[ 解説 ]
1926(大正15)年11月11日、第一次世界大戦休戦8年後の記念日、東京・愛宕山の社団法人日本放送協会東京中央放送局から渋沢栄一のラジオ講話が放送されました。前年に始まったばかりのラジオ放送という新たなメディアを通じて、栄一は忠恕(誠実さと思いやり)の大切さについて述べ、「個人間も国際間も忠恕がなければ争いが起こる」「自国の利益のみ主張し他国の利益を顧みないのは正しい道徳ではない」と訴えました。
世界大戦の反省から生まれた国際連盟の精神を達成する目的で、「国際聯盟協会」が1920(大正9)年に設立され、栄一はその会長を務めました。栄一はこの平和記念日のラジオ放送を最晩年の恒例行事とし、体調を案ずる家族や医師に止められても、自ら「声も枯れるし苦しい」と語りながらも、これ以降1929(昭和4)年まで毎年11月11日には繰り返し東京中央放送局へ足を運んでいます。
出典:『渋沢栄一伝記資料』 3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代 明治四十二年~昭和六年 / 1部 社会公共事業 / 3章 国際親善 / 3節 国際団体及ビ親善事業 / 13款 社団法人国際聯盟協会 【第37巻 p.110-118】