカイブズ部会(SBL)会合
  2008年6月15-17日 Stavanger(ノルウェイ)

 Meeting of the bureau and annual meeting of the Section for Business and Labour Archives of the ICA and workshop on corporate retention guidelines
===================================

□事務局会議・年次大会と「企業内リテンション(保管)の指針」に関するワークショップ

今年6月に開催された国際文書館評議会(ICA)企業労働アーカイブズ部会(SBL)会合(本通信第4号で紹介)の内容が、ICAのサイトにアップされています。

http://www.ica.org/sites/default/files/SBL%20Bureau%20Report%20Stavanger%20June%202008.doc
http://www.ica.org/sites/default/files/SBL%20Bureau%20Report%20Stavanger%20June%202008.pdf

6月15、16日に開催された事務局会議では同部会の新しい理事(任期:2008年から2012年まで)が選出されました。16日と17日には「企業内リテンション(保管)の方針と実践:リテンション(保管)の指針、透明性、そして標準化への可能性」(Corporate retention policy and practice: retention guidelines, transparancy and potential for standardization)と題された発表とワークショップが持たれました。

【17日の発表】
◆日本語タイトル:企業における透明性という挑戦
原題:The challenge of transparancy in corporations
発表者名原文:Ineke Deserno
一行解説:企業の観点から「透明性」を定義し、その限界とメリットを説明。

◆日本語タイトル:米国企業における保存方針とリテンション(保管)の実際
原題:Preservation policy and retention practices in American corporations
発表者名原文:Deborah Skaggs
所属等:米国Iron Mountain Consulting社でアーカイブズ・レコードマネジメントに関するコンサルタント業務に携わる。
一行解説:米国の企業内における近代的記録管理実務の起源、ならびに記録廃棄に関する多くの米国企業の仕方を概観。

【18日のワークショップ発表】
◆日本語タイトル:企業内リテンション(保管)の方針と実務:サン-ゴバンの事例
原題:Corporate retention policy and practice: the Saint-Gobain case
発表者名原文:Didier Bondue
所属等:Saint-Gobain, France

◆日本語タイトル:現在進行中の仕事:インテサ・サンパウロ・アーカイブズのリテンション・スケジュール(保管計画)
原題:A work in progress: retention schedules for Intesa Sanpaolo's Archives
発表者名原文:Francesca Pino
所属等:IntesaSanpaolo, Italy

◆日本語タイトル:エボニクの企業アーカイブズ:その組織と事業
原題:Evonik's corporate archives: its structure and activities
発表者名原文:Andrea Hohmeyer
所属等:Evonik Services, Germany

◆日本語タイトル:クラフトフーズ・アーカイブズ:リテンション(保管)の方針と実務
原題:Kraft Foods Archives: retention policy and practice
発表者名原文:Becky Haglund Tousey
所属等:Kraft Foods Inc., USA

◆日本語タイトル:サノマ・コーポレーションの歴史的アーカイブズ
原題:The historical archives of Sanoma Corporation
発表者名原文:Pekka Anttonen
所属等:Helsingin Sanomat, Finland

◆日本語タイトル:記録と情報管理:実務的文化的メリット
原題:Records and information manamgement: a business and cultural benefit
発表者名原文:Henning Morgen
所属等:Maersk, Denmark

◆日本語タイトル:エクソンモービル:記録のリテンション・スケジュール(保管計画)
原題:ExxonMobil: records retention schedule
発表者名原文:Per Skarung
所属等:ExxonMobil Norway, Norway

◆日本語タイトル:スタトイハイドロのリテンション(保管)の方針
原題:The retention policy of StatoiHydro
発表者名原文:Torunn Loftsgard
所属等:StatoiHydro, Norway

===================================

■行事情報:アメリカ・アーキビスト協会(SAA)第72回年次大会 
  2008年8月26日-30日 サンフランシスコ

 Society of American Archivists' 72nd Annual Meeting

===================================

□大会テーマ:「アーカイブズ2008:アーカイブズの革命/進化とアイデンティティ」

Archives 2008: Archival R/Evolution & Identities

本通信第6号と第7号でお知らせしたSAAのサンフランシスコ大会に本通信編集者も参加しました。主催者の事前の予想では1500人超の参加が見込まれておりましたが、実際には1700人を超える参加者を得て、西海岸で開催された年次大会では最大規模の大会になりました。なお、過去最高は東海岸の首都ワシントンDCで2006年に開催された70回大会で、このときの参加者数は2000名超でした。(ただし、この時はSAA、NAGARA(National Association of Government Archives and Records Adiministrations)、CoSA(Council of State Archivists)の共催。)

◆◆「アジア太平洋地域におけるアーカイブズへの社会的関心」に参加◆◆

編集者は「アジア太平洋地域におけるアーカイブズへの社会的関心」(Archival awareness along the pacific rim)と題されたパネルディスカッションに、香港、韓国、オーストラリア、ニュージーランドのアーキビストとともにパネリストとして参加しました。実業史研究情報センターが今年2月に創刊したメールマガジン「ビジネス・アーカイブズ通信」と、7月にウェブ上で一般公開を開始した「企業史料ディレクトリ」の二つの事業を、企業史料管理とビジネス・アーカイブズ振興のための取り組みとして報告するとともに、討論部分では日本におけるアーカイブズの保存、整理、普及の現状を述べました。

http://saa.archivists.org/Scripts/4Disapi.dll/4DCGI/events/eventdetail.html?Action=Events_Detail&Time=61226199&SessionID=23183183t0795k8588e4h13wn2m0n04jhl5350191x6z2ai8ir854790iu08yc8z&InvID_W=633
(同セッションに関するページ)

すでにお知らせしたプレ・カンファレンス・プログラム、公募によるセッション(分科会)、リポジトリ・ツアー、ポスター・プレゼンテーションのほかに、後半の3日間には、ニクソン政権時の大統領法律顧問ジョン・ディーン(John Dean)氏による記念講演、マーク・グリーン(Mark Greene)SAA会長による会長演説、合衆国アーキビスト(米国国立公文書館(NARA)館長)のアレン・ワインスタイン(Allen Weinstein)博士と、フランク・ボールズ(Frank Boles)次期SAA会長の講演といった全参加者を対象にしたセッションが開催されました。

◆ジョン・ディーン氏記念講演◆

ジョン・ディーン氏はウォーターゲート事件の際、共和党政権に不利となる証言を行うなど、同事件の一方の主役ともいえる人物です。現在は著述業、テレビのコメンテータとして活躍しており、アーカイブズの頻繁な利用者であると紹介されました。著作には『破壊された政府:共和党による支配がいかにして立法、行政、司法部を破壊したか(仮邦題)』(Broken Government: How Republican Rule Destroyed the Legislative, Executive, and Judicial Branches, 2008)、『良心なき保守主義者(仮邦題)』(Conservatives Without Conscience, 2006)、ウォーターゲートよりひどい:ジョージ・W・ブッシュ大統領に隠されているもの(仮邦題)』(Worse Than Watergate: The Secret Presidency of George W. Bush, 2004)、『陰謀の報酬:ニクソン前大統領顧問の告発』(Blind Amibition, 1976)等があります。

講演では、ブッシュ大統領による大統領命令13233号(2001年)が過去の大統領記録へのアクセスを妨げるものである点などがとり上げられました。巧みな講演に会場は大いに盛り上がりました。

http://saa.archivists.org/Scripts/4Disapi.dll/4DCGI/events/eventdetail.html?Action=Events_Detail&Time=54232231&SessionID=231729839156zt4zq6w7v274z7vod61kitt89b9nlz9y6298ajinfk9dfqc35kvx&InvID_W=849
(ジョン・ディーン氏記念講演に関するページ)

http://saa.archivists.org/Scripts/4Disapi.dll/4DCGI/events/speakerbio.html?Action=SpeakerBio&Time=54526042&SessionID=231729839156zt4zq6w7v274z7vod61kitt89b9nlz9y6298ajinfk9dfqc35kvx&SpeakerID_W=369
(ジョン・ディーン氏略歴)

◆マーク・グリーン会長演説◆

マーク・グリーンSAA会長による「アーカイブズの力:アーキビストの諸価値とポスト・モダン時代における価値」と題された会長演説は、アーキビストが専門家として実践する価値として「専門的技術」「集合性」「積極的な行動」「選別」「保存」「民主主義」「サービス」「多様性」「利用とアクセス」「歴史」の10項目を提示しました。そしてこれらの価値によってアーカイブズはただの「記録の保管庫」から力を帯びるものになるものと言っています。アーキビストの存在価値の核心は、どの記録をいかに評価して残すかという「選別」、それもアイテムレベルでなく、より大きな集合的単位で行う「選別」に関する専門的知識と技能にあります。すべての記録を保存し整理することは人的にも空間的にもコストがかかりすぎます。すべてを残そうとすると、結局整理されないままの資料を大量に抱えることになり、未整理であることから利用もできない、最悪の場合スペース削減の掛け声とともにすべての記録が失われてしまう...。これは現代の記録事情としてしばしば目にすることです。アーキビストにとって根本的に重要なのは、資料(モノ)を単に残すことではなく、現在と将来の利用者が利用できるように資料を選別・整理・保存・提供することであり、アーキビストの仕事とは究極的には利用者(ヒト)に対する奉仕(「サービス」)である、という部分が最も印象に残りました。

http://www.archivists.org/governance/presidential/GreeneAddressAug08.pdf
(マーク・グリーンSAA会長演説全文)

http://saa.archivists.org/Scripts/4Disapi.dll/4DCGI/events/speakerbio.html?Action=SpeakerBio&Time=54526042&SessionID=231729839156zt4zq6w7v274z7vod61kitt89b9nlz9y6298ajinfk9dfqc35kvx&SpeakerID_W=368
(マーク・グリーン会長略歴)

マーク・グリーン会長の紹介にあたったのは、ミネソタ歴史協会コレクション管理長のデニス・メイスナー(Denis Meissner)氏です。メイスナー氏はグリーン氏の著作の中で、最もアーキビストの人口に膾炙している「より多くの成果を、より少ない作業で:伝統的なアーカイブズ整理法を改良する(More product, less process: revamping traditional archival processing)」の共著者です。グリーン氏のアーカイブズの世界への貢献と人柄を、ユーモア全開といった調子で活き活きと紹介してくれました。

http://www.archivists.org/governance/presidential/GreeneIntroByMeissnerAug08.pdf
(会長演説にあたっての、デニス・メイスナー氏のグリーン会長紹介スピーチ)

◆合衆国アーキビスト アレン・ワインスタイン博士講演◆

一方、ワインスタイン博士の講演ではNARA(米国国立公文書館)の当面する課題、とくに現政権の記録の保存への取り組みなどが述べられました。「"プロジェクトの6段階"(1段階目:熱中、2段階目:幻滅、3段階目:パニック、4段階目:犯人探し、5段階目:無実の人の懲罰、6段階目:部外者に対する賞賛と敬意)のうち、合衆国アーキビストとして自分は現在〈犯人探し〉と〈無実の人の懲罰〉の間にぶら下がっている」といういささか皮肉な締めくくりには、会場の雰囲気に微妙なものを感じました。

http://www.archivists.org/conference/sanfrancisco2008/docs/sessionPlenary-Weinstein.doc
(合衆国アーキビスト アレン・ワインスタイン氏講演全文)

http://saa.archivists.org/Scripts/4Disapi.dll/4DCGI/events/speakerbio.html?Action=SpeakerBio&Time=54526042&SessionID=231729839156zt4zq6w7v274z7vod61kitt89b9nlz9y6298ajinfk9dfqc35kvx&SpeakerID_W=371
(アレン・ワインスタイン氏略歴)

◆フランク・ボールズ次期会長スピーチ◆

この大会をもって会長を退任するマーク・グリーン氏に代わって、新たに会長に就任するフランク・ボールズ氏が大会最後を締めくくるスピーチを行いました。ボールズ新会長は1991年以来セントラル・ミシガン大学クラーク歴史図書館館長を勤めています。スピーチはアーキビストの声をいかに政治の場に反映させるか、すなわちアドボカシー(advocacy:政策提言/権利擁護)に関するものでした。

ボールズ新会長の閉会スピーチに続き、来年2009年大会開催予定(8月11日から16日まで)のオースティン(テキサス州)大会の実行委員会、そしてオースティンに関する紹介があり、今年のSAA年次大会は幕を閉じました。

http://www.archivists.org/governance/presidential/BolesClosingPlenary-Aug08.pdf
(フランク・ボールズ次期SAA会長講演)

http://saa.archivists.org/Scripts/4Disapi.dll/4DCGI/events/speakerbio.html?Action=SpeakerBio&Time=61226199&SessionID=23183183t0795k8588e4h13wn2m0n04jhl5350191x6z2ai8ir854790iu08yc8z&SpeakerID_W=370
(フランク・ボールズ次期会長略歴)

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

☆★ 編集部より:あとがき、次号予告 ★☆

今号ではSAA大会の講演に関してとり上げてみました。マーク・グリーン会長の会長演説(presidential speech)の内容もさることながら、それに先立ってスピーカー紹介の任に当たったデニス・メイスナー氏の抱腹絶倒スピーチをぜひご一読ください。グリーン会長の業績、キャリアはもちろんのこと、気難しくて論争的にもかかわらず、謙遜・寛容といった人柄によって、アーカイブズに関する知的水準を引き上げることに大いに貢献してきたグリーン氏のリーダーとしての姿をうかがい知ることができます。

SAA大会では、昨年5月に開催された「日米アーカイブセミナー」時に来日したマーク・グリーンSAA会長、リチャード・ピアズ=モゼス元SAA会長、ベッキー・ハグランド・タウジーICA/SBL事務局長、トゥルーディ・ピーターソン元SAA会長のみなさんに再会することができました。またセミナー時には来日がかなわなかったエリザベス・W・アドキンス前SAA会長(ベッキー・タウジーさんとの共同のペーパーを作成してくださった)にも初めてお目にかかることができました。
http://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/pdf/annai0320a.pdf
(日米アーカイブセミナー開催のご案内)

さらに、同セミナーでの発表を中心とした論文集が刊行されました。タイトルは『アーカイブへのアクセス : 日本の経験、アメリカの経験 : 日米アーカイブセミナー2007の記録』(小川千代子、小出いずみ編、東京 : 日外アソシエーツ : 紀伊國屋書店 (発売), 2008.09)です。詳しい情報は下記のURLをご覧ください。
http://d.hatena.ne.jp/tobira/20080910/1221010761

次号ではビジネス・アーカイブズ関連文献情報ほかを予定しております。10月中旬配信予定です。どうぞお楽しみに。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――
◆◇◆配信停止をご希望の方は次のメールアドレスまでご連絡ください◆◇◆

◆◇◆〈渋沢栄一記念財団からのお知らせ〉◆◇◆

□「企業史料ディレクトリ」:企業アーカイブズと企業史料の所在・概要ガイド

7月22日公開いたしました。日本を代表する企業を中心とした企業アーカイブズと史料保存・学術研究機関合わせて30企業・団体・機関の概要、所蔵資料に関する情報を掲載しております。ぜひご覧ください。
http://www.shibusawa.or.jp/center/dir/index.html

□実業史研究情報センター・ブログ「情報の扉の、そのまた向こう」

「今日の栄一」「栄一情報」「栄一関連文献」「センターニュース」「今日の社史年表」「社史紹介(速報版)」「アーカイブズニュース」「図書館ニュース」をお届けしております。
http://d.hatena.ne.jp/tobira/

「アーカイブズニュース」では政府の「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」の動向やアーカイブズのデジタル化、資料の発見・公開に関わるニュースを随時ご紹介しております。

ブログ画面右側の「カテゴリー」にある「アーカイブズニュース」をクリックしてください。「アーカイブズニュース」として掲載した記事をまとめて一覧することができます。

・カテゴリーの紹介
http://d.hatena.ne.jp/tobira/20080203

実業史研究情報センター・ブログ「情報の扉の、そのまた向こう」はほぼ毎日更新しております。どうぞご利用ください。

□「渋沢栄一関連会社社名変遷図」

渋沢栄一がどのような会社に関わったか、それが今にどうつながっているのか、一目でわかるように業種別にまとめて変遷図にしました。現在合計30図を掲載しておりますので、こちらもどうぞご覧ください。

http://www.shibusawa.or.jp/eiichi/companyname/index.html

―――――――――――――――――――――――――――――――――――
***********************************

ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信) No.9
2008年9月26日発行 (不定期発行)
【創刊日】2008年2月15日
【発行者】財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター
【編集者】財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター
      「ビジネス・アーカイブズ通信」編集部
【発行地】日本/東京都/北区
【E-Mail】
【サイト】http://www.shibusawa.or.jp/center/ba/index.html

***********************************

Copyright (C)
財団法人渋沢栄一記念財団
2007- All Rights Reserved.

***********************************

一覧へ戻る