ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信)

第48号(2013年12月26日発行)

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☆      □■□ ビジネス・アーカイブズ通信 □■□

☆      No.48 (2013年12月26日発行)

☆ 発行:公益財団法人 渋沢栄一記念財団 実業史研究情報センター

☆                        〔ISSN:1884-2666〕
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この通信では海外(主として英語圏)のビジネス・アーカイブズ(BA)に関する情報をお届けします。

海外BAに関わる国内関連情報も適宜掲載しております。

今号は行事情報1件、企業団体情報3件です。

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◆ 目次 ◆

[掲載事項の凡例とご注意]

行事情報:ビジネス・アーカイブズ・カウンシル(BAC)年次大会
 2013年11月7日 ブーツ・アーカイブズ ノッティンガム(イギリス)
 ◎大会テーマ:「お金をみせて!:ビジネス・アーカイブズのプロジェクトのために資金を確保する」

■企業団体情報:ブーツ・アーカイブズ [掲載準備中]

■企業団体情報:コカ・コーラ・アーカイブズ [掲載準備中]

企業団体情報:フォード・アーカイブズ

☆★ 編集部より:次号予告 ★☆

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[掲載事項の凡例]

・欧文の場合、日本語で読みやすいものになるように、タイトルははじめに日本語訳を、続いて原文を記します。
・人名や固有名詞の発音が不明の場合も日本語表記を添えました。便宜的なものですので、検索等を行う場合はかならず原文を用いてください。

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[ご注意]
・受信時にリンク先を示すURLが途中で改行されてしまう場合があります。通常のURLクリックで表示されない場合にはお手数ですがコピー&ペーストで一行にしたものをブラウザのアドレス・バーに挿入し、リンク先をご覧ください。

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■行事情報:ビジネス・アーカイブズ・カウンシル(BAC)年次大会
      2012年11月7日 ブーツ・アーカイブズ ノッティンガム (イギリス)

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◎大会テーマ:
「お金をみせて!:ビジネス・アーカイブズのプロジェクトのために資金を確保する」
Show me the money! Securing funding for business archive projects

http://www.businessarchivescouncil.org.uk/activitiesobjectives/conference/

毎年11月に開催されているビジネス・アーカイブズ・カウンシル(BAC)の年次大会は、今年はノッティンガムにあるブーツ社のブーツ・アーカイブズで11月7日(木)に開催されました。ウェブ上には当日の発表資料(パワーポイントによるスライド資料)が掲載されています。

【日時】2013年11月7日(木)
Thursday 7th November 2012

【会場】ブーツ・アーカイブズ
The Boots Archive, Thane Road, Nottingham, United Kingdom, NG90 4XY

【テーマ】「お金をみせて!:ビジネス・アーカイブズのプロジェクトのために資金を確保する」
Show me the money! Securing funding for business archive projects

今年の年次大会では、さまざまな機関におけるビジネス・アーカイブズのための資金獲得がテーマとなりました。資金確保に成功した事例のほかに、資金獲得のための実践的アドバイスや有用な情報提供が行われました。


【プログラム】

9:30 登録、コーヒー Registration and coffee

10:00-10:30 BAC年次総会 Business Archives Council AGM

10:30-10:40 休憩 Comfort break

10:40-10:45 開会の辞 Welcome and introduction to the conference

10:45-11:45 グループ・セッション(紅茶、コーヒー提供) 
Breakout session (with tea and coffee)

◆プレゼンテーション(1)
11:45-12:15
タイトル:歴史遺産に価値を与える:優良ビジネスを立ち上げる:ブーツ社の経験
タイトル原文:Putting a value on heritage - building a healthy business case, the Boots experience
発表者:ソフィー・クラップ Sophie Clapp
所属等:企業アーキビスト、ブーツ社、英国 Company Archivist, Boots UK
発表資料:
http://www.businessarchivescouncil.org.uk/materials/clapp2013.pptx/
一行解説:スライド25枚。「価値を示しなさい」(スライド3)、「価値を立証しなさい」(4)、「明確なビジョンを持ちなさい」(6)、「専門家に尋ねなさい」(7)、「同僚に相談しなさい」(8)、「社内のステークホルダーを特定しなさい」(10)...といったアドバイスが提示されています。スライド5「なぜ??????????????」では次の点が指摘されています。
・「過去というものは、その定義からして成功物語である」
・文化と価値を伝え、つなげる
・名声をサポートし、高める
・ブランド価値の向上を呼び起こす
・CSRの実績の上に積み上げる
・取引先、訪問者、VIPを巻き込む
・プロダクトイノベーションを喚起する
・地元や全国のコミュニティグループとつながる
・自分たちの過去から学ぶことによって戦略を特徴づける
・その会社が素晴らしい職場であることを宣伝する
・われわれの専門性/価値の長期性を示す
以上、アーカイブズが親企業にどのように貢献できるかを示しています。


◆プレゼンテーション(2)
12:15-12:45:
タイトル:スタンダード・チャータード銀行:「世界を知る機会」:ロンドン・メトロポリタン・アーカイブズとの連携プロジェクト
タイトル原文:Standard Chartered Bank: 'Windows on the World'a partnership project with London Metropolitan Archives
発表者1:スーザン・ジェントルズ Susan Gentles
発表者2:エイミー・プロクター Amy Proctor
所属等:スタンダード・チャータード銀行アーキビスト Archivists,
Standard Chartered Bank
発表資料:
http://www.businessarchivescouncil.org.uk/materials/standard2013.pptx/
一行解説:スライド10枚。スタンダード・チャータード銀行アーカイブズがロンドン・メトロポリタン・アーカイブズの協力を得て所蔵アーカイブズ資料を整理した事例報告です。
詳しくは下記ページをご覧ください。
http://www.cityoflondon.gov.uk/things-to-do/visiting-the-city/archives-and-city-history/london-metropolitan-archives/the-collections/Pages/Standard-Chartered-Bank-archives.aspx


12:45-13:45: 昼食 Lunch


◆プレゼンテーション(3)
13:45-14:15:
タイトル:チャンス:たくさん資金を集めよう
タイトル原文:Opportunities: let's make lots of money
発表者:エイドリアン・スティール Adrian Steel
所属等:英国郵政博物館&文書館館長
発表資料:
http://www.businessarchivescouncil.org.uk/materials/steel2013.pptx/
一行解説:スライド25枚。スライド2、11に「ファンドレイジング(予算確保、財源獲得)とは、人を見つけ、ニーズを見つけ、彼らに会うこと」とまとめられています。スライド12「人を見つける...」には、足を使う(legwork)こと、組織内の賛同者を利用すること(Use champions at your own organisation)といった記述が見えます。参考になりますね。


◆プレゼンテーション(4)
14:15-14:45
タイトル:関係を強化する:ウェールズでのビジネス・アーカイブズ向け資金調達への共同アプローチ
タイトル原文:Forging Links: a collaborative approach to funding for business archives in Wales
発表者:Stacy Capner ステイシー・ケイプナー
所属等:スウォンジー大学リチャード・バートン・アーカイブズ、ウェールズのためのビジネス・アーカイブズ・ディべロップメント・オフィサー
Business Archives Development Officer for Wales, Richard Burton Archives, Swansea University
発表資料:
http://www.businessarchivescouncil.org.uk/materials/capner2013.pptx/
一行解説:スライド12枚。スライド5に「人と話すことが決定的に大事」とあります。プレゼンテーション(3)での指摘に通じます。


14:45-15:15 紅茶、コーヒー Tea and Coffee


◆プレゼンテーション(5)
15:15-15:45
タイトル:財源を探す:ビジネス・アーカイブズの場合
タイトル原文:Finding funding: the case for business archives
発表者:メリンダ・ホーントン Melinda Haunton
所属等:国立公文書館プログラム・マネージャー(認証評価)
Programme Manager (Accreditation), The National Archives
発表資料:
http://www.businessarchivescouncil.org.uk/materials/haunton2013.ppt/
一行解説:スライド18枚。英国におけるアーカイブズへの助成の仕組みの全体像と助成獲得に関するアドバイスが示されています。


◆パネルセッション Panel Session
15:45-16:45
司会:マイク・アンソン Mike Anson
所属等:イングランド銀行 Bank of England
内容:宝くじ歴史遺産ファンド(Heritage Lottery Fund)、国立公文書館目録作成助成プログラム(The National Archives Cataloguing Grants Programme)、ビジネス・アーカイブズ・カウンシルといった資金提供機関の代表者に対する会場にいる参加者の質問を受け付ける。またブーツ・アーカイブズのアーキビスト ソフィー・クラップが社内における予算確保とアーカイブズに対する理解増進に関する発表を行い、これについて議論する。
参考資料:
http://www.businessarchivescouncil.org.uk/materials/panel2013.pptx/
一行解説:スライド9枚。ファンドレイジングに関するビジネス・アーカイブズ関係者向け調査結果(回答数47)の分析が興味深いです。回答からは助成申請先や申請を成功させるコツ、失敗要因といったものがうかがえます。


[関連ページ]
ビジネス・アーカイブズ・カウンシル(BAC)
http://www.businessarchivescouncil.org.uk/

マネージング・ビジネス・アーカイブズ(MBA)
http://www.managingbusinessarchives.co.uk/


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■企業団体情報:ブーツ・アーカイブズ

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[掲載準備中]

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■企業団体情報:コカ・コーラ・アーカイブズ

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[掲載準備中]

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■企業団体情報:フォード・アーカイブズ

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◎フォード・アーカイブズ・オンライン・コレクション
http://collections.thehenryford.org/index.aspx

「デトロイト・フリー・プレス」オンライン版に2013年12月23日付で掲載された記事によると、ミシガン州ディアボーンに本社を置く自動車メーカー・フォード社のアーカイブズは今月12日に50年以上ぶりにジャーナリストたちを内部に招待しました。フォード・アーカイブズには書架延長1万6,000フィート、約1,400万件の記録資料が収蔵されています。
http://www.freep.com/article/20131212/BUSINESS/312120161/Ford-set-digitize-material-from-its-archives-an-online-museum

同日付のフォード社メディアセンターのニュースによると、2014年初から、フォード・アーカイブズは所蔵資料の一部のオンライン提供を始めるということです。
https://media.ford.com/content/fordmedia-mobile/fna/us/en/news/2013/12/12/ford-archives--the-henry-ford-to-make-more-ford-history-accessib.html

オンライン提供のためにデジタル化された資料の一部はすでに、同社の博物館施設であるThe Henry Ford サイトで公開されています。
http://collections.thehenryford.org/index.aspx

現在アクセス可能なデジタル資料は22,705件(2013年12月25日現在)です。同ページは自由に閲覧できるだけでなく、簡単な手続き(ユーザー名とパスワードを登録)すると、自分で選んだ資料の組み合わせによるオンライン展示を作り出し、公開することも可能です。「ヘルプ」のページに使い方が説明されています。
http://collections.thehenryford.org/CollectionHelp.aspx

◇「ヘルプ」のページの説明◇

1. Browse the collections コレクションを閲覧する
 自由にコレクションを閲覧することができます。

2. Register or Sign in 登録またはサインインする
 自分の好きな組み合わせ(sets)を作ったり(Online Collections)、これをウェブ上で公開する(Exhibit Builder)ために、ユーザー名とパスワードを登録します。

3. Create sets 組み合わせを作る
 "Create a New Set" ボタンを押して新しい組み合わせを作り、タイトルをつけることができます。チェックボックスをチェックすると、その組み合わせをウェブ公開できます。

4. Add notes 注を加える。
 組み合わせに選んだ個々のアイテムに対して、ストーリー、知識、アイデアなどを注として書き込むことができます。

5. Share your collection コレクションを共有する。
 組み合わせの下部にある"SHARE THIS COLLECTION" ボタンを押すと、メールやSNSサービス(Twitter、Facebookなど)を介して、友だちや家族と共有することができます。

6. Take it to the next level: Exhibit Builder 次のレベルに進む:「展示ビルダー」
 これはThe Henry Fordが開発したオンラインによる教育用のモジュールで、自分でウェブ展示を作り世界に公開するためのツールです。「展示ビルダー」専用ページもあります。
 http://collections.thehenryford.org/ExhibitHome.aspx


◇キーワード検索、クリエイティブ・コモンズ◇
http://collections.thehenryford.org/Collection.aspx
この画面上部のBrowse the collectionsをクリックすると、画面下部にRelated Keywordsというタグクラウドが現れます。

Advertisements、Automobiles、 Automotive (non-Ford) Advertisements collection、 Automotive Product Literature collection...といったキーワード文字列が大小さまざまに浮かんでいるように見えます。この中には、Prius automobile やToyota Motor Salesといった日本メーカー関係のキーワードも含まれます。試しにPrius automobileをクリックしてみると、7件の資料がヒットします(2013年12月26日現在)。

Toyota Prius Hybrid Advertisement, 2002 というポップアップウィンドウ内にはこの資料に関するメタデータが記述されています。それによるとこの広告は、2002年7月に作られたもので作成者(Creator)はToyota Motor Sales, U.S.A., Inc.とあります。ポップアップウィンドウ内の左側には、この資料の名称の下に THF205089 Creative Commons License BY-NC-ND, http://www.thehenryford.org/copyright.aspx という表示が見えます。BY-NC-NDの部分は、作品を複製、頒布、展示、実演を行うにあたり、著作権者の表示を要求し、非営利目的での利用に限定し、いかなる改変も禁止することを表しています。

このサイトの著作権に関する情報は下記をご覧ください。
http://www.thehenryford.org/copyright.aspx


◆フォード・アーカイブズ基本情報◆
出典:アメリカ・アーキビスト協会ビジネス・アーカイブズ部会作成のディレクトリ(SAAディレクトリ)
http://www2.archivists.org/groups/business-archives-section/directory-of-corporate-archives-in-the-united-states-and-canada-e-f (原文はリンク先を参照してください)

会社名:Ford Motor Company

名称:Ford Industrial Archives

住所:
Schaefer Court - Suite 180
14441 Rotunda Drive
Dearborn, MI 48120

コンタクト:Elizabeth Adkins, Manager of Archives Services; Darleen Flaherty, Assistant Corporate Archivist
(編者注:Elizabeth Adkinsは2009年にフォード社を離れ、現在はワシントンDC郊外のIT関連企業CSC社のグローバル情報管理部門の責任者です。現在のフォード・アーカイブズではDean Weber氏がマネージャー職にあります。そのためSAAディレクトリのこの部分は少なくとも2009年以前の情報と言えます。)

電話:313-845-0556

Fax: 313-248-4921

業種:自動車製造業

時間:月〜金 午前8時〜午後4時半

アクセス(利用)条件:利用ポリシーを現在検討中 Access policy currently under review.

所蔵資料:1903年〜現在まで。1950〜1980の期間のものが大量。

総量:7,000 立法フィート

説明:コレクションの大部分は次のようなもの。役員間の通信と国際に関する記録。役員スピーチに関する大きなコレクション。社内報と社内定期刊行物。フォード社の事業、プログラム、建物に関する小規模コレクションが多数あり。1964年にフォード社のアーカイブズ資料はThe Henry Ford 博物館アーカイブズに寄贈された。この博物館にはフォード社の初期の記録(1903〜1950年の時期)を大量に含む。


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[略称一覧]
ACA: Association of Canadian Archivists(カナダ・アーキビスト協会)
ARA: Archives and Records Association(アーカイブズとレコード協会)
ARC: ARC magazine: archives - records management - conservation
(SoAが発行する月刊ニュースレター)
ASA: Australian Society of Archivists(オーストラリア・アーキビスト協会)
BAC: Business Archives Council(ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BACS: Business Archives Council in Scotland
(スコットランド・ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BAS: Business Archives Section
(ビジネス・アーカイブズ部会:SAA内の部会)
CITRA: International Conference of the Round Table on Archives
(アーカイブズに関する国際円卓会議:ICAの年次会議)
CoSA:Council of State Archivists(米国・州文書館長評議会)
DCC: Digital Curation Center(英国デジタル・キュレーション・センター)
EDRMS:Electronic Document and Record Management System
(電子文書記録管理システム)
ERM:Electronic Record Management(電子記録管理)
ICA: International Council on Archives(国際文書館評議会)
LSE: London School of Economics and Political Science
(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)
MLA: Museums, Libraries and Archives Council
(英国 博物館、図書館、アーカイブズ評議会)
NAGARA: National Association of Government Archives and Records Administrators
(米国・全国政府アーカイブズ記録管理者協会)
NARA: National Archives and Records Administration
(米国 国立公文書館記録管理庁)
RIKAR: Research Institute of Korean Archives and Records
(韓国国家記録研究院)
RMS:Record Management System(記録管理システム)
SAA: Society of American Archivists(米国アーキビスト協会)
SBL: Section for Business and Labour Archives
(企業労働アーカイブズ部会、ICA内の部会)
SoA: Society of Archivists(イギリス・アーキビスト協会)
TNA: The National Archives(英国国立公文書館)

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☆★ 編集部より:あとがき、次号予告 ★☆

今号でご紹介したコカ・コーラ・アーカイブズのフィル・ムーニー氏は、アメリカにおける企業アーカイブズ業界を長らくリードしてこられました。本文中でも紹介したように、企業のアーキビストはアーカイブズを社内外にセールスする存在であり、アーカイブズをセールスすることが、歴史遺産を梃子にコーポレートとその製品のセールスにつながると早くから明快に説いてこられました。今年の3月で定年を迎えられましたが、ウェブ上では相変わらず健在です。新ディレクターのライアン氏は国際アーカイブズ評議会企業労働アーカイブズ部会(ICA/SBL)にも運営委員として関わって行くということですので、コカ・コーラ・アーカイブズに関しては今後さらに詳しくお伝えすることができるのではと考えております。

コカ・コーラ・アーカイブズ、フォード・アーカイブズのご紹介の中で興味深く感じたのは、視聴者(消費者)とのインタラクティブなやり取りを重視している点です。SNSへの投稿機能を通じた交流はもちろんですが、さらに視聴者側からのデータのアップロード(コカ・コーラ)、視聴者がオンライン展示をキュレーションしてウェブ公開する(フォード)などの仕掛けが見られます。企業からの一方的な情報発信ではなく、視聴者との相互的な交流を重視しています。ムーニー氏が動画の中で語っているように、企業活動から生み出され消費される製品は、消費者の人生の記憶と結びつき大切な思い出を形成します。この心の働きをアーカイブズ資料が媒介するという点を、両社は重視していると言えます。

カナダ、オーストラリアといった地域では、公文書管理においてデジタル化推進と紙媒体による記録保存システム停止への動きが急速に進んでいます。そこに住む人々の地理的条件(集落が密集していない、町と町が離れている等)がデジタル化推進の原動力のひとつと指摘する声もあります。ウェブ技術を使ったインタラクティブな企業アーカイブズページの構築にも、そのような要因があるのかもしれません。

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編集部は先週大阪で開催された「映像資料の活用を語るつどい」に参加しました。
http://d.hatena.ne.jp/l-library/20131216/1382159521

会合の中で紹介された科学映像館(ウェブ上で科学映像を配信)では、フィルムの劣化や制作会社の消滅などさまざまな理由から埋もれていた科学映像を掘り起こし、原版フィルムから高画質のデジタル化(HD化)変換した画像をウェブ上で無料配信しています。
http://www.kagakueizo.org/
(映像視聴にはMicrosoft Silvelightのインストールが必要です。科学映像館サイトからダウンロードができます。)

同科学館のサイトポリシーによると「配信映画の著作権はそれぞれの版権保持者に帰属し、当サイトでは配信許諾を受け配信を行って」おられるということで、会合では記録映像を保管する会社と、科学映像館の運営母体であるNPO法人科学映像館を支える会との間で結んでいる「記録映像の保存と活用に関する契約書」を拝見することができました。同契約書には、「国立国会図書館における本作品のデジタル復元データの保管、同館施設内での閲覧並びに著作権法による著作権及び著作隣接権の保護期間が終了したデータの同館が運営するウェブサイトにおけるインターネットを通じた配信のため、本作品のデジタル復元データ及びメタデータを格納したDVD-Rを作成し、同館に提供する」という条項が含まれています。デジタルデータをパッケージ化して、国立国会図書館に納本、保存と(著作権及び著作隣接権保護期間終了後の)将来の活用を保障するという部分は、収集アーカイブズとしての国立国会図書館の役割を再認識させるものでした。

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次号は2014年1月中旬発行予定です。どうぞお楽しみに。

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◆◇◆バックナンバーもご活用ください◆◇◆

http://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/index.html

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◆◇◆配信停止をご希望の方は次のメールアドレスまでご連絡ください◆◇◆

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◆◇◆〈渋沢栄一記念財団からのお知らせ〉◆◇◆

■『渋沢栄一を知る事典』(東京堂出版、2012)

2012年10月19日に公益財団法人渋沢栄一記念財団編『渋沢栄一を知る事典』が刊行されました。本書は渋沢栄一の事績を網羅的に解説した初めての事典となります。第1部では栄一の生涯と活動を100の項目に分けてわかりやすく紹介し、第2部では栄一をより深く理解するための資料と情報をまとめました。

なお、実業史研究情報センターでは、項目の執筆のほか第2部「資料からみた渋沢栄一」の編集を担当いたしました。ご高覧いただければ幸いです。
http://d.hatena.ne.jp/tobira/20121102/1351818423

□「企業史料ディレクトリ」:企業アーカイブズと企業史料の所在・概要ガイド

2008年7月22日公開いたしました。日本を代表する企業を中心とした企業アーカイブズと史料保存・学術研究機関合わせて30企業・団体・機関の概要、所蔵資料に関する情報を掲載しております。ぜひご覧ください。
http://www.shibusawa.or.jp/center/dir/index.html

□実業史研究情報センター・ブログ「情報の扉の、そのまた向こう」

渋沢栄一、社史を始めとする実業史、アーカイブズや図書館に関連する情報をご紹介しています。文化資源に関わる東日本大震災と復興についての情報は「震災関連」カテゴリーに集約しています。
http://d.hatena.ne.jp/tobira/

「アーカイブズニュース」では公文書管理法に関する動向やアーカイブズのデジタル化、資料の発見・公開に関わるニュースを随時ご紹介しております。ブログ画面右側の「カテゴリー」にある「アーカイブズニュース」をクリックしてください。「アーカイブズニュース」として掲載した記事をまとめて一覧することができます。

・主なカテゴリーの紹介
http://d.hatena.ne.jp/tobira/20080203

□「社史に見る災害と復興」

2011年3月の東日本大震災に際し実業史研究情報センターでは、センター・ブログに「社史に見る災害と復興」というカテゴリーを新設しました。そこでは現在構築中の「社史索引データベースプロジェクト」の蓄積データを検索し、「災害と復興」に関する記事を含む社史について紹介しています。
http://goo.gl/WUE3b

災害の中で特に関東大震災についての社史記述をまとめたものが2012年12月にピッツバーグ大学図書館発行の電子ジャーナル「社史」に掲載されましたのでご紹介します。

The Great Kanto Earthquake as Seen in Shashi / Yuriko Kadokura
(社史に見る関東大震災 / 門倉百合子)
〔Shashi: the Journal of Japanese Business and Company History〕
http://shashi.pitt.edu/ojs/index.php/shashi/article/view/7

実業史研究情報センター・ブログ「情報の扉の、そのまた向こう」はほぼ毎日更新しております。どうぞご利用ください。

□「渋沢栄一関連会社社名変遷図」

渋沢栄一がどのような会社に関わったか、それが今にどうつながっているのか、一目でわかるように業種別にまとめて変遷図にしました。現在122図掲載中です。社名索引もありますので、どうぞご覧ください。またセンター・ブログのカテゴリー「社名変遷図紹介」も併せてご覧ください。なお上記『渋沢栄一を知る事典』第2部には、この社名変遷図のうち100図を掲載してあります。
http://www.shibusawa.or.jp/eiichi/companyname/index.html

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★渋沢栄一記念財団は2010年9月1日に「公益財団法人」になりました★

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ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信) No.48
2013年12月26日発行 (不定期発行)
【創刊日】2008年2月15日
【発行者】公益財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター
【編集者】公益財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター
「ビジネス・アーカイブズ通信」編集部
【発行地】日本/東京都/北区
【ISSN】1884-2666
【E-Mail】
【サイト】http://www.shibusawa.or.jp/center/ba/index.html

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