史料館だより

51 ティームワークのハーモニアスデヴェロープメントの基は「合本法」!?

『青淵』No.778 2014(平成26)年1月号

 新年明けましておめでとうございます。

 昨年、渋沢敬三没後50年ということで、各地・各所で記念の事業が開催され、個々の事業において大きな成果をあげました。各事業に参加された方々が「各機関が連携をはかり、それぞれで持っている資料情報の共有化につながると、渋沢敬三関係研究の進展がさらに大きなものになる......」と口にされていましたが、「人格的に平等にして而も職業に専攻に性格に相異なった人々の総和が数学的以上の価値を示す喜びを皆で共に味わいたい。(これぞ:筆者補筆)ティームワークのハーモニアスデヴェロープメントだ。自分の希望は実にこれであった。」という渋沢敬三の言葉にあるように、個々の成果が相まって、渋沢敬三の人間像、残した事績、思想が明らかとなり、まさに数学的総和以上の大きな成果をあげることが出来たかと思います。
 この考えは、昨年もご紹介した、当財団の長期計画の主体ともなる「文化資源館構想」にもつながります。現時点での、同構想についてご紹介いたします。

目標

 これまで見えなかった「渋沢栄一」像や日本の近代化、産業化を見える化することにあり、この目標を達成することにより、渋沢栄一の人間性や思想・事績に関する深い理解を利用者にわかりやすく提供出来、それを暮らしや仕事に活かすことで、各人・企業がよりよい社会づくりに積極的に参加することが出来るものとなり、社会に大きく貢献出来るという意義を持ちます。

備えるべき機能

(イ)資料・情報の集約と整理
 (1)資料(原資料・二次資料など)・情報(資料情報・研究情報など)の収集と整理、そして共有化。
 (2)上記の保存管理とデジタル・キューレーション。
(ロ)資料・情報へのアクセス向上・利用促進
 (1)渋沢関係情報を蓄積したデータベースの充実。
 (2)資料のデジタル化による利用促進。
 (3)展示(館内外、インターネット上)の充実、過去の展示の蓄積を活用。
 (4)情報発信の充実(アナログ・デジタル)。
 (5)レファレンス・問い合わせ対応の充実。
 (6)多言語対応。
 (7)利用促進のための各種イベントの開催。
(ハ)調査・研究の支援
 (1)研究事業の企画、研究支援。
 (2)研究促進のための各種イベントの開催。
 (3)他の研究機関・類縁資料機関との協力促進。
(ニ)渋沢栄一思想の現代社会への応用・啓発プログラムの企画・実施

資料の公開・活用について方向性と実施法

(1) 資料活用の方向性
  ・実物とデジタルの両輪でいく。
  ・資料のデジタル化はもちろん、デジタル化したデータ類のすべてを管理(運用)する。
  ・デジタル技術を駆使し、公開可能な当館所蔵資料を「デジタルアーカイブ」として、ウェブ上で公開し、公開可能な所蔵資料は「すべて」ウェブを通じて閲覧可能とすることを見据える。
  ・館蔵資料以外の、外部機関で所蔵する資料の情報、渋沢関連情報など、あらゆる関係情報を収集し、連携・発信するハブ機能を備える。
(2) 資料活用の実施法
  ・公開できる所蔵資料はすべて、ウェブサイトで公開できるようにする。
  ・外部資料情報センター・ハブ機能、他機関横断検索なども視野に入れる。
  ・雑誌掲載など、写真資料の利用をすべてデジタル貸出しとする。
  ・伝記資料を核としたデータベースを構築する。

現在の渋沢史料館がどのように変わるのか・・・

・これまで以上に資料の公開・活用に力を入れた文化機関となる。
・所蔵資料の内容が広く知られることとなり、資料の利活用増加につながる。
・他機関等との関係強化がはかられ、情報集積量の増加につながる。
・デジタル化、種々のデータベース構築により情報発信量が増加する。
・展示や様々なプログラムを企画する際に表現の幅が増え、よりわかりやすく伝えることができる。
・さらに国際的な視野に立つようになる。

 この構想の一環で、展示室の全床改装。受付、会議室、閲覧コーナーの活用法、最新IT技術の導入法についても検討を加えながら、これまでの企画展等の成果を活かし、栄一が築いた人的ネットワーク、栄一の苦悩・葛藤についても焦点を当てる常設展示のリニューアルも考えています。
 さらに、備える機能に合った財団組織も考える同構想によって、他に類を見ないような博物館の進化・発展した姿になりうると考えています。

 
 以上、毎年くり返しお伝えしています渋沢史料館の進化、高度成長については、敬三の発案によって始まったように思われますが、突き詰めていくと、敬三が尊敬した祖父・栄一が、経営面で貫いた合本(仕)法に相通じると思われます。
 「合本法」の真理については、極めて有効な提言として当財団から世界に向かって、発信していこうとするものです。つまり、私たちは今、「合本法」の具現化した一つの姿を構想していることになるのかと思っています。
 この先、まずは2020年3月常設展示リニューアル完成目指して、具体的に内容の検討を加えていくのですが、ご期待をよせて暖かく見守っていただければと存じます。

(館長 井上 潤)


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