情報資源センターだより

45 「第16回図書館総合展」への参加を終えて

『青淵』No.791 2015年2月号|実業史研究情報センター 専門司書 茂原暢

 2014年11月5日から7日にかけて、実業史研究情報センターは「第16回図書館総合展」に参加しました。「図書館総合展」とは日本における図書館界最大のイベントで、昨年の展示会には計31,632名の入場者があったとのことです。今回は、ウェブ・コンテンツの作成でお世話になっているNPO法人連想出版と協同で、パシフィコ横浜で行われた展示会においてフォーラム開催およびブース出展を行いました。

フォーラム「デジタル文化資源を作り出せ! こだわり素材と凄腕シェフのコラボレーション」

パシフィコ横浜で開催したフォーラム
パシフィコ横浜で開催したフォーラム

 資料や情報の整備によって研究を支援する実業史研究情報センターは、渋沢栄一や実業史に関する情報資源をウェブ上で公開しています。中でも「渋沢社史データベース(略称:SSD)」「渋沢敬三アーカイブ」、そして2009年度グッドデザイン賞を受賞した「実業史錦絵絵引」は、国立情報学研究所高野研究室やNPO法人連想出版という「データを活かす技術」を持った方々との出会いがなければ実現しませんでした。このフォーラムでは、情報群を築いているデータホルダーがデータを活かす匠に出会い、インターネットを通じて誰もが自由に使えるリソースができるまでを、それぞれの立場から振り返りました。小出センター長による趣旨説明、登壇者3名によるプレゼン、ディスカッション、質疑応答という構成でしたが、ディスカッションでは、「技術者にコンテンツの魅力を伝えることがポイントとなり、技術者もデータホルダーの熱意に呼応して腕に磨きをかけることでイノベーションが生まれる」ことなどが語られました。また、最後の10分ほどで行われた質疑応答では、「実業史錦絵絵引」の使われ方等についての質問や、連想出版が公開している「新書マップ」の学校教育の場における利用例などについて貴重なコメントをいただきました。

 このフォーラムには65名の参加者があり、会場は登壇者、スタッフとあわせるとほぼ定員いっぱいとなりました。その中には、2014年9月にルーヴァン(ベルギー)で開催されたEAJRSでお目にかかった大英図書館の方や、アメリカで図書館司書として活躍している方もいらっしゃいました。参加者の皆様は、熱気に包まれた満員の会場で、私たちのコンテンツ作成秘話に熱心に聞き入って下さったように感じました。なお、後日メールで行ったアンケートでは「技術者にコンテンツの魅力を伝える過程が重要、という考え方が興味深い」という回答を始め、いくつかのご感想をいただきました。

展示会場でのブース出展

展示ブースでのコンテンツ紹介
展示ブースでのコンテンツ紹介

 パシフィコ横浜の広大な展示会場には、大小さまざまなブースが約400件ほど設置されました。センターが連想出版と設置したブースでは、フォーラムで取り上げた3つのコンテンツを中心に、「渋沢栄一ゆかりの地」などセンターが発信している情報資源、そして連想出版が開設しているウェブ・コンテンツを2台のパソコンでご覧いただきました。3日間で300名ほどの見学者が来られましたが、最新の「渋沢社史データベース」やデジタル版『渋沢敬三著作集』とともに、5年も前に公開した「実業史錦絵絵引」に対して多くの方が強い関心を示して下さったのは、うれしい驚きでした。また、日々ブログで発信し続けている東日本大震災関連情報が、国立国会図書館を頂点とする情報流通に貢献できていることもわかりました。このように、多くの方からコンテンツの評価やどのように使っておられるのかを直接伺うことができたのは、図書館総合展に参加した一番の成果と言えるでしょう。今後は、頂戴したご意見をセンターの事業に反映させるとともに、折りを見て、ユーザーの皆様から直にご意見を頂戴する機会を設定できればと考えています。

 2003年11月に産声を上げた実業史研究情報センターは、今年、設立から12年目を迎えることとなりました。昨年は「渋沢社史データベース」や「渋沢栄一ゆかりの地」を新たに公開しましたが、2015年は、いよいよ『渋沢栄一伝記資料』の本文公開へ向かって大きな一歩を踏み出す年となります。さらに、ビジネス・アーカイブズ関連事業も新たなステップへ入っていくことでしょう。実業史研究情報センターの未来に、これからもどうぞご期待下さい。

*ウェブサイト掲載にあたり、タイトルと内容の一部を修正しました。

(実業史研究情報センター 専門司書 茂原暢)


一覧へ戻る