ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信)

第41号(2012年11月6日発行)

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☆      □■□ ビジネス・アーカイブズ通信 □■□

☆       No.41 (2012年11月6日発行)

☆ 発行:公益財団法人 渋沢栄一記念財団 実業史研究情報センター

☆                        〔ISSN:1884-2666〕
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この通信では海外(主として英語圏)のビジネス・アーカイブズ(BA)に関する情報をお届けします。

海外BAに関わる国内関連情報も適宜掲載しております。

今号は行事情報1件です。

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◆ 目次 ◆

[掲載事項の凡例とご注意]

■行事情報:国際アーカイブズ評議会(ICA)大会 8月20日-24日
        ブリスベン(オーストラリア)
  ◎大会テーマ:「変化の風:持続可能性、信頼、アイデンティティ」
        ビジネス・アーカイブズ関係専門プログラム

☆★ 編集部より:次号予告 ★☆

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[掲載事項の凡例]

・欧文の場合、日本語で読みやすいものになるように、タイトルははじめに日本語訳を、続いて原文を記します
・人名や固有名詞の発音が不明の場合も日本語表記を添えました。便宜的なものですので、検索等を行う場合はかならず原文を用いてください。

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[ご注意]
・受信時にリンク先を示すURLが途中で改行されてしまう場合があります。通常のURLクリックで表示されない場合にはお手数ですがコピー&ペーストで一行にしたものをブラウザのアドレス・バーに挿入し、リンク先をご覧ください。

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■行事情報:国際アーカイブズ評議会(ICA)大会 8月20日-24日 
        ブリスベン(オーストラリア)
  ◎大会テーマ:「変化の風:持続可能性、信頼、アイデンティティ」
          ビジネス・アーカイブズ関係専門プログラム

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◎大会テーマ:「変化の風:持続可能性、信頼、アイデンティティ」
Climate of change: sustainability, trust, identity
http://www.ica2012.com

4年に1回開催されるICAの大会(congress)は今年8月オーストラリアのブリスベンで開催されました。主催者はICA、オーストラリア政府とオーストラリア国立公文書館。大会テーマは「変化の風」(climate of change、訳は後述の日本の国立公文書館ウェブサイトにならいました)。これを3つの小テーマ「持続可能性」(sustainability)、「信頼」(trust)、「アイデンティティ」(identity)を通じて検討しました。すでに日本の国立公文書館のサイトに同館の「第17回ICAブリスベン大会等出張報告」が掲載されています。
http://www.archives.go.jp/news/121012_01.html

本通信ではビジネス・アーカイブズに関連する専門プログラム4セッションの概要をご紹介します。

【発表資料一覧】
http://www.ica2012.com/program/full-papers.php

【ビジネス・アーカイブズに関連する専門プログラム】

◆8月21日 14:00-14:30
タイトル:レコードキーピング:企業の社会的責任の証拠か?
原題:Recordkeeping: the evidence base for corporate social responsibility?
発表者:インネッケ・デセルノ Ineke Deserno
所属等:北大西洋条約機構(NATO)アーキビスト Archivist, North Atlantic Treaty Organization (NATO)
[概要]
発表はデセルノ氏の博士論文のためのリサーチの途中経過の報告でした。グローバル企業が発行する「サステナビリティ・レポート」は企業が社会、経済、環境に影響を与える活動や決定に関する情報を提供してくれます。記録は企業活動と決定に関する証拠なので、レコードキーピングの原則とプログラムは、サステナビリティ報告業務における重要な要素です。しかしながら現時点では企業は持続可能な活動を支援するために、レコードキーピング・プログラムを使用していないし、さらに重要なことは記録に関わる専門職の人々がこれらの活動に十分に関わっていない点にあります。このペーパーでは、CSRにおける記録管理の役割と、記録がサステナビリティ報告に寄与するものかどうかという問いを検討しています。デセルノ氏はウェブ上で公開されている各社のサステナビリティ報告を基にしつつ、関係者へのインタビューを行い、研究を進めています。

暫定的な結論として、記録の専門家たち、特に企業で働く記録プロフェッショナルは、組織の業務に積極的に関わり、それぞれの業務過程の中に、記録管理・レコードキーピングに必要な要件を組み入れるべきであることを示唆しています。そして、今こそCSRのための効果的なレコードキーピング体制を確立すべき時であると結論づけています。

[編注]
「サステナビリティ・レポート」は、企業によっては「CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)レポート」や「ESG(Environmental, Social and Governance:環境・社会・ガバナンス)レポート」とも呼ばれます。上に記したように、企業の過去と現在の意思決定と事業活動が社会と環境にどのようなインパクト・影響を与えているかを述べた報告書です。

[発表者]
デセルノ氏はUNHCR、IOC、WHOといった国際機関勤務を経て、2010年よりブリュッセルのNATO本部アーカイブズでアーキビストとして勤務。18年にわたって記録管理・アーカイブズ管理に携わってこられました。オランダで大学院修士課程終了後、同国でアーカイブズに関する教育を受け、さらにカナダのブリティッシュ・コロンビア大学でアーカイブズと記録管理に関する大学院レベルの修了証書を取得、現在はオーストラリアのモナシュ大学の博士課程に在籍中です。休暇期間にブリュッセルから渡豪して研究を続けているというお話でした。

[発表資料]
http://www.ica2012.com/files/data/Full%20papers%20upload/ica12final00197.pdf

◆8月22日 15:30-16:15

タイトル:フランス電力会社とフランス国鉄:アーカイブズと企業アイデンティティ
原題:EDF and SNCF: Archives and Corporate Identity
発表者1:ウスマン・バイエ Ousmane Mbaye
所属等1:EDF記録・アーカイブズ・複写・デジタル化部門長 Head of Records, Archives, Reprography, Digitalization Business Unit, EDF
発表者2:アンリ・ズュベール Henri Zuber
所属等2:SNCFアーカイブズ&ドキュメンテーション部門ディレクター
Directer, Archives and Documentation Service, SNCF
[概要]
フランス国鉄(SNCF)とフランス電力(EDF)はどちらも第二次世界大戦後、公益事業に携わる国有会社として運営されてきました。しかし、近年独占は崩れ、競争的環境に置かれています。両者のアーカイブズ部門は、非現用記録であるアーカイブズ管理と、現用記録の記録管理の両者を担当しています。またアーカイブズは一般公開されています。さらに両社とも、ISO15489の考えを受け入れつつ、記録と情報、とりわけ電子記録の増大、2008年の新しいフランス・アーカイブズ法への対処という共通の課題を持っています。今日アーカイブズは重要な記録の組織化と利活用とともに、企業アイデンティティ構築のために、経営トップから期待を寄せられているということです。

SNCF(フランス国鉄)で特に注目されたのは、最近の第二次世界大戦期の記録に関する取り組みです。近年、SNCFはこの時期にショアー(ユダヤ人虐殺)に関与していたことが取りざたされるようになり、2010年にはギヨーム・ペピ(Guillaume Pepy)同社社長がこれを認めています。1992年に同時期に関連するアーカイブズ収集に着手し、1995年にル・マン市にアーカイブズ・センターを設置、96年にはここで記録資料を一般公開しています。さらに2011年には、1939年〜45年の記録を全てデジタル化して、今年2012年1月にパリ、エルサレム、ワシントンのホロコースト博物館へ寄贈、さらに3月にはすべてオンラインアクセスが可能になりました。プレスリリースによれば、これは組織の透明性の観点からの長期にわたる一貫したアプローチ、ということです。記録を公開する姿勢が、企業の透明性へのコミットメントというアイデンティティに結び付くという事例です。

[発表者]
バイエ氏はフランス国立古文書学院と同文化遺産学院修了。2006年以来、フランス電力会社でアーカイブズ業務に携わってきました。2010年にアーカイブズ長に任命され、2011年からは記録遺産部門の責任者も務めています。フランス・アーキビスト協会(AAF)企業アーカイブズ部会の運営委員です。ズュベール氏は国立古文書学院修了後、フランス政府公文書館局(1984-1987)、フランス外交アーカイブズに勤務。パリ交通公団でアーカイブズを立ち上げて指導的役割を果たしました(1990-1997、2000-2004)。1997年から2000年にかけてはフランス国立公文書館の閲覧室責任者、2004年から2006年まではフランス法務省アーカイブズ長でした。2006年からはフランス国鉄のアーカイブズ&ドキュメンテーション部門を率いています。AAF企業アーカイブズ部会長(2001-2004)を経て、2004年から2007年までの間AAF会長。AAFを代表してICAの専門職団体部会(SPA)の運営委員を務め、2009年からは同部会会長です。ICA本体の執行役員兼ICA副会長です。

[発表資料]
http://www.ica2012.com/files/data/Full%20papers%20upload/ica12Final00211.pdf

◆8月22日 16:15-16:45
タイトル:eアーカイブズ:世界銀行の記憶プロジェクト
原題:eArchives: Memory of the World Bank Project
発表者1:アーリーン・カンネイタ・シード Arleen Cannata Seed
所属等1:世界銀行 The World Bank
発表者2:ジャンヌ・クレーマー=スミス Jeanne Kramer=Smyth
所属等2:世界銀行 The World Bank
[概要]
世界銀行は2010年7月に情報アクセスポリシーを改定した結果、所蔵記録を一般に公開する環境が整いました。それまではほとんどが紙ベースの資料で、利用できるのは世界銀行のあるワシントンDCを物理的に訪問できる研究者に限られていました。しかし新しい情報アクセスポリシーを実現するため、同行は「世界銀行の記憶プロジェクト」と名付けられた電子アーカイブ・プロジェクトに着手しました。同プロジェクトは紙ベースの記録資料コレクションをより現代的、能動的、革新的なアーカイブズに変え、情報コンテンツを一般の人々に積極的に開示する方向を目指すものです。方法としては、鍵となる重要な記録資料コレクションを選択してデジタル化し、適切なメタデータと検索ツールを付与し、インターネット上に記録を掲載するという手順をとりました。ネット上に公開された記録は、目録あるいは検索ツールを利用して、元のオリジナルなアーカイブズの文脈を保持したまま、必要なものを取り出すことができます。

このプロジェクトは単に記録を利用しやすくするだけでないということです。このプロジェクトは、情報の自由な流通に関するベストプラクティスとして、関係国における透明性とガバナンス向上のために、同様のポリシーが採用されることを促し、開発に関わる重要な情報を市民にもたらすなど、多様な便益をもたらすものです。

[発表資料]
http://www.ica2012.com/files/data/Full%20papers%20upload/ica12final00071.pdf

◆8月23日 13:30-16:15
タイトル:ビジネス・アーカイブズ:持続可能性、信頼、アイデンティティ
原題:Business Archives - Sustainability, Trust and Identity

サブタイトル1:企業の記憶の管理と持続可能な発展:サンゴバン社の例
サブタイトル原題1:Gestion de la memoire d'entreprise et developpement durable, le cas de Saint-Gobain
発表者1:ディディエ・ボンデュ Didier Bondue
所属等1:Saint Gobain Archives, Director

サブタイトル2:信頼してください、私はアーカイブズの者です:企業資料の寄託者との関係構築
サブタイトル原題2:Trust me, I'm from the Archives: building relationships with depositors of business archives
発表者2:マギー・シェイプリー Maggie Shapley
所属等2:オーストラリア国立大学・大学アーカイブズ館長
University Archivist, The Australian National University

サブタイトル3:アーカイブズは合併も買収もダイバーシティー(多様性)も世代交代も超える:企業アイデンティティを見つけ出し、形作り、広めるために不可欠な企業アーカイブズの役割
サブタイトル原題3:Neither merger, nor acquisition, nor diversity, nor generational change can stay them: the indispensable role of corporate archives in the identifying, shaping, and propagating of corporate identity
発表者3:松崎裕子 Yuko Matsuzaki
所属等3:公益財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター企業史料プロジェクト担当
Business Archives Specialist, Resource Center for the History of Entrepreneurship, Shibusawa Eiichi Memorial Foundation

[概要]
このセッションは、ICAの専門部会のひとつであるSBL(企業労働アーカイブズ部会)によるもので、本大会の三つの小テーマ(持続可能性、信頼、アイデンティティ)それぞれに焦点を当てて、ビジネス・アーカイブズを論じたものです。

ディディエ・ボンデュ氏は2011年のSBL東京会議で来日し発表を行ってくださり、『世界のビジネス・アーカイブズ』(日外アソシエーツ社、2012年3月刊行)にも寄稿されています。ボンデュ氏はこの発表の中では、アーカイブズが関わる業務を「記憶ビジネス」(memoire d'entreprise )と名付け、この業務が企業経営へのツールの一つであることを社内での業務上の正当性の由来と指摘しています。また企業は社会的存在であり、社会的責任への関与が求められるというモーリス・アモン氏(元フランス国立公文書館、サンゴバン社アーカイブズ初代館長)の言葉を紹介しながら、同社アーカイブズが持続的に運営されてきた仕組みを説明されました。それはアーカイブズが記録・アーカイブズ管理というサービスを提供するだけでなく、これを通じて利益を計上する経済利益団体(EIG)として運営されてきたことによるものです。詳しくは同書をご覧になってください。

シェイプリー氏はオーストラリア国立大学(ANU)大学アーカイブズ館長です。ANUにはノエル・バトリン・アーカイブズ・センターという企業資料と労働関係資料の保存・提供機関があります。資料は企業、労働組合、業界団体、専門家から寄贈・寄託されています。最初に寄託されたのはオーストラリア農業会社(Australian Agricultural Company)の記録でした。1953年にANUの経済史研究者であったノエル・バトランが休暇中に同社(オーストラリアで2番目に古い企業)を訪問したところ、ちょうど会社移転の直前で記録の処分が検討されていたところでした。この資料はノエル・バトランを介してANUに移管され、その後大学の重要なコレクションの一部となりました。当初は口約束での移管でしたが、ここには寄託者とアーカイブズ・アーキビストの間に信頼がありました。大学アーカイブズに移管することによって、私企業は保管スペースの問題を解決できました。資料は一般には公開されず、同社ならびに、専門の研究者のみにアクセスを許すという条件であったことが、この信頼の基礎であったということです。後になると、寄託の手続きはより発展し、M&Aによる被合併会社の記録の処分による大学アーカイブズへの移管が増加しました。さらに専門の研究者のみならず、幅広い分野の研究者が企業資料の利用を求めるようになり、最初に企業と結んだ合意の想定範囲を超える状況が生まれたり、アスベスト製造会社の記録に関する利用申請と企業の意向の間の不一致が存在するような事例や、企業にも役立つような展示への利用、デジタル化によるオンラインでの提供など、さまざまな状況において、資料を寄託した企業の利益を損なうことのないように、ANUアーカイブズではプロフェッショナルなサービスを提供してきたということです。この専門性こそが企業と大学アーカイブズ、アーキビストとの間の信頼の基礎であることを、さまざまな事例を通じて紹介しています。

日本からは松崎が、M&Aやダイバーシティ(社員の性別や人種、国籍などが多様化すること)の増大あるいは世代交代といった変化に対して、日本企業がアーカイブズ(企業資料)を活用し、アーカイブズ(部門)からサポートを受け、企業アイデンティティを構築し、それを社内で共有する取り組みを通じて、この変化に対応してきた事例を報告しました。口頭発表では、会社史とその記録の中から経営理念のエッセンスを引き出し、「花王ウェイ」として概念化し、これを社内で共有することに中心的に関わってきた花王株式会社企業文化部資料室・ミュージアムの事例を報告しました。ペーパーではさらにパナソニック社の社史室と松下幸之助歴史館が経営理念の継承に取り組んできた事例も併せて紹介しています。

[発表資料]
http://www.ica2012.com/files/data/Full%20papers%20upload/ica12final00339.pdf
『世界のビジネス・アーカイブズ』(公益財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター編、日外アソシエーツ発行、2011年)
http://www.nichigai.co.jp/cgi-bin/nga_search.cgi?KIND=BOOK1&ID=A2353

★☆★...日本の国立公文書館による大会情報の翻訳・紹介...★☆★

同館はブリスベン大会に関わる各種情報を日本語に翻訳しウェブページで公開中です。
http://www.archives.go.jp/ica2012/index.html

★ブリスベン大会概要
http://www.archives.go.jp/ica2012/pdf/outline.pdf(日本語)

★大会プログラム
http://www.ica2012.com/files/data/program/Program-matrix-1508.pdf(PDF、英語)
http://www.archives.go.jp/ica2012/program.html(概要、日本語)
http://www.archives.go.jp/ica2012/program/matrix.pdf(PDF、日本語)

★ポスター発表日程
http://www.ica2012.com/files/data/program/Poster-Presentation-Schedule_amended_2008.pdf(PDF、英語)
★展示・スポンサー契約に関するパンフレット
http://www.ica2012.com/files/pdf/20110615_sponsorship-prospectus_FINAL_web_amended_2.PDF(PDF、英語)
http://www.archives.go.jp/ica2012/sponex.html(日本語)

★基調講演者紹介
http://www.ica2012.com/pages/keynote-speakers.php(英語)
http://www.archives.go.jp/ica2012/speakers.html(日本語)

★ワークショップ・プログラム
http://www.ica2012.com/pages/workshops.php(英語、8月20日開催分)
http://www.ica2012.com/pages/workshops-copy.php(英語、8月24日開催分)
http://www.archives.go.jp/ica2012/program/workshop.pdf(PDF、日本語)

★☆★...編集部よりひと言...★☆★

ブリスベン大会のスポンサー制度は、チタン・スポンサー(出資額77,000豪ドル、630万円前後)が1社(Ancestry.com社)、ゴールド・スポンサー(同33,000豪ドル、270万円前後)が1団体(クイーンズランド州政府)、シルバー・スポンサー(同11,000豪ドル、95万円前後)が3社1団体(FamilySearch社、InoTec社、Tessella社、ニューサウスウェールズ州公文書館)、ブロンズ・スポンサー(5,500豪ドル、45万円前後)に4社2団体(Kodak社、Siller Systems Administration社、OnePlaceMail社、Fronde社、ビクトリア州公文書館、ウェスタンオーストラリア州公文書館)が協力していました。(以上ざっと合計すると900万円超)

このほか約70の展示スペース(出展料は場所に応じて505豪ドル〈約4万3,000円〉〜4,950豪ドル〈約42万円〉)で企業・団体が様々な展示を行っていました。4年後のICA大会開催地韓国の国家記録院(国立公文書館にあたる)も出展し、休憩やレセプション時にはたくさんの参加者を集めていました。

印象深かったのは、チタン・スポンサーでもあるAncestry.com社が英国国立公文書館、豪ニューサウスウェールズ州公文書館とならんでオープニングのパネルディスカッション「第三者によるデジタル化:変化の時代におけるひとつの積極的なアプローチ」(Third party digitization: A positive approach in a time of change)のパネリストを務めるなど、重要な役割を果たしていたことです。このパネルでは、民間業者による役務提供によって、よりよりよいサービスを市民に廉価に提供できることから、州記録法を改訂してサードパーティ(民間業者)がかかわることができるようにした、という話もありました。この話題に典型的に表れているように、アーカイブズを維持するためのファンドが縮小・あるいは現状維持という環境の中で、どのようにアーカイブズを効果的に運用していくのか、といったマネジメント的な側面が強く感じられた大会でした。

次回2016年に韓国ソウルで開催される第18回大会のテーマは「アーカイブズ、調和、友情」(Archives, Harmony and Friendship)です。ブリスベン大会での議論がどのように受け継がれていくのか注目したいと思います。

[関連ページ]

ICAホームページ
http://www.ica.org/

日本国立公文書館ICAブリスベン大会レポート
http://www.archives.go.jp/news/121012_01.html

NATO(北大西洋条約機構)ホームページ
http://www.nato.int/

NATOアーカイブズ
http://www.nato.int/cps/en/SID-6C172306-BE437C76/natolive/68238.htm

NATOヒストリー
http://www.nato.int/history/

NATOアーカイブズ新規オープン(1999年5月19日)に関する記事
http://www.nato.int/cps/en/natolive/news_27236.htm?selectedLocale=en

EDF(フランス電力会社)グループ・ホームページ
http://www.edf.com/the-edf-group-42667.html

EDFグループ歴史ページ
http://about-us.edf.com/profile/history/1990-to-today-and-beyond-43674.html

SNCF(フランス国鉄)ホームページ
http://www.sncf.com

SNCFアーカイブズ&ドキュメンテーション
http://www.evenement.sncf.com/sncf.com/archives-documentation.sncf/index.php?lang=en

SNCF 1939年〜45年の記録のデジタル化とパリ、エルサレム、ワシントンのホロコースト博物館への寄贈に関するプレスリリース
http://39-45.sncf.com/documents/PR-76-achives-paris.pdf

世界銀行ホームページ
http://www.worldbank.org/

世界銀行歴史ページ
http://web.worldbank.org/WBSITE/EXTERNAL/EXTABOUTUS/0,,contentMDK:20653660~menuPK:72312~pagePK:51123644~piPK:329829~theSitePK:29708,00.html

世界銀行アーカイブズ
http://web.worldbank.org/WBSITE/EXTERNAL/EXTABOUTUS/EXTARCHIVES/0,,pagePK:38167~theSitePK:29506,00.html

サンゴバン社
http://www.saint-gobain.com/en

サンゴバン社グループ歴史ページ
http://www.saint-gobain.com/en/group/our-history

オーストラリア国立大学(ANU)
http://www.anu.edu.au/

ANU図書館
http://anulib.anu.edu.au/

ANUアーカイブズ
http://anulib.anu.edu.au/archives/

ANU大学記録
http://anulib.anu.edu.au/university_records/

ANUノエル・バトリン・アーカイブズ・センター
Noel Butlin Archives Centre
http://nbac.anu.edu.au/

花王株式会社
http://www.kao.com/jp/index.html

花王グループ歴史ページ
http://www.kao.com/jp/corp_about/history.html

花王ウェイ(企業理念)ページ
http://www.kao.com/jp/corp_about/kaoway.html

パナソニック株式会社
http://panasonic.co.jp/index3.html

パナソニックミュージアム松下幸之助歴史館
http://panasonic.co.jp/rekishikan/

公益財団法人渋沢栄一記念財団
http://www.shibusawa.or.jp/

公益財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター
http://www.shibusawa.or.jp/center/index.html

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[略称一覧]
ACA: Association of Canadian Archivists(カナダ・アーキビスト協会)
ARA: Archives and Records Association(アーカイブズとレコード協会)
ARC: ARC magazine: archives - records management - conservation
(SoAが発行する月刊ニュースレター)
ASA: Australian Society of Archivists(オーストラリア・アーキビスト協会)
BAC: Business Archives Council(ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BACS: Business Archives Council in Scotland
(スコットランド・ビジネス・アーカイブズ・カウンシル)
BAS: Business Archives Section
(ビジネス・アーカイブズ部会:SAA内の部会)
CITRA: International Conference of the Round Table on Archives
(アーカイブズに関する国際円卓会議:ICAの年次会議)
CoSA:Council of State Archivists(米国・州文書館長評議会)
DCC: Digital Curation Center(英国デジタル・キュレーション・センター)
EDRMS:Electronic Document and Record Management System
(電子文書記録管理システム)
ERM:Electronic Record Management(電子記録管理)
ICA: International Council on Archives(国際文書館評議会)
LSE: London School of Economics and Political Science
(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)
MLA: Museums, Libraries and Archives Council
(英国 博物館、図書館、アーカイブズ評議会)
NAGARA: National Association of Government Archives and Records
Administrators
(米国・全国政府アーカイブズ記録管理者協会)
NARA: National Archives and Records Administration
(米国 国立公文書館記録管理庁)
RIKAR: Research Institute of Korean Archives and Records
(韓国国家記録研究院)
RMS:Record Management System(記録管理システム)
SAA: Society of American Archivists(米国アーキビスト協会)
SBL: Section for Business and Labour Archives
(企業労働アーカイブズ部会、ICA内の部会)
SoA: Society of Archivists(イギリス・アーキビスト協会)
TNA: The National Archives(英国国立公文書館)

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☆★ 編集部より:あとがき、次号予告 ★☆

今年創業75年を迎えたトヨタ自動車の社史が11月2日に同社ホームページで公開されました。

(日本語)
http://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/index.html

(英語)
http://www.toyota-global.com/company/history_of_toyota/75years/index.html

社史を構成する様々な要素(文章、資料、年表ほか)がウェブページに表現されています。検索機能が索引の役割を果たしています。試みに「リコール」という言葉で検索してみると446件ヒットし、即座に本文が読めるので大変便利です。詳細な車両系統図も公開されています。これまでもDVD等によるデジタル形態の社史は存在しましたが、これほど本格的な社史で最初からウェブでの公開によるものは、これが初めてではないでしょうか。

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今号のICAブリスベン大会関連記事の[関連ページ]でご紹介したNATO北大西洋条約機構の歴史に関するページは歴史的な画像、音声、動画が豊富に用いられています。
http://www.nato.int/history/

冷戦終結後、軍事同盟としての同機構の存在意義はかつてほど自明ではない時代です。同機構は加盟国政府からの財政分担金でまかなわれており、分担金が適正に、効果的に利用されていることを示していくことがますます必要とされているのではないでしょうか。そのような文脈で、歴史コンテンツは自らの足跡と達成、役割を広く伝えていくツールとして用いられていると考えられます。ちなみに日本政府も北大西洋条約機構信託基金拠出金を支出しています。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/yosan_kessan/kanshi_kouritsuka/gyosei_review/h24/h23jigyo/pdfs/111.pdf

こういったウェブページに接すると、インターネットによる情報公開・情報発信・広報等のためには、情報のデジタル化は必須であり、必要な情報・記録・資料を「即座に」取り出すためには、それらが整理され組織化されていることが絶対条件であることに、あらためて思い至ります。そういう意味で、情報管理、記録管理、資料管理は組織運営の効率化に必要な機能・プログラムと言えるでしょう。ウェブサイトに、そこに公開してしかるべき情報や、あるいは歴史ある組織の場合、豊富な歴史コンテンツを見い出すことができないとするならば、それは、その組織が情報や記録の公開に熱心でない組織文化を持つ可能性や、情報・記録が適切に整理・組織化されていない可能性を示しているともいえそうです。

次号は12月上旬発行予定です。どうぞお楽しみに。

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◆◇◆バックナンバーもご活用ください◆◇◆

http://www.shibusawa.or.jp/center/ba/bn/index.html

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◆◇◆配信停止をご希望の方は次のメールアドレスまでご連絡ください◆◇◆



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◆◇◆〈渋沢栄一記念財団からのお知らせ〉◆◇◆

■『渋沢栄一を知る事典』(東京堂出版、2012)

2012年10月19日に公益財団法人渋沢栄一記念財団編『渋沢栄一を知る事典』が刊行されました。本書は渋沢栄一の事績を網羅的に解説した初めての事典となります。第1部では栄一の生涯と活動を100の項目に分けてわかりやすく紹介し、第2部では栄一をより深く理解するための資料と情報をまとめました。

なお、実業史研究情報センターでは、項目の執筆のほか第2部「資料からみた渋沢栄一」の編集を担当いたしました。ご高覧いただければ幸いです。
http://d.hatena.ne.jp/tobira/20121102/1351818423

□「企業史料ディレクトリ」:企業アーカイブズと企業史料の所在・概要ガイド

2008年7月22日公開いたしました。日本を代表する企業を中心とした企業アーカイブズと史料保存・学術研究機関合わせて30企業・団体・機関の概要、所蔵資料に関する情報を掲載しております。ぜひご覧ください。
http://www.shibusawa.or.jp/center/dir/index.html

□実業史研究情報センター・ブログ「情報の扉の、そのまた向こう」

渋沢栄一、社史を始めとする実業史、アーカイブズや図書館に関連する情報をご紹介しています。文化資源に関わる東日本大震災と復興についての情報は「震災関連」カテゴリーに集約しています。
http://d.hatena.ne.jp/tobira/

「アーカイブズニュース」では公文書管理法に関する動向やアーカイブズのデジタル化、資料の発見・公開に関わるニュースを随時ご紹介しております。ブログ画面右側の「カテゴリー」にある「アーカイブズニュース」をクリックしてください。「アーカイブズニュース」として掲載した記事をまとめて一覧することができます。

・主なカテゴリーの紹介
http://d.hatena.ne.jp/tobira/20080203

□「社史に見る災害と復興」

2011年3月の東日本大震災に際し実業史研究情報センターでは、センター・ブログに「社史に見る災害と復興」というカテゴリーを新設しました。そこでは現在構築中の「社史索引データベースプロジェクト」の蓄積データを検索し、「災害と復興」に関する記事を含む社史について紹介しています。
http://goo.gl/WUE3b

実業史研究情報センター・ブログ「情報の扉の、そのまた向こう」はほぼ毎日更新しております。どうぞご利用ください。

□「渋沢栄一関連会社社名変遷図」

渋沢栄一がどのような会社に関わったか、それが今にどうつながっているのか、一目でわかるように業種別にまとめて変遷図にしました。現在122図掲載中です。社名索引もありますので、どうぞご覧ください。またセンター・ブログのカテゴリー「社名変遷図紹介」も併せてご覧ください。なお上記『渋沢栄一を知る事典』第2部には、この社名変遷図のうち100図を掲載してあります。
http://www.shibusawa.or.jp/eiichi/companyname/index.html

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★渋沢栄一記念財団は2010年9月1日に「公益財団法人」になりました★

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ビジネス・アーカイブズ通信(BA通信) No.41
2012年11月6日発行 (不定期発行)
【創刊日】2008年2月15日
【発行者】公益財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター
【編集者】公益財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター
      「ビジネス・アーカイブズ通信」編集部
【発行地】日本/東京都/北区
【ISSN】1884-2666
【E-Mail】
【サイト】http://www.shibusawa.or.jp/center/ba/index.html

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