史料館だより

44 2012年度の渋沢史料館事業

『青淵』No.757 2012(平成24)年4月号

 まず、中期計画に沿う形で今年度は以下の重点目標を掲げます。企画展を通して展示手法等を試行する。開館以来30年間に蓄積された資料・情報の整備を行う。史料館運営サポート体制の変更・整備を実施する。そして、ほとんどは継続事業となりますが、以下のような事業を展開させます。

展示

 渋沢栄一の事績・思想及び生きた時代等、周辺を伝える展示を行います。
 現在、「企業の原点を探る」シリーズの一環で2011年度春季企画展「澁澤倉庫株式会社と渋沢栄一〜信ヲ万事ノ本ト為ス〜」(3月17日〜5月27日)を開催中ですが、4月7日には、「企業の原点を探る」シリーズ企画展の趣旨説明会を開催する予定です。各企業・団体の協力者・担当者、経営史研究者、企業博物館・企業アーカイブ関係者ほかにお集まりいただき、趣旨を説明させていただいた上で、今後に向けての意見交換の場にしたいと思っています。
 今年度秋季企画展は「おかげさまで開館30年」として「渋沢史料館の歩みと銘品(仮)」(9月29日〜11月25日)を予定しています。
 1982(昭和57)年11月15日に産声を上げてから30年の足跡を紹介すると同時に、開館当初から収集し、保存・管理にあたってきた当館資料の内より、これはと思われる資料を紹介する予定です。史料館の歴史をたどる中で、渋沢栄一の再発見につながることにも期待したいと思います。そして、今年度春季企画展として王子製紙展(仮)の開催を予定しています。
 その他に常設展示の書簡コーナー・書画コーナーの展示替え(1回は「雨夜譚会(うやたんかい)談話筆記」に関する収蔵品展「青淵先生に聞きました―渋沢栄一のオーラルヒストリー」を予定)や来年度以降の企画展の準備を同時並行して進めていくことにしています。

資料整備

 より一層の資料整備の強化を図ることとし、資料の保存という観点からと活用という観点から、情報資源の大本を整備します。虫・黴(かび)対策としての収蔵庫及び書庫の除塵(じょじん)・防黴作業、資料のくん蒸、劣化した資料の修復、写真・映像フィルムの整理・保存処置、美術工芸資料の整備、資料活用に向けての一次資料のマイクロフィルム・デジタル画像への代替化、複製資料の作製および製本などの調整作業等を行います。
 また、館内環境調査や屋外資料として旧渋沢邸内の晩香廬、青淵文庫の保存処置ならびに兜(かぶと)稲荷社の石造狐の保存処置にも取り組む予定です。

教育普及(コミュニケーション)事業

 学校単位での来館対応や依頼を受けての出張授業、教材開発といった学習支援、閲覧コーナーの書籍の充実をはじめ、同コーナー壁面を使用し、当館情報や渋沢関連情報発信のためのパネル展示などを行います。
 国指定重要文化財である晩香廬・青淵文庫をさらに有効活用出来るようなプログラムを提供いたします。
 毎年好評を博している渋沢栄一命日記念の企画(入館無料、生前の栄一を映す映像の上映、展示・建物の特別解説、記念品の贈呈等)を今年もより内容を充実させて行う予定です。
 また、当館ホームページ上での教育プログラムの構築を図ります。
 定着した飛鳥山3つの博物館合同事業(クイズラリー、区民まつりへの参加、街巡り、記念品製作)等を通じて、飛鳥山3つの博物館の連携強化を図ると同時に、地元・東京都北区ともより密接につながっていければと思っています。
 さらに、これまで何度か試みてきた企業シミュレーション講座のマニュアル化を図り、普及に努めていきます。

図書等の刊行

 今年度は、持ち越しとなった日・中・米・東京展講演集、毎年継続して発行している『渋沢研究』25号および3年ごとに刊行している渋沢史料館館報の発行を予定しています。

資料収集

 例年通り、国内・外における渋沢関係及び実業史関係資料(原資料だけでなく、二次的媒体に変換されたものも含む)・情報(関係資料の所蔵先、関係の出版物、研究発表、聞き取り情報等)の集積を行います。

調査・研究

 史料館(学芸)活動の基底部分をなすものであり、不断の綿密な調査・研究の成果の蓄積が今後の博物館活動の深化へとつながるものです。
 今年度は、渋沢栄一周辺に関するオーラルヒストリーを考えています。また、穂積歌子日記の翻刻により内容を読み解く作業を継続させます。調査・研究の一環として、資質の向上を含めた意味で博物館等の視察、各種研究会、学会、研修会へも例年通り積極的に参加します。

その他

 まず、青淵文庫・晩香廬の内部公開ですが、これまで毎週土曜日の12時30分から15時45分に公開していたものを、2012年4月1日より、史料館開館日の10時から15時45分の公開に変え、出来るだけ多くの方にご覧いただけるようにすると同時に、見学シートを設置するなどして、より見やすくいたします。
 また、これまでも長く協力関係にあった渋沢研究会の運営支援にもあたります。

 最後に、将来の渋沢史料館再構築にむけて検討するにあたり、多くの博物館等の視察、財団内部スタッフでの話し合いや外部関係者への意見聴取などを進めていきたいと思います。
 今年度も史料館の活動を暖かく見守り続けていただきますようお願い申し上げる次第です。

(館長 井上 潤)

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