情報資源センターだより

44 「渋沢栄一ゆかりの地」~渋沢栄一との「ゆかり」発掘の道具として

『青淵』No.788 2014年11月号|実業史研究情報センター 専門司書 山田仁美

 2014年7月8日、財団のウェブサイトに新コンテンツ「渋沢栄一ゆかりの地」が加わりました。これまで事業一覧、詳細年譜など『渋沢栄一伝記資料』を活用するためのツールを構築してまいりましたが、今回は視点も新たに「地域=都道府県」を切り口とした情報提供の試みです。

ルーツは『青淵』連載の「今月の栄一」

「渋沢栄一ゆかりの地」スクリーンショット

 「ゆかりの地」のルーツはかつて『青淵』に掲載した「今月の栄一」です。この連載は地域と渋沢栄一のかかわりを紹介する目的で2008年から開始したものですが、記事制作過程で再認識したのは全国各地の知られざるトピックの多さでした。『青淵』連載は2011年で終了しましたが、それぞれの記事は実業史研究情報センターブログに転載されました。そして2013年には財団サイトに新たなコンテンツとして掲載することが決まりました。
 新コンテンツ構築にあたっては、単に過去の記事を転載するだけでなく、地域に関わる情報を集約して提供したいと考えました。そのためにまず『伝記資料』から地域に関わる事業や訪問先データを切り出しました。さらに当時の立地確認や写真との照合など、地道な作業を経て誕生したのがこの「ゆかりの地」です。

入口は都道府県別ページ

「渋沢栄一ゆかりの地」奈良県

 では「ゆかりの地」で何がわかるのでしょうか? 簡単にご紹介しましょう。扉ページに表示された白地図をクリックすると都道府県別ページが表示されます。そこには「トピック」「関与した事業」「旅の足跡」の三つの情報が搭載されています。
 最初に目に入る項目は「トピック」です。クリックすると『伝記資料』記事と簡単な解説文が表示されます。現在は「今月の栄一」など既存の記事をもとにしていますが、将来的には新たな記事を追加する予定です。
 二番目の項目は「関与した事業」です。これはどこでどのような事業が展開されたかを紹介するものです。関与の内容や社名変遷などの関連情報は事業名からのリンクで確認できます。またカメラマークがある場合はぜひクリックしてみてください。関連写真を見ることができます。
 ページの一番下に出現するのが「旅の足跡」です。これは『伝記資料』29巻、57巻の「旅行」項目から渋沢栄一の主な訪問先、投宿先や講演会場などを抽出、市町村ごとに日付順で表示したものです。ここから「旅の足跡(年代順)」や「詳細年譜」にリンクすることで、前後の行動を確認することができます。

「当時」と「今」をつなぐ渋沢栄一

 都道府県別ページとは別に「ゆかりの写真」というページも用意しました。ここには写真と典拠資料の解説文、さらに参考としてグーグルマップも表示しています。マップの位置は当該事業に関連する場所を指すもので、必ずしも撮影場所と一致しているわけではありません。それでもグーグルマップをストリートビューで表示すると、当時の写真と現在の風景が隣り合わせとなり興味深いものがあります。
 渋沢栄一の事績が連結の鍵となり、「当時」と「今」がウェブ上でつながる、そんな楽しさもあるのが「ゆかりの写真」ページです。

ゆかり「発掘」の道具として

 「ゆかりの地」はこれからも拡充されるコンテンツです。今後も「ゆかり」の確認とデータの追加は続きます。調査が続く限り、「完成」はありません。
 全国各地に広がる渋沢栄一の足跡。彼は何故そこを訪れ、そこで何を行ったのか?栄一が訪れたことで、その土地にはどのような種が蒔(ま)かれ、何が芽吹き、どのような実りがもたらされたのか?その答えを知っているのは他ならぬご当地の方々です。いつも歩いている街並みのなかで、または地域の産業のなかで、みなさんはどのような「ゆかり」を発見されるでしょうか?
 まだまだ発展途上のコンテンツではありますが、渋沢栄一とのゆかり発掘の道具として、末永くご活用いただけましたら幸いです。

〔財団サイト>渋沢栄一>渋沢栄一ゆかりの地 2014年9月26日〕
http://www.shibusawa.or.jp/eiichi/yukarinochi/index.html

(実業史研究情報センター 専門司書 山田仁美)


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