ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信)

第51号(2014年6月11日発行)

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☆      □■□ ビジネス・アーカイブズ通信 □■□

☆       No.51 (2014年6月11日発行)

☆ 発行:公益財団法人 渋沢栄一記念財団 実業史研究情報センター

☆                        〔ISSN:1884-2666〕
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この通信では海外(主として英語圏)のビジネス・アーカイブズ(BA)に関する情報をお届けします。

海外BAに関わる国内関連情報も適宜掲載しております。

今号は行事情報1件です。

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◆ 目次 ◆

[掲載事項の凡例とご注意]

行事情報:ICA/SBL主催 ビジネス・アーカイブズ国際シンポジウム
 ◎テーマ:「工場からフェイスブックまで:ビジネス・アーカイブズに関わる新たな方法」
       2014年4月13~15日
       ユニリーバ社 ロンドン(イギリス)

☆★ 編集部より:次号予告 ★☆

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[掲載事項の凡例]

・欧文の場合、日本語で読みやすいものになるように、タイトルははじめに日本語訳を、続いて原文を記します。
・人名や固有名詞の発音が不明の場合も日本語表記を添えました。便宜的なものですので、検索等を行う場合はかならず原文を用いてください。

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[ご注意]
・受信時にリンク先を示すURLが途中で改行されてしまう場合があります。通常のURLクリックで表示されない場合にはお手数ですがコピー&ペーストで一行にしたものをブラウザのアドレス・バーに挿入し、リンク先をご覧ください。

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■ICA/SBL主催 ビジネス・アーカイブズ国際シンポジウム
       2014年4月14~15日
       ユニリーバ社 ロンドン(イギリス)

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◎「工場からフェイスブックへ:ビジネス・アーカイブズに関わる新たな方法」
From factory to facebook: new ways to engage with business archives

http://www.ica.org/15404/news-and-events/from-factory-to-facebook-new-ways-to-engage-with-business-archives-london-england-1415-april-2014.html

今年のICASBL(国際アーカイブズ評議会企業労働アーカイブズ部会)国際シンポジウムは4月14、15日の2日間にわたり、ロンドンのユニリーバ社本社で開催されました。ビジネス・アーカイブズでのソーシャル・ネットワーク・サービス利用がメインテーマでした。イギリスを中心に、デンマーク、スイス、ベルギー、スウェーデン、アイルランド、ドイツ、フィンランド、日本、フランスからの参加者が100名を超えました。以下では発表者・講演者の略歴と発表の概要について報告します。

[日時]
14-15 April 2014

[会場]
Unilever House, 100 Victoria Embankment, London EC4Y 0DY

[プログラム]
http://www.ica.org/download.php?id=3203
(当日配布プログラムとの相違があります。下の紹介は当日配布資料に基づきます)


□■□ 4月14日(月) □■□


◆ 挨拶 ◆
ユニリーバ社 ジャネット・ストリックランド 
Jeannette Strickland, Unilever plc

SBL議長 ブルース・スミス
Bruce Smith, Chair of SBL

◆ 第1セッション ◆
ビジネス・アーカイブズは外部からどのように見られているか?
How business archives are perceived externally

司会:ブルース・スミス(SBL議長) Bruce Smith, Chair of SBL

◆タイトル1:ビジネス・アーカイブズの価値
タイトル原文1:The value of business archives
発表者氏名1:クレム・ブロイヤー Clem Brohier
発表者所属1:イギリス国立公文書館 The National Archives, UK

[発表者]
〇ブロイヤー氏はイギリス国立公文書館館長代理。館長代理に指名される前は、同館の財務責任者。

[発表]
 イギリス(イングランドとウェールズ、そしてスコットランド)では「ビジネス・アーカイブズのためのナショナル・ストラテジー」をいち早く策定、これに基づいたさまざまな取り組みが進行中であり、ビジネス・アーカイブズに関するシンポジウムをロンドンで開催することは時宜にかなったことである。ストラテジーに基づいて、ビジネス・アーカイブズのレスキュー活動が行われている。マークス&スペンサー社、アルフレッド・ジレット財団(靴の製造販売会社であるクラークス社のアーカイブズを運営)やHSBCなどではそれぞれのアーカイブズがここ数年の間に施設面でアップグレードしている。イングランド銀行アーカイブズやネットワークレール社のアーカイブズではデジタル化によって、より多くの人々に記録資料を提供するようになってきている。ビジネス・アーカイブズは企業内だけでなく、大学やパブリック・レコード・オフィス(公文書館に相当)といった施設にも寄託されている。これらのビジネス・アーカイブズ(記録資料)を、より多くの利用者に提供し利用してもらうことが大切である。
 イギリスにはアーカイブズ・サービスに関し、標準に適合したものを認証する制度がある。企業アーカイブズの中にもネットワークレール社アーカイブズ(2013年)、ユニリーバ社アーカイブズ(2014年)など、この認証を受けるものが登場してきた。会社勤めとは無縁な人も、企業が生み出す財やサービスとは無関係ではありえない。企業の歴史はますます歴史一般の一部になりつつある。企業の記録資料は隠れた存在ともいれるが、これに光をあてて、一般の人々の関心を高めることが必要だと思う。

[編者注]
「認証」=accreditationに関しては以下を参照してください。
http://www.nationalarchives.gov.uk/archives-sector/archive-service-accreditation.htm

[関連ページ]
イギリス国立公文書館(TNA)
http://www.nationalarchives.gov.uk/

マネージング・ビジネス・アーカイブズ:ベストプラクティス・オンライン
http://www.managingbusinessarchives.co.uk/


◆タイトル2:学校からの一つの見方
タイトル原文2:A view from the Academy
発表者氏名2:ロイ・エドワーズ Roy Edwards
発表者所属2:サザンプトン大学(イギリス) University of Southampton, UK

[発表者]
 サザンプトン大学マネジメントスクールで会計学とファイナンスの講師。会計学のほか、経営史も教えており、アーカイブズ資料を使った論文指導を行っている。研究テーマはサプライチェーンの歴史とイギリスの産業政策。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスを卒業。ビジネス・アーカイブズ・カウンシルの理事を10年間務めている。「アーカイブズとモノ資料の研究ネットワーク」(Archives and Artefacts Study Network: A2SN)の共同設立者。

[発表]
 アーカイブズは歴史研究に不可欠である。研究者はアーカイブズを理解しなくてはいけない。アーカイブズに対しては、冊子体の目録も提供し続けることを希望する。アーカイブズは研究のみならず、教育、それもビジネススクールでの教育にも有用である。ビジネス・アーカイブズは経営史のほか、会計学やエンジニアリングの教育に用いられている。例えば、石油収入税や国鉄の民営化、国際的な租税政策などの記録である。
 自分が設立した「アーカイブズとモノ資料の研究ネットワーク」等の活動を通じて感じるのは、ビジネス・アーカイブズが多くの人の目に触れれば触れるほど、それだけアーカイブズ機関が資金を獲得する可能性も高まるということである。
 大学とビジネス・アーカイブズ界の協力にはどのようなものがあるか?ひとつには博士課程の院生によるアーカイブズの研究利用がある。そのほか、彼らに目録作成を行わせたり、ビジネス・アーカイブズに関する知識を広める活動に参加させる、といったこともあるだろう。

[関連ページ]
ビジネス・アーカイブズ・カウンシル
http://www.businessarchivescouncil.org.uk/

サザンプトン大学マネジメントスクール
http://www.southampton.ac.uk/management

サザンプトン大学マネジメントスクール スタッフ紹介 ロイ・エドワーズ
http://www.southampton.ac.uk/management/about/staff/re1u08.page?

アーカイブズとモノ資料の研究ネットワーク(A2SN)ブログ
http://a2snetwork.blogspot.jp/


◆タイトル3:ハッシュタグ「ビジネス・アーカイブズに対する認識」
タイトル原文3:#perceptionsofbusinessarchives
発表者氏名3:マイク・アンソン Mike Anson
発表者所属3:イングランド銀行 Bank of England

[発表者]
 イングランド銀行アーカイブズのマネジャー。2004年にイングランド銀行公式史第4巻のためのリサーチャーとして入行。入行前はロンドン・スクール・オブ・エコノミクスでイギリス国鉄から委託された同国鉄の歴史、イギリスとチャネル海峡に関する政府の公式の歴史の編纂に携わる。2005年からビジネス・アーカイブズ・カウンシルの理事、2013年に議長に選出された。

[発表]
 ビジネス・アーカイブズは企業の中で利用されることもあれば、大学人やその他の研究者、ジャーナリストとメディア関係、また一般の人々など様々な利用者を持つ。そして利用者によってビジネス・アーカイブズに対する見方はそれぞれ異なっている。その認識は一種の無関心から熱狂まで幅広い。時とともに変化もしてきた。利用者のビジネス・アーカイブズに対する認識を形作るものとして、ビジネス・アーキビストはたいへん重要な役割を果たしてきたし、これからもそうだろう。
 例えばメディア関係者を取り上げてみよう。メディアが興味を持つのは、記録が非公開になる時、記録が廃棄された時、スキャンダルや陰謀に関わる記録、奴隷制に関わる記録、戦争関係の記録、保健衛生関係の記録、環境問題に関する記録、労働者に対する処遇に関する記録・・・などである。過去の記録に関わってネガティブな報道があった時どうするか?法務や広報の専門家と連携することも必要だが、透明性の観点から記録を公開し、情報を提供することは、メディアに前向きに対応する方法である。これまでの経験から学んだことは、ジャーナリストというものは怠惰である、という点である。つまり、アーカイブズの側でストーリーを提供する必要がある。以前から公開扱いであった記録も、オンラインで公開するとあたかも初公開であるような扱いを受ける。これらのことからも、アーキビストの果たす役割の重要性が明らかである。
 ソーシャルメディアはその点で、これまでのビジネス・アーカイブズ利用者とは異なる人々にアーカイブズの存在を知らせ、双方向的にコミュニケーションするのに大変有用である。また企業に対する好意的な見方を生み出すような広報機能も持つ。これまで知られていないコレクションの利用促進にも役立つ。

[関連ページ]
イングランド銀行
http://www.bankofengland.co.uk

イングランド銀行アーカイブ
http://www.bankofengland.co.uk/archive

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス スタッフ紹介 マイク・アンソン
http://www.lse.ac.uk/economicHistory/BHU/whosWho/anson.aspx

◆ 第2セッション ◆
イングランド、スコットランド、ウェールズのためのナショナル・ストラテジー
National Strategies for England, Scotland and Wales

司会:アレックス・リッチー(イギリス国立公文書館ビジネス・アーカイブズ・アドバイス・マネジャー)
Alex Ritchie, Business Archives Advice Manager, The National Archives

◆タイトル1:勧誘電話と空っぽの事務所:イングランド内で危機的状況のビジネス・アーカイブズに関する報告
タイトル原文1:Cold-calling and empty offices: a review of English business archives in crisis
発表者氏名1:リチャード・ウィルトシャー Richard Wiltshire
発表者所属1:ロンドン・メトロポリタン・アーカイブズ(イギリス) 
London Metropolitan Archives, UK

[発表者]
 ロンドン市立ロンドン・メトロポリタン・アーカイブズのビジネス・アーカイブズ担当上級アーキビスト。ビジネス・アーカイブズ・カウンシルの理事で、ビジネス・アーカイブズのための危機管理チームのメンバー(ロンドンと南東イングランド担当)。

[発表]
 ロンドン・メトロポリタン・アーカイブズはロンドン市が運営する収集アーカイブズである。発表者は、「ビジネス・アーカイブズのためのナショナル・ストラテジー」施策の一つ、危機管理チームの一員としてこれまで活動してきた。ビジネス・アーカイブズの危機(リスク)には、会社清算(liquidation)、会社再建(administration)、管財人による管理への移行(receivership)、M&A、会社移転(relocation)などがある。このような危機に直面した会社の資料の場合、資料へのアクセス自体が難しく、また資料救出のための費用をだれが負担するのかという問題もある。建設業界の業界紙で取り上げられた例にWilliam Verry社とHarry Neale社の場合がある。(下記関連ページ参照)このほか危機管理チームの仲介でComet Group社の資料がハル歴史センター(Hull History Center)に引き取られた。ウェッジウッドの記録資料はユネスコの世界記録遺産に英国国内で登録(2011年)されたにも関わらずビジネスは失敗し、経営権は米国の投資ファンドに移行した。
 毎年事業に失敗する企業は存在している。そのような中で今後危機管理チームは、チーム活動の広報強化、破産管理人への働きかけ、業界団体との結びつきといった点が重要であると考えている。

[関連ページ]
危機管理チームに関して(マネージング・ビジネス・アーカイブズ)
http://www.managingbusinessarchives.co.uk/getting_started/partnerships_and_collaboration/business_archives_at_risk_crisis_management_team

ロンドン・メトロポリタン・アーカイブズ
http://www.cityoflondon.gov.uk/things-to-do/visiting-the-city/archives-and-city-history/london-metropolitan-archives/Pages/default.aspx

『コンストラクション・マネジャー・マガジン』 2010年6月号
http://www.construction-manager.co.uk/news/news-roundup-june-2010/

ハル歴史センター コメット・グループ社記録資料
http://www.hullhistorycentre.org.uk/discover/hullhistorycentre/ourcollections/businessrecords/papersofcometgroupplc.aspx


◆タイトル2:スコットランドにおけるビジネス・アーカイブズのためのナショナル・ストラテジー:新しい種類の関わり方を促進する
タイトル原文2:A National Strategy for Business Archives in Scotland: encouraging new kinds of engagement
発表者氏名2:キアラ・キング Kiara King
発表者所属2:バラスト財団(イギリス) The Ballast Trust, UK

[発表者]
 バラスト財団アーキビスト。2011年のスコットランドにおけるナショナル・ストラテジー開始以来、同ストラテジーに関わってきた。エジンバラ大学で歴史学を学んだ後、グラスゴー大学大学院で情報管理・保存(アーカイブズと記録管理)を専攻し、2007年に修士号取得。2009年1月にバラスト財団アーキビストに就任するまで、エジンバラ大学とスターリング・カウンシルで記録管理を担当した。

[発表]
(当日の発表で使われたスライドがウェブに掲載されています)
http://www.slideshare.net/araik/a-national-strategy-for-business-archives-in-scotland-encouraging-new-kinds-of-engagement-33853749?qid=1ef6cf00-9823-449d-b02d-22826a69d809&v=qf1&b=&from_search=3
 スコットランドのナショナル・ストラテジーに基づいた取り組み事例、ブログやツイッターなどのソーシャル・メディアによる展開、セミナー、キャンペーン、行事・展示、成果に関する中間報告を紹介。それぞれの項目でビジネス・アーカイブズに人々がどのように関わっているのかを説明した。
 スライド15で、今後の計画・優先順位として重視しているものとして、危険な状態のアーカイブズに関して破産管財人に働きかけること、大学関係者が取り組むことを容易にするツールの開発、イングランド&ウェールズのナショナル・ストラテジーとの連携、商工会議所、企業責任インデックス(corporate responsibility indices)を上げている。

[関連ページ]
キアラ・キング氏のスライドシェア・アカウント
http://www.slideshare.net/araik

バラスト財団
http://www.ballasttrust.org.uk/

スコットランド・アーカイブズ評議会
http://www.scottisharchives.org.uk/

スコットランドにおけるビジネス・アーカイブズのためのナショナル・ストラテジー
http://www.scottisharchives.org.uk/projects/business_archives/national_strategy


◆タイトル3:前進中:ウェールズにおけるビジネス・アーカイブズに対する共同アプローチ
タイトル原文3:Forging ahead: a collaborative approach to business archives in Wales
発表者氏名3:ステイシー・ケイプナー Stacy Capner
発表者所属3:アーカイブズ・レコーズ・カウンシル・オブ・ウェールズ(イギリス) Archives and Records Council of Wales, UK

[発表者]
 2009年にリバプール大学大学院でアーカイブズと記録管理のディプロマを取得。その後スウォンジー大学リチャード・バートン・アーカイブズのプロジェクト・アーキビスト。現在はウェールズ政府の一部門であるCyMAL(Museums Archives and Libraries Wales)を通じて資金を得ているアーカイブズ・レコーズ・カウンシル・オブ・ウェールズのために、ウェールズのビジネス・アーカイブズ・ディベロップメント・オフィサーを務めている。
 これまで「世界に電力を供給する:アーカイブズを通してウェールズの産業をみる」の目録作成プロジェクト、「世界に電力を供給することから利益を得る」というウェールズの鉄鋼産業アーカイブズ調査、トロースフィニッド原子力発電所(現在廃炉作業中)の歴史的記録収集など数々のビジネス・アーカイブズ関連プロジェクトに携わってきた。2014年からウェールズの鉄鋼業アーカイブズに関するプロジェクトで働くことになっている。

[発表]
 ウェールズのアーカイブズ・カウンシルは1995年に設立された。銅の採掘や精錬、石炭採掘、ビール醸造、ウール産業など数多くの産業を抱える地域である。とはいうものの、グラスゴーのスコットランド・ビジネス・アーカイブズ・カウンシルのような地域に特化したビジネス・アーカイブズの専門家サークルが不在である。多くのビジネス・アーカイブズは公文書館など公的なレポジトリーに所蔵されていて、目録が作成されていないことも多く、あまり利用されてこなかった。潜在的な利用者や企業との関わりも薄かった。そのような中でスタートしたナショナル・ストラテジーによって、目録作成、ワークショップ、展示、学生のリサーチへの活用などの取り組みが行われている。ウェールズの鉄鋼業に関わるアーカイブズでは、調査、企業への働きかけ、目録作成などが行われている。
 現在廃炉作業中の原子力発電施設が、ウェールズの電力業界と連携している。ウェールズ政府が出資し、ウェールズ国立図書館やウェールズ国立博物館、アーカイブズ、歴史関係の諸団体が協力して運営するピープルズ・コレクション・ウェールズ(People's Collection Wales)には"Stori Traws"のページがある。これは廃炉作業中の原子炉に関するアーカイブズ・プロジェクトである。原子力廃止措置機関(Nuclear Decommissioning Authority (NDA))などとの連携も模索中である。これらによってビジネス・アーカイブズへの関心の向上が目指されている。
 一方、ウェールズでのストラテジーの取り組みは、諸団体の連携なしには難しい。各種のプロジェクトを進める上でソーシャルメディアが連携強化に役立っている。報告は次のヘレン・ケラーの言葉で締めくくられた。

Alone we can do so little; together we can do so much.
「ひとりでできることはわずかだが、力を合わせてできることはとても多い」


[関連ページ]
アーカイブズ・レコーズ・カウンシル・オブ・ウェールズ (ARCW)
http://archiveswales.org.uk/index.php?id=1051

ミュージアム・アーカイブズ・アンド・ライブラリー・ウェールズ(CyMAL)
http://wales.gov.uk/topics/cultureandsport/museumsarchiveslibraries/cymal/?lang=en

Stori Traws(廃炉作業中原子炉施設の記録保存の取り組みの一環)
http://www.peoplescollectionwales.co.uk/collections/377955

スウォンジー大学
http://www.swansea.ac.uk/

◆ 第3セッション ◆
遺産をマーケティングする(売り込む)
Marketing the heritage

司会:アレックス・ビエリ(F・ホフマン=ラ・ロッシュ社)
Alex Bieri, F Hoffman-La Roche Ltd

◆基調講演タイトル:ユニリーバ・ブランド
タイトル原文:The Unilever Brand
講演者氏名:マーク・マシュー Marc Mathieu
講演者所属:ユニリーバ社マーケティング担当上級副社長(イギリス) SVP Marketing, Unilever plc, UK

[講演者]
 ユニリーバ社のマーケティング担当上級副社長として同社の新しいグローバル・マーケティング戦略 Crafting Brands for Life(「生活のためのブランドをつくり上げる」)の開発に責任を負っている。この新戦略は環境への負荷を減少させつつ事業規模を2倍に拡大するという同社の持続的な成長志向を支えるものである。
 ユニリーバ社に加わる前は、コカ・コーラ社のグローバル・ブランド・マーケティング担当上級副社長を務めた。コカ・コーラ社ではCoke Side of Life(「生活の中のコークの側面」)というグローバル・キャンペーンを立ち上げ、コーク・ゼロを50の市場に投入し、その持続可能なプラットフォームである Live Positively(「前向きに生きる」)を開発した。コカ・コーラ社入社は1996年、東南アジアの新興市場での重要な経験を積んだ後、2000年にフランスとベネルクス諸国地域の事業部長に任命された。

[講演]
「地球上には餓えや水不足に苦しむ子どもたちが存在する。環境の破壊も深刻である。将来の世代に何を残すことができるのか?」消費者に対してこのような問いかけを行い、よりよい地球をつくるために何ができるのか、ということをウェブ上でインタラクティブに対話しつつ、ユニリーバ社の取り組みを知らせ、またそのような取り組みを行うユニリーバ社への共感を引き出し、消費者と企業がともに地球の未来に向かって歩んでいくというのが「プロジェクト・サンライト」のコンセプトである。「プロジェクト・サンライト」サイトにはたくさんのソーシャルメディアが埋め込まれている。CSR的な観点をベースにし、ソーシャルメディアを活用したマーケティングの例である。

[関連ページ]
ユニリーバ社
http://www.unilever.com/

ユニリーバ社「プロジェクト・サンライト」
https://www.projectsunlight.com/


◆タイトル1:ソーダ水からフェイスブックへ
タイトル原文1:From fountain to Facebook
発表者氏名1:テッド・ライアン Ted Ryan
発表者所属1:コカ・コーラ社(アメリカ) Coca Cola, USA

[発表者]
 コカ・コーラ社ヘリテージ・コミュニケーション部門ディレクター。1997年6月からコカ・コーラ社の歴史コレクション管理に携わってきた。アメリカ議会図書館への寄贈のため、過去50年にわたってコカ・コーラ社が作成した25,000以上の歴史的広告を修復し、デジタル化し、目録作成するプロジェクトをプロジェクト・マネジャーとして指揮した。企業博物館であるワールド・オブ・コカ・コーラの歴史展示企画・制作では、デザイン・チームの中で重要な役割を果たした。ラテンアメリカにおけるコカ・コーラの100年史執筆のほか、コカ・コーラのブログ、ツイッター、フェイスブックを通じて顧客とのコミュニケーションに関わっている。
 コカ・コーラ社に加わる以前は、10年間アトランタ歴史センターでターナー球場のアトランタ・ブレーブス・ミュージアムの展示など、重要なプロジェクトを担当した。

[発表]
 デジタル化されたコカ・コーラ社のこれまでの宣伝資料の再利用・活用についての説明。1977年にテッド・ライアンの前任者で、昨年引退したフィル・ムーニーが初めてのプロフェッショナルなアーキビストとしてアーカイブズ管理を初めて以降、過去の資料を現在のビジネスに活かすことがより積極的に戦略的に行われるようになった。

[関連ページ]
コカ・コーラ社
http://www.coca-colacompany.com/

コカ・コーラ社 歴史
http://www.coca-colacompany.com/history/

コカ・コーラ社ウェブサイトの歴史
http://www.coca-colacompany.com/videos/history-of-coca-cola-websites-ytxpxcaysy09q


◆タイトル2:企業の離婚を通じて遺産を活性化する
タイトル原文2:Activating heritage through a corporate divorce
発表者氏名2:ベッキー・ハグランド・タウジー Becky Haglund Tousey
発表者所属2:モンデリーズ・インターナショナル社(アメリカ) Mondelez International, USA

[発表者]
 シカゴ郊外に本社を置くモンデリーズ・インターナショナル社のアーカイブズ&情報リソース部門のアソシエイト・ディレクター。コロラド州立大学で歴史学を学んだ後、同大学大学院で歴史学とアーカイブズ学の修士号を取得。卒業後は自治体アーカイブズ、大学アーカイブズ勤務を経て、クラフトフーズ社アーカイブズに加わる。現在は多国籍企業であるモンデリーズ・インターナショナル社の数カ国にまたがるアーカイブズ管理を指揮している。
 認定アーキビスト。ICASBLの事務局長を8年間勤めた。2010年にはSAAフェローに選ばれている。

[発表]
 モンデリーズ・インターナショナル社は2011年にそれまでのクラフトフーズ社が分社化して生まれた二つの会社のうちの一つである。クラフトフーズ社は分社化までは従業員約13万3000人、売上高は490億ドルの世界第2位の食品会社であった。分社化によって、新興市場をはじめとする北米以外を対象としたスナック類販売会社であるモンデリーズ・インターナショナル社と、アメリカ、カナダにおける伝統的な食料品販売を業務とするクラフトフーズ・グループ社が生まれた。前者は従業員11万人、売上高320億ドル、後者の従業員は2万3000人、売上高160億ドル。分社化にあたってアーカイブズ部門は経営陣との間で、スタッフ、アーカイブズの役割、組織構造、指揮命令系統に関して話し合いを持った。結果は、それまで4人であったアーカイブズのスタッフは2名ずつ新会社に所属することになった。指揮命令系統は法務部門の中のコンプライアンス担当所属から、マーケティング部門に変更になった。利用システムは複製されて、モンデリーズ社のアーカイブズが移転することになっている。所蔵資料に関してはモンデリーズ・インターナショナル社のもの、クラフトフーズ・グループ社のもの、両者のものという3つのカテゴリーに分けられた。電子記録、デジタル・アセット・マネジメント(DAM)システムも複製され、自社に不必要なものは削除することになった。とりあえず2015年までは二つのアーカイブズは同じ場所で共同運営するような形であるが、その後どうなるかは未定である。さらに分社化によって、アーカイブズの活用は、親会社であるコーポレートの歴史遺産ではなく、ブランドの遺産に焦点を当てることになっている。

[関連ページ]
モンデリーズ・インターナショナル社
http://www.mondelezinternational.com/


◆タイトル3:セールスポイントとしての歴史:フォートナム&メイソンの現在と未来における過去の役割
タイトル原文3:History as a huge USP: the role of the past in the present and future at Fortnum & Mason
発表者氏名3:アンドレア・タナー Andrea Tanner
発表者所属3:フォートナム&メイソン社(イギリス) Fortnum & Mason, UK

[発表者]
 老舗百貨店フォートナム&メイソンのピカディリー本店のアーキビスト。英国紋章院の系図学者として出発し、グレート・オーモンド街病院アーカイブズで12年間働いた。博士号取得後は歴史研究所でウェルカム財団の援助を受けた「大都市における死亡率」プロジェクトに携わった。現在同研究所の上級リサーチ・フェロー。

[発表]
 1707年創業の百貨店フォートナム&メイソンは300年以上の歴史を持つ老舗デパートである。アーカイブズはマーケティング部門に所属しており、歴史は「ソフトな宣伝」(soft advertising)と考えられている。
 2012年のエリザベス2世女王即位60周年を記念したセレモニーや記念商品の開発にあたっては、王族との結びつきといったユニークなセールスポイント(unique selling point: USP)を示すアーカイブズ資料を用いた。また王族の訪問イベントをウェブとソーシャルメディアを使って広く伝えた。

[関連ページ]
フォートナム&メイソン
http://www.fortnumandmason.com/

フォートナム&メイソン 歴史
http://www.fortnumandmason.com/c-358-our-history-fortnum-and-mason.aspx

2012年の王族訪問
http://www.fortnumandmason.com/c-605-fortnums-royal-visit.aspx

フォートナム&メイソン 2012年エリザベス女王即位60周年記念関連ページ
http://www.fortnumandmason.com/c-606-her-majestys-diamond-jubilee.aspx


◆ 第4セッション ◆
21世紀の企業博物館をマーケティングする(売り込む)
Marketing the corporate museum in the 21st century

司会:ジャネット・ストリックランド(ユニリーバ社)
Jeannette Strickland, Unilever plc

◆タイトル1:ギネスの遺産を売り込む:toucans(鳥のオオハシ)からつぶやきへ
タイトル原文1:Marketing Guinness heritage: from toucans to tweets
発表者氏名1:エブリン・ロッシュ Eibhlin Roche
発表者所属1:ディアジオ社(アイルランド) Diageo, Ireland

[発表者]
 アイルランド・ダブリン市内にあるギネス・ストアハウス内ギネス・アーカイブのマネジャー。ギネス・アーカイブはアイルランド内では唯一一般公開されている企業アーカイブズである。職務の内容はギネス・アーカイブのコレクションのための収集、目録作成、保存、公開であり、ギネス・ストアハウスの新しい展示コンテンツの開発にも携わっている。そのほか、ギネスのグローバル・マーケティング・チームとともにブランドの歴史の宣伝にも協力している。

[発表]
 ギネス・ストアハウスはアイルランド随一の観光スポットで、ブランド観光スポットとしても世界中で五指に入る。ブランド自体は250年を超える歴史を持つことからもわかるように、ギネスは、商品の宣伝においてもギネス・ストアハウスへの集客においても、ブランドの歴史に非常に多くのものを負っている。ブランド・コミュニケーション戦略においてアーカイブズは欠かせない。
 Guinness Toucansとよばれる鳥のオオハシのイメージが1930年代以来ギネス・ブランドを表すものとしてブランド広告で用いられてきた。現在のブランド・コミュニケーション戦略は製品、ブランド、ギネスをつくってきた人々に焦点を当てている。ウェブサイト、フェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディアはこの戦略の新しい回路である。社内的には企業など組織向けのソーシャル・ネットワーク・サービスYammerも利用している。
 
[編者注]
 ギネス・アーカイブズは1998年に初めてアーキビスト専門職を採用。2000年12月からアーカイブズの一般公開・利用を開始(事前申し込みは必須)。
http://www.guinness-storehouse.com/en/Archive.aspx

[関連ページ]
ディアジオ社(ギネス・ブランドの製品の製造販売を手掛ける会社本体)
http://www.diageo.com/en-row/Pages/default.aspx

ギネス・アーカイブ(アーキビストであるエブリン・ロッシュ出演の動画含む)
http://www.guinness-storehouse.com/en/Archive.aspx

ディアジオ社歴史
http://www.diageo.com/en-row/ourbusiness/Pages/History.aspx

ギネス
http://www.guinness.com/ja-jp/

ギネス・ストアハウス
http://www.guinness-storehouse.com/en/Index.aspx


◆タイトル2:ソーシャルメディア対社会的責任:アライアンス・ブーツ社の企業博物館ビジョン
タイトル原文2:Social media versus social responsibility: the Alliance Boots vision for a corporate museum
発表者氏名2:ソフィー・クラップ Sophie Clapp 
発表者所属2:アライアンス・ブーツ社(イギリス) Alliance Boots, UK

[発表者]
 UCL(University College London) 大学院のアーカイブズ・コースを1995年に修了後、ギネス社で働いた。その後ケンブリッジ大学ウィンストン・チャーチル卿文書の目録作成業務に携わり、以後ユニリーバ社アーカイブズを経て、ブーツ社に入社。現在まで12年間勤務している。5年前からアーカイブズと記録管理チームを率いている。

[発表]
 これまでブーツ・アーカイブズは社内の業務支援に焦点を当ててきた。そして現在アーカイブズとレコードマネジメントのチームはより広範な人々がブーツの歴史に関わることができるように、歴史と学習のためのセンターを立ち上げる構想を持っている。ノッティンガム市はブーツの歴史展示センター計画を支持している。ブーツ側も自分たちのブランドに、ノッティンガム市からの支持を結びつけることの意義を考えている。ブーツが地域の人々の生活をどのように変えてきたのか、という点が展示の中心になるだろう。
 今はまだ完全に構想の段階である。ヘリテージ・ロッテリー・ファンド(歴史遺産宝くじ基金、HLF)が獲得できるかどうかも実現のためのカギである。利用は有料を想定している。

[関連ページ]
アライアンス・ブーツ社
http://www.allianceboots.com/

アライアンス・ブーツ社歴史
http://www.allianceboots.com/our-history.aspx


◆タイトル3:アーカイブズ&デザインという考え方
タイトル原文3:Archives & design thinking
発表者氏名3:メラニー・ローゼンツベイク Melanie Rozencwajg
発表者所属3:アルチビウムラブ(イギリス&フランス) ARTCHIVIUMlab, UK & France

[発表者]
 デザイナーとして、「アーカイブズのアートとデザイン」というテーマを深く掘り下げてきた。メディア・デザインの分野でロンドン、モスクワ、パリで働いてきた。王立芸術学校卒業後、Jhava Chikliと共にARTCHIVIUMlabを創業、以来ミュージアムその他の顧客とともに協働作業を行ってきた。

[発表]
 アーカイブズは長期にわたって生き続けるブランドと企業の一番の財産である。デジタルへの移行は、古くてユニークな文書類を創造力に富み魅力的な方法で、広告に利用したり展示したりするための素晴らしいチャンスをもたらしている。ARTCHIVIUMlabはブランドと企業の歴史遺産をこれまでにない新しい方法で提示するクリエイティブな戦略を開発している。この発表ではこれまでに携わったいくつかの事例のデモンストレーションを行う。
 取り上げた事例は洋酒ブランドのヴーヴ・クリコの展示に対するコンサルティング、ニューヨークにあるオストロフスキー財団の家族アルバムコレクション(300枚の旅行写真)プロジェクト、チェコスロバキア・プラハにあるアートセンターDOXでの展示This Placeプロジェクトなど。

[関連ページ]
アルチビウムラブ
http://www.artchiviumlab.com/

オストロフスキー財団の家族アルバムコレクションプロジェクト
http://www.artchiviumlab.com/#/project_13

チェコスロバキア・プラハ アートセンターDOXでの展示This Place
http://www.dox.cz/en/exhibitions/this-place

□■□ 4月15日(火) □■□

◆ 第5セッション ◆
ソーシャルメディアの素晴らしい新世界
The brave new world of social media

司会:ポール・ラーサウィッツ(マッキンゼー社、アメリカ)
Paul Lasewicz, McKinsey & Company, USA


◆基調講演タイトル:ソーシャルメディアと文化:グローバル・ブランドがローカルな聴衆と出会うとき
タイトル原文:Social media and culture: when global brands are meeting with local audiences
講演者氏名:エリカ・アントワーヌ Erika Antoine
講演者所属:A・P モラー・マースク社(デンマーク) A. P. Moller-Maersk, Denmark

[講演者]
 両親はフランスとデンマーク出身。南米チリに居住経験あり。アフリカ、中東、インド亜大陸、南米といった新興市場を結ぶコンテナー海上輸送サービスのグローバル・ブランドであるサフマリン(Safmarine)で働いている。サフマリンはマースク・グループのグループ会社の一つ。サフマリンのソーシャルメディア戦略、社内広報、コンテンツ管理の責任者。

[講演]
 グローバルなブランドの持つ文化と語り口をローカルな地域共同体に適応させることは、ソーシャルメディアを介した今日のコミュニケーションで、最も難しい点の一つである。グローバル・ブランドは、新興諸国におけるソーシャルメディア利用者の爆発的増大と、ソーシャルメディアへの地域共同体を基礎とした関わり方という二つの進化に現在直面している。そのような文脈で、グローバル・ブランドがそのアイデンティティを失わずに、ローカルな聴衆に理解されることは可能か?文化は世界中におけるソーシャルメディアの利用に影響を与えているのか?新興諸国の潜在力を解き放つにはどうすればよいのか?このような点に関して、サフマリンを例に語る。サフマリンは世界100カ国以上で(アフリカ、中東、インド亜大陸、南米が主要ターゲット)で事業展開するグローバル・ブランド、またこれまでに比べ個人レベルで経験する海運スタンダードであるグローバル・ブランドとして、自分たちの文化を強調している。
 ところでブランドにとって大切なことは会話である。会話は顧客との関わりを生み出し、それが経験に導く。サフマリンの場合、他のブランドとの差異は、歴史であり、文化である。アジア太平洋地域や新興諸国ではソーシャルメディアの利用率が高い点に注目し、ソーシャルメディアを通じてブランドの浸透・拡散を図った。同時に、市場によってその成熟度が異なっている点にも留意した。

[関連ページ]
A・P モラー・マースク社
http://www.maersk.com/pages/default.aspx

マースク社ソーシャルメディア
http://www.maersk.com/Aboutus/Pages/SocialMedia.aspx

マースク社サフマリン
http://mysaf2.safmarine.com/wps/portal/!ut/p/c5/04_SB8K8xLLM9MSSzPy8xBz9CP0os3gjAxMjAwt3S19fN19nA08TPwMjCy8fQwMLM6B8pFm8AQ7gaEBAdzjIPjwqTCDyeMz388jPTdUvyI0wyDJxVAQAoRoxfg!!/dl3/d3/L2dJQSEvUUt3QS9ZQnZ3LzZfMjA0MjA4RzlNTUZNQzBJNE4wMjhKTDEwODY!/?WCM_GLOBAL_CONTEXT=/wps/wcm/connect/Safmarine-English/Safmarine/Home


◆タイトル1:ソーシャルメディア・コミュニケーションをどのように準備して実行するか
タイトル原文1:How to plan and implement your social media communications
発表者氏名1:トビー・ブラニング Toby Brunning
発表者所属1:ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド The Royal Bank of Scotland

[発表者]
 ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)で15年以上デジタル・マーケティングとコミュニケーションを担当している。プロフェッショナルなソーシャルメディア・キャンペーン、デジタル・プロジェクト管理、iPhoneとアンドロイド用アプリ開発等に関わってきた。

[発表]
 ソーシャルメディアを利用するのは一体何を目的とするのかをまずは明らかにする必要がある。そのあとにコンテンツを考え、どういうチャネル(回路)でコンテンツを送り出すのかという順番で進めるべきである。RBSではソーシャルメディアのアカウント数が1,800を超える。そのうちのいくつかのアカウントの紹介も行われた。

[関連ページ]
ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド
http://www.rbs.com/

ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド ヘリテージ・ハブ
http://heritagearchives.rbs.com/

ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・アーカイブズ
http://heritagearchives.rbs.com/use-our-archives.html

ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド ソーシャルメディア
http://www.rbs.com/news/social-media.html


◆タイトル2:現在進行中の対話:さまざまな回路を通じたコミュニケーションの試みの結果
タイトル原文2:The on-going dialogue: results from an attempt to communicate via various channels
発表者氏名2:ヘニング・モーゲン Henning Morgen
発表者所属2:A・P モラー・マースク社(デンマーク) A. P. Moller-Maersk, Denmark
[発表者]
 マースク社のグループ広報のジェネラル・マネジャー。アーカイブズ管理、歴史編纂、広報責任者。1998年にマースク社に入社。アーカイブズ資料に基づく社史関連文献を執筆している。

[発表]
 マースクブランドでのステークホルダーの参画度合いの増大に焦点を当てた「リサーチとコンテンツ」を届けることが、グループ広報部門の目標である。ソーシャルメディアに対するマースクの歴史関係の投稿を求める関係者(ステークホールダー)からの要望があったため、グループの歴史記録チームはソーシャルメディアに積極的に取り組むことになった。最初は既出のコンテンツを更新することから着手した。歴史記録チームは一連の歴史関連ストーリーを4カ月にわたってマースク社のソーシャルメディアに掲載していった。ストーリーは歴史記録チームによる「リサーチとコンテンツ」に基づくもので、目標達成(マースクブランドにおけるステークホルダーの参画を高めること)ができた。
 ソーシャルメディアによって、それまでは不可能であったステークホルダーとのコミュニケーションが可能になったことは明らかだが、例えばマースク側からの投稿に対する「いいね」の数やその意味を特定することは困難であるという経験もした。

[関連ページ]
A・P モラー・マースク社
http://www.maersk.com/pages/default.aspx

マースク社ソーシャルメディア
http://www.maersk.com/Aboutus/Pages/SocialMedia.aspx


◆タイトル3:MAST(c):携帯アーカイブズ標準化ツール
タイトル原文3:MAST(c): Mobile Archives Standardisation Tool
発表者氏名3:ミロバン・ミシク Milovan Misic
発表者所属3:世界知的所有権機関 World Intellectual Property Organisation

[発表者]
 1987年東アフリカのための地域情報プロジェクトを管理する国際情報専門の国連ボランティアとして働き始めた。1997年電子政府樹立に関し、カナダ政府の主要コンサルタントのひとりとして参加している。1999年に世界知的所有権機関(WIPO)に入職し、特許登録自動化のためのIT開発チームを指揮した。2001年より同機関の記録管理とアーカイブズ部門の長。
 プロジェクト管理、ナレッジマネジメント、記録管理、業務プロセスの設計、品質保証を専門とする。世界銀行、欧州復興開発銀行、IMFといった経済関係国際機関、世界食糧計画やWIPO、食糧農業機関といった人道主義的な国際連合機関、そしてカナダ政府のために働いてきた。WIPOでは最新の標準に対応した電子記録管理の導入を指揮した。
 2013年にはICAの専門部会の一つ国際機関アーアカイブズ部会(SIO)の支援を受け、ナイロビにある国連アフリカ地域本部の記録・アーカイブズ管理の近代化プロジェクトに着手している。
 1992年以来ICAに積極的に関わっており、現在SIOの部会長である。

[発表]
 MAST(c):携帯アーカイブズ標準化ツールとはISO標準に準拠したアンドロイドとアップルのプラットフォーム用携帯アプリ。MAST(c)プロジェクトはアフリカやカリブ海地域、南米など資源が限られた環境で働く記録とアーカイブズの実務家用に開発された実践的ツールである。モバイル技術の利用に付加的な機能が加わったもので、電子政府行政改革、アーカイブズの公開、デジタル記録の保存などを直接的にサポートするものである。
 アプリの主要部分は国際標準に完全に準拠した記録管理、アーカイブズ管理の実務用ツールである。オンライン・トレーニングやその他の有用なツールといった拡張機能も持つ。

[関連ページ]
世界知的所有権機関
http://www.wipo.int/portal/en/index.html

ICASIO運営委員リスト
http://www.ica.org/2758/steering-committee/sio-steering-committee.html

MASTRICA SIO問題解決のためのデジタル化戦略(PDF)
http://www.unog.ch/80256EDD006B8954/%28httpAssets%29/FE60497BA10B46B7C1257BF800417E2C/$file/Digitization-Strategy+to+a+Solution-ICA+SIO.pdf


◆ 第6セッション ◆
新しい発展とベストプラクティス事例研究(パート1)
New developments and best practice case studies (part 1)

司会:マイク・アンソン(イングランド銀行)
Mike Anson, Bank of England

基調講演タイトル:ソーシャルはリスキーか?
タイトル原文:Is Social Risky?
講演者氏名:マーク・フレスコ Marc Fresko
講演者所属:インフォサイト社(イギリス) Inforesight, UK

[講演者]
 情報管理の世界で「思想的指導者」とされる経営コンサルタント。1979年以来大小さまざまな組織のコンサルティングに関わり、その中には国立公文書館やその他のアーカイブズも含まれる。2013年には情報記録管理協会の最初のフェローに選ばれたほか、AIIM(情報画像管理協会)の功労賞をアメリカを拠点としないコンサルタントとして初受賞している。

[講演]
 ソーシャルなツールはさまざまな方法でさまざまな目的のために利用されうる。無料のものもあれば、有料のものもあるし、セキュリティがしっかりしたものもあれば、そうでないものもある。ソーシャルなツールが依存しているのは「クラウド・コンピューティング」である。一般には安全で、予測可能、確実なものと思われているが、それはかなり現実とは異なる。セキュリティの観点から言うと、個人情報の無断開示、機微に触れる貴重な情報の無断開示、情報アクセスの一時的喪失、情報の全損失、悪意のあるソフトによるウイルス感染、など安全面での問題があるほか、法定保存年限満了以前の情報流失など考慮すべきリスクが多々存在する。こういったリスクに対処する方法としては段階的なアプローチ(step-by-step approach)が必要という。個々のソーシャルなツールの利用に関して「何を使っているのか? なぜなのか?」を明確にしつつ、リスクとメリットを特定し、対処していくことが求められる。

[関連ページ]
インフォサイト社 スタッフ マーク・フレスコ
http://inforesight.co.uk/en/about-us/ourpeople.html


◆タイトル1:ハッピー・アニバーサリー:ユニリーバ社の最初のアプリを作る
タイトル原文1:H-app-y anniversary: creating Unilever Archives' first app
発表者氏名1:ジャネット・ストリックランド Jeannette Strickland
発表者所属1:ユニリーバ社(イギリス) Unilever plc, UK

[発表者]
 20年間ユニリーバ社アーカイブズに勤務。この会議の時点ではアート、アーカイブズ、記録管理部門の部長。会議後にユニリーバ社を退社し、フリーランスのコンサルタントとして働くことになっている。自治体アーカイブズに勤務後ユニリーバ社に入社。同社初の有資格のプロフェッショナル・アーキビスト。なお同社のアーカイブズは同社発祥の地であるポート・サンライトに専用の建物を2棟持っている。
 社内の業務のほか、ロンドン大学(UCL)の大学院コースの外部審査員であるほか、アーカイブズ・記録協会の資格認定チームのメンバーでもある。

[発表]
 ユニリーバ社のアーカイブズとレコードマネジメントのチームは創業125周年を記念して、同社アーカイブズの現在の所在地でもあり創業の地でもある「ポート・サンライト」をテーマにした初の会社史アプリを開発した。アプリの名称も「ポート・サンライト」である。これは1914年当時のポート・サンライトの地図を基にしたもので、リーバ・ブラザーズ商会の歴史と発展を紹介し、創業者ウィリアム・リーバの創業理念が工場や村の中に根付いていったことを示す内容である。リリースは2013年9月。
 発表ではアプリ開発のプロセス(デザイン、法的諸問題のクリア、IT、予算、アップルストアとのやりとりの日数など)のほか、課題や教訓(コンテンツの量、制作日数、著作権、定期的な会合、プロジェクト後の報告会議、手順の明確化など)の紹介が行われた。

[関連ページ]
創業125周年記念アプリ「ポート・サンライト」関連ページ
http://www.unilever.co.uk/?name=homefeature&item=6
http://www.unilever.co.uk/media-centre/pressreleases/2013pressreleases/PortSunlightApp.aspx
https://www.facebook.com/PortSunlight125 (Facebookページ)

アップル端末用ページ
https://itunes.apple.com/gb/app/port-sunlight/id700656724?mt=8

アンドロイド端末用ページ
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.Unilever.PortSunlight


◆タイトル2:バーチャルな手段のみでのアクセス
タイトル原文2:Access by virtual means alone
発表者氏名2:ビッキー・ストレッチ Vicky Stretch
発表者所属2:ネットワークレール社(イギリス) Network Rail, UK

[発表者]
 1998年にチェシャー・レコード・オフィス(公文書館)の閲覧室担当アシスタントとしてアーカイブズの世界で働き始めた。ウォーリック大学にあるBPアーカイブズで見習いアーキビストとして働いた後、リバプール大学でアーカイブズと記録管理の修士号を取得。国鉄博物館とボースウィック研究所(Borthwick Institute)のアーカイブズ・ハブ・プロジェクトに携わった後、ノース・ヨークシャー・カウンティ・アーカイブズのレコードマネジャーとなった。ここでは新しい記録管理プログラムと試験的な電子文書記録管理システム導入を行った。
 2008年にネットワークレール社がヨークにナショナル・レコード・センターを開設した時に同社に加わり、同社初のアーキビストとなった。同アーカイブズには現代のビジネス・アーカイブズのほか、英国の鉄道業草創期からの大規模な設計図アーカイブズも含む。同社のナショナル・レコード・グループの一員として、記録管理に助言を行うほか、鉄道証書登録簿の管理も行っている。
 アーカイブズ・レコード協会の企業記録部会議長を現在務めている。

[発表]
 ネットワークレール社は鉄道設備関連の会社。ネットワークレール社がレコードマネジメントとアーカイブズを重視するのは、安全で効率的な鉄道業を支援するための情報を提供するところにある。所蔵資料のうちの歴史的なエンジニアリング資料に限定してオンラインでのアクセスが可能である。この発表ではオンライン・サービス提供と、ソーシャルメディアを利用したネットワークレール・アーカイブの宣伝戦略に焦点をあてる。
 同社のナショナル・レコード・センターは非公開である。バーチャルなアーカイブでは、オープンで高い透明性を志向しているが、鉄道運行上の観点からの制限もある。このバーチャルなアーカイブは先人から受け継いだ遺産を記念して、この遺産を自分たちのいま現在に役立つものとすることを目指している。そして、現段階では、会社がステークホルダーとの関わりを強めるためのひとつの手段としても位置付けられている。
 今後の方向としては、定期的に新しいコンテンツを付け加える、イベントと連動させる、現在の会社の事業との繋がりを強める、既出のコンテンツを繰り返し宣伝する、などを考えている。

[関連ページ]
ネットワークレール社
http://www.networkrail.co.uk/

ネットワークレール社バーチャル・アーカイブ
http://www.networkrail.co.uk/VirtualArchive/


◆タイトル3:だからなぜ私たちはブログを求めるのか?始める前に問うておくべき質問
タイトル原文3:So why do we want a blog? the question to answer before getting started
発表者氏名3:ジャスティン・リンスタンリー=ブラウンJustine Winstanley-Brown
発表者所属3:ヨーク市文書館(イギリス) York City Archives, UK

[発表者]
 ヨーク市役所アーキビスト(市民の記録と公文書担当)。ヨーク大学と国会アーカイブズで研修を受けたほか、石油・ガス会社で電子文書管理システムのカスタマイズに関わったことがある。その後ヨークに戻り、12世紀(1155年)から1974年まで長期にわたって蓄積されてきた市民アーカイブズの目録作成プロジェクトに携わった。

[発表]
 イギリスの多くの公的なアーカイブズでは、ブログやソーシャルメディア利用を始めなければならないというプレッシャーを感じている。しかしなかなか始められないこともあれば、ブログが組織の資産というよりは重荷となっている例を見出すこともある。そこで発表者が提案するのは、「なぜブログページをほしいと思ったのか?」という質問を絶えず思い起こすことが肝要である、という点である。
 ゴールを達成するためのテクニックには次のようなものがある。通常のアクセス数の最大化、タグクラウドの利用などによってブラウジングを増やす、背景情報や用語集・用語解説のようなレファレンス知識は静的なページに置いて探しやすく共有しやすくする、所蔵コレクションのオンライン展示、ちょっとした動きあるいは大きな変化を記録するなど。
 さらに大切なことは、職員のジョブ・ディスクリプション(職務記述書、職務説明書)にブログ執筆を必ず含めることがある。こうすることによって、ブログ執筆が職務として公的なものになる。このほか担当者、担当を定めること、技術的なサポートの確保、デザインを一から考えるのか、すでにあるものを使うのか、といった点も重要である。一言で言うと「人や予算といったリソースをきちんと割り当て、リアリスティックであること」が求められる。

[関連ページ]
ヨーク市文書館(2014年5月より図書館とアーカイブズは市役所組織から分離されたということです)
https://www.exploreyork.org.uk/client/en_GB/default/?

◆タイトル4:ただのコミュニケーションではない:啓示。ウェスト・ヨークシャーとソーシャルメディア
タイトル原文4:Not just communication: revelation. West Yorkshire Archives and Social Media
発表者氏名4:ゲリー・ブラナン Gary Brannan
発表者所属4:ウェスト・ヨークシャー・アーカイブ・サービス(イギリス) 
West Yorkshire Archive Service, UK

[発表者]
 ウェスト・ヨークシャー・アーカイブ・サービス(WYAS)における電子・館外サービスのコーディネーター。WYASのソーシャルメディア、ウェブ・コンテンツ、遠方からの問い合わせサービス、eコマース、デジタル化を担当している。2006年から2012年までウェスト・ヨークシャーでアーキビストとして働いたが、そこではデジタル保存問題とソーシャルメディア・プロジェクトを特に重視した。

[発表]
 ウェスト・ヨークシャー・アーカイブズでは2009年からソーシャルメディアを利用している。当初はコミュニケーションと情報拡散のツールとしての利用であったが、次第にその役割・位置づけが変わり、現在ではこれまで地域の歴史に関わりがなかった人々と関わるためのツールとなっている。発表では1940年代の空襲時の写真資料や最近のオリンピック聖火リレーの熱狂を映し出す画像など、同アーカイブズの所蔵資料が数多く紹介された。

[関連ページ]
ウェスト・ヨークシャー・アーカイブ・サービス
http://www.archives.wyjs.org.uk/

◆ 第7セッション ◆
新しい発展とベストプラクティス事例研究(パート2)
New developments and best practice case studies (part 2)


司会:ソフィー・クラップ(アライアンス・ブーツ社)


◆タイトル1:その後ろの「チャッター」っていったい何?
タイトル原文1:What's all that 'Chatter' at the back?
発表者氏名1:クレア・タンストール Claire Tunstall
発表者所属1:ユニリーバ社(イギリス) Unilever plc, UK

[発表者]
 専門資格を持つレコードマネジャー(配布資料には「アーキビストの感性も併せ持つ」- a professionally qualified Records Manager with Archivist sensibilities - とあります)。1998年からリバプール大学、リバプール国立博物館美術館(National Museums Liverpool)、ユニリーバ社のアーカイブズ・レコードマネジメント部門で働く。ユニリーバ社での最近の担当は、キー・ステークホルダー・エンゲージメント(key stakeholder engagement:ステークホルダー・エンゲージメントとは「組織の決定に関する基本情報を提供する目的で、組織と一人以上のステークホルダーとの間に対話の機会を作り出すために試みられる活動」『日本語訳 ISO26000社会的責任に関する手引』)、構造化されていないデータと電子メールの管理、ユニリーバ社グローバル・リテンション・スタンダード。

[発表]
 「チャッター」はユニリーバ社が新たに導入した企業内でのソーシャルな協働のためのオンライン・ツールである。導入の目的は全従業員の間でのソーシャルな活動のハブとするためである。導入によって93,000人の従業員間のコミュニケーションや協働の仕方に大きな変化がみられた。アーカイブズ・レコードマネジメント部門での独自の利用の仕方も紹介。

[関連ページ]
ユニリーバ・チャット
http://www.unileverchat.com/

セールスフォース社(チャッタ―を提供)
http://www.salesforce.com/uk/


◆タイトル2:クラウドソーシング:文化セクターはデジタルな参加が持つパワーに準備ができているか
タイトル原文2:Crowdsourcing: is the cultural sector ready for the power of digital participation
発表者氏名2:レベッカ・アドキンソン Rebecca Atkinson
発表者所属2:博物館協会(イギリス) Museums Association, UK

[発表者]
 博物館協会のオンライン出版の編集者。10年間ジャーナリストとして働いた経験があり、とくにオンライン出版とオンライン・コミュニティの育成に取り組んできた。博物館協会ではデジタル・イノベーションに関して定期的に執筆したり、このテーマでの会議のプログラムの開発を行っている。デジタル・イノベーションに関しては、ミュージアム活動への参加を促進する一手段としてクラウドソーシングを位置付けている。

[発表]
 博物館美術館その他の文化機関は世界中で展示方法の開発やオンライン・データベースの改良のためにクラウドソーシングへ目を向けつつある。クラウドソーシングとは、不特定多数の人に業務を委託するという新しい雇用形態を指す。伝統的なボランティア活用と同様の便益をもたらすばかりでなく、一般の人々を組織の活動に関わらせる強力なツールとなりうる。プロジェクトを開発するにあたっては、人々がなぜ自分の時間を犠牲にしてクラウドソーシングに参加しようとするのか、その動機を理解することがカギとなる。

[関連ページ]
イギリス博物館協会
http://www.museumsassociation.org/home


◆タイトル3:ソーシャルであること:企業アーカイブズにとっての役割
タイトル原文3:Being social: a role for corporate archives
発表者氏名3:ポール・ラーサウィッツ Paul Lasciewicz
発表者所属3:マッキンゼー社(アメリカ)McKinsey & Company, USA

[発表者]
 2014年1月に著名なコンサルタント企業であるマッキンゼー社に入社、グローバル・アーカイブズ・プログラムの開発に着手した。1998年から2013年までの15年間、IBMの企業アーキビストを務めた。IBMで携わったさまざまな業務の中でも、2011年の100周年記念では戦略・戦術の両面で主要な役割を果たした。IBM入社前はエトナ保険会社の企業アーキビスト。

[発表]
 インターネット草創期と同様、ソーシャルメディアが登場し出したころは、その利用価値は漠然としていた。しかし時とともにそれが利用価値を持つものであるのが明らかになってきた。
 アメリカ企業の様々な取り組みや、このシンポジウムでの議論を通じて、ソーシャルメディアはブランドや評判といった企業の重要な資産に対して付加価値を与えるツールとして有用であることが理解されたと思う。このツールを使って、ブランド価値や評判の向上に貢献する作業を現場で行うのが企業アーキビストである。つまり、ソーシャルメディアは企業アーキビストに大きなチャンスを与えているのである。

[関連ページ]
マッキンゼー社
http://www.mckinsey.com/

マッキンゼー社歴史ページ
http://www.mckinsey.com/about_us/history

IBM社
http://www.ibm.com/us/en/

IBM社100周年記念
http://www-03.ibm.com/ibm/history/ibm100/us/en/?lnk=fai-icen-usen

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

[略称一覧]
ACA: Association of Canadian Archivists(カナダ・アーキビスト協会)
ARA: Archives and Records Association(アーカイブズとレコード協会)
ARC: ARC magazine: archives - records management - conservation
(SoAが発行する月刊ニュースレター)
ASA: Australian Society of Archivists(オーストラリア・アーキビスト協会)
BAC: Business Archives Council(ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BACS: Business Archives Council in Scotland
(スコットランド・ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BAS: Business Archives Section
(ビジネス・アーカイブズ部会:SAA内の部会)
CoSA:Council of State Archivists(米国・州文書館長評議会)
DCC: Digital Curation Center(英国デジタル・キュレーション・センター)
EDRMS:Electronic Document and Record Management System
(電子文書記録管理システム)
ERM:Electronic Record Management(電子記録管理)
ICA: International Council on Archives(国際文書館評議会)
LSE: London School of Economics and Political Science
(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)
MLA: Museums, Libraries and Archives Council
(英国 博物館、図書館、アーカイブズ評議会)
NAGARA: National Association of Government Archives and Records Administrators
(米国・全国政府アーカイブズ記録管理者協会)
NARA: National Archives and Records Administration
(米国 国立公文書館記録管理庁)
RIKAR: Research Institute of Korean Archives and Records
(韓国国家記録研究院)
RMS:Record Management System(記録管理システム)
SAA: Society of American Archivists(米国アーキビスト協会)
SBL: Section for Business and Labour Archives
(企業労働アーカイブズ部会、ICA内の部会)
SoA: Society of Archivists(イギリス・アーキビスト協会)
TNA: The National Archives(英国国立公文書館)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――

☆★ 編集部より:あとがき、次号予告 ★☆

2010年のSBLの会合でproactive、歴史マーケティング、ストーリー・テリング、CSRなどが注目されたのち、CSRはサステナビリティとして表現されることが多くなり、さらに今回の会議ではステークホルダー・エンゲージメントへの言及が何度かありました。ビジネス・アーカイブズの世界はアーカイブズの管理(移管・収集、整理、目録・DB作成、利用、情報発信など)を効率的に行うとともに、時々のビジネスの言葉に素早く反応し、適応していくことが求められると感じます。

☆~~~☆~~~☆~~~☆~~~☆~~~☆~~~☆

前号あとがきでご紹介した国際アーカイブズの日(6月9日)を記念した特設サイトがオープンしました。
http://www.internationalarchivesday.org/wordpress/?page_id=25

6月9日現在、諸外国のアーカイブズの投稿とともに、日本からは下記のアーカイブズ機関の所蔵資料画像が掲載されています。

上田市マルチメディア情報センター
http://www.internationalarchivesday.org/wordpress/?portfolio=376-2

京都府立総合資料館
http://www.internationalarchivesday.org/wordpress/?portfolio=kyoto-prefectural-libraries-and-archives

久喜市公文書館
http://www.internationalarchivesday.org/wordpress/?portfolio=kuki-archives-japan

国立公文書館
http://www.internationalarchivesday.org/wordpress/?portfolio=national-archives-of-japan

佐賀県公文書館
http://www.internationalarchivesday.org/wordpress/?portfolio=saga-prefectural-government-archives-japan

太宰府市公文書館
http://www.internationalarchivesday.org/wordpress/?portfolio=427-2

福井県文書館
http://www.internationalarchivesday.org/wordpress/?portfolio=fukui-prefectural-archives

「国際アーカイブズの日(6月9日)を記念した特設サイト」は、国境を越えて、アーカイブズ関係者のネットワークが存在することを示しているといえるでしょう。記録としてのアーカイブズはデジタルな環境によってさまざまに利用可能になりつつあることを感じさせる企画です。

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次号は2014年6月下旬発行予定です。どうぞお楽しみに。

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◆◇◆バックナンバーもご活用ください◆◇◆

http://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/index.html

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◆◇◆配信停止をご希望の方は次のメールアドレスまでご連絡ください◆◇◆

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◆◇◆〈渋沢栄一記念財団からのお知らせ〉◆◇◆

□「渋沢社史データベース」(略称:SSD) NEW!!
当財団実業史研究情報センターでは、2014年4月23日に「渋沢社史データベース」を公開しました。
http://shashi.shibusawa.or.jp

SSDは渋沢栄一が関係した会社の社史を中心に、社史の目次・索引・年表・資料編を検索することができるサイトです。今回は第1弾として約1,000冊の社史から抽出した約140万件のデータを搭載、2015年に第2弾として約500冊分を追加し、全部で約220万件のデータを搭載する予定です。データベースをさまざまな視点から紐解いて、経済活動や研究調査にご活用ください。


■『渋沢栄一を知る事典』(東京堂出版、2012)

2012年10月19日に公益財団法人渋沢栄一記念財団編『渋沢栄一を知る事典』が刊行されました。本書は渋沢栄一の事績を網羅的に解説した初めての事典となります。第1部では栄一の生涯と活動を100の項目に分けてわかりやすく紹介し、第2部では栄一をより深く理解するための資料と情報をまとめました。

なお、実業史研究情報センターでは、項目の執筆のほか第2部「資料からみた渋沢栄一」の編集を担当いたしました。ご高覧いただければ幸いです。
http://d.hatena.ne.jp/tobira/20121102/1351818423


□「企業史料ディレクトリ」:企業アーカイブズと企業史料の所在・概要ガイド

日本を代表する企業を中心とした企業アーカイブズと史料保存・学術研究機関合わせて30企業・団体・機関の概要、所蔵資料に関する情報を掲載しております。ぜひご覧ください。(2008年7月22日公開)
http://www.shibusawa.or.jp/center/dir/index.html


□実業史研究情報センター・ブログ「情報の扉の、そのまた向こう」

渋沢栄一、社史を始めとする実業史、アーカイブズや図書館に関連する情報をご紹介しています。文化資源に関わる東日本大震災と復興についての情報は「震災関連」カテゴリーに集約しています。
http://d.hatena.ne.jp/tobira/

「アーカイブズニュース」では公文書管理法に関する動向やアーカイブズのデジタル化、資料の発見・公開に関わるニュースを随時ご紹介しております。ブログ画面右側の「カテゴリー」にある「アーカイブズニュース」をクリックしてください。「アーカイブズニュース」として掲載した記事をまとめて一覧することができます。

・主なカテゴリーの紹介
http://d.hatena.ne.jp/tobira/20080203


□「社史に見る災害と復興」

2011年3月の東日本大震災に際し実業史研究情報センターでは、センター・ブログに「社史に見る災害と復興」というカテゴリーを新設しました。そこでは現在構築中の「社史索引データベースプロジェクト」の蓄積データを検索し、「災害と復興」に関する記事を含む社史について紹介しています。
http://goo.gl/WUE3b

災害の中で特に関東大震災についての社史記述をまとめたものが2012年12月にピッツバーグ大学図書館発行の電子ジャーナル「社史」に掲載されましたのでご紹介します。

The Great Kanto Earthquake as Seen in Shashi / Yuriko Kadokura
(社史に見る関東大震災 / 門倉百合子)
〔Shashi: the Journal of Japanese Business and Company History〕
http://shashi.pitt.edu/ojs/index.php/shashi/article/view/7

実業史研究情報センター・ブログ「情報の扉の、そのまた向こう」はほぼ毎日更新しております。どうぞご利用ください。


□「渋沢栄一関連会社社名変遷図」

渋沢栄一がどのような会社に関わったか、それが今にどうつながっているのか、一目でわかるように業種別にまとめて変遷図にしました。現在122図掲載中です。社名索引もありますので、どうぞご覧ください。またセンター・ブログのカテゴリー「社名変遷図紹介」も併せてご覧ください。なお上記『渋沢栄一を知る事典』第2部には、この社名変遷図のうち100図を掲載してあります。
http://www.shibusawa.or.jp/eiichi/companyname/index.html

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★渋沢栄一記念財団は2010年9月1日に「公益財団法人」になりました★

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ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信) No.51
2014年6月11日発行 (不定期発行)
【創刊日】2008年2月15日
【発行者】公益財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター
【編集者】公益財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター
      「ビジネス・アーカイブズ通信」編集部
【発行地】日本/東京都/北区
【ISSN】1884-2666
【E-Mail】
【サイト】http://www.shibusawa.or.jp/center/ba/index.html

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