情報資源センターだより

24 実業史研究情報センター、2009年度前半の活動

『青淵』No.728 2009年11月号掲載|実業史研究情報センター 専門司書 茂原暢

 今年で設立6年目を迎える実業史研究情報センター。財団職員向けに毎月発行している活動レポート「センター・マンスリー」から2009年度前半のトピックを拾ってみましょう。

2009年4月「NCC画像資料利用ウェブガイド公開」

 2007年8月末にハーバード大学で最初の会合が開かれ、センターが積極的にその活動を支援してきた「NCC(北米日本研究資料調整協議会)画像利用手順タスクフォース」から「画像資料利用ウェブガイド」が公開されました(http://www.fas.harvard.edu/~ncc/imageuse/index.html)。これは、海外において日本発の画像を学術書や研究に使う際、どのような手続きが必要になるのかということを「手引き」としてまとめたサイトです。日本と外国の間に横たわる利用に関する制度・慣習の差を乗り越え、資料や情報への国際的アクセスの改善に向けたセンターの協力事業です。なお、8月には昨年開催された「ジャパン・イメージ」の会議録も刊行されました。

2009年6月「社名変遷図第7弾を公開」

 この『青淵』にも連載している「渋沢栄一関連会社社名変遷図」ですが、第7弾として6業種8種類100会社を9枚の変遷図にまとめ、財団のウェブサイトに追加掲載しました。今回追加したのは航空・通信・土木・築港・土地会社・倉庫・ホテル・貿易とバラエティに富んだ業態です。これで「500社」といわれている栄一関連会社のうち「261社」を掲載したことになります。ぜひ財団のウェブサイトでご覧下さい。URLは"http://www.shibusawa.or.jp/eiichi/companyname/index.html"です。なお10月には第8弾の公開を予定しています。

2009年7月「実業史錦絵絵引を公開」

 センターが発足した翌年より作業を続けて参りました「実業史錦絵絵引」ですが、ついに7月15日に公開することができました。国立情報学研究所連想情報学研究センターのご協力をいただいたお陰で、現代のウェブの技術を駆使して、実業史錦絵に描かれている日本の近代化・産業化に関する様々な要素を直観的に引き出すことができるだけではなく、わかりやすく、そして楽しめる内容になりました。
 トップページには、絵引を考案した渋沢敬三の「字引と稍(やや)似かよつた意味で、絵引が作れぬものかと考えたのも、もう十何年か前からのことであつた。」という言葉と共に、実業史錦絵に描かれている職人たちの、まさに生き生きと仕事をしている姿が映し出されています。長い間錦絵の中に閉じ込められていた「生命」「生活」の躍動が、コンピュータの中から飛び出してきそうな勢いを持っています。
 幸い、このコンテンツは財団法人日本産業デザイン振興会が主催する「2009年度グッドデザイン賞」を受賞いたしました。生まれたばかりで、まだまだ未完成なところもありますが、「ebiki.jp」という覚えやすいドメイン名の下に、これからも大切に育てていきたいと思っております。URLは"http://ebiki.jp/"です。ぜひ一度ご覧いただきたいと思います。

2009年8月「渡米実業団ページを公開」

 本年2009年は「渡米実業団」がアメリカを訪問してから、ちょうど100年になります。渋沢栄一記念財団ではこれを記念して、3つの部署でそれぞれに特徴のある事業を行っています。渋沢史料館ではテーマ展「渡米実業団100周年記念 渋沢栄一、アメリカへ−100年前の民間経済外交−」の開催、研究部では「平成の渡米実業団」の実施、そして実業史研究情報センターでは、「渡米実業団」特設ページを作成し、公開しました。(http://www.shibusawa.or.jp/eiichi/1909/index.html
 これは、「渡米実業団」の活動を広く知っていただくために、インターネットを通じてその概要をお伝えするものです。渡米実業団の由来や「団員一覧」「渡米マップ(地図)」「日程詳細」などを、ウェブの特性を活かしながら、様々な角度から縦横に知ることができるようになっています。「巌谷小波絵葉書ギャラリー」では、実業団メンバーが目にした当時の米国の風景や建物などを、団員の一人だった巌谷小波(児童文学者、本名:巌谷季雄)が日本にいる家族に宛てた絵葉書から見ることができます。
 さらに、100年前の渡米実業団がシアトルに上陸した9月1日に合わせて、ブログ「『渡米実業団』日録」の公開を始めました。これは、渡米実業団の日々の様子を、渋沢栄一の日記、随行員増田明六の報告、公式記録集「『渡米実業団誌』など『渋沢栄一伝記資料』に掲載された資料から追っていくものです。ブログの特性を活かし、100年前と同じ日に、その日の出来事を1日ずつ掲載しています。こちらは、12月に渡米実業団が帰国するまで毎日追加します。100年前に書かれた文章は少々読みづらいところもありますが、実際に渡米実業団に参加した人々の生の声が伝わってくる貴重な記録たちです。ぜひ、じっくりとお読みいただければと思います。URLは"http://d.hatena.ne.jp/tobeijitsugyodan/"ですが、「渡米実業団」特設ページの「1909年カレンダー」から見ることもできます。

 実業史研究情報センターでは、これからも渋沢栄一や実業史に関する情報の発信に努めて参ります。今後の活動にどうぞご期待下さい。

(実業史研究情報センター 茂原 暢)


一覧へ戻る