情報資源センターだより

33 『渋沢栄一伝記資料』事業一覧をウェブサイトで公開―事業や会社名から記事を探すために

『青淵』No.755 2012年2月号|実業史研究情報センター 専門司書 山田仁美

『渋沢栄一伝記資料』掲載の事業一覧

 2011年11月11日、渋沢栄一没後80周年記念事業として財団ウェブサイト『渋沢栄一伝記資料』ページの改編を行い、事業一覧ページを追加しました。実業史研究情報センターではこれまでも『伝記資料』目次や目次詳細(綱文)をウェブで提供してまいりましたが、今回は『伝記資料』をより使いやすくするために全体の構成や使い方の解説も加えました。
 事業一覧とは渋沢栄一が関わった75事業を一覧表にしたものです。各事業名をクリックすると当該事業の会社名・団体名・事項名が掲載箇所とともに表示されるようになっています。そこに目次詳細(綱文)、渋沢栄一関連会社社名変遷図へのリンクも設定しました。これにより1,353件にも及ぶ会社・団体等と栄一がどのように関わっていたか、簡単に確認できるようになりました。
 『伝記資料』は特に会社や団体を切り口とする調査で頻繁に利用されていますが、同じ会社の記事でも時代によって収載巻が異なります。これまではある会社の記事が本編57冊の中のどこに載っているかを知るには第58巻(索引巻)収載の「事業別年譜」を一行ずつたどり、掲載巻とページを探さねばなりませんでした。その煩雑さを解消するための検索支援ツールが事業一覧です。

事業一覧でわかることは?

 それではウェブ上の事業一覧から、具体的に何がわかるのでしょうか? たとえば「銀行」のページを開いてみましょう。そこには栄一が関与した40の銀行名が列挙されています。その中の「第一国立銀行・第一銀行」を見ると、『伝記資料』における掲載箇所は4巻5〜711ページと50巻5〜263ページであるとわかります。該当するページをクリックすると、目次詳細(綱文)[4巻50巻]が表示されます。綱文には栄一の事績概要が年月日順に記されているので栄一がいつ何を行ったか、その会社とどう関わったのか、あらすじのように読むことができます。
 さらに変遷図名をクリックすると、現在のみずほ銀行に至るまでの社名変遷を見ることができます。目次詳細(綱文)や変遷図など、すでにウェブに公開されていた情報群をあたかも事業一覧の一部のように表示することができるのは、ウェブならではの利点です。
 センターの仕事の一つはこのような「利用者と情報をつなぐ道具」づくりです。そしてその「道具」には、利用者が情報に出会うことで、また情報と情報が出会うことで誕生する新たな発見への期待が込められています。

今日と明日につながる歴史を知るために

 栄一をはじめとする先人が時代の転換期や苦難の出来事に直面した際にいかに対処したか、『伝記資料』からはその様子がありありと伝わってきます。さらに変遷図を見ると、『伝記資料』に記された栄一の世界が単なる「過去のお話」ではなく、今日の私たちの日常とつながるルーツであることが実感できます。『伝記資料』に記されているのは今日と明日につながる歴史です。温故知新、そこには次の時代の糧となるような発見も埋もれているかもしれません。歴史研究だけでなく、実業、経済、国際交流など、さまざまな分野で渋沢栄一の時代を引き継いで今を生きる皆さんは『伝記資料』の中からどのような発見をするのでしょうか。『伝記資料』の中で渋沢栄一とどのような対話をしてどのような未来を紡ぐのでしょうか。
 『伝記資料』を介して渋沢栄一と対話する際の一助として、事業一覧が広く活用されることを、心より願っております。

(実業史研究情報センター 専門司書 山田仁美)


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