研究センターだより

1 研究部からのお知らせ

『青淵』No.672 2005(平成17年)3月号

2003年4月に港区南麻布に事務所を開設してから約2年が経過しましたが、メンバーも増え、活気づいている研究部です。4月からは次の5つの事業目的を掲げて活動を進めていきます。

(1)渋沢栄一研究の推進
渋沢栄一の思想やアイディアをさらに掘り下げ究明 するための研究活動を行います。
(2)実業史研究の推進
渋沢敬三が取り組んだ"実業史"の研究に光を当て、新しい学問領域として確立することにより、渋沢栄一の生涯、さらには国際比較の視野から見た日本の近代化、産業化の過程を浮き彫りにします。
(3)政策研究の推進
渋沢栄一が関わった経済経営・公共政策・国際問題などに関する研究を推進・支援していきます。
(4)研究者ネットワークの構築
こうした研究に関心を持つ学者の国際的・学際的ネットワークを、世代を超えて、構築します。
(5)成果出版・広報事業
上記諸事業の成果を出版物にするとともに、広報活動を活発化して、研究部の活動内容を分かりやすく紹介します。

以上の事業目的を踏まえ、これまでのプロジェクトに加えて、新たに(1)実業史研究プロジェクト、(2)比較思想史研究会、を開始することになりました。その概要は次の通りです。

(1)実業史研究プロジェクト(担当:研究部副部長 楠本和佳子)

 昨年は、渋沢史料館・実業史研究情報センター・研究部が一体となり、米国ミズーリ大学セントルイス校で「日米実業史競」の展示(マーカンタイル・ライブラリーとの共催)やシンポジウムを開催しました。また、日本研究で知られるハーバード大学ライシャワー・インスティテュートの主催で、学者、学生、学芸員の皆さんと、実業史についてのワークショップを持つ機会も与えられました。

 これらの経験を通して、私たちは実業史への関心の高さや、学問としての実業史の可能性に改めて気づき、新年度の事業として「実業史学」の推進を掲げたわけです。2005年度から、海外の幾つかの大学と協力し、実業史学の可能性を探るワークショップやミーティングを企画していきたいと考えています。(現在、ハーバード大学との計画が進行中です。)また、学会報告は、実業史という概念を他の研究者たちに投げかける絶好の機会ですので、出来る限り参加していくつもりです。まずは、今年8月31日〜9月3日にウィーンで開催されるヨーロッパ日本研究学会(European Association for Japanese Studies)での報告が決定しており、これが実業史関連の最初の学会発表ということになります。パネルのメンバーは、大阪大学の藤田加代子氏、研究部長の木村、副部長の楠本で、タイトルは、"Memories in the Goods: Reinterpreting the Modernization and Industrialization of Japan and the US through Material Culture"(「物に留まる記憶:モノ文化から眺め直す日米の近代化・産業化」)です。London School of EconomicsのJanet Hunter教授がパネルのまとめ役として、各報告の論評をして下さる予定です。さらに、2005年12月にワシントンDCで開催される米国人類学会(American Anthropological Association)や、2006年4月にサンフランシスコで開催される米国アジア学会(Association for Asia Studies)に応募し、発表の機会を設ける予定です。

 国内では、2カ月に1回程度、研究部で実業史研究会を開催し、実業史に対する見解を内外の研究者にお話しいただき、それらを踏まえてブレーンストーミングを行いたいと考えています。

(2)比較思想史研究会(担当:研究員・岡本佳子)

 渋沢栄一と同時代を生きた国内外のリーダーたちが、自国の近代化や産業化のあり方をどのように考えていたのかを比較究明する研究会です。こちらも、2カ月に1回程度、近代思想史の専門家を研究部にお招きし、お話を伺います。第1回は、孫文研究の第一人者の藤井昇三氏に辛亥革命期の中国の思想界についてお話しいただく予定です。

 また、広報の一環として日本語・英語双方のホームページの充実を図っていきますが、担当するのは、独、日、英語に堪能なナタリー・ルドルフ(ハンブルグ大学日本研究学科在籍:博士論文を執筆中)です。研究部のホームページはこちらでご覧下さい。
http://www.shibusawa.or.jp/reseach/index.html

 最後に、昨年度の研究部出版物「2004年渋沢国際儒教研究セミナー 比較視野のなかの社会公益事業 報告集」はまだ在庫がございますので、ご希望の方は研究部までご一報ください。
(研究部・木村、楠本、岡本、ルドルフ)

 1月29日(土)〜30日(日)、「アジアセンターODAWARA」で研究部の新年合宿が行われました。

 JCIE勝又常務理事や渋澤理事が主催する「論語算盤塾」の皆様も出席され、井上館長・財団関係者も交え、木村部長の司会で夢のある企画がいろいろ提案され、活発な討論が行われました。会員の皆様にも当誌にその情報をタイムリーに紹介していきます。(編集部)


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