[ 解説 ]
タウンゼント・ハリス(Townsend Harris, 1804-1878)は初代米国総領事として1856(安政3)年に来日しました。下田上陸翌日の日記に「開国は真に日本のためになるだろうか」との自問が記されているように、ハリスの外交姿勢は自国の利益だけでなく、開国間もない日本の発展をも心にかけたものだったと言われています。
来日から約70年後の1927(昭和2)年、来日当初ハリスが滞在していた下田玉泉寺に記念碑が建てられました。碑の建立に尽力した栄一は、87歳の高齢ながら2日がかりで下田を訪れ、除幕式に出席しています。除幕式スピーチで栄一は、ハリスが日記に記した自問に言及、その問いへの答えとして、封建的専制から立憲国に、また資源乏しい国ながら産業・貿易も盛んになったのは、ハリスのお陰、と述べています。
記念碑は太平洋戦争中に根元から切断されたものの辛うじて破壊は免れ、戦後、台座を新たにして再建され、今日に至っています。
出典: 『渋沢栄一伝記資料』別巻第十 (竜門社,1971)p.199
出典:『渋沢栄一伝記資料』 3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代 明治四十二年~昭和六年 / 3部 身辺 / 6章 旅行 / 1節 国内旅行 【第57巻 p.679】