史料館だより

1 企画展開催にあたって

『青淵』No.655 2003年(平成15)10月号

 飛鳥山が紅葉に彩られる秋。当史料館は、「Message from 青淵文庫〜麗しき大正建築へのお誘い〜」と題し、青淵文庫に込められた様々なMessage を浮き彫りにしてゆく企画展を開催します。
 青淵文庫は、渋沢栄一の傘寿(80歳)と男爵から子爵への陞爵という慶事がかさなったことを記念して、竜門社が渋沢栄一に贈呈した建造物です。竣工間近の1923(大正12)年、関東大震災に遭遇し、損傷を被りますが、渋沢を慕う人々の想いが繋がり、1925(大正14)年、竣工に至りました。
 完成した青淵文庫は、飛鳥山にあった渋沢栄一邸の最後の建造物として、決して華美に流されない、渋沢栄一の人柄を偲ばせる荘重な雰囲気を漂わせて今日に至っています。
 企画展の第1章では、青淵文庫の竣工から今日までの歩みを見ていただきます。竣工後の献呈式や園遊会の様子をはじめ、実際には内外の賓客が来訪した際、接待の場所として利用されていた青淵文庫で、写真撮影をした記録写真などを展示します。
 また、80歳を迎えた渋沢栄一の「長寿を祝う会」で、栄一が孫やひ孫たちと遊戯を楽しむ様子が窺える貴重な映像フィルムが当館に所蔵されています。本企画展では、この「長寿を祝う会」の映像フィルムを上映しますので、渋沢栄一の穏やかな表情の一面をご覧下さい。
 第2章では、青淵文庫保存修理工事の現場を担った゛平成の匠たち"に聞く、゛大正の匠たち"の技術やMessageなど、青淵文庫見学のポイントを紹介します。
 青淵文庫を華麗に飾る装飾タイルやステンドグラスをはじめとする装飾品には、渋沢栄一を慕う人々、知人たちのMessageが込められています。時を超えて私たちに語られるそのMessageを感じていただきます。
 また、渋沢栄一に関して現存する3つの建造物、誠之堂(1916年竣工)、晩香廬(1917年竣工)、青淵文庫には、竣工当時からのステンドグラスが飾られています。本企画展では、この3棟の建造物のステンドグラスを紹介します。
 最終章の第3章では、青淵文庫が50年、100年後も変わらぬ姿であり続けられますように、渋沢栄一の功績を通じて歴史と向き合い、考えられるきっかけを示していきたいと思っています。大正建築の中で聴くミュージアムコンサート、講演会やギャラリートーク、ガラスを題材とした体験教室など、新たな取り組みも下記のように開催します。大正浪漫の風を今に伝える青淵文庫が語るMessageを、あなたの想い出に焼きつけてみませんか。麗しき大正建築の世界へお誘いいたします。

(学芸員 川上 恵)

渋沢史料館秋のご案内

企画展

「Massage from 青淵文庫〜麗しき大正建築へのお誘い〜」
2003年10月11日(土)〜11月24日(月、祝)
10:00〜17:00(入館は16:30まで)

大正建築で聴く、ミュージアム・コンサート

(後援 財団法人北区文化振興財団)
2003年10月25日(土) 14:00開演(13:30開場)
演奏:北区民オーケストラ室内楽団
曲目:チャイコフスキー:
「くるみ割り人形」より花のワルツ他

講演会1

2003年11月8日(土) 13:30〜15:30
「曖依村荘ものがたり−青淵文庫誕生に残された足あと−」
講師:渋沢史料館 副館長 井上 潤

講演会2

2003年11月15日(土) 13:30〜15:30
「大正の名建築家 田辺 淳吉」
講師:清水建設株式会社技術研究所
主任研究員 松波 秀子氏

ガラスを題材とした体験教室

「ガラスが溶けるってどういうこと?世界に1つしかない
自分だけのアクセサリーを作ってみましょう!」
2003年11月1日(土)
午前クラス10:00〜12:00
午後クラス13:30〜15:30
講師:ガラス工芸家 片田 久仁子氏
※費用:4,500円(材料費)


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