研究センターだより

28 3大学での寄附講座(東京大学、華中師範大学、一橋大学)について

『青淵』No.753 2011(平成23)年12月号

3大学での寄附講座(東京大学、華中師範大学、一橋大学)について

今回は、研究部の寄附講座のなかから、3つを紹介します。

第4回「ヘボン-渋沢」記念講座(東京大学)

まず、東京大学大学院法学政治学研究科での「ヘボン=渋沢」記念講座です。1918年に東京帝国大学法学部に設置された「ヘボン講座」開設90周年を記念して、2008年から3年間米国から著名な学者を招へいし、同大学大学院生を対象に、約1週間の夏期集中講義(英語)を行ってきました。大変充実した内容で好評でしたので、今年からさらに3年間継続することになりました。今年は、マイケル・ケージン教授が、アメリカ政治史と社会運動(Social Movements in US Political History)について講義しました。それに先立ち、第4回「ヘボン=渋沢」記念公開講座シンポジウム「アメリカ保守主義の現在 ティーパーティー、知識人、そして共和党」が下記のとおり開催されました。

日時:7月28日(木)15時30分‐17時30分
場所:東京大学法学部4号館8階会議室
パネリスト:
マイケル・ケージン:ジョージタウン大学教授「保守主義運動の連続と断絶」
渡辺靖:慶應義塾大学教授「左派と右派を超えた社会変動」
古屋旬:東京大学教授「戦後アメリカにおける草の根保守の系譜」
司会・コメンテーター:久保文明:東京大学教授(同時通訳有り)

リーマンショックにより、米国の資本主義への信頼が失墜し、中国、インドなど新興大国の動向が注目されています。しかしいまだに政治・軍事・経済などで世界に最も大きな影響を与えている米国の動向は目が離せません。4人の米国政治・社会の代表的研究者が、いま米国社会の深層で何が起きているのかについて、深くかつ鋭い分析を加え、それをめぐって参加者との活発な議論が交されました。

華中師範大学当財団講座(同大学渋沢栄一研究センター)

2つ目は、華中師範大学での寄附講座です。2007年から同大学に設置された渋沢栄一研究所との共催で開始されました。年1回の講義は次の通りです。

2007年 渋沢雅英(渋沢栄一記念財団理事長)「歴史的視野の中の渋沢栄一」
2008年 エズラ・ヴォーゲル(ハーバード大学名誉教授)「第二次世界大戦後の日中関係」
2009年 五百籏頭真(防衛大学校校長)「世界の中の日中関係」
2010年 ジャネット・ハンター(ロンドン大学教授)「英雄的企業家―東西の企業家精神と工業化の比較を通じて」
2011年 ローラ・ミラー(ミズーリ州立大学教授)「エレベーターガール―現代日本のポップ・カルチャー」

10月19日(水)の夜に行われましたミラー教授の講義は、エレベーターガールの社会的役割の変遷に焦点を当て、日本の社会や大衆文化の深層を分析した内容でした。会場は立ち見が出るほどの盛況で、中国の学生の、日本のポップカルチャー(アニメや漫画など)への関心の高さを物語っていました。質疑応答も活発で、終了後もミラー教授の周りには学生が集まり、米国への留学などについても盛んに質問をしていました。

一橋大学当財団寄附講座(同大学大学院経営学修士〈MBA〉コース)

最後は、一橋大学大学院商学研究科での当財団寄附講座「企業家と社会」(10月5日〜1月25日:水曜日3時限 12時55分〜14時25分、於一橋大学国立キャンパス)です。

今年も、鈴木良隆先生(一橋大学名誉教授)が担当し、シラバスによると、「経済と社会において企業者の果たす役割やその経営構想過程から始まって、企業者が置かれた歴史的・社会的条件の意義、さらには社会的課題への企業的手法の適用などについて、基礎理論から事例研究まで、企業者とその社会的・公共的役割について系統的に学ぶ」という内容です。渋沢栄一に焦点を当て、彼の背景や手法を検討し、現代においてその思想や行動がどのように展開されているかを考えることが目的です。シラバスの概要は次の通りです。1月25日は公開講座ですので、是非ご参加ください。

第I部 企業者とは何か
1 企業家と社会―授業のねらいと進め方(10.05)
2 企業・企業者とは何か、社会とは何か―課題と諸概念(10.12)
3 企業者活動: マクロの視点(10.19)
4 企業者活動: ミクロの視点(10.26)
5 大企業体制と企業者活動の終焉(11.02)
6 中小企業とイノベーションと地域(11.09)
第II部 ソーシャル・エンタプライズ―企業と社会の接点
7 社会企業家の系譜―R.オウエンとサン・シモン=ぺレール(11.16)
8 社会としての企業の誕生―事例研究(11.30)
9 "インスティテューショナル・アントルプルナー" ―事例研究(12.07)
10 企業社会の社会認識(12.14)
11 "ソーシャル・アントルプルナー"とは何か(12.21)
12 "ソーシャル・ビジネス" ―その現実(1.11)
13 "ソーシャル・ビジネス" ―その可能性(1.18)
14 当財団公開講座(記念講演):講師―酒巻久(キヤノン電子株式会社代表取締役社長)(1.25)
15 発表会(1.25)
(2011年度後期一橋大学大学院商学研究科経営学修士〈MBAコース〉シラバスより作成。)

(研究部・木村昌人)


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